5 / 5
5p
しおりを挟む僕は、例のケーキ屋の一室で"皿"になっていた。
「…あの…ま、まだ…ですか…?」
すでに10分ほど、僕はずっと同じ体勢をしていた。背中が痛いし、太ももがプルプル痙攣している。
「まだだ…もう少し目に刻みつけてから…食べたい。」
Bさんはじーっと、裸の僕の上に乗ったケーキを見つめながら答えた。
彼はあくまでケーキを見ているだけだろうが、これにはかなり羞恥心を刺激されてしまう。
(あぁ早く、早く食べてくれないかな…
同性同士とはいえ、この格好とかポーズは色々と辛すぎる……)
そんな僕にのせられているのは、10センチ位の丸いショートケーキだった。
中央に真っ赤な苺、その苺を囲むようにスライスされた桃が配置されている。
薄く折り重ねられた桃は、薔薇の花びらのようで可憐だ。
そして、その果実達を包み込むかのように、なんと綿飴がトッピングされている。
すごく幻想的で、かわいらしいケーキ。
Bさんからは、天使をイメージした作品だと教えてもらった。
(綿飴を使ってるケーキなんて初めて見た。ケーキと綿飴かぁ…どんな食感なんだろ?
……そうだ、食べる時はどうするんだ?)
主役のケーキは肌に直接ではなく、シリコンっぽい容器の上にのせられていた。
だから食べる時は容器ごと移動させればいいだろう。
ただ僕の胸から腹にかけてはケーキ以外にも、フルーツソースやラズベリー等のトッピングに使用されていたのだった。
(飾りだし、きっと拭き取るんだろうな…)
貧乏性な僕はつい、もったいないと思ってしまう。
でもシャワーを浴びたとはいえ、他人の腹の上にかけたものを食べるなんてしないだろう。
(あ、でも、ぉ、女の子だったら抵抗ないかもな…。だからあの写真は女の人だったのかも…)
1ヶ月ほど前に見た写真を思い返していた最中、それはやって来た。
ペロッ
「っひぃ!?」
え?…えっ?
い、今、何が起きた………?
「ああ、やはり程よく温まっていていいな。それに舐め取った時の舌触りもなかなか…」
何食わぬ顔でBさんが呟いた内容から、やはり舐められたのだと思い知った。
(っ、な…、な、
っはぁ――――――――――――!!??)
そのショックに、僕の思考回路はまたもやショートした。
(ぇ、っえ?なんでっ!?なんで舐めた?!
わ、わからないっ、なに?え、これ、なに?
あ、待て、落ち着け、れ、冷静になって、ケーキがずり落ちたら大変だからっ…)
僕は今度こそパニックに陥った。だが、なんとか皿としての使命を思い出し、いたいけなケーキを死守することに意識を注ぐ。
そんななか耳に届いた、無骨なパティシエがこぼした言葉…
「やはり、最初はショートだな。」
(え。さ、最初…?
…ま、まさか、次がある……?)
頭の片隅で恐ろしい予感を覚えながら、僕はその後もしばらく羞恥その他諸々に苦しめられるのだった。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?





ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる