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012.噂される聖女様。
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聖騎士団には、団長・副団長そして班ごとに部屋が割り当てられている。稽古場や獣舎、武具庫などを含めると、案外と敷地は広い。
それでも、研究室や書庫の多い聖魔術師隊よりは狭い上、神殿内でも大聖拝堂や聖居からは随分と離れているのだが、団員たちから文句が出たことはない。
結局、聖務官と言えども神聖な場所に帯剣する我々の存在価値など、ないに等しいのだと自虐的に考えてしまう。考えることなど、性に合わないというのに。
自室は副団長室――と言えば聞こえがいいが、そこで仕事をすることなどほとんどない。自分は机に向かっているよりも体を動かすほうが好きだ。稽古場にいるほうがずっと楽だ。ゆえに自分の副団長室はほぼ接客用の部屋と化している。机に向かいたがるオストヴァルト団長とは正反対の性分なのだ。
三つ時の鐘のあとにも鍛錬をし、四つ時の鐘の前後の時間帯から獣舎で騎獣の世話をするのが自分の日課だ。エークアトの餌の食いっぷりと異常の有無を確認し、夜勤の団員たちと少し話をしたあとに副団長室に戻ると、ティーロが接客用のソファに座っていた。それも、ぐったりとした様子で。
「……どうした?」
「あぁ、ゼルギウス」
「お前がここに来るなんて珍しい」
「同期じゃありませんか。いけませんか?」
いけないことはない。聖騎士団と聖魔術師隊は密な関係だ。聖務官の中でも風通しはいい間柄だ。何の問題もない。
銀の長髪をかきあげ、ティーロは深い溜め息を吐き出した。何だ? ディークマン様かヘーディケ様に無理難題でも押しつけられたか?
菓子も茶も出さないのは、自分とティーロの間柄だからだ。ちゃんとした客人ならそれなりにもてなすのだが、ティーロにはそういった気を遣うことはない。ティーロも気にはしていない。十二年も一緒に働いているのだ。もう、遠慮をするような関係ではない。
「……あれは、かなりの曲者ですよ」
「あれ」とは何か――問わなくても、何となくわかる。そうか、「彼女には私の傀儡になってもらうさ」なんて大層なことを言った割に、失敗したわけだな。
「二日前は自信満々だったじゃないか。何があった?」
対面する形でソファに座ると、ティーロはアーヤ様と一緒に城下街へ視察しに行ったことを細かに説明し始めた。東区へ行ったらしい。ドナートの宿屋は聞いたことがある。悪い噂は聞いたことがない、優良な宿屋だ。
聖水の値下げか……まぁアーヤ様にしては悪くない着眼点だが、おそらく難しいだろう。主聖の中には聖水の利権を得ている人間もいる。ティーロも同じ意見のようだ。
カーチェの酒場では二人で飲んだようだ。そして、その場であったことを思い出し苦々しそうに顔を歪めているティーロを、自分は楽しい気分で見つめている。腹を抱えて笑いたくて仕方がない。手玉に取るはずが、失敗したのだ。あのティーロが。女には慣れているはずのティーロが。神妙な顔をしろ、と言うほうが無理な話だ。
「……それで彼女が私に持ち出した条件は何だったと思います?」
「酒か?」
「ええ、そうです。毎月、違う銘の酒をアーヤ様に献上するように約束させられました。まずは手始めにとカーチェの酒場に置いてあったウイスキー瓶を買わされましたよ!」
「銘柄は?」
「……ムスレア共和国ペルフリ地方産、大地の涙」
……アーヤ様、《透視》の力を濫用しすぎだろ。よく魔力が枯渇しないもんだな。さすが酔っ払いでも聖女。ちょっとだけティーロに同情してしまったじゃないか。
