【R18】肉食聖女と七人のワケあり夫たち

千咲

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聖女の休日

063.ラルスの欲望

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 熱くて柔らかく、濡れてきつい。押して、引いてを繰り返すたび、聖女は淫らな声で啼く。「奥までちょうだい」とねだられるものの、そこに到達する前に彼女は何度も絶頂している。
 ラルスは、ひたすら耐えている。聖女が達するたびに、剛直がぎゅうと締め上げられる。あまりの快感に腰を引いて逃げたくなるが、聖女が足を絡めているためそれもできない。

「イズミ、様、っ、これでは、もちません」
「えっ、やだ、頑張って、ラルス。わたしが、満足するまで、っあ」

 こんなに激しい快楽に身を委ねてしまえたらどれほど幸せなことか。これを我慢し続けなければならないとは、まるで拷問だとラルスは苦笑する。

「っ、あ、おく、とどい、た?」
「はい、何とか」
「あぁぁ……イッ……ふ、あ」

 聖女の足が、ラルスの腰に絡みつく。これでは浅く抜き差しをして、深くで交わることしかできない。それこそが聖女の望みなのだろう、とラルスは聖女の腰を抱いて自らの腰を動かす。

「あっ、あっ、う、んんっ」

 聖女は目を閉じ、快感に打ち震えている。白い肌は朱に染まり、熟れた桃のようだとラルスは思う。
 ジャラジャラと鎖が鳴る。二人の動きに合わせた音は、かなり卑猥だ。冷たくないようにと聖女の下に上着を敷いたが、拘束され自由を奪われても彼女は気にしていない様子だ。

「イズミ様、そんなに締めると、出てしまいます」
「無理。だって、気持ちい……あっ、ああ」
「ですから、あれほど、締めないでくださいと」
「むーりー!!」

 ラルスは微笑み「可愛い」と呟く。聖女は震えながら「もっと言って」とその言葉をねだる。

「イズミ様、可愛い」
「あっ、う、イッちゃ、あ」
「あなたは本当に可愛い」

 それだけで達してしまう聖女を見下ろし、ラルスは射精感を我慢する限界を知る。
 ラルスはもとより、膣内に射精するつもりはない。白い精液を妻の最奥に吐き出す――欲の解放は、夫婦や恋人の神聖な儀式でもある。愛を確かめ合う行為である。ラルスには「自分は夫ではない」という自負がある上、これが一方的な愛の営みであることも理解している。
 しかし、聖女が足を離さない限り、このまま最奥で吐精してしまう。それはラルスの意図するものではない。白く揺れる乳房の先端に指を這わせながら、ラルスはそれを告げる。

「イズミ様、足を離してください。このままだと、中に出てしまいます」
「だ、して」
「しかし」
「中に、出して。いっぱい、ちょうだい」
「……無理です」

 聖女が舌を出す。ラルスは唇ごと聖女の舌を吸う。命の実の味のキス。痺れるほどに甘く、背徳感のあるキスだ。

「あなたが穢れてしまいます」
「ラルスにだったら、穢されてもいい」
「どうして……」
「好きよ、ラルス」

 ラルスは首を左右に振る。誘惑に負けてしまいそうになりながら足掻いているラルスに、聖女は微笑む。その妖艶な唇で、それをいざなう。

「ラルス、孕ませて」

 限界だった。
 ラルスは腰を奥まで穿ち、欲を解き放つ。外に出すはずだった精液が、聖女の最奥を、何度も何度も汚す。ぎゅうと膣内が収縮しているのを感じ、ラルスは二人同時に達したことを理解する。

「あなたという人は……」

 聖女は荒い息をしながら、細く目を開いて微笑む。汗で張り付いた黒い髪が蠱惑的だ。

「ふふ。すぐイクでしょ、それ。命の実を食べないと妊娠しないのに、なぜか皆高まっちゃうんだよね。変なの」

 それはそうだ、とラルスは溜め息をつく。女が愛を受け入れてくれると言っているのだ。男がこんな快楽に抗えるはずもない。
 ぐったりと弛緩した聖女は、既に足を放り出している。しかし、ラルスは挿入したまま彼女を抱きしめ、キスをする。重ねた罪を忘れるように、舌を求める。

「……戯れを。欲の解放も罪ですが、夫以外の者がイズミ様を孕ませることは大罪です」
「じゃあ、ラルス、八人目になってよ」
「夫は七人と定められております」
「それは絶対?」
「規律は絶対のものです」

