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70.性欲か生欲か(二)
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晴れていれば夕日が沈むのが綺麗に見えるであろうオーシャンビュー。雨が降っているのが残念だ。景色は濃い灰色に塗り潰されている。
大きなソファに、大きなダブルベッド。そのベッドの上にはテディベアがちょこんと乗っている。持って帰ってもいいらしい。
部屋は――私の部屋が三つ分入るくらいの大きさだ。翔吾くんと健吾くんのマンションの部屋くらい広い。
さすが、高いだけのことはある。
洗面台が二つもある部屋なんて初めて見た。浴室はガラス張り。最近できたホテルではこういうのが流行っているのだろうか。
部屋全体を見た感じ、たぶん、スイートルームだと思う。
よく予約が取れたなぁ。三連休の中日なのに。台風が来るから、予約キャンセルがあったのだろうか。このホテルはクルージングを楽しむ人が多く利用するらしいから。
「ダブルベッド……」
「おっ、広いベッド! 望さん、三人で寝られそうだよ!」
「じゃあ、じゃんけんしなくて済むなぁ。さすがキングダブル」
ええと、新幹線の中でどんな取り決めがあったのか、大変興味があります。ベッドを誰が使うのか、以外に、どんなことを話したのか知りたいです。とても。
「夕飯までまだ時間があるなぁ」
「日本酒があるよ、望さん!」
「夕飯の前に酔い潰れるなよ、翔吾」
二人は、聞かない。なぜ私が尾道に来たのか、を。
湯川先生は私の祖母の故郷だと思っている。翔吾くんはどうだろう。湯川先生から聞いただろうか。二人はただの墓参りだと思っているだろうか。
「あの」
ソファに座り、デニムのクッションを抱きしめて、私は二人の顔を見比べる。日本酒を開けようとしていた翔吾くんは動きを止め、湯川先生はソファに座ってくれる。
あぁ、今しかない。
今しか、ない。
「大事な話があるの。聞いてくれる?」
叡心先生とのことを話すには、今しかないのだ。
◆◇◆◇◆
「私が大好きだった人が、尾道のあの海で死んだの」
彼が私のせいで死んだこと。大好きだったから、他の人を好きになるのが怖かったこと。彼以外に心を許したくなくて、セックスをするだけの関係を望んだこと。
それらを、二人に話す。翔吾くんには一度話したことがあるけれど、もう一度、きちんと私の言葉で伝えたかったから。
「でも、一日海にいて……湯川先生と翔吾くんと一緒に生きていたいって、彼にお願いしてきました」
でも、私は決めたのだ。私一人で考えて、結論を出したのだ。逃げて、逃げて、逃げ続けたことから、目を逸らさずに。
幸せになりたい、と。
「だから、私……私は、二人のことを、二人のことが……好きで仕方なくて……っ」
今日だけは、涙もろくても許して欲しい。
笑顔で言いたいのに、そんなの無理だ。涙が溢れて溢れて仕方ない。
好きだ。
好きで仕方ない。
二人のことが、好きで好きでどうしようもない。
「あかり」
左右から熱を感じて顔を上げた瞬間に、湯川先生の唇の感触。左からは「うわ、ずるい!」と翔吾くんの声。湯川先生の短いキスのあと、当然のように翔吾くんからも唇にキスをされる。
「つらかったね、あかり。でも、話してくれてありがとう」
「大丈夫。俺たちはいなくなったりしないから。だから、あかりもいきなりいなくならないで」
「……ごめんなさい」
たぶん、今日はいっぱい心配かけた。健吾くんも水森さんも巻き込んで、二人はずっと心配してくれたに違いない。
本当に、申し訳ない。
「……あと一つ、二人に言っておかないといけないことが、あっ、て……ちょっと! なに、して……んんっ」
湯川先生に唇を塞がれて、翔吾くんにカットソーをめくり上げられる。汗をかいたままの双丘に指がかかり、ブラが引き下ろされ、赤く色づいた頂きが外気に晒される。
「なに、って……今すぐあかりを抱きたいんだよね、俺たちは」
言って、翔吾くんは既に硬く尖った先端を口に含む。私の悲鳴は、湯川先生の舌に邪魔されてくぐもった音にしかならない。手で二人を押し退けようとすると、湯川先生に手首を捕らえられる。
「んんんーっ!」
溢れる唾液を飲み込んで、状況を整理する。
ええと……二人は、私を、抱きたい、と。今すぐ。ここで。
――ここで? 二人で?