ウイスキー大地の涙は、おそらく、カーチェの酒場でも上等な部類の酒だろう。赤の宝珠ほどの高価な酒ではないが、それでも、気軽に飲むことができるようなものでもない。一瓶で何日分の給金になるのか、考えたくはない。
まぁ、アーヤ様を甘く見たティーロの負けだ。惨敗だろう。勉強代として美味しいお酒をどんどん飲ませてやればいい。それで彼女の機嫌が良くなり、ティーロが中央に近づけるなら、安いものじゃないか。どんなに寄付金を積もうとも、東オリエ神殿で出世しようとも、中央神殿にはなかなか行くことができない。聖女様の推薦状ほど強い後押しはないとわかってはいるだろう。
「ま、アーヤ様への貢ぎ物のためにせいぜい頑張って稼いでくれ」
「はぁ……まさか私の出世がこんな形で聖女様に利用されることになろうとは!」
「ははは。こんなことになるならフジ様がいる間にもっと自分を売り込んでおけば良かったな?」
「ええ、まぁ、そうですね。何も知らない聖女様なら御しやすいと思ったのが間違いでした……はぁ」
ティーロが目に見えて落ち込んでいるのは、やはり痛快だ。いい酒の肴になりそうじゃないか。溜め息ばかりついているので多少目障りではあるが、こんな情けない姿を見るのは、初めてではないだろうか。
いや、十年前、ベロニカ様が中央神殿に聖女として召喚されたときも酷かったな。あれはティーロには気の毒ではあったが、仕方のないことだった。
聖女はフジ様やアーヤ様のようにここではない世界から喚び出されるとは限らない。選択の基準はわからないが、この世界から喚び出されることもある。北のキキョウ様は異世界から、西のシラー様と南のチコリ様、そして中央のベロニカ様はこの世界から聖母様に選ばれた聖女だ。
伯爵家の令嬢であったベロニカ様は、ティーロの婚約者だった。一年後に結婚を予定していた仲だったのだ。
ベロニカ様が中央神殿に召喚されたとき、ティーロはまだ十七歳で駆け出しの聖魔術師。一年後、伯爵家令嬢と伯爵家子息が結婚するなら何の問題もなかったが、中央神殿の聖女と東神殿の聖魔術師が結婚するには聖職の「格」に差がありすぎた。
しかし、聖職者を始め、聖女は結婚することができる。ベロニカ様にその気さえあれば、ティーロを昇聖させ格を上げてから結婚をすることもできたのだが、そうはならなかった。ティーロが一人前になるまで待つこともしなかった。
ベロニカ様はティーロとの婚約を解消した上で、中央の聖女に即位したのだ。
ティーロは落ち込んだ。
おそらく、彼はベロニカ様に好意を抱いていたのだろう。家同士が決めた婚約であっても、何度も顔を合わせているうちに二人が親しくなることはある。好意を持つことだってありえるものだ。それを一方的に反故にされたのだから、ティーロが悲哀に暮れるのもわかる。当時は、同期として、同じ伯爵家の子息として、彼を言葉で慰めるしか自分にはできなかった。
そんな自分の目には、ティーロは聖魔術師としての仕事をきちんとこなしていたように見えた。ぼんやりすることも上の空になることもなく、受け答えも明瞭としていたのだから。
しかし、ベロニカ様一筋だった反動は、彼の下半身に如実に表れた。ティーロはベロニカ様に裏切られたと思ったのだろう、夜ごと女遊びが激しくなっていったのだ。
誘われるままに日替わりで女と遊んでいたせいで、嫉妬をした他の女に殴られることもあった。歓楽街で酔い潰れた彼を、自分が回収しに行くことも多々あった。同僚の団員からは煙たがられ、自警団からも小言を言われ、自分にとっては、本当に、大変迷惑な時期だった。
ただ、相手にしたのは娼婦や平民の女、どこかの寡婦ばかりであり、貴族の令嬢には一切手を出さなかったあたりを見ると、ティーロが呆れるほどに強かな男であったことに間違いはない。遊びは遊びと割り切っていたのだ。