 だから、前の聖女と総主教は「愛人」関係であった。いくら聖女が黄の君より総主教を愛していても、愛し合う二人が子を望んでも、夫の交代が叶うことはなかった。

「でも、ウィルフレドより先にラルスとセックスしちゃったしなぁ」
「……え」
「ウィルフレドとリヤーフ、紫と緑はまだ欲を解放していないんだよ。意外だった?」
「では、私は、お二方より先に、イズミ様の中に……?」
「うん」

 ラルスは真っ赤になってしまった顔を覆う。外に出すべきだった、と今さらながらに後悔する。夫より先に聖女を穢してしまった、とラルスは嘆く。

「あ、ダメ、抜かないで、ラルス。まだ中にいて」
「もう十分達したのではありませんか?」
「ちょっと落ち着いたけど、まだ全然足りないんだもん」
「私はもう若くありませんので」
「まだ勃ってるくせに?」

 ラルスの動きが止まる。確かに、萎えた気配がない。一度射精したあとに勃起を継続したことはない。今まで、一度も。
 催淫剤の効果だろうと納得して、ラルスは聖女の白く柔らかな双丘を揉む。ごく自然な手つきで。

「ラルス、座らせて」

 両手の使えない聖女を抱き起こし、腰を引き寄せる。「あぁ……っ」と淫らな声を上げる聖女の口を塞ぎ、乳首を摘む。過剰なほどに反応する聖女を見つめ、「これが好きなのですね」とラルスは笑う。

「あっ、う、んんっ」

 聖女の腰を持ち少し動かすだけで、最奥に当たる。聖女はもどかしそうに「鎖が邪魔」と嘆く。確かに密着感は少ない。しかし、ラルスは悪くないと思っている。何もかもがちょうどいい。

「……イズミ様、気持ちいいです」
「ん、わたしも。すっごい、イッてる……っんん」

 蠕動する膣内が剛直を締め上げる。聖女の唇を食み、舌で口内を犯し、甘い唾液を飲む。

「ふふ。おっきい」

 耳元で聞こえる艷やかな声。本来なら夫にしか許されない行為、夫だけが知っている柔らかさ、甘さ、熱さ。一度だけ、と決めたはずが、二度目も、明日も、これから先もずっと、求めてしまいたくなる。
 そんなことはできないとわかっている。

「ラルス」

 自分の名を呼ぶ聖女を、ずっとこのまま腕の中に閉じ込めておきたいと願ってしまう。愚かにも望んでしまう。

「ラルス、好き」

 私もですよ、と言えたらどんなに楽か。ラルスは自嘲する。言えるはずもない言葉を、胸の奥にしまい込む。
 お慕いしています。愛しています。あなたの心と体をすべて、私のものにできたら。あなたの中に、私の子を宿らせることができたら――。

「イズミ様、もう」
「いいよ、来て」

 唇を重ね合わせながら、同じように罪を重ねる。ラルスはそれを痛いほど自覚している。
 薬がなくとも、いずれ聖女を抱いてしまっていただろう。ラルスの中に芽生えた暗い心は、育つばかりで消えることはない。暗い心は肥大し続け、聖女を傷つける形で顕在化していたに違いない。
 時期が、早まっただけだ。

「イズミ様、あなたを」
「あっ、イキそ」
「私は、あなたを」
「ラルスっ、一緒に、っあ、お願い」

 左手で聖女の腰を抱き、激しく穿つ。右手で柔らかい頬に触れ、唇を食む。

「ラルス、好きっ」

 瞬間の、快楽。愛しい人の脈を感じながら、その膣内に精を放つ。一瞬の、刹那の、愉悦。

「ラルス、気持ちい」

 聖女の微笑む唇にキスをして、これで十分だ、とラルスは結論を出す。これ以上を望んではいけない。願ってはいけない。暗い心を律する。
 なのに。

「ねぇ、ラルス。やっぱりあなたを八人目の夫にしたいなぁ」

 聖女は無自覚に火をべる。無意識に暗い心を煽る。激しく燃える欲望の炎を消すすべを、ラルスは知らない。炎に囲まれ、身を焦がしても、欲が消えることはない。
 書庫の机の上に置かれていた白い果実を思い出し、ラルスは笑う。エレミアスの策略に、まんまと引っかかってしまっている自分を情けなく、愚かに思いながら、暗い心に身を委ねる。

 ――たとえこの身が滅びようとも、あなたを、私だけのものにしたい。

 己の欲に気づかれぬよう、ラルスは顔を伏せて、ただ聖女を抱きしめるのだ。


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