嘘、でしょ?
「やっ、ふ、っ」
「抵抗しないで、あかり」
「んっ、んん」
「大丈夫、怖くないから」
怖くないのはわかっている。優しい二人が乱暴にするわけがないことは知っている。
でも、翔吾くんは三人ですることを望んでいたけれど、湯川先生は違ったはず。抵抗はないのだろうか、と湯川先生をチラリと見て、それが愚問だと理解する。
……勃って、いますねぇ。準備万端、ですねぇ。
そうか、これが「いつか」か。今が「いつか」のときなのか。
二人を受け入れるタイミング、なのか。
「あかり?」
私の体から力が抜けたことに、いち早く湯川先生が気づく。心配そうな表情で私を見下ろしながら、右手が乳首を捏ねている。
「せんせ、いいの?」
「いいよ。翔吾がいても、勃ってる」
「翔吾くん、は? つらく、ない?」
「大丈夫。挿れられないほうがつらい」
大好きな二人から求められている。
もうそれだけで、私の心が幸せで満たされ、体に熱が灯っていく。ほら、もう、受け入れようとしている。この状況を。二人を。
「あかり、いい?」とは翔吾くん。
「俺も限界」とは湯川先生。
二人と生きようと決めた。
ならば、覚悟を決めよう。
今が、そのときだ。
二人の切なそうな顔を交互に見て、頷く。
ごめんね。いっぱい、待たせたね。
「……望と翔吾、二人が好き」
愛なんていらないと思っていた。
生きる理由なんていらないと、思っていた。
苦しいだけの愛なんていらない、つらいだけの生なんていらない、と。
「二人を愛してる」
でも、たぶん、本当は、一番欲しかったんだ。
愛する人に、愛されたかった。
愛する人と、一緒に生きたかった。
「だから」
飢えを、満たして。
食欲と性欲と――生欲、を。
「――二人に、抱いて欲しい」
幸せで、満たして欲しいの。
◆◇◆◇◆
「んっ、んんっ、ふあ」
ショーツをずらして挿入された肉杭が、膣内の浅いところを刺激する。挿れては腰を引き、ジリジリと欲を煽る。
もどかしくて腰を揺すっても、決して奥までは穿たれない、そんな意地悪をするのは翔吾くん。空いている手で肉芽すら擦ってくれない。ほんと、意地悪。
「っ、あ」
腹に張り付くほどに怒張した湯川先生の肉棒が私の口内を犯す。硬くて太くて、先走りが美味しい。舌の裏で亀頭を舐めると、湯川先生が切なそうな声を零す。その声がたまらなく嬉しい。もっと気持ち良くしてあげたくなる。
でも、奥までは咥えないようにしないと。先生はすぐイッてしまうから。
「望さん、そろそろ限界なんじゃ?」
「まさか」
隣の部屋にキングサイズのダブルベッドがあるのに、ソファで、始めてしまった。三人とも、限界だったのだ。
服は着たまま、最小限脱いだ状態での情事は、裸のときよりもいやらしい気がする。
「まさか」とは言っても、湯川先生はたぶんイク直前。早漏の先生に余裕はないはずだ。初めての、三人でのセックスは、そのシチュエーションだけでかなり興奮するから。
「じゃ、動いていい?」
「いや! ちょっ、と!」
翔吾くんは、湯川先生がかなりの早漏であることを知っているらしく、背後から聞こえた声にはからかうような色が混じっている。
ホテルでの下ネタ大会のときには話していなかったから、今日湯川先生が話したのだろう。新幹線の中で他に何を話したのか、本当に気になる。
「せんせ、一回、イク?」
「――っ、ダメ、あかり。それ、エロい」
上目遣いで先生を見上げるのはまずかったみたいです。ビクンと熱杭が震える。腰を引こうとする先生だけど、その腰に抱きついて、私がそれを許さない。
限界なのに強がるのはなぜなのか。私は別に早漏でも構わないのに。口の中に出してもらっても構わないのに。
