13 / 47
第十二話 ウソの悪魔と真実の天使
しおりを挟む
私達は、人目につかない校舎の陰に隠れて、小声で唱えた。
「「「エンジェル・リセット」」」
身体中から光が離れていって、いつもの神田川マユ、栗原アヤセ、土井レミナに戻る。
「これからどうする?」
と私は二人に聞いてみる。
「とりあえず、さっきの男子のことを詳しく調べるのが先だと思う」
と、栗原さんが腕を組む。
「あたし、あの子知ってるよぉ。一年生と二年生の時、同じクラスだったもん」
しれっと答えるレミナ。
「名前はねぇ、川越ショウマくん。成績は普通で、脚が速かったよ。性格は真面目で……
う~ん、とくに仲が良かったとかじゃないから、分かるのはそれくらいかなぁ?」
「そうなんだ……ねえ、ハナさん、どうやったら食べられた心を元に戻せるの?」
私が空に向かってたずねると、すぐに返事がきた。
「方法は主に三つあるナン。
一つ目は、フルフルを封印すること。
悪魔のフルフルはウソを司るけれど、天使になったフルフルは真実の使徒なのナン。
心を喰われた者に向かって、天使になったフルフルが真実を告げれば、欠けた心が元の形に治っていくナン。
二つ目は、ウソがウソでなくなるように、辻褄を合わせること。
たとえば、赤い物を青だとウソをついたとしたら、赤い物を塗るなり染めるなりして、本当に青くすれば、フルフルは食べた心を吐き出してしまうのだナン。
そして三つ目は、心を喰われた本人が、ウソをついたことを後悔して、心から反省することナン」
そこまで聞いた栗原さんが言う。
「その中だったら、一番現実的でカンタンなのは、三つ目よね?
それなら川越くんを説得して、反省してもらったらイイんじゃない?」
するとハナさんが、明らかに困ったような口調で答える。
「う~ん……確かに一番楽なのは三つ目ナンだけど、言うほど単純でもないんだナン。
ウソにもいろんな種類があるから……
悪意のあるウソ。
無責任なウソ。
自分を守るためのウソ。
誰かを傷つけないためのウソ。
その人間の性格や環境によって、いくらでもパターンはある。
中にはウソをつくのが悪いことだという意識がない者もいれば
本人がつきたくなくても、ウソをつかざるを得ない場合だってある。
そもそもウソを一度もついたことのない人間なんて、ほとんどいないんだナン。今回も、その川越くんとやらの事情を知ってから、どうするか決めた方がいいのナン」
ハナさんの話に、私は頭を抱えてしまった。天使の仕事が、思った以上に大変そうだったからだ。栗原さんも考え込んでいる。一人、レミナだけが
「まあ、やれば何とかなるっしょ!」
なんて気楽にかまえていた。
その、暢気さがうらやましい……
「……さあさあ皆さん、今日はもう日常生活に戻った方がいいナン。
え~と、マユちゃんとレミナちゃんは、休み時間の校庭の水飲み場。
アヤセちゃんは、その一時間前の理科準備室に、送り届ければいいのかナン?
川越くんの方は大丈夫。封天使がいると分かったら、フルフルも警戒してすぐには襲ってこないはずだから」
そんなハナさんの言葉を最後に、私達はそれぞれ、元いた時間と場所に戻されたのだった。
「「「エンジェル・リセット」」」
身体中から光が離れていって、いつもの神田川マユ、栗原アヤセ、土井レミナに戻る。
「これからどうする?」
と私は二人に聞いてみる。
「とりあえず、さっきの男子のことを詳しく調べるのが先だと思う」
と、栗原さんが腕を組む。
「あたし、あの子知ってるよぉ。一年生と二年生の時、同じクラスだったもん」
しれっと答えるレミナ。
「名前はねぇ、川越ショウマくん。成績は普通で、脚が速かったよ。性格は真面目で……
う~ん、とくに仲が良かったとかじゃないから、分かるのはそれくらいかなぁ?」
「そうなんだ……ねえ、ハナさん、どうやったら食べられた心を元に戻せるの?」
私が空に向かってたずねると、すぐに返事がきた。
「方法は主に三つあるナン。
一つ目は、フルフルを封印すること。
悪魔のフルフルはウソを司るけれど、天使になったフルフルは真実の使徒なのナン。
心を喰われた者に向かって、天使になったフルフルが真実を告げれば、欠けた心が元の形に治っていくナン。
二つ目は、ウソがウソでなくなるように、辻褄を合わせること。
たとえば、赤い物を青だとウソをついたとしたら、赤い物を塗るなり染めるなりして、本当に青くすれば、フルフルは食べた心を吐き出してしまうのだナン。
そして三つ目は、心を喰われた本人が、ウソをついたことを後悔して、心から反省することナン」
そこまで聞いた栗原さんが言う。
「その中だったら、一番現実的でカンタンなのは、三つ目よね?
