【R18】サキュバスちゃんの純情

千咲

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60.黒白の告白(九)

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「っ、やんっ!」
「や、じゃないよね、これ」
「だっ、て、あぁっ」

 ホックを外されていないブラから乳房を押し上げて、その赤く色づいた頂きを口に含みながら、湯川先生の指が割れ目を這う。ショーツは取り払われ、ワンピースは中途半端に脱がされたまま、台所のマットの上で私は痴態を晒している。

「あかり、好きだよ。愛してる」

 幾度となく降らされる愛の言葉が、私の体にさらに火を灯す。愛してもいい、愛されてもいい、我慢しなくてもいい――こんな私でも、許されている。

「こんなにぐちょぐちょにして、どうしたの。濡れすぎ」
「や、言わな、っふ」
「……かわいい。久しぶりすぎてちょっと自制利かないかも」

 ヌルと侵入してきた中指は、濡れそぼった膣内を往復し、その緩慢な動きがもっと太くて硬いものを想像させる。

「んっ、あっ、ん」
「あかり、このキスマークは誰につけられたの? もう一人のやつ?」
「ち、が……っ」
「あぁ、違うやつ? セフレ、今、何人いるの?」

 舌先で突起をコロコロと転がされ、さらに蜜が溢れ出る。ワンピースが汚れたのは、もう仕方がないと諦めた。だって、気持ちいいんだもの。仕方がない。
 でも、できることなら、その太くて熱いもので蜜口に蓋をしてほしい。さらに溢れてしまってもいいから、早く。

「彼、が、一人、セフレ、は、二人、っ」
「それ以上は増やさないように。約束、守れる?」

 頷きながら、太腿を擦り合わせる。
 欲しくて欲しくてたまらないのに、焦らされている。行き場のない欲望が、苦しい。つらい。もっと、もっと、欲しい。
 先生は私の姿を見下ろしながら、ふっと目を細める。

「かわいい、あかり。結婚しよう?」
「籍、入れな……っ、あぁんっ」
「籍は入れない? 事実婚? いいよ。あかりがそばにいてくれるなら」

 ヌルヌルになった親指で腫れた肉芽に触れられ、一気に快楽が高まる。

「ここに引っ越しておいで、あかり。狭いなら、別の場所に引っ越してもいいから」
「で、でも、っん」
「もう一人はまだ『彼氏』なんでしょ? じゃあ、夫と住むのは当然だよね」

 夫、という響き。
 懐かしくて涙が出そうになる。
 また誰かをそういうふうに呼んでもいいのなら、なんて幸せなことか。

「一緒に暮らそう、あかり」
「せん、せ……ぇっ」
「ん、おいで」

 目を閉じて、唇を噛み締めて、先生に抱きついて、甘い快楽を享受する。先生の指を強く締め上げて、果てる。
 こんなに気持ち良くて幸せに満ちた絶頂は久しぶり。涙が溢れる。
 びくびくと体を揺らす私を組み敷いて、先生は微笑みながらキスをしてくれる。

「愛してるよ、あかり」

 抜かれた指の代わり、膝の後ろを持ち上げられて宛てがわれた肉杭は熱く、花弁をたどるだけで中がひくついているのがわかる。
 挿れて、先生。それを早く挿れて。

「あぁ、望……っ、早く」
「答え、聞いていないからね、まだ」
「っ、いじわるっ」

 少し体を動かして亀頭を飲み込もうとすると、腰を引いて逃げられる。先生は意地悪だ。奥まで欲しくてたまらないのに、酷い。

「結婚しよう、あかり」

 優しく唇を塞がれると、イエスもノーも言えないのに。これじゃあ、先生のが欲しくて「イエス」と言うようなものなのに。

「そばにいて」

 焦らされて急かされる答えに、先生は意味を見出している。それでいい、と。
 快楽の中に答えがあるのが、私たちらしいのかもしれない。

「望」

 先生がそれを望むなら、私は――。

「愛してる。これからも、よろしくお願いします」

 笑えたかな? 精一杯の笑顔だったんだけど、ちゃんと笑えていた?
 先生が笑っているから、いいか。

「あかり、ありがと」

 濡れそぼった蜜口から、湯川先生の屹立した肉棒がヌルリと挿入ってくる。待ちわびた刺激と食事に、体が歓喜する。その瞬間に、軽く達してしまう。

「っ、あ」
「あかり、締めないで」
「無理、イッちゃ……っ」

 ぴんと伸ばされた腕にしがみついて、湯川先生を受け入れる。膣襞が肉棒を包み込んで、奥へ奥へと誘導していく。

「……あ、奥に」

 根元まで咥え込んだら、先生の先端が子宮口にキスをする。ぐりぐりと刺激的なキスをしてくれる。
 あぁ、ダメ、気持ちいい。奥まで繋がるのは、気持ちいい。

「……抜いたでしょ?」

 唇を重ね、舌を絡め、その合間に尋ねると、湯川先生はふいっと視線をずらした。

「望、シャワーしながら、抜いたでしょ」
「……ま、溜まっていて暴発しそうだったし。好きな人が隣で寝ていたら、そうなるよね。仕方ない」

 そのあたりは、自分が早漏だと理解している先生らしい判断だと思う。私を一回イカせている間に暴発することは、今までにも何度かあった。
 ……でも、別にいいのに。我慢ができなくて粗相をしてしまう先生の悔しそうな顔、好きなのに。挿入してすぐイッてしまっても、構わないのに。

