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第一夜

017.黄の君との初夜(三)

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「イズミさん、ここは? それともここ? この角度?」
「っあ、っ」
「ここで、この角度、ですね」

 熱杭がわたしの膣壁を擦り上げる。少しずつ深さを変えながら、角度を変えながら、ヒューゴはわたしの中を探索する。体は勝手に反応してしまうんだから、仕方がない。今夜はもう夫の好きなようにさせてあげるだけだ、と覚悟を決めた。

「あぁ……どうしよう、また出そうです」

 覚悟を決めたものの、童貞だった夫が早漏かつ絶倫なせいで大変なことになっている。正常位で一回、後背位で一回、既に射精したヒューゴは、今正常位でわたしの片足を持ち上げている。コレ、めちゃくちゃ奥まで届く体位なんだね、苦しいくらい。だから、奥まで穿たれると。

「ヒュー、いた、っ」
「すみません、すみません……でも、止められなくて」

 だよね、無理だよねー。わかってた。オーケー、大丈夫。痛くない、痛くない。

「無理、苦し……っ」
「あ、すみません、ちょっと引きます」
「っあぁぁ、ダメ、そこ、気持ちい」
「ここ? ここですか?」

 めっちゃいいところに尖端を当ててくるヒューゴは、勉強熱心な上に飲み込みが早い。何時間か前まで童貞だったとは信じられないくらい。というか今、何時なの? そんなことを考えている間に、それは突然やって来る。

「あ、イキそ……」
「私も、です」

 見上げると、眉間に皺を寄せて快感に耐えている夫の姿がある。わたしの足をぎゅっと抱きしめているのが可愛い。キスしたい。でも、我慢。このままイキたい。

「イズミさ、私、もう」
「わた、しも」

 本当は奥を突きたいだろうに、ヒューゴはわたしに合わせて少し浅めのところを小刻みに擦ってくれる。いじらしくて、大変好ましい。
 荒い呼吸音と、淫らな水音が混じる。もう、明かりなんてとっくに消えている。今は、ぼんやりと浮かび上がるヒューゴしか見えない。
 気持ちいいところを突かれ、じっくり、ゆっくり、昇り詰める。「あ」と声を漏らし、ヒューゴの肉杭を締め上げると、彼もまた体を震わせて精を吐き出した。何度も何度も膣内が収縮する。そのたびに、ヒューゴは気持ち良さそうに吐息を零す。

「ヒューゴ、一回休憩しよ」

 できればこのまま眠りたい。ヒューゴは素直に従い、少し萎えた肉棒をわたしの中から取り出した。ドロリと精液が溢れ出る気配に苦笑する。こんなに中に出されたの、初めてかもしれない。

「……こんなに、溢れて、ます」
「シーツは毎日替えるから気にしないで」
「すごい……こんなに狭いのに、挿入っていたんですね」
「そ。ヒューゴの硬くて太くて長いのが、ね」

 嬉しそうなヒューゴにキスをして、タオルの場所とお湯の場所を教える。彼はすぐに意図を理解して、タオルを取りに行く。わたしはもう動けない。動きたくない。腰、立たないもの。つらい。
 温かなタオルで処理をしたあと、ベタベタになってしまった掛け布団を部屋の隅に追いやり、隣の部屋から新しいものを持ってきてもらう。ついでに水も。もちろん、動くのはヒューゴだ。

「大丈夫ですか? 私ばっかり気持ち良くなってしまってすみません」
「わたしも気持ち良かったよ? まぁ、でも、一晩中はしんどいかな」
「……すみません」

 また顔を真っ赤にして、ヒューゴは謝る。こんなに可愛い彼が見合いで断られ続けたというのだから、この世界の女の人は見る目がないのだろう。早漏で絶倫で程よい大きさの持ち主なんて、なかなかいないのだから。
 ヒューゴに腕枕をしてもらっていると、すぐに眠くなってくる。体温が気持ちいい。疲れたもんなぁ。結局何回したんだっけ? 四回? 五回? しかも抜かずに。びっくりだわ。挿入したままぐるぐる回ったわ。彼、どんだけ体力あるの。わたし、明日絶対に筋肉痛だよ。明日からは柔軟体操してからセックスしなきゃ。

