【R18】サキュバスちゃんの純情

千咲

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41.兄弟の提携(五)

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 暖かいのは、好き。
 冬は苦手だから、体温の高い男の人と一緒に布団で眠るのが好き。
 抱き合って、裸で眠るのが好き。
 腕枕でもいい。触れられるなら、それでいい。
 温もりを求めてしまう私は、案外寂しがり屋なのかもしれない。

 叡心先生は、体温が高かった。先生と眠るのは好きだった。古い家で、隙間風が吹き込んできても、先生に抱かれていれば寒くなかった。
 ……幸せ、だった。

 暖かいのは、幸せだ。
 男の人の、手のひらが、唇が、胸が、一番熱くて硬い箇所が、全身が、私を求めてくれるのは、幸せなこと。
 寂しさを埋めてくれるのは、幸せなこと。

 私は、自分勝手だ。

 男の人が私に幸せを与えてくれるのに、私は、彼らに幸せを与えていただろうか。
 セックスをすること自体が男の人にとっては幸せなことだと、思い込もうとしていた。
 幸せの形なんて、みんなバラバラなのに。

 結婚してほしい、湯川先生。
 彼女になってほしい、翔吾くん。
 開発に協力してほしい、相馬さん。
 愛液がほしい、ケントくん。
 健吾くんはまだわからないけど、みんなバラバラ。みんな違う。

 セフレじゃ、ダメなの?
 セフレじゃダメなのかな?

 私は、どうすればいいんだろう。
 叡心先生みたいに、添い遂げてくれる覚悟がある人になら、応じるべきだろうか。
 本気で私を求めてくれる人になら、私も幸せのお返しをするべきなんだろうか。
 私の正体を知ってもなお、求めてくれる人がいるなら――。

 叡心先生。
 私、何とか今まで生きてきましたけど、この先、どうすればいいですか?

 先生、お会いしたいです。
 先生に抱かれて、眠りたいです。

 先生……今、どこですか?


◆◇◆◇◆


 目を開けると、肌の色がまず全面に広がっていた。浅黒い肌。日に焼けた肌。
 翔吾くんだ、と理解するのに少し時間がかかった。何しろ、体に触れている肌の感触が、一人分ではなかったからだ。

 少し頭を動かすと、翔吾くんが目を閉じて眠っているのが見えた。でも、背後からも寝息の音が聞こえてくる。熱い腕が背後からしっかりと私の腰を抱いている。翔吾くんの腕ではない。
 これは……前に翔吾くん、後ろに健吾くん? 私、サンドイッチにされて、いる? 裸の二人に?
 するりと翔吾くんの腰を撫でると、布の感触がある。良かった、ボクサーパンツははいている。全裸ではないようだ。私は全裸のようだけど。

「……起きた?」

 静かな声音で尋ねられ、見上げると、翔吾くんが微笑んでいた。少し眠そうだけど。

「起こしちゃった?」
「ん、大丈夫。十分寝たよ」

 後ろの健吾くんを起こさないようにひっそりと会話をする。
 見つめ合って、どちらからともなくキスをする。優しい、柔らかい、お互いを慈しむキス。こういう、寝起きのキスも好き。幸せだ。

「あかり、しんどい?」
「……わかんない、けど、少しは楽になった、かな」
「ごめんね、健吾が無理させたみたいで」
「翔吾くんもね」

 苦笑し合って、唇を食む。唇だけでは物足りなくなって、徐々に舌を求め合う。お互いの熱を、唾液を奪い合って、少しずつ息と体温が上がってくる。

「……っあ!!」

 びくん、と体が震えたのは、唇以外の刺激があったからだ。腰にあった腕がいつの間にか移動し、私の胸を揉み、突起を弾いたからだ。

「抜け駆けは禁止」

 背後から聞こえた不機嫌そうな声に、翔吾くんが応じる。

「背中がいいって言ったのは、健吾だろ。ほくろが見えるからって」
「俺もあかりとキスしたい」

 サンドイッチは、幸せではありません。嫉妬しない、喧嘩しない、って約束はどうなりました?
 仕方がないなぁとぐるりと体の向きを変えて、パァと顔を明るくした健吾くんのキスを受け入れる。お兄ちゃんのものを欲しがる弟だ、本当に。