「でも、無理。動いたらすぐ出そう」
「いいよ、奥に出して」
「……何回か、出してもいい?」
「うん。お願い。いっぱいちょうだい」

 どれだけ出しても、受け止めてあげる。先生を奥で感じていたいの。長く感じていたいの。

「あかり」
「望」

 ゆっくり穏やかな抽挿でさえ、湯川先生にとっては瀬戸際の行為だ。苦しげに顔を歪めて我慢しなくてもいいのに。

「望、来て」
「あ、ダメ、あかり、それ」

 足を先生の腰に巻きつけて、絶頂を誘う。体を揺らされ、乳房が揺れる。擦れる肌の感触さえ気持ちいい。舌を吸い、深いところへ誘導しながら、その瞬間を待つ。

「っあ、あかり、イク……っ!」

 唇の間から零れた言葉通り、奥で精液が広がっていく。湯川先生は体を震わせながら、何度も何度も奥に出してくれる。
 ……一度出しているはずなのに、この量。どれだけ溜めていたの。

「気持ち、い……」
「望、ありがと。いっぱい出たね」
「……まだ出るよ?」

 抱き合い、キスをしながら、笑う。
 ザアザアと雨の音。お互いの音しか聞こえなかった二人の間に、一気に生活の音が戻ってくる。不思議な静寂だ。

「病み上がりなんだから、無理しないで」
「あかりが奥さんになってくれるって言った記念すべき日なんだから、無理くらいさせてよ」
「ダーメ。そんなにがっつかなくても、私はそばにいるから」
「本当に?」
「とりあえず、今夜はそばにいるよ。帰らないから、安心し――んんっ」

 セックスが終わるたびに「さようなら、また連絡する」とホテルから帰っていた関係性が変わる。セックスだけの関係ではなくなる。そういうことだ。
 お互いに心地の良い距離感を保てるのであれば、「そばにいてほしい」という願いを叶えたい。叶えてあげたい。

「あかり、愛してる」
「うん、わかってる。私も」
「明日の朝イチで帰ったりしない?」
「夜までいてあげようか?」
「……どうしよう、幸せすぎて……また出そう」
「え、いや、確かに硬いけど」

 幸せすぎて射精しそう、だなんて聞いたことがない。さすが早漏湯川先生。よくわからない境地だ。たぶん、誰にも真似できないと思う。

「あかり、ごめん。このまま後ろから犯させて」
「二回戦?」
「三回くらいイケそう」

 挿入したまま三回戦まで、かぁ。何とかなるかな。

「いいよ、来て。でも、明日もあるんだから、ね?」
「……幸せすぎる」

 顔が綻ぶ湯川先生を見上げて、私も笑う。
 先生の、その顔を見たかった。ずっと。別れ際に寂しげな表情を強いてきた私が、今さら、だと思うけど。
 硬いままの陰茎を抜いて、四つん這いになって軽くお尻を上げる。そして、先生の肉棒に花弁を押し付けて、誘う。

「望、奥まで来て」

 好きな人の肉杭で奥まで穿たれる悦び。精液を出してもらえる悦び。
 抱き合って、キスをして、セックスをして、それで終わりの関係じゃなくて。もっと求めてもいいんだと思える関係。

「あかり……っ!」

 快楽を享受し、分け合える関係。なんて、素敵な、幸せな、関係なんだろう。

「望、奥、当たって、っあ、ぁ」

 ……叡心先生、私、先生以外の人と幸せになってもいいですか?

「あかり、好きだよ。愛してる」

 こんなに愛の言葉を降らせてもらって、私は、なんて幸せなんだと、今になってようやくわかりました。

「のぞ、っ、あぁん、っや、ふかっ」
「痛い? 大丈夫? ごめん、気持ち良すぎて止まらない」

 先生、叡心先生……お願い、許して。

「あかり、ダメ、まだ締めないで」
「ちがっ、あ、ダメ」

 先生以外の人を求めてしまう私を、許して。

「あかりもイキそう、だね?」
「んっ、イク、ダメっ」

 先生のことは深く愛しているけれど。愛していたけれど。愛されていたのもわかっているけれど。

「俺も。一緒に」
「あっ、あ、ん、のぞ、むっ」

 二番目の人も、愛してあげたい。愛されたい。

「あかり、イク……っ、あ!」
「わた、し、も、っあぁぁ」

 気持ち良く、なりたいの。
 体も、心も。

「……好きだよ、あかり」
「望、好き」

 だから、ごめんなさい。
 浅はかなことを願って、ごめんなさい。

 私は、生きて、幸せになりたい、です。


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