【R18】肉食聖女と七人のワケあり夫たち

千咲

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第二夜

046.黄の君との第二夜(二)

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 昨夜は三回、今朝は一回。ヒューゴはかなり我慢したんじゃないかな。ジェラールに言われた通りの回数で終わったんだもん。本当はもっと出したいんだろうな。そのあたりは不真面目になってもいいのに、ヒューゴは真面目だ。

「イ、イズミさ、っ」
「ん、気持ちい」

 朝、二回目はお風呂で。これはサービス。夜まで眠れるように先にお風呂に入っておこうと思って、座ったヒューゴの上にまたがり、対面座位で繋がっている。暖かくて気持ちいい。お互い、イキたいわけではない。いちゃいちゃの延長みたいなものだ。
 木のいい匂いがする湯船は、温泉旅館のものに似ている。写真でしか見たことないけど。

「こんなに、つけちゃいました」
「ふふ。ヒューゴは意外と独占欲強いよねぇ」

 首筋に鎖骨、胸に腹、背中とかにも散らされた鬱血。ヒューゴの所有痕。夫はわたしの肩に湯をかけながら、時折乳首を食む。うぅ、気持ちいい。

「夜通し……できたらいいのに」
「わたしがめっちゃ体力つけなきゃ難しいかなぁ」
「本当は……ずっと、そばにいたい、です」

 濡れてあらわになったヒューゴの額に口づける。水を含むと金色の髪は少し暗い色になるのだと、初めて知った。

「ヒューゴ、ごめんね」
「ええ、わかっています。この想いが、願いが、叶うはずはないのだと、わかっています。あなたが聖女様である限り、私は夫の中の一人。七人のうちの一人でしかありません。あなたのすべてを欲しがっても、手に入れられないことは、わかっているのです」

 けれど、願わずにはいられない。よく、わかるよ。
 ヒューゴの顎をぐいと押し上げ、無理やり唇を塞ぐ。夫がわたしの腰を掻き抱く。最奥に押し当てられた尖端が窮屈そうだ。

「イズミさんは酷い。そうやって、私の言葉を封じるのでしょう」
「そうだよ。わたしは聖女で、あなたはその夫。七人のうちの一人でも、わたしにとってはかけがえのない一人なの。あなたが嫉妬に狂ったとしても、わたしは決して離れたりはしないのよ、ヒューゴ」

 ザバ、と波が立つ。もっと奥まで繋がれたらいいのに。もっと深くまでわかり合えたら、いいのに。もどかしい。

「好きよ、ヒューゴ。覚えておいて。大好きよ」

 わたしの言葉はどれだけ彼に届くだろうか。荒んだ心を抱えてしまった夫を、どうすれば救えるのだろう。わたしにできることなんて、あるのだろうか。

「……そばにいてくださいますか?」
「ええ。ヒューゴが願う限り、ずっと」
「ずっと……では、いつか、その証を望んでも良いですか?」

 証?
 訝しがるわたしの腹に、手のひらが押しつけられる。濃い茶色の瞳がわたしを捕らえて離さない。わたしの心の動きを探るかのように、じっと見つめている。

「……子どもが、欲しいです」

 あぁ、そっか。なるほど、子どもか。ヒューゴはわたしを繋ぎ止めるために子どもが欲しい、と。それが彼の救いになるのなら構わないけれど……総主教のためじゃなくていいのかな?

「いいよ、いつか、ヒューゴの隣で命の実を食べてあげる」

 瞬間、ヒューゴはぶわっと涙を流す。えええ、泣くほど嬉しかった? そんなに? わたしは笑いながらヒューゴを抱きしめる。

「イ、イズミ、さ、すみませ、っ」
「ヒューゴ、可愛い。わたしの全部はあげられないけど、この時間はあなただけのものだよ」
「イズ、さ、っ」
「中にちょうだい。欲しいの、ヒューゴ」

