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前編
6.独白
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ジーナはソーファが好きだった。
それは友愛であり、家族愛であり、愛情であることは間違いなかった。
ソーファは人と一緒にいる事をあまり好まない。昔から、あるいはある事がきっかけに嫌いになったのかもしれない。
それでもジーナはソーファの事が大事だった。思っている分返されなくても、彼女を大切にしたいという気持ちは強い。
「ジーナ。今月の薬代です」
毎月、ジーナのところで薬を買っていく。どこが悪いのかと言われれば、そうではなかった。所謂、睡眠薬が必要だった。彼は。
「……眠れませんか?」
「ああ。そうだね、ゆっくり眠れる事はないよ」
「そうですか。この国は寒いですからね。部屋を暖かくして眠るのが一番ですよ」
「そうだね。ジーナ、今日もありがとう」
「いいえ、町長」
ジーナはそう言って、家から出て行く町長の背中を見送った。
ジーナは思う。もし、あの人がこの町から出て行ったら果たしてこの町に平和は訪れるのだろうか。数えるほどの人しかいないこの町は、どこか狂っているといつも思う。
「ソーファ」
彼女には幸せであって欲しいと思っている。
夢を見た。
いつもの事だ。悪夢はいつも、背中を追いかけているところから始まる。
頼もしい背中だった。いつかあんな風になりたいと願って、願いながら自分を高めていた。
見ている夢は悪夢のようだった。
横たわる彼女、治療しなければいけない手足、痩せ細る身体。
自分には力がないのだと、思わず手のひらを握りしめた。力が欲しかった。
ああ、どうして。後悔が止まらない。
ルカは夢の中で手のひらを握る。全く痛くなかった。それが彼には嫌だった。
もう一度、目の前の背中を見る。今度は小さな背中だった。細く、自分の知っている背中とは違う。どこが違うんだろう。
マカルだろうか、とルカは思い、その細い肩を叩く。
こちらを振り返ったのは全く別の人物だった。
「ソーファ……」
「起きたの? 体、大丈夫?」
「あぁ。俺、そうか、熱……ぶり返して」
「そうだよ。寒い格好して外出るからだよ。思ってるより、体、弱ってるからね?」
「ああ、気をつける」
「うん」
「ソーファ」
「なに?」
「……お腹、すいたな」
はいはい、と言って食事の準備に取り掛かるソーファ。ルカはその背中にホッとした。自分はきっと、一生この背中も忘れないだろうとも思った。
それは友愛であり、家族愛であり、愛情であることは間違いなかった。
ソーファは人と一緒にいる事をあまり好まない。昔から、あるいはある事がきっかけに嫌いになったのかもしれない。
それでもジーナはソーファの事が大事だった。思っている分返されなくても、彼女を大切にしたいという気持ちは強い。
「ジーナ。今月の薬代です」
毎月、ジーナのところで薬を買っていく。どこが悪いのかと言われれば、そうではなかった。所謂、睡眠薬が必要だった。彼は。
「……眠れませんか?」
「ああ。そうだね、ゆっくり眠れる事はないよ」
「そうですか。この国は寒いですからね。部屋を暖かくして眠るのが一番ですよ」
「そうだね。ジーナ、今日もありがとう」
「いいえ、町長」
ジーナはそう言って、家から出て行く町長の背中を見送った。
ジーナは思う。もし、あの人がこの町から出て行ったら果たしてこの町に平和は訪れるのだろうか。数えるほどの人しかいないこの町は、どこか狂っているといつも思う。
「ソーファ」
彼女には幸せであって欲しいと思っている。
夢を見た。
いつもの事だ。悪夢はいつも、背中を追いかけているところから始まる。
頼もしい背中だった。いつかあんな風になりたいと願って、願いながら自分を高めていた。
見ている夢は悪夢のようだった。
横たわる彼女、治療しなければいけない手足、痩せ細る身体。
自分には力がないのだと、思わず手のひらを握りしめた。力が欲しかった。
ああ、どうして。後悔が止まらない。
ルカは夢の中で手のひらを握る。全く痛くなかった。それが彼には嫌だった。
もう一度、目の前の背中を見る。今度は小さな背中だった。細く、自分の知っている背中とは違う。どこが違うんだろう。
マカルだろうか、とルカは思い、その細い肩を叩く。
こちらを振り返ったのは全く別の人物だった。
「ソーファ……」
「起きたの? 体、大丈夫?」
「あぁ。俺、そうか、熱……ぶり返して」
「そうだよ。寒い格好して外出るからだよ。思ってるより、体、弱ってるからね?」
「ああ、気をつける」
「うん」
「ソーファ」
「なに?」
「……お腹、すいたな」
はいはい、と言って食事の準備に取り掛かるソーファ。ルカはその背中にホッとした。自分はきっと、一生この背中も忘れないだろうとも思った。
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