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8話、弟。
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思わぬ伏兵に、俺自身驚いている。
姉ちゃんも、きっと驚いている。何を食べたのか、どうやって帰ってきたのか、覚えていないようだ。
「会社行きたくない……」
「気持ちはわかるけど」
「知らなければ良かった……いい友達だと思っていたのに」
「付き合うの?」
「まさか!」
姉ちゃんの中には「断る」という選択肢しかないようで、正直、俺はほっとしている。
そう、ほっとしている。
得体の知れない同僚なんかに、俺の姉ちゃんはあげられない。
そんな強い独占欲が俺を支配している。
「ダメだよ、まだ」
姉ちゃんには聞こえないように小さくつぶやく。
ダメだよ、まだ、俺の腕の中にいなきゃ。
姉ちゃんは、俺のものなんだから。
タンクトップの上からするりと姉ちゃんの背中をなでる。ぴくりと体が震えて、小さく溜め息がもれる。
ぽんぽんと背中をたたいて、するするとなでる。慰めているようで、そうではない。姉ちゃんの背中が弱いのは昔からだ。
姉ちゃんに気づかれないようにじわじわと体勢を変え、ソファに自分の体を沈ませていく。背中から腰に手を伸ばして、抱きしめる。姉ちゃんを俺の体の上に乗せるような格好になる。
そんなに無防備だから、他の男から好意を持たれてしまうんだよ。
佐藤先輩の前では緊張感を持って接していたようだけど、仕事中はそこまで緊張しないのだろう。困ったもんだ。
「あ、あの、ショウ?」
「うん?」
「落ち着いたから、もう大丈夫」
「そう」
「だから、その」
姉ちゃんから抱きついてきたくせに、落ち着いたから離れたいだなんて、都合がいい話じゃないか。
だから、俺は手を離さない。姉ちゃんを抱きしめたままにする。
「姉ちゃんあったかいから、眠くなってきちゃった」
「ダメだよ、ちゃんとベッドで寝ないと」
「姉ちゃんにだけは言われたくないなぁ」
もう少しこのまま密着していたい。
鼻腔をくすぐるシャンプーとボディソープの香り。顔の近くに置かれた柔らかな二の腕。同じくらい柔らかな姉ちゃんの胸の感触。俺の腕にすっぽりとおさまってしまう華奢な体。短パンから伸びるすらりとした足が、もどかしそうに動く。
あ、ダメだよ、それ以上足を動かしたら、俺が困る。
「ねぇ、ショウ。お願い」
「布団はじっとしててくださーい」
「布団じゃないもん」
姉ちゃんは観念したのか、しばらく大人しくなって。
そして、あろうことか、反撃してきたのだった。
姉ちゃんも、きっと驚いている。何を食べたのか、どうやって帰ってきたのか、覚えていないようだ。
「会社行きたくない……」
「気持ちはわかるけど」
「知らなければ良かった……いい友達だと思っていたのに」
「付き合うの?」
「まさか!」
姉ちゃんの中には「断る」という選択肢しかないようで、正直、俺はほっとしている。
そう、ほっとしている。
得体の知れない同僚なんかに、俺の姉ちゃんはあげられない。
そんな強い独占欲が俺を支配している。
「ダメだよ、まだ」
姉ちゃんには聞こえないように小さくつぶやく。
ダメだよ、まだ、俺の腕の中にいなきゃ。
姉ちゃんは、俺のものなんだから。
タンクトップの上からするりと姉ちゃんの背中をなでる。ぴくりと体が震えて、小さく溜め息がもれる。
ぽんぽんと背中をたたいて、するするとなでる。慰めているようで、そうではない。姉ちゃんの背中が弱いのは昔からだ。
姉ちゃんに気づかれないようにじわじわと体勢を変え、ソファに自分の体を沈ませていく。背中から腰に手を伸ばして、抱きしめる。姉ちゃんを俺の体の上に乗せるような格好になる。
そんなに無防備だから、他の男から好意を持たれてしまうんだよ。
佐藤先輩の前では緊張感を持って接していたようだけど、仕事中はそこまで緊張しないのだろう。困ったもんだ。
「あ、あの、ショウ?」
「うん?」
「落ち着いたから、もう大丈夫」
「そう」
「だから、その」
姉ちゃんから抱きついてきたくせに、落ち着いたから離れたいだなんて、都合がいい話じゃないか。
だから、俺は手を離さない。姉ちゃんを抱きしめたままにする。
「姉ちゃんあったかいから、眠くなってきちゃった」
「ダメだよ、ちゃんとベッドで寝ないと」
「姉ちゃんにだけは言われたくないなぁ」
もう少しこのまま密着していたい。
鼻腔をくすぐるシャンプーとボディソープの香り。顔の近くに置かれた柔らかな二の腕。同じくらい柔らかな姉ちゃんの胸の感触。俺の腕にすっぽりとおさまってしまう華奢な体。短パンから伸びるすらりとした足が、もどかしそうに動く。
あ、ダメだよ、それ以上足を動かしたら、俺が困る。
「ねぇ、ショウ。お願い」
「布団はじっとしててくださーい」
「布団じゃないもん」
姉ちゃんは観念したのか、しばらく大人しくなって。
そして、あろうことか、反撃してきたのだった。
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