 萎えるどころかさらに元気を増した剛直に深く穿たれ、体が歓喜する。ザバザバ押し寄せる波が邪魔だなぁ。ちょっと体位を変えようかな。

「ヒューゴ、後ろから犯して」

 湯の中でよいしょと足を動かし、後背位に変える。湯船の縁にしがみつき、深くにヒューゴを招き入れる。喘ぐ声が反響して、いやらしい。

「あぁ、イズミさんっ」

 熱杭を打ちつけられながら、命の実は本当に都合がいい妊娠システムだなと思う。元の世界と同じなら、これだけ毎日毎晩中出しされていたら、生むまで誰の子かわからないんだもんなぁ。
「イズミさん、出る」と短くヒューゴが呟き、激しく腰を動かしたあと、最奥で欲を吐き出した。お風呂でするのも悪くない。暖かいし、汗はすぐに流せるし、合理的。

「イズミさん、好き……好きです」

 夫はわたしの背を抱きしめながら、力なくそう零す。既に熱は収まっている。珍しく。
 肉杭が体から出ていく瞬間も、好き。白いのが内股を伝うのが堪らなくえろい。ヒューゴと抱き合って、湯に浸かりながらキスをする。

「ここでするのも気持ちいいね」

 ヒューゴの涙が止まっていることを確認して、ホッとする。男の人を泣かせるなんて、ちょっと、ね。聖女じゃなくて悪女っぽいもんね。



「ルネ、ですか?」
「そう。新しい宮女官が黄の国出身だから、もしかしたらヒューゴの知り合いかなと思って」

 居室に戻り、香茶を飲みながらヒューゴに尋ねる。昨日のことがあっても香茶を飲めるのだから、わたしの神経は割と図太いのだろう。もちろん、ジャムは抜き。
 前回よりセーブしたおかげで、割と体力も残っている。やっぱり五回が上限だなぁ。
 ちなみに、ここは寝室じゃないから、他の女の話題もオッケーだ。我ながら甘い基準だけど、まぁいいよね。

「例えば、お見合いをした子たちの中に、ルネって子はいなかった?」
「ルネ……ルネ嬢……すみません、思い出せません」
「姉妹や付き人の可能性もあるんじゃないかなぁ」
「そこまではわかりませんね。お役に立てずに申し訳ありません……あ、でもジェラールなら覚えているかもしれません。聞いておきましょう」

 宮女官って採用試験みたいなものがあるのかな? どんな人が採用されるんだろう? ヒューゴとお見合いできるような身分の子が宮女官になれるものだろうか。うーん、そのあたりの制度については、全くわかんないや。
 それにしても、世界のことを知らないのはどうなんだろう。聖女なのに。ラルスは都合の悪いことは教えてくれないし。このまま世間知らずのままでいいのかなぁ。

「ねぇ、ヒューゴ。あなた、勉強は得意?」
「ええ、それはまぁ。騎士学校でも主席でしたので」
「主席!? すっっごいじゃん!」
「それしか能がありませんでしたから……」

 騎士学校なんてあるんだ? 知らなかったぁ。だから、意外と筋肉質なんだなぁ、ヒューゴ。

「いやいや、勉強ができるって一種の才能でしょ? わたし、バカだから数学も暗記も全然だったし! ねぇねぇ、世界のことについて教えてよ。わたし、ヒューゴたちが暮らしていた世界について知りたいんだ。ほら、紙はあるの。ね、お願い、ヒューゴ先生」

 ヒューゴはわたしのおねだりに驚き、一瞬戸惑ったのち、「先生ですか」と破顔した。

「イズミさんは私に気持ちのいいことを教えてくださいました。次は私が世界の成り立ちについて教える番だということですね?」
「頼りにしてるよ、ヒューゴ先生」
「私、結構厳しいですよ?」
「えぇー、お手柔らかにお願いしますぅ」

 なんて言いながら、ヒューゴに甘えてみる。セックス以外の部分で何か夫に役割を持ってもらえたら、やりがいなんかが芽生えるものだろうか。今のままだと、夫婦そろって聖樹システムの単なる駒に過ぎないもんなぁ。
 オーウェンには体術を教えてもらっているし、ヒューゴに勉強を教えてもらう。夫に役割を――うん、割といいアイデアかも。

「先生と、生徒……先生……」

 ヒューゴは良からぬことを考えているみたいだけど、まぁ別にいいよ。次から、先生と生徒ごっこ、楽しみましょ。


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