それなら川越くんを説得して、反省してもらったらイイんじゃない?」
するとハナさんが、明らかに困ったような口調で答える。
「う~ん……確かに一番楽なのは三つ目ナンだけど、言うほど単純でもないんだナン。
ウソにもいろんな種類があるから……
悪意のあるウソ。
無責任なウソ。
自分を守るためのウソ。
誰かを傷つけないためのウソ。
その人間の性格や環境によって、いくらでもパターンはある。
中にはウソをつくのが悪いことだという意識がない者もいれば
本人がつきたくなくても、ウソをつかざるを得ない場合だってある。
そもそもウソを一度もついたことのない人間なんて、ほとんどいないんだナン。今回も、その川越くんとやらの事情を知ってから、どうするか決めた方がいいのナン」
ハナさんの話に、私は頭を抱えてしまった。天使の仕事が、思った以上に大変そうだったからだ。栗原さんも考え込んでいる。一人、レミナだけが
「まあ、やれば何とかなるっしょ!」
なんて気楽にかまえていた。
その、暢気さがうらやましい……
「……さあさあ皆さん、今日はもう日常生活に戻った方がいいナン。
え~と、マユちゃんとレミナちゃんは、休み時間の校庭の水飲み場。
アヤセちゃんは、その一時間前の理科準備室に、送り届ければいいのかナン?
川越くんの方は大丈夫。封天使がいると分かったら、フルフルも警戒してすぐには襲ってこないはずだから」
そんなハナさんの言葉を最後に、私達はそれぞれ、元いた時間と場所に戻されたのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
ヴァンパイアハーフにまもられて
クナリ
児童書・童話
中学二年の凛は、文芸部に所属している。
ある日、夜道を歩いていた凛は、この世ならぬ領域に踏み込んでしまい、化け物に襲われてしまう。
そこを助けてくれたのは、ツクヨミと名乗る少年だった。
ツクヨミに従うカラス、ツクヨミの「妹」だという幽霊、そして凛たちに危害を加えようとする敵の怪異たち。
ある日突然少女が非日常の世界に入り込んだ、ホラーファンタジーです。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
ヒョイラレ
如月芳美
児童書・童話
中学に入って関東デビューを果たした俺は、急いで帰宅しようとして階段で足を滑らせる。
階段から落下した俺が目を覚ますと、しましまのモフモフになっている!
しかも生きて歩いてる『俺』を目の当たりにすることに。
その『俺』はとんでもなく困り果てていて……。
どうやら転生した奴が俺の体を使ってる!?
【完結】魔法道具の預かり銀行
六畳のえる
児童書・童話
昔は魔法に憧れていた小学5学生の大峰里琴(リンコ)、栗本彰(アッキ)と。二人が輝く光を追って最近閉店した店に入ると、魔女の住む世界へと繋がっていた。驚いた拍子に、二人は世界を繋ぐドアを壊してしまう。
彼らが訪れた「カンテラ」という店は、魔法道具の預り銀行。魔女が魔法道具を預けると、それに見合ったお金を貸してくれる店だ。
その店の店主、大魔女のジュラーネと、魔法で喋れるようになっている口の悪い猫のチャンプス。里琴と彰は、ドアの修理期間の間、修理代を稼ぐために店の手伝いをすることに。
「仕事がなくなったから道具を預けてお金を借りたい」「もう仕事を辞めることにしたから、預けないで売りたい」など、様々な理由から店にやってくる魔女たち。これは、魔法のある世界で働くことになった二人の、不思議なひと夏の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる