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第一章
09.オルガに罵倒される王子
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セドリックが瓶からグラスに液体を注ぐ。カンテラの明かりに照らされた金色の液体が揺れている。セドリックから手渡されたグラスを取り、匂いを嗅ぐ。ふわり漂う甘く芳醇な匂いは、よく知っている。懐かしくて泣きそうになる。
「……林檎酒」
「お前の故郷のものだろう? たまたま手に入ったんだ」
確かに、私と弟の故郷の林檎を使った酒だ。セドリックが私たちの故郷を覚えていたことも、林檎酒を持ってきたことも、大変意外なことだ。
私を傷つけて喜ぶような男が、なぜ、こんなことを。私は未だに混乱している。
「飲まないのか? 毒も薬も入っていないぞ」
そう笑って、ベッドに座ったセドリックはグラスの林檎酒を口に含む。少し彼の様子を見たけれど、毒は入っていないようだ。
一口飲むと、甘酸っぱい林檎が口いっぱいに広がる。あっさりとした酒。喉越しもすっきりとしていて飲みやすい。
林檎畑が延々と続く故郷の風景を思い出す。隣家の林檎畑の手伝いをして生計を立てていた。毎日もらっていた林檎。毎日作っていた林檎のお菓子。隣家の老夫婦はまだ元気にしているだろうか。林檎はまだ赤い実をつけているのだろうか。
もう二度と、あそこには戻れないのだ。もう二度と。
懐かしくて苦しい。帰りたくて仕方がない。シュワシュワと弾ける気泡のように、私の願いは簡単に消えてしまう。
「……泣くな」
左斜め上からひどく優しい声色が降ってくる。暖かい指先が私の頬に触れる。乱暴されるかと思って肩をこわばらせて右に逃げると、小さく「すまない」と声がした。
泣くなと言われたって勝手に涙は流れるし、今優しくされたって昨日までの憎しみが消えることはない。今のセドリックの意外性に困惑していても、今までの横暴さを心も体も忘れていない。
「私が憎いか?」
「憎いわ。殺したいほどに」
「今グラスを割ってその破片で私の首をかき切るか? それもいいだろう。お前には、その権利がある」
その言葉に驚いて顔を上げると、目の前に深い緑色の瞳があった。私をまっすぐに見つめるセドリックは、薄っすら笑みを浮かべている。
「お前になら殺されてもいい。殺した相手のことなら、忘れないだろう?」
「何を」
「女は皆、愛してもいない男のことなどすぐに忘れるものだろう。忘れられるくらいなら、一生強い憎しみを向けられたままのほうが幸せじゃないか」
セドリックの言っていることが理解できない。私が馬鹿だから? 意味がわかんない。何を言っているの? 普通じゃないとは思っていたけど、彼がここまで歪んでいるとは想像していなかった。ろくでなしの変態じゃないの。
「今まで忘れられるような付き合いしかできなかったなんて、憐れなものね。一国の王子様だというのに、情けない」
嫌味を言ってなじった程度で彼への憎しみがなくなるわけじゃない。私と同じようにふくらはぎに剣を突き立て怪我を負わせ、塔の中に監禁したところで、気が晴れるわけじゃない。
けれど、「忘れる」ことが彼への復讐となるなんて、いいことを聞いた。……まぁ、今はまだ難しいけれど。
私の嫌味に、セドリックは力なく笑う。咎められたり殴られたりしないなんて、本当に不思議。
「私はいずれ爵位を賜って臣下になるだろう。兄の補佐をする弟と言えば聞こえはいいが、王になれなかった王子の末路とも呼べる。王とは違い、私の名は忘れられるものなのだ。愛した女一人にすら、覚えてもらえぬ男に、何の価値がある」
えーっと……セドリックは悪酔いをしているの? 林檎酒ごときで? 私の前で泣き言を言うなんて、めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど。いや、前から気持ち悪かったけど。今夜はさらに気持ちが悪い。鳥肌立っちゃう。
「勇者はいいな。《瘴気の霧》を晴らした土地では、末代まで語り継がれることだろう。勇者の名前は忘れられることがない。心底、羨ましいことだ」
この男、自分の名前を残したいの? それにしては、女がどうとか、規模の小さいことをぶつぶつ呟いているけれど。
結局、何が言いたいの? 独り言? 私になんて言ってもらいたいの?
「勇者の姉よ」
「はあ」
「私はそんなに狭量な男か?」
「え?」
「そんなに狭量な男に見えるか? 甲斐性のない男に?」
セドリックの目は据わっている。完全なる酔っ払いだ。この人、明後日には自分の息子の成人の儀が控えているのに、なんでこんなに酔ってんの? 王子という自覚があるの?
「なぜ、相談すら、してくれなかっ」
「やだ、ちょっと、泣かないで、泣かないでよ」
「なぜ、私に内緒で、子を」
ハンカチか何かを探そうとした手が止まる。肩を震わせながら泣いている男を見下ろして、その情けない姿に驚く。
これが、あの、セドリック?
私をここに捕らえ、閉じ込めた男?
私に娼婦の真似事を強要していた、王子?
信じられない。あの獰猛な男とこの憐れな男が同一の人間だと、誰が信じる?
「愛した女から忘れられたって? その女が妊娠していたって? 別れでも告げられた? 愛人の子すら守ることができないだろうって、縁を切られたの? 情けない。馬鹿な男ね」
弱っているセドリックに暴言を吐く。言葉の剣を突き立てる。これが、何とも言えない気分だ。気持ちいい。一国の王子を罵倒する機会なんて、もう二度と巡ってこないだろう。だから遠慮はしない。殴られてもいい、罵ってやる。
「性格は悪くても一国の王子だし、妻も子どももいる。立場上、自分の子だと認めてもくれないし、追っても来てくれない。いくら愛していても自分と子どもの幸せが一切期待できない男なんだから、別れを選んで当然でしょ」
林檎酒を飲む。喉が渇く。まだ言い足りない。
「身を引くなんて結局、あなたのことを諦めたってことなんだもの。余程愛していないとできない、苦渋の決断だわ。逃げ切ってもらいたいものね、その人には」
「……愛?」
「だって、お金ももらわず、子どもだと認めさせることもなかったのよね? あなたとの醜聞を大っぴらにすることだって、できたんじゃない? それを隠してただ逃げるなんて、余程あなたを愛していないと」
……あれ、私、セドリックを励ましてる? 彼の愛人をかばっているうちに? やだ、何で。
セドリックは「愛……」と何度も呟いている。気持ち悪い。
「彼女は……私を愛していた?」
それはわからない。私、その愛人じゃないもの。可能性の問題よ。
「愛していたから、子どもができた?」
いやいや、避妊しなければ妊娠するんじゃない? 愛なんて関係ないよね、それこそ。子どもが愛の結晶だと認めないわけじゃないけど、愛があれば子どもができるわけじゃないのだし。
「私は彼女を愛していた……?」
「それこそ私にわかるわけないじゃない。自分の胸に手を当てて考えてみれば?」
面倒くさい酔っ払いだ。
セドリックが右手につけた大きな赤い宝石の指輪。この部屋の鍵。これを今奪うことができないかと思ってしばらく様子を見たけれど、もっと飲ませないと難しそうだ。私はセドリックのグラスに林檎酒をたっぷり注いでやる。
「愛……していたのか? ならば、これも、愛、か?」
知らないわ。興味もないわよ。そう、セドリックのすべてに興味がない。……鍵は、欲しいけど。
「愛……お前はあの少年を愛しているのか? 既に抱かれたのか?」
なぜ、そうなる?
私はむせながら、グラスをテーブルに置く。床に落ちた林檎酒がもったいない。岩に染み込んでしまった。
あーあ、と肩と視線を落としながら、ふと気づく。セドリックの赤い衣服の裾にあしらわれた小さな花の刺繍。私がリュカの服に刺繍してあげている花と同じ、のように見える。
「まだ抱かれてはいないようだな。やめておけ。あれの真意がわからぬ」
「私が誰を好きになろうが、あなたには関係ないでしょ」
「関係ない、か。確かにお前がどこの誰を愛そうとも関係ない。だが、あれだけは駄目だ」
「リュカをあれ呼ばわりしないでよ」
リュカ、と呟いて、セドリックは笑った。寂しいような嬉しいような、形容する言葉が見当たらない笑みだ。そんな笑みを浮かべたまま、セドリックは林檎酒を飲み切った。
「あれが――リュカがお前に近づいたのは、私への復讐心からだろう。私の所有物を壊すような意図があったのだろうが」
「復讐……? 何を、言って」
「オルガ」
どん、と背中に軽い衝撃があった。両手が痛い、動かない。目を開けると、カンテラに照らされて揺れるセドリックの顔がある。私の唇を塞いでいるのが彼のものだと気づいた瞬間に、血の気が引く音がした。
「やだ、やめて、やめっ、んん」
「オルガ」
私をいつものようにベッドに押し倒したまま、セドリックは笑う。大嫌いな彼の顔も、行為も、薬があるから受け入れることができたのに。
恐ろしくて、おぞましい。肌の上を這う唇を、舌を、拒もうと逃げるのに、逃れられない。
「あれが私より先にお前に種を植えつけるのだけは、許せない。ならば、先に種を授けるだけだ」
「いやだ、やめて! セドリック、やめっ」
何か布のようなものを口の中に押し込まれ、言葉が封じられる。セドリックは器用に何か硬いもので私の両手を縛り上げ、太腿の上に乗って、笑った。