そうした荒んだ生活の中でも、ティーロは中央へ行くための方法を模索し続けた。貴族のつてを使い、中央の聖職者をもてなし、地道に自分を売り込む活動と情報収集を続けたのだ。
そして、東神殿から中央神殿へ行くためには、格を上げるしかない――出世するしかないとティーロは結論した。そのときから、出世欲を隠すことを、しなくなった。
中央神殿でベロニカ様を守りたいのか、彼女を今でも愛しているのか、はたまた振られた復讐のつもりなのか、自分にはわからない。ただ、ティーロが二十歳を超える頃には、女遊びも深酒も、何もかもすべてが落ち着いていた。穏やかな笑みを絶やさない、出世欲の塊が誕生したのだ。
だから、ティーロがここまで乱されているのを見るのは、久しぶりだ。面白い。自分に迷惑がかからないのだから、大変愉快だ。
「彼女は、思い通りにはならないだろ」
「いえ、必ず私の思惑通りに誘導してみせますよ!」
「できるといいな。期待はしないが」
「期待されなくとも、やってみますよ」
まぁ、頑張れよ。
十年前、惚れた女一人を自分の思い通りにできなかったのに、今回は聖女様を制御してみせると豪語するティーロを、自分は意外と冷ややかな目で見つめている。アーヤ様を制御する――そんなことが本当にできるなら、見てみたいもんだ。
できるものなら、な。
「しかし、アーヤ様に色仕掛けは通用しませんね。気持ち悪いと言われました」
「ははっ! アーヤ様も見る目があるな! 確かにお前の笑顔は気持ち悪い」
「そんなに気持ち悪いですかねぇ? 自分では結構な色男だと思っていますが」
「そのうぬぼれが心底気持ち悪い」
女たらしのティーロの本性が見抜かれているのなら、アーヤ様を籠絡するのは至難の業だろう。難しい相手に対する、ティーロのお手並みを拝見しようじゃないか。
あのアーヤ様を思い通りに動かせる人などいない、と自分は考えている。厳格なディークマン様が接触を拒み、教育者として名を馳せたホフマン殿でさえ手を焼いているというのに、ただの聖魔術師に聖女が操れるものか。そんなふうに思っている。
――誰かの意のままに動かないでもらいたい。そんなささやかな期待があったのは、確かだ。
なぜそんなふうに思うのか、問われても明確な答えはないのだったが。
それでも、研究室や書庫の多い聖魔術師隊よりは狭い上、神殿内でも大聖拝堂や聖居からは随分と離れているのだが、団員たちから文句が出たことはない。
結局、聖務官と言えども神聖な場所に帯剣する我々の存在価値など、ないに等しいのだと自虐的に考えてしまう。考えることなど、性に合わないというのに。
自室は副団長室――と言えば聞こえがいいが、そこで仕事をすることなどほとんどない。自分は机に向かっているよりも体を動かすほうが好きだ。稽古場にいるほうがずっと楽だ。ゆえに自分の副団長室はほぼ接客用の部屋と化している。机に向かいたがるオストヴァルト団長とは正反対の性分なのだ。
三つ時の鐘のあとにも鍛錬をし、四つ時の鐘の前後の時間帯から獣舎で騎獣の世話をするのが自分の日課だ。エークアトの餌の食いっぷりと異常の有無を確認し、夜勤の団員たちと少し話をしたあとに副団長室に戻ると、ティーロが接客用のソファに座っていた。それも、ぐったりとした様子で。
「……どうした?」
「あぁ、ゼルギウス」
「お前がここに来るなんて珍しい」
「同期じゃありませんか。いけませんか?」
いけないことはない。聖騎士団と聖魔術師隊は密な関係だ。聖務官の中でも風通しはいい間柄だ。何の問題もない。
銀の長髪をかきあげ、ティーロは深い溜め息を吐き出した。何だ? ディークマン様かヘーディケ様に無理難題でも押しつけられたか?