「っひゃ!」

 背中を這う温い感触に、思わず仰け反る。翔吾くんが、背中を舐めている。

「あ、気にしないで、あかり」
「気になるっ!」
「あかり、こっち。キス」
「んんっ!」

 無理やり顎を固定され、健吾くんに舌を挿れられる。暴れようとした私の腕を、健吾くんが片手でまとめ上げる。

「んっ、ふ、あぁ」
「ん、いい子」

 腰から背筋を舐め上げられると、ゾクリと体が粟立つ。健吾くんは口内を犯しながら、私の両手を彼の体の下敷きにして捕らえ、空いた両手で胸を揉み始める。
 ちょっと。
 ちょっと、待って――!

「やっ、あ!」

 お尻にキスをしながら、翔吾くんの指が太腿を這う。その先の茂みに目標が設定されているのは明らかだ。そして、その中にある蜜の溢れる場所が、到達点であることも。
 健吾くんは乳房を下から持ち上げるようにしてやわやわと揉む。硬く勃ち上がった先端には触れず、その輪郭の部分に指を添わせるだけ。
 彼の唾液を嚥下しながら、爪先を舐っている翔吾くんの舌の柔らかく温い感触に体が震える。

「仰向けに」

 一言で、私の体は回転させられる。息の合った連携プレイ。さすが双子。
 翔吾くんは爪先からまた太腿へと向かうように舌を滑らせ、健吾くんはキスをしたままやわやわと胸を揉む。私は、二人から与えられる快楽に震えながら、その先、を想像する。
 恐怖か、期待か、わからない。
 決定的な快楽が与えられていない今なら、何とか止めることができるのではないか。二人を止めて、「やっぱり一人ずつに」と提案することだって、可能なはずだ。
 足を折り曲げ、太腿に吸い付いて痕を残していた翔吾くんがふと口を開く。

「あかり」

 健吾くんの唇が離れ、唾液が糸を引いてふつりと切れる。名残惜しそうに私を見下ろす健吾くんを見つめたあと、私の秘部の向こうで困ったような表情を浮かべている翔吾くんを見つめる。

「イヤなら、しないよ」

 それは、翔吾くんらしい、優しい言葉だった。

「でも、俺たちは――したい」

 最後まで、三人で、セックスを。そういうことだ。

「健吾くん、も?」

 見上げると、健吾くんは微笑んでいた。それは、とても、優しい顔で。

「したい。あかりを気持ち良くさせてあげたい。俺たちも、気持ち良くなりたい」
「さ、三人、で? 一人ずつでもできるよ、私」

 どちらかを待たせることになるけれど、何とか頑張れないこともない、はず。

「……健吾とあかりをシェアすると決めたときから、こうなることは決定事項だったんだよ、あかり」
「え」
「あかりはどちらも選ばない。選べない。だったら、同時に俺たちがあかりを愛してもいいはずだよね」

『健吾ならいい』と言ったのは、このことも含まれていたということ?

「俺も異論はない。翔吾となら、一緒にあかりを抱きたい」
「さ、あかりは受け入れるだけだけど、どうする?」

 どうも、こうも……求められるなら、受け入れてあげたいとは常に思っていることだ。
 ならば、私にも異論は、ない。

「喧嘩、しないなら……いいよ」

 二人が同時にほぅと溜め息をついて、「良かった」と零す。双子だなぁ、本当に。

「喧嘩は絶対にしないから、あかりを二人で味わわせてね」

 それが、合図。
 翔吾くんが蜜口から指を挿れ、既に溢れていた蜜を舐め取り、肉芽に舌を這わせる。
 健吾くんは硬く尖った柔丘の先端をようやく口に含み、舌でコロコロと転がし始める。