……ん、出してもらおう。
「っ!? あかり!?」
根元まで――はさすがに咥えられないくらいの大きさだけど、歯に当てないように注意して奥まで肉棒を滑らせる。
それに合わせるようにして、翔吾くんが勢い良く膣壁を擦る。子宮口まで届くように。その動きは予想外だったけど、私の膣内は難なく奥まで迎え入れたようだ。
好きな人のものを二つ、奥まで咥え込むことがどれだけ幸せなことか。どれだけ気持ちのいいことか。
「んっ、ふ……んっ」
「ちょっ、と、ダメ、こら、やめ」
「イイじゃん。望さん、限界でしょ?」
翔吾くんの言う通り、湯川先生は結構ギリギリだ。たぶん、すぐイク。数秒でイク。
我慢、しなくていいのに。して欲しくないのに。
でも、翔吾くんも、結構限界だと思う。めちゃくちゃ硬くて太い。
二人して、我慢なんかしなくていいのに。ぜんぶ、受け止めてあげるのに。
「まぁ、俺もそろそろ出るし……って、あかり!?」
「……っ、あ」
スルリと二人の根元に繋がっている柔らかな袋に手を伸ばす。ふにふにと少し汗ばんだ冷たい感触が気持ちいい。両手が使える体位で良かった。
「あかり、ダメ、っ」
湯川先生はその刺激が引鉄となったらしく、ふるりと体を震わせて、私の口内の奥のほうに精液を吐き出す。
一般的には苦いと言われる精液の味は、私にとっては甘い蜜だ。とても美味しいもの。喉を鳴らして飲み込むと、精液が私の喉を潤していく。
翔吾くんに穿たれながら、湯川先生の蜜を一滴残らず吸い上げる。見上げると、湯川先生は眉間にシワを寄せて、切なそうに震えていた。
「はっ、あ、あかり、出るっ」
背後から声が聞こえると同時に、抽挿と水音が激しくなる。ぐちゅぐちゅと音を立てて、翔吾くんが私の体を揺する。ゆらゆら揺れる袋がかわいくて、手が離せない。
「っ、あ、イっ――」
肉棒の先で熱が爆ぜる。膣奥でじわりと精液が広がっていく。その精液は、今度は私の腹を満たしていく。
ビクビクと何度も震える翔吾くんの肉杭から精液を搾り取り、萎えていく湯川先生の肉棒を舌で舐りながら、私は思わず笑ってしまう。
――ダメだ、これは、気持ちいい。
笑ってしまうくらい、幸せだ。幸せすぎる。これは病みつきになってしまう。
私にとっては普通の――いわゆる、愛のないセックスが霞んでしまうくらいの、充足感だ。
イカなくても、満たされてしまう。
心も、体も。ぜんぶ。
「あかり?」
「大丈夫?」
二人が心配してくれている。心と体を。労ってくれている。
ちゅうと湯川先生の柔らかな肉棒を吸ったあと、口から取り出す。名残惜しいけど。
膣内から翔吾くんの萎えた肉杭も抜き取られてしまう。こちらも名残惜しい。
背後から翔吾くんに抱きつかれ、湯川先生には前からぎゅっとされて、やっぱり幸せだなぁと思う。
「……ありがと、望、翔吾」
声が震える。目の前が滲む。頬を熱が伝う。
外は灰色の世界。風も強い。今夜中にこのあたりを台風が通過していくだろう。
けれど、私の心は、嵐が去ったかのように穏やかだ。晴れやかだ。
「私……幸せだよ」
本当に良かった。
二人に出会えて、本当に。
「生きてて良かった……」
二人が無言で抱きしめてくれる。幸せな幸せな、暖かいサンドイッチ。
私はそのとき初めて――叡心先生が死んでしまってから初めて、生きていて良かったと、心の底から思ったのだ。
大きなソファに、大きなダブルベッド。そのベッドの上にはテディベアがちょこんと乗っている。持って帰ってもいいらしい。
部屋は――私の部屋が三つ分入るくらいの大きさだ。翔吾くんと健吾くんのマンションの部屋くらい広い。
さすが、高いだけのことはある。