「オルガ、私の子を孕むがいい。お前の中にたっぷり注いでやる」
グラスが割れる音が、始まりの合図となった。最悪の夜の、始まりだった。
「……林檎酒」
「お前の故郷のものだろう? たまたま手に入ったんだ」
確かに、私と弟の故郷の林檎を使った酒だ。セドリックが私たちの故郷を覚えていたことも、林檎酒を持ってきたことも、大変意外なことだ。
私を傷つけて喜ぶような男が、なぜ、こんなことを。私は未だに混乱している。
「飲まないのか? 毒も薬も入っていないぞ」
そう笑って、ベッドに座ったセドリックはグラスの林檎酒を口に含む。少し彼の様子を見たけれど、毒は入っていないようだ。
一口飲むと、甘酸っぱい林檎が口いっぱいに広がる。あっさりとした酒。喉越しもすっきりとしていて飲みやすい。
林檎畑が延々と続く故郷の風景を思い出す。隣家の林檎畑の手伝いをして生計を立てていた。毎日もらっていた林檎。毎日作っていた林檎のお菓子。隣家の老夫婦はまだ元気にしているだろうか。林檎はまだ赤い実をつけているのだろうか。
もう二度と、あそこには戻れないのだ。もう二度と。
懐かしくて苦しい。帰りたくて仕方がない。シュワシュワと弾ける気泡のように、私の願いは簡単に消えてしまう。
「……泣くな」
左斜め上からひどく優しい声色が降ってくる。暖かい指先が私の頬に触れる。乱暴されるかと思って肩をこわばらせて右に逃げると、小さく「すまない」と声がした。
泣くなと言われたって勝手に涙は流れるし、今優しくされたって昨日までの憎しみが消えることはない。今のセドリックの意外性に困惑していても、今までの横暴さを心も体も忘れていない。
「私が憎いか?」
「憎いわ。殺したいほどに」
「今グラスを割ってその破片で私の首をかき切るか? それもいいだろう。お前には、その権利がある」
その言葉に驚いて顔を上げると、目の前に深い緑色の瞳があった。私をまっすぐに見つめるセドリックは、薄っすら笑みを浮かべている。
「お前になら殺されてもいい。殺した相手のことなら、忘れないだろう?」
「何を」
「女は皆、愛してもいない男のことなどすぐに忘れるものだろう。忘れられるくらいなら、一生強い憎しみを向けられたままのほうが幸せじゃないか」
セドリックの言っていることが理解できない。私が馬鹿だから? 意味がわかんない。何を言っているの? 普通じゃないとは思っていたけど、彼がここまで歪んでいるとは想像していなかった。ろくでなしの変態じゃないの。
「今まで忘れられるような付き合いしかできなかったなんて、憐れなものね。一国の王子様だというのに、情けない」
嫌味を言ってなじった程度で彼への憎しみがなくなるわけじゃない。私と同じようにふくらはぎに剣を突き立て怪我を負わせ、塔の中に監禁したところで、気が晴れるわけじゃない。
けれど、「忘れる」ことが彼への復讐となるなんて、いいことを聞いた。……まぁ、今はまだ難しいけれど。
私の嫌味に、セドリックは力なく笑う。咎められたり殴られたりしないなんて、本当に不思議。
「私はいずれ爵位を賜って臣下になるだろう。兄の補佐をする弟と言えば聞こえはいいが、王になれなかった王子の末路とも呼べる。王とは違い、私の名は忘れられるものなのだ。愛した女一人にすら、覚えてもらえぬ男に、何の価値がある」
えーっと……セドリックは悪酔いをしているの? 林檎酒ごときで? 私の前で泣き言を言うなんて、めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど。いや、前から気持ち悪かったけど。今夜はさらに気持ちが悪い。鳥肌立っちゃう。
「勇者はいいな。《瘴気の霧》を晴らした土地では、末代まで語り継がれることだろう。勇者の名前は忘れられることがない。心底、羨ましいことだ」
この男、自分の名前を残したいの? それにしては、女がどうとか、規模の小さいことをぶつぶつ呟いているけれど。
結局、何が言いたいの? 独り言? 私になんて言ってもらいたいの?
「勇者の姉よ」
「はあ」
「私はそんなに狭量な男か?」
「え?」
「そんなに狭量な男に見えるか? 甲斐性のない男に?」
セドリックの目は据わっている。完全なる酔っ払いだ。この人、明後日には自分の息子の成人の儀が控えているのに、なんでこんなに酔ってんの? 王子という自覚があるの?
「なぜ、相談すら、してくれなかっ」
「やだ、ちょっと、泣かないで、泣かないでよ」
「なぜ、私に内緒で、子を」
ハンカチか何かを探そうとした手が止まる。肩を震わせながら泣いている男を見下ろして、その情けない姿に驚く。
これが、あの、セドリック?