菓子も茶も出さないのは、自分とティーロの間柄だからだ。ちゃんとした客人ならそれなりにもてなすのだが、ティーロにはそういった気を遣うことはない。ティーロも気にはしていない。十二年も一緒に働いているのだ。もう、遠慮をするような関係ではない。
「……あれは、かなりの曲者ですよ」
「あれ」とは何か――問わなくても、何となくわかる。そうか、「彼女には私の傀儡になってもらうさ」なんて大層なことを言った割に、失敗したわけだな。
「二日前は自信満々だったじゃないか。何があった?」
対面する形でソファに座ると、ティーロはアーヤ様と一緒に城下街へ視察しに行ったことを細かに説明し始めた。東区へ行ったらしい。ドナートの宿屋は聞いたことがある。悪い噂は聞いたことがない、優良な宿屋だ。
聖水の値下げか……まぁアーヤ様にしては悪くない着眼点だが、おそらく難しいだろう。主聖の中には聖水の利権を得ている人間もいる。ティーロも同じ意見のようだ。
カーチェの酒場では二人で飲んだようだ。そして、その場であったことを思い出し苦々しそうに顔を歪めているティーロを、自分は楽しい気分で見つめている。腹を抱えて笑いたくて仕方がない。手玉に取るはずが、失敗したのだ。あのティーロが。女には慣れているはずのティーロが。神妙な顔をしろ、と言うほうが無理な話だ。
「……それで彼女が私に持ち出した条件は何だったと思います?」
「酒か?」
「ええ、そうです。毎月、違う銘の酒をアーヤ様に献上するように約束させられました。まずは手始めにとカーチェの酒場に置いてあったウイスキー瓶を買わされましたよ!」
「銘柄は?」
「……ムスレア共和国ペルフリ地方産、大地の涙」
……アーヤ様、《透視》の力を濫用しすぎだろ。よく魔力が枯渇しないもんだな。さすが酔っ払いでも聖女。ちょっとだけティーロに同情してしまったじゃないか。
ウイスキー大地の涙は、おそらく、カーチェの酒場でも上等な部類の酒だろう。赤の宝珠ほどの高価な酒ではないが、それでも、気軽に飲むことができるようなものでもない。一瓶で何日分の給金になるのか、考えたくはない。
まぁ、アーヤ様を甘く見たティーロの負けだ。惨敗だろう。勉強代として美味しいお酒をどんどん飲ませてやればいい。それで彼女の機嫌が良くなり、ティーロが中央に近づけるなら、安いものじゃないか。どんなに寄付金を積もうとも、東オリエ神殿で出世しようとも、中央神殿にはなかなか行くことができない。聖女様の推薦状ほど強い後押しはないとわかってはいるだろう。
「ま、アーヤ様への貢ぎ物のためにせいぜい頑張って稼いでくれ」
「はぁ……まさか私の出世がこんな形で聖女様に利用されることになろうとは!」
「ははは。こんなことになるならフジ様がいる間にもっと自分を売り込んでおけば良かったな?」
「ええ、まぁ、そうですね。何も知らない聖女様なら御しやすいと思ったのが間違いでした……はぁ」
ティーロが目に見えて落ち込んでいるのは、やはり痛快だ。いい酒の肴になりそうじゃないか。溜め息ばかりついているので多少目障りではあるが、こんな情けない姿を見るのは、初めてではないだろうか。
いや、十年前、ベロニカ様が中央神殿に聖女として召喚されたときも酷かったな。あれはティーロには気の毒ではあったが、仕方のないことだった。
聖女はフジ様やアーヤ様のようにここではない世界から喚び出されるとは限らない。選択の基準はわからないが、この世界から喚び出されることもある。北のキキョウ様は異世界から、西のシラー様と南のチコリ様、そして中央のベロニカ様はこの世界から聖母様に選ばれた聖女だ。
伯爵家の令嬢であったベロニカ様は、ティーロの婚約者だった。一年後に結婚を予定していた仲だったのだ。
ベロニカ様が中央神殿に召喚されたとき、ティーロはまだ十七歳で駆け出しの聖魔術師。一年後、伯爵家令嬢と伯爵家子息が結婚するなら何の問題もなかったが、中央神殿の聖女と東神殿の聖魔術師が結婚するには聖職の「格」に差がありすぎた。