洗面台が二つもある部屋なんて初めて見た。浴室はガラス張り。最近できたホテルではこういうのが流行っているのだろうか。
部屋全体を見た感じ、たぶん、スイートルームだと思う。
よく予約が取れたなぁ。三連休の中日なのに。台風が来るから、予約キャンセルがあったのだろうか。このホテルはクルージングを楽しむ人が多く利用するらしいから。
「ダブルベッド……」
「おっ、広いベッド! 望さん、三人で寝られそうだよ!」
「じゃあ、じゃんけんしなくて済むなぁ。さすがキングダブル」
ええと、新幹線の中でどんな取り決めがあったのか、大変興味があります。ベッドを誰が使うのか、以外に、どんなことを話したのか知りたいです。とても。
「夕飯までまだ時間があるなぁ」
「日本酒があるよ、望さん!」
「夕飯の前に酔い潰れるなよ、翔吾」
二人は、聞かない。なぜ私が尾道に来たのか、を。
湯川先生は私の祖母の故郷だと思っている。翔吾くんはどうだろう。湯川先生から聞いただろうか。二人はただの墓参りだと思っているだろうか。
「あの」
ソファに座り、デニムのクッションを抱きしめて、私は二人の顔を見比べる。日本酒を開けようとしていた翔吾くんは動きを止め、湯川先生はソファに座ってくれる。
あぁ、今しかない。
今しか、ない。
「大事な話があるの。聞いてくれる?」
叡心先生とのことを話すには、今しかないのだ。
◆◇◆◇◆
「私が大好きだった人が、尾道のあの海で死んだの」
彼が私のせいで死んだこと。大好きだったから、他の人を好きになるのが怖かったこと。彼以外に心を許したくなくて、セックスをするだけの関係を望んだこと。
それらを、二人に話す。翔吾くんには一度話したことがあるけれど、もう一度、きちんと私の言葉で伝えたかったから。
「でも、一日海にいて……湯川先生と翔吾くんと一緒に生きていたいって、彼にお願いしてきました」
でも、私は決めたのだ。私一人で考えて、結論を出したのだ。逃げて、逃げて、逃げ続けたことから、目を逸らさずに。
幸せになりたい、と。
「だから、私……私は、二人のことを、二人のことが……好きで仕方なくて……っ」
今日だけは、涙もろくても許して欲しい。
笑顔で言いたいのに、そんなの無理だ。涙が溢れて溢れて仕方ない。
好きだ。
好きで仕方ない。
二人のことが、好きで好きでどうしようもない。
「あかり」
左右から熱を感じて顔を上げた瞬間に、湯川先生の唇の感触。左からは「うわ、ずるい!」と翔吾くんの声。湯川先生の短いキスのあと、当然のように翔吾くんからも唇にキスをされる。
「つらかったね、あかり。でも、話してくれてありがとう」
「大丈夫。俺たちはいなくなったりしないから。だから、あかりもいきなりいなくならないで」
「……ごめんなさい」
たぶん、今日はいっぱい心配かけた。健吾くんも水森さんも巻き込んで、二人はずっと心配してくれたに違いない。
本当に、申し訳ない。
「……あと一つ、二人に言っておかないといけないことが、あっ、て……ちょっと! なに、して……んんっ」
湯川先生に唇を塞がれて、翔吾くんにカットソーをめくり上げられる。汗をかいたままの双丘に指がかかり、ブラが引き下ろされ、赤く色づいた頂きが外気に晒される。
「なに、って……今すぐあかりを抱きたいんだよね、俺たちは」
言って、翔吾くんは既に硬く尖った先端を口に含む。私の悲鳴は、湯川先生の舌に邪魔されてくぐもった音にしかならない。手で二人を押し退けようとすると、湯川先生に手首を捕らえられる。
「んんんーっ!」
溢れる唾液を飲み込んで、状況を整理する。
ええと……二人は、私を、抱きたい、と。今すぐ。ここで。
――ここで? 二人で?