「やっ、んっあ、あ、っあ」

 一人では到底できない快楽の与え方だ。
 私は二人からもたらされる快感に、ただ目を閉じて、震えながらそれを享受する。両手は力なくベッドに投げ出され、開いた口からは、恥ずかしいくらいに淫らな声が漏れる。

「濡れすぎ」と笑いながら翔吾くんは指を増やし、腫れた蕾を甘く食む。健吾くんは乳首を吸い上げながら「美味しい」と笑う。背中を仰け反らせれば健吾くんに抱き戻され、腰が跳ねれば翔吾くんに押さえつけられる。
 どうしよう、気持ち良すぎる――。

「あかり、かわいい。その顔たまんない」

 とろけきった顔で健吾くんを見上げると、そのまま唇で口を塞がれる。彼の両手がただひたすらに胸を愛撫する。少し強めに摘まれると、膣内がきゅうと締まる。

「あかり、イキたい?」

 翔吾くんの声にうんうんと頷く。この甘い責め苦から開放されるなら、早くイキたい。イッてまた気を失ってしまいたい。

「ダメだよ、イカないで。我慢して」
「むり、っ!」
「じゃあ、一回イッておく?」

 健吾くんの笑みに、私は何回イカされてしまうのか、想像してゾッとする。白濁液を何度も吐き出して、代わる代わる二人は私の中に挿入るわけでしょう? 今日一日、この肉食系の双子に貪られてしまう。
 本当に、気を失ってしまいたい。

「んっふ、ぅ、ああっん」

 翔吾くんの顔が近づく。健吾くんは私の右側、翔吾くんは左側。それぞれ、胸を揉み、突起を口に含んで捏ね回す。

「やっ、あ、あ、んんっ」

 どちらかの指が肉芽を、どちらかの指が膣内を往復する。どちらもピンポイントでいいところを狙って攻めてくる。
 ダメ、これ。変になっちゃいそう……!
 膣が切なくひくひくと収縮する。蓄積された快楽を開放したい。弾けさせたい。
 お願い、早く、イカせて――。

「あっ、ダメ、いく、イッちゃう」
「……おいで」

 その声がどちらのものだったのか、わからなかった。放り投げてあった両手を、二人がしっかりと握ってくれる。暖かくて安心できる、大きな手のひらをぎゅうと握る。
 そして、大きく体が震え、一気に達してしまう。

「や、ん、んんん――っ!」

 強く指を締め付け、びくびくと震える。何度も収縮を繰り返して、強すぎる絶頂を逃がす。
 なだめるように頭を撫でてくれたのは、どっち? キスをしてくれたのは? わからない。ごめんね。

「イクときってこんなに締められるんだ?」
「イカせたことなかったの、お前」
「いや、さっき、同時にイッたと思うけど、気持ち良すぎて堪能している暇が」

 私がまだ荒い息で喘いでいるというのに、二人で話を始めないでよ、もう。
 どうやら、気は失わなかったみたいだ。残念だ。それはそれでつらい。この先がつらい。

「あかり、大丈夫?」
「しんどくはないか?」

 大丈夫じゃないし、しんどいです。少しは休ませて欲しいです。
 けれど、二人の中央には、その布の上からでもわかるほどに硬く滾った肉棒の形。それが発散されない限りは、私はまだ彼らに嬲られ続けるのだろう。

「あかりがエロかった……」
「あかりは常にエロくてかわいいよ」
「『イッちゃう』だって。かわいい」
「確かに、動画に残したいくらいかわいかったなぁ」
「スマホでも録る?」

 だから、私を放ったらかして話を――。

「次は、どっちが先? 俺挿れたい」
「俺も挿れたい。けど、さっき挿れたから、あとでいいや」
「じゃ、俺が先」

 私の足の間に移動したのは、翔吾くんだ。ボクサーパンツを脱ぎ捨てて、私の太腿に手をかけている。

「繋がろうね、あかり」

 太腿をぐいと持ち上げ、花弁に滾った熱を宛てがって、翔吾くんは優しく微笑んだ。

「――奥まで」

 その笑顔は、どう見ても、ケントくんのように――悪魔のようにしか見えなかったけれど。

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