「イズミさん?」
「んー、ヒューゴ、おやすみぃ」
「はい、おやすみなさい」

 何度かキスをしたところまでは覚えている。でも、すぐに寝ちゃった。限界だったんだもの。

 そうして、翌朝の一つ時の鐘の音なんて全く聞こえないまま眠り続け、ふわふわの柔らかいものが体をくすぐっている感触でようやく頭が覚醒し始める。胸のあたりにあるふわふわしたものに手をやると、「おはようございます」と声がした。夫の髪のようだ。
 何だか熱いものが肌を這っている。胸のあたりをゆっくりと動き、頂きにたどり着く。舌だ、と気づいたときにはもう、乳首はヒューゴの口の中に収まっていた。

「っあ、んんっ」

 忘れてた。わたし、乳首が弱いんだ。すぐ濡れちゃう。すぐスイッチが入っちゃう。すぐ挿れたくなっちゃう。だから、男たちはわたしの乳首をいじってすぐに挿入してきたんだった。前戯なんてそれだけだった。

「イズミさん、ココ気持ちいいんですね?」
「ん、うん、っふ、あ」
「可愛い。いっぱい舐めてあげますね」

 左の乳首を舐められながら、右の乳首は手のひらでコロコロと転がされている。気持ちいい。すぐ濡れてきちゃう。あぁ、でもこれは昨夜の残滓かもしれないけど、そんなことはどうでもよくて。
 ヒューゴは宣言通り、一心不乱に胸を舐めてくれる。膣内に指を挿れたり、陰核をいじったりはしない。やり方を知らないだけだとは知っている。教えたら夫は素直に指を使ってくれるだろう。
 でも、いいんだ。乳首だけでも十分気持ちいいから。他の刺激なんていらないくらい。

「すみません、イズミさん」
「んん?」
「挿れます」

 起き抜けにこんな刺激、堪んない。がつんと奥まで穿たれて、体が一気に覚醒する。ヒューゴには、とりあえずセックスの手順をきちんと教えなきゃ。……次回。正直、割と、乱暴にされるのは嫌いじゃないから、このままでもいいかなぁ。

「イズミさん、ずっとこうしていたい」

 ヒューゴのキス。舌を受け入れながら、わたしは彼の首に手を回す。ずっとこうしていたい。わたしも同じ気持ち。夫がわたしを求めてくれるなら、ずっと受け入れ続けたい。わたしに、そんな価値があるのなら。

「あぁ……イキそう」

 おでこをこつんと触れ合わせて、ヒューゴは苦笑しながら腰を振る。昨夜よりはぎこちない感じが消えたけれど、まだまだカクカクしている。でも、十分だ。

「いいですか?」
「いいよ、おいで」

 ヒューゴは何度か膣壁を擦ったあと、一番奥で射精した。ビクビク震えて感じている夫にキスをして、笑う。こんな朝も悪くない。
 ヒューゴは挿れたままが好きらしく、射精したあとも少し腰を動かしながらも中に留まっている。彼はすぐに回復しちゃうから、ずっとこうしているとまずいんだけどな。まぁ気持ちいいんだから仕方ない。抱き合うのも、セックスも、キスも、触れ合うことは気持ちいいんだから仕方ない。

「ヒューゴ?」

 絶倫の夫の熱は、一度くらいの射精で萎えることはない。抜かずに何回できるんだろう? 運動不足のわたしの体力はもうとっくに限界なんだけど。

「まだ、いいですか?」

 ヒューゴは聞き分けがいいから、きっと「ダメ」だと言ったらすぐに抜いてくれるだろう。オーウェンみたいに萎えさせる言葉を知っているだろうし、何ならわたしの体にぶっかけるプレイでも構わない。
 でも、ねぇ。せっかくの絶倫くんなんだもの。体位を変えながら、気を失うまでヤッてみたいよね。二つ時から四つ時まで、八時間くらいあるんだし。わたしの体力も少しは回復するでしょ。
 欲の解放、かぁ。うまい名付けだと思うよ、本当に。

「おいで、ヒューゴ。いっぱい中にちょうだい」

 夫が嬉しそうな笑みを浮かべたのを見て、選択は間違っていなかったと思う。悲しい顔されるより、ずっといい。……でも、このあと短時間で二回も奥を攻め立てられて、ちょっと後悔するんだけど。気持ちいいんだから、仕方ないよね。


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