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68話、弟。
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本社に電話している板長はしばらく電話口で揉めていたので、泣きそうな金子に状況を確認する。
「予約は? 大部屋使う?」
「五組入ってる。大部屋は使わないよ」
「じゃあ、今日は大部屋にはお客様を通さないようにして、それ以外の部屋で対応しよう」
板長は電話口で何か叫んでいる。金子はちょっと涙を浮かべている。
「店長と篠原さんが来ないなら、あと二人は必要かぁ。電話は誰か繋がった?」
「柳さんはまだ体調が悪そうだったけど、何とか出るって。バイトはまだ誰にも繋がらなくて」
昨日休んでいた柳さんが出てくれるなら、ありがたい。もちろん、無理はさせられないけど。
「柳さんが来てくれるなら、ホールが足りないな。俺が出るよ」
「ええっ!?」
「……そんなに驚かなくても、厨房に入ってるんだから、メニューはわかるよ。レジもできるし。飲み物はわかんないけど、運ぶくらいはできるよ」
「それで頼むわ。本社に電話したけど、ラチあかねえ」
いつの間に電話を終えたのか、イライラした板長が背後に立っていた。ラチがあかないのなら、人員の増援は望めないということだ。
「金子、ホールの制服はあるだろ」
「は、はい、あります」
「じゃあ、高梨が着られるか確認してもらえ。で、今日は大部屋は使わないと全員に伝えとけ」
「はいっ!」
金子が慌てて更衣室へ走っていく。板長の口調だと、だいぶ本社に交渉したようだが、芳しい返答ではなかったようだ。
「店長も篠原もいないのに、増援もなし、大部屋も開けろ、だと。難しいこと言うよな、本社の連中も。現場から離れると、なんで現場のことを考えられなくなるかなー?」
「……まぁ、できることからやりますか。美郷店長の退職届は?」
「受理するかどうかはまだわからん、だと。まぁ、まだうちに退職届があるからな。本社に送ればよかったのに、馬鹿だな、あいつも。あ、宮さんは大丈夫だって?」
「はい、うちは大丈夫だって言っていました」
宮田店長は、土曜は結構多めに人員を確保するほうだから、欠員が出ても何とかなるのだろう。簡単に送り出してくれた。それより、本店が大変だ。
「じゃあ、今日は頼むよ、高梨」
「はい、板長」
とりあえず、予約分の仕込みをやるかな、と板長と顔を見合わせるのであった。
「予約は? 大部屋使う?」
「五組入ってる。大部屋は使わないよ」
「じゃあ、今日は大部屋にはお客様を通さないようにして、それ以外の部屋で対応しよう」
板長は電話口で何か叫んでいる。金子はちょっと涙を浮かべている。
「店長と篠原さんが来ないなら、あと二人は必要かぁ。電話は誰か繋がった?」
「柳さんはまだ体調が悪そうだったけど、何とか出るって。バイトはまだ誰にも繋がらなくて」
昨日休んでいた柳さんが出てくれるなら、ありがたい。もちろん、無理はさせられないけど。
「柳さんが来てくれるなら、ホールが足りないな。俺が出るよ」
「ええっ!?」
「……そんなに驚かなくても、厨房に入ってるんだから、メニューはわかるよ。レジもできるし。飲み物はわかんないけど、運ぶくらいはできるよ」
「それで頼むわ。本社に電話したけど、ラチあかねえ」
いつの間に電話を終えたのか、イライラした板長が背後に立っていた。ラチがあかないのなら、人員の増援は望めないということだ。
「金子、ホールの制服はあるだろ」
「は、はい、あります」
「じゃあ、高梨が着られるか確認してもらえ。で、今日は大部屋は使わないと全員に伝えとけ」
「はいっ!」
金子が慌てて更衣室へ走っていく。板長の口調だと、だいぶ本社に交渉したようだが、芳しい返答ではなかったようだ。
「店長も篠原もいないのに、増援もなし、大部屋も開けろ、だと。難しいこと言うよな、本社の連中も。現場から離れると、なんで現場のことを考えられなくなるかなー?」
「……まぁ、できることからやりますか。美郷店長の退職届は?」
「受理するかどうかはまだわからん、だと。まぁ、まだうちに退職届があるからな。本社に送ればよかったのに、馬鹿だな、あいつも。あ、宮さんは大丈夫だって?」
「はい、うちは大丈夫だって言っていました」
宮田店長は、土曜は結構多めに人員を確保するほうだから、欠員が出ても何とかなるのだろう。簡単に送り出してくれた。それより、本店が大変だ。
「じゃあ、今日は頼むよ、高梨」
「はい、板長」
とりあえず、予約分の仕込みをやるかな、と板長と顔を見合わせるのであった。
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