フルフルひみつ天国~小学生天使トリオが悪魔を封印しちゃいます!~

村雨 霖

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第四十三話 神様と悪魔

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フルフルは校舎に向かって、祈りをささげる時のように、両手を目の前で組むと、頭の上まで上げて、力一杯振り下ろした。

ドガガガガ、ガラガラガラ……

三階建ての校舎がひび割れ、崩れ落ちる。私達の教室がある辺りだ。

「やめて! 何てことするの!!」

私が叫ぶ。だけどフルフルは

「ああ、わかった、わかった」

と口先では言うものの、その手を止めることはなく、どんどん校舎を壊していく。

レミナも必死な形相になりながら、抗議した。

「そんなことしたって、何の得にもならないでしょ!」

「そうだな、何の得にもならないな。だが天使の、そういう顔を見るのは、とても楽しいぞ」

アヤセちゃんは、無言で胸元のリボンをほどくと、ハトに戻ったピースを包んで、校庭の端にある花壇の陰に避難させていた。私は彼女に声を掛ける。

「急いでアイツを三角に囲んで! 封印しよう!」

私達が、それぞれの自宅がある方向に移動して、封印の呪文を唱えようとした、その瞬間。
フルフルの口から信じられない言葉が飛び出した。



「ねえ、レミナ、栗原さんって、ウザいよね」



私の声、そっくりだ。思わずアヤセちゃんの方を見る。彼女は目を見開いて、ショックを受けた顔をしていた。私はあわてて否定した。

「ウソだよ! 私、そんなこと、言ってない!」

「だよねぇ、ちょっと可愛くて勉強ができるからって、いい気になっているよねぇ」

今度はレミナの声だ。

「違うよ! あたしじゃない! あたし、言ってないよ!」

引きつった表情でレミナが大声を出す。

「ウソをつけ、ワシは聞いたぞ。本人がいない間に、何度も何度も、お前たちが悪口を言っていたのを……」



「ウソつき! 二人はそんなこと言ったりしない!」



しつこく食い下がるフルフルの声をさえぎったのは、アヤセちゃんだった。顔を真っ赤にして、怒りながら、泣いている。
私達はホッとした。そして顔が、カーッと熱くなる。たぶん、アヤセちゃんと同じくらい怒ってるのだ。もちろん、レミナも。

私達は、フルフルの顔の高さまで飛び上がり、三角に囲んだ。だけど悪魔が両腕を振り回し、こちらを追い払おうとして、なかなか三角形を保てない。

「皆! 頑張って、チャンスを待って!」

私は他の二人に向かって声をかけた。だけど、そろそろ体力がなくなって、かなり厳しい状態だ。
今の私達は神様から力をもらってない。自分の気力、体力だけで戦っているのだ。
ピースと直接戦ってないアヤセちゃんはともかく、私とレミナは限界だ。

「どうしよう、もうダメかも……」

レミナが辛そうな声をもらし、飛ぶ高度が下がりかけた時、フルフルに向かって紫色の何かが飛んだ。

「な……これは、何だ!? クロウラ、何をした」

黒川くんが、地上で銃を構えていた。銃口から煙が出ている。
ピースが作った、紫の弾丸を、フルフルに向けて撃ったのだ。

心と体を切り離す呪い。ピースの執念深さが詰まった呪いで、悪魔の動きが止まった。

今だ!
私達は三角の陣形を組むと、順番に封印の言葉を唱えた。



「テイヘンカ!」

「ケルタ!」

「カサワルニ!」



「ウガアアアアアアアアア!!!」



フルフルの身体から、コンビナートの火災のような、黒い煙がもうもうと上がり、身体がどんどん縮みだす。
頭から、鹿の角が、ポロリと落ち、燃える尾からは炎が消え、尻尾そのものが消え去っていく。黒い体毛に覆われた全身は人の体に変化して、濃い灰色にくすんだ翼は純白へと変わっていった。

封印に成功したのだ。

だけど、その最中、レミナはフッと力が抜けたように、地上に落ちていく。
助けたいけど、私も、もう飛べない。後を追うように、私も落ちていった。

「キャアアアア!!」

アヤセちゃんの声が聞こえる。
でも、もうダメ……



「おっと、危ない」



私は、何か、草むらのようなところに落っこちた。柔らかく受け止められた感じがする。ケガはなさそうだ。
……そうだ!レミナは!?

急いで起き上がると、レミナは私とほとんど同じ高さの場所にいた。
彼女を無事、受け止めたのは、神様の、大きな左手だった。
だけど、様子がおかしい。レミナは大きく目を見開いて、何かショックを受けているようだ。

上の方から、アヤセちゃんが羽ばたきながら降りてきた。
信じられない物を見たような顔をして、口元を手で押さえている。

「そんな……神様? 本当に、神様なの?」

私は自分の座っている場所をよく確かめて、驚いた。
そこは、とがった爪がついた、巨大な右手の上だったからだ。
手は、黒い剛毛に覆われた腕、肩へと続く。

そしてその先には、右半分が恐ろしく、左半分が柔和な、大きな顔があった。

神様の右半分は、悪魔だったのだ。
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