しかし、聖職者を始め、聖女は結婚することができる。ベロニカ様にその気さえあれば、ティーロを昇聖させ格を上げてから結婚をすることもできたのだが、そうはならなかった。ティーロが一人前になるまで待つこともしなかった。
ベロニカ様はティーロとの婚約を解消した上で、中央の聖女に即位したのだ。
ティーロは落ち込んだ。
おそらく、彼はベロニカ様に好意を抱いていたのだろう。家同士が決めた婚約であっても、何度も顔を合わせているうちに二人が親しくなることはある。好意を持つことだってありえるものだ。それを一方的に反故にされたのだから、ティーロが悲哀に暮れるのもわかる。当時は、同期として、同じ伯爵家の子息として、彼を言葉で慰めるしか自分にはできなかった。
そんな自分の目には、ティーロは聖魔術師としての仕事をきちんとこなしていたように見えた。ぼんやりすることも上の空になることもなく、受け答えも明瞭としていたのだから。
しかし、ベロニカ様一筋だった反動は、彼の下半身に如実に表れた。ティーロはベロニカ様に裏切られたと思ったのだろう、夜ごと女遊びが激しくなっていったのだ。
誘われるままに日替わりで女と遊んでいたせいで、嫉妬をした他の女に殴られることもあった。歓楽街で酔い潰れた彼を、自分が回収しに行くことも多々あった。同僚の団員からは煙たがられ、自警団からも小言を言われ、自分にとっては、本当に、大変迷惑な時期だった。
ただ、相手にしたのは娼婦や平民の女、どこかの寡婦ばかりであり、貴族の令嬢には一切手を出さなかったあたりを見ると、ティーロが呆れるほどに強かな男であったことに間違いはない。遊びは遊びと割り切っていたのだ。
そうした荒んだ生活の中でも、ティーロは中央へ行くための方法を模索し続けた。貴族のつてを使い、中央の聖職者をもてなし、地道に自分を売り込む活動と情報収集を続けたのだ。
そして、東神殿から中央神殿へ行くためには、格を上げるしかない――出世するしかないとティーロは結論した。そのときから、出世欲を隠すことを、しなくなった。
中央神殿でベロニカ様を守りたいのか、彼女を今でも愛しているのか、はたまた振られた復讐のつもりなのか、自分にはわからない。ただ、ティーロが二十歳を超える頃には、女遊びも深酒も、何もかもすべてが落ち着いていた。穏やかな笑みを絶やさない、出世欲の塊が誕生したのだ。
だから、ティーロがここまで乱されているのを見るのは、久しぶりだ。面白い。自分に迷惑がかからないのだから、大変愉快だ。
「彼女は、思い通りにはならないだろ」
「いえ、必ず私の思惑通りに誘導してみせますよ!」
「できるといいな。期待はしないが」
「期待されなくとも、やってみますよ」
まぁ、頑張れよ。
十年前、惚れた女一人を自分の思い通りにできなかったのに、今回は聖女様を制御してみせると豪語するティーロを、自分は意外と冷ややかな目で見つめている。アーヤ様を制御する――そんなことが本当にできるなら、見てみたいもんだ。
できるものなら、な。
「しかし、アーヤ様に色仕掛けは通用しませんね。気持ち悪いと言われました」
「ははっ! アーヤ様も見る目があるな! 確かにお前の笑顔は気持ち悪い」
「そんなに気持ち悪いですかねぇ? 自分では結構な色男だと思っていますが」
「そのうぬぼれが心底気持ち悪い」
女たらしのティーロの本性が見抜かれているのなら、アーヤ様を籠絡するのは至難の業だろう。難しい相手に対する、ティーロのお手並みを拝見しようじゃないか。
あのアーヤ様を思い通りに動かせる人などいない、と自分は考えている。厳格なディークマン様が接触を拒み、教育者として名を馳せたホフマン殿でさえ手を焼いているというのに、ただの聖魔術師に聖女が操れるものか。そんなふうに思っている。
――誰かの意のままに動かないでもらいたい。そんなささやかな期待があったのは、確かだ。
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