嘘、でしょ?
「やっ、ふ、っ」
「抵抗しないで、あかり」
「んっ、んん」
「大丈夫、怖くないから」
怖くないのはわかっている。優しい二人が乱暴にするわけがないことは知っている。
でも、翔吾くんは三人ですることを望んでいたけれど、湯川先生は違ったはず。抵抗はないのだろうか、と湯川先生をチラリと見て、それが愚問だと理解する。
……勃って、いますねぇ。準備万端、ですねぇ。
そうか、これが「いつか」か。今が「いつか」のときなのか。
二人を受け入れるタイミング、なのか。
「あかり?」
私の体から力が抜けたことに、いち早く湯川先生が気づく。心配そうな表情で私を見下ろしながら、右手が乳首を捏ねている。
「せんせ、いいの?」
「いいよ。翔吾がいても、勃ってる」
「翔吾くん、は? つらく、ない?」
「大丈夫。挿れられないほうがつらい」
大好きな二人から求められている。
もうそれだけで、私の心が幸せで満たされ、体に熱が灯っていく。ほら、もう、受け入れようとしている。この状況を。二人を。
「あかり、いい?」とは翔吾くん。
「俺も限界」とは湯川先生。
二人と生きようと決めた。
ならば、覚悟を決めよう。
今が、そのときだ。
二人の切なそうな顔を交互に見て、頷く。
ごめんね。いっぱい、待たせたね。
「……望と翔吾、二人が好き」
愛なんていらないと思っていた。
生きる理由なんていらないと、思っていた。
苦しいだけの愛なんていらない、つらいだけの生なんていらない、と。
「二人を愛してる」
でも、たぶん、本当は、一番欲しかったんだ。
愛する人に、愛されたかった。
愛する人と、一緒に生きたかった。
「だから」
飢えを、満たして。
食欲と性欲と――生欲、を。
「――二人に、抱いて欲しい」
幸せで、満たして欲しいの。
◆◇◆◇◆
「んっ、んんっ、ふあ」
ショーツをずらして挿入された肉杭が、膣内の浅いところを刺激する。挿れては腰を引き、ジリジリと欲を煽る。
もどかしくて腰を揺すっても、決して奥までは穿たれない、そんな意地悪をするのは翔吾くん。空いている手で肉芽すら擦ってくれない。ほんと、意地悪。
「っ、あ」
腹に張り付くほどに怒張した湯川先生の肉棒が私の口内を犯す。硬くて太くて、先走りが美味しい。舌の裏で亀頭を舐めると、湯川先生が切なそうな声を零す。その声がたまらなく嬉しい。もっと気持ち良くしてあげたくなる。
でも、奥までは咥えないようにしないと。先生はすぐイッてしまうから。
「望さん、そろそろ限界なんじゃ?」
「まさか」
隣の部屋にキングサイズのダブルベッドがあるのに、ソファで、始めてしまった。三人とも、限界だったのだ。
服は着たまま、最小限脱いだ状態での情事は、裸のときよりもいやらしい気がする。
「まさか」とは言っても、湯川先生はたぶんイク直前。早漏の先生に余裕はないはずだ。初めての、三人でのセックスは、そのシチュエーションだけでかなり興奮するから。
「じゃ、動いていい?」
「いや! ちょっ、と!」
翔吾くんは、湯川先生がかなりの早漏であることを知っているらしく、背後から聞こえた声にはからかうような色が混じっている。
ホテルでの下ネタ大会のときには話していなかったから、今日湯川先生が話したのだろう。新幹線の中で他に何を話したのか、本当に気になる。
「せんせ、一回、イク?」
「――っ、ダメ、あかり。それ、エロい」
上目遣いで先生を見上げるのはまずかったみたいです。ビクンと熱杭が震える。腰を引こうとする先生だけど、その腰に抱きついて、私がそれを許さない。