私をここに捕らえ、閉じ込めた男?
私に娼婦の真似事を強要していた、王子?
信じられない。あの獰猛な男とこの憐れな男が同一の人間だと、誰が信じる?
「愛した女から忘れられたって? その女が妊娠していたって? 別れでも告げられた? 愛人の子すら守ることができないだろうって、縁を切られたの? 情けない。馬鹿な男ね」
弱っているセドリックに暴言を吐く。言葉の剣を突き立てる。これが、何とも言えない気分だ。気持ちいい。一国の王子を罵倒する機会なんて、もう二度と巡ってこないだろう。だから遠慮はしない。殴られてもいい、罵ってやる。
「性格は悪くても一国の王子だし、妻も子どももいる。立場上、自分の子だと認めてもくれないし、追っても来てくれない。いくら愛していても自分と子どもの幸せが一切期待できない男なんだから、別れを選んで当然でしょ」
林檎酒を飲む。喉が渇く。まだ言い足りない。
「身を引くなんて結局、あなたのことを諦めたってことなんだもの。余程愛していないとできない、苦渋の決断だわ。逃げ切ってもらいたいものね、その人には」
「……愛?」
「だって、お金ももらわず、子どもだと認めさせることもなかったのよね? あなたとの醜聞を大っぴらにすることだって、できたんじゃない? それを隠してただ逃げるなんて、余程あなたを愛していないと」
……あれ、私、セドリックを励ましてる? 彼の愛人をかばっているうちに? やだ、何で。
セドリックは「愛……」と何度も呟いている。気持ち悪い。
「彼女は……私を愛していた?」
それはわからない。私、その愛人じゃないもの。可能性の問題よ。
「愛していたから、子どもができた?」
いやいや、避妊しなければ妊娠するんじゃない? 愛なんて関係ないよね、それこそ。子どもが愛の結晶だと認めないわけじゃないけど、愛があれば子どもができるわけじゃないのだし。
「私は彼女を愛していた……?」
「それこそ私にわかるわけないじゃない。自分の胸に手を当てて考えてみれば?」
面倒くさい酔っ払いだ。
セドリックが右手につけた大きな赤い宝石の指輪。この部屋の鍵。これを今奪うことができないかと思ってしばらく様子を見たけれど、もっと飲ませないと難しそうだ。私はセドリックのグラスに林檎酒をたっぷり注いでやる。
「愛……していたのか? ならば、これも、愛、か?」
知らないわ。興味もないわよ。そう、セドリックのすべてに興味がない。……鍵は、欲しいけど。
「愛……お前はあの少年を愛しているのか? 既に抱かれたのか?」
なぜ、そうなる?
私はむせながら、グラスをテーブルに置く。床に落ちた林檎酒がもったいない。岩に染み込んでしまった。
あーあ、と肩と視線を落としながら、ふと気づく。セドリックの赤い衣服の裾にあしらわれた小さな花の刺繍。私がリュカの服に刺繍してあげている花と同じ、のように見える。
「まだ抱かれてはいないようだな。やめておけ。あれの真意がわからぬ」
「私が誰を好きになろうが、あなたには関係ないでしょ」
「関係ない、か。確かにお前がどこの誰を愛そうとも関係ない。だが、あれだけは駄目だ」
「リュカをあれ呼ばわりしないでよ」
リュカ、と呟いて、セドリックは笑った。寂しいような嬉しいような、形容する言葉が見当たらない笑みだ。そんな笑みを浮かべたまま、セドリックは林檎酒を飲み切った。
「あれが――リュカがお前に近づいたのは、私への復讐心からだろう。私の所有物を壊すような意図があったのだろうが」
「復讐……? 何を、言って」
「オルガ」
どん、と背中に軽い衝撃があった。両手が痛い、動かない。目を開けると、カンテラに照らされて揺れるセドリックの顔がある。私の唇を塞いでいるのが彼のものだと気づいた瞬間に、血の気が引く音がした。
「やだ、やめて、やめっ、んん」
「オルガ」
私をいつものようにベッドに押し倒したまま、セドリックは笑う。大嫌いな彼の顔も、行為も、薬があるから受け入れることができたのに。
恐ろしくて、おぞましい。肌の上を這う唇を、舌を、拒もうと逃げるのに、逃れられない。
「あれが私より先にお前に種を植えつけるのだけは、許せない。ならば、先に種を授けるだけだ」
「いやだ、やめて! セドリック、やめっ」
何か布のようなものを口の中に押し込まれ、言葉が封じられる。セドリックは器用に何か硬いもので私の両手を縛り上げ、太腿の上に乗って、笑った。
「オルガ、私の子を孕むがいい。お前の中にたっぷり注いでやる」
グラスが割れる音が、始まりの合図となった。最悪の夜の、始まりだった。
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