限界なのに強がるのはなぜなのか。私は別に早漏でも構わないのに。口の中に出してもらっても構わないのに。
……ん、出してもらおう。
「っ!? あかり!?」
根元まで――はさすがに咥えられないくらいの大きさだけど、歯に当てないように注意して奥まで肉棒を滑らせる。
それに合わせるようにして、翔吾くんが勢い良く膣壁を擦る。子宮口まで届くように。その動きは予想外だったけど、私の膣内は難なく奥まで迎え入れたようだ。
好きな人のものを二つ、奥まで咥え込むことがどれだけ幸せなことか。どれだけ気持ちのいいことか。
「んっ、ふ……んっ」
「ちょっ、と、ダメ、こら、やめ」
「イイじゃん。望さん、限界でしょ?」
翔吾くんの言う通り、湯川先生は結構ギリギリだ。たぶん、すぐイク。数秒でイク。
我慢、しなくていいのに。して欲しくないのに。
でも、翔吾くんも、結構限界だと思う。めちゃくちゃ硬くて太い。
二人して、我慢なんかしなくていいのに。ぜんぶ、受け止めてあげるのに。
「まぁ、俺もそろそろ出るし……って、あかり!?」
「……っ、あ」
スルリと二人の根元に繋がっている柔らかな袋に手を伸ばす。ふにふにと少し汗ばんだ冷たい感触が気持ちいい。両手が使える体位で良かった。
「あかり、ダメ、っ」
湯川先生はその刺激が引鉄となったらしく、ふるりと体を震わせて、私の口内の奥のほうに精液を吐き出す。
一般的には苦いと言われる精液の味は、私にとっては甘い蜜だ。とても美味しいもの。喉を鳴らして飲み込むと、精液が私の喉を潤していく。
翔吾くんに穿たれながら、湯川先生の蜜を一滴残らず吸い上げる。見上げると、湯川先生は眉間にシワを寄せて、切なそうに震えていた。
「はっ、あ、あかり、出るっ」
背後から声が聞こえると同時に、抽挿と水音が激しくなる。ぐちゅぐちゅと音を立てて、翔吾くんが私の体を揺する。ゆらゆら揺れる袋がかわいくて、手が離せない。
「っ、あ、イっ――」
肉棒の先で熱が爆ぜる。膣奥でじわりと精液が広がっていく。その精液は、今度は私の腹を満たしていく。
ビクビクと何度も震える翔吾くんの肉杭から精液を搾り取り、萎えていく湯川先生の肉棒を舌で舐りながら、私は思わず笑ってしまう。
――ダメだ、これは、気持ちいい。
笑ってしまうくらい、幸せだ。幸せすぎる。これは病みつきになってしまう。
私にとっては普通の――いわゆる、愛のないセックスが霞んでしまうくらいの、充足感だ。
イカなくても、満たされてしまう。
心も、体も。ぜんぶ。
「あかり?」
「大丈夫?」
二人が心配してくれている。心と体を。労ってくれている。
ちゅうと湯川先生の柔らかな肉棒を吸ったあと、口から取り出す。名残惜しいけど。
膣内から翔吾くんの萎えた肉杭も抜き取られてしまう。こちらも名残惜しい。
背後から翔吾くんに抱きつかれ、湯川先生には前からぎゅっとされて、やっぱり幸せだなぁと思う。
「……ありがと、望、翔吾」
声が震える。目の前が滲む。頬を熱が伝う。
外は灰色の世界。風も強い。今夜中にこのあたりを台風が通過していくだろう。
けれど、私の心は、嵐が去ったかのように穏やかだ。晴れやかだ。
「私……幸せだよ」
本当に良かった。
二人に出会えて、本当に。
「生きてて良かった……」
二人が無言で抱きしめてくれる。幸せな幸せな、暖かいサンドイッチ。
私はそのとき初めて――叡心先生が死んでしまってから初めて、生きていて良かったと、心の底から思ったのだ。
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