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第十二話 ウソの悪魔と真実の天使

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私達は、人目につかない校舎の陰に隠れて、小声で唱えた。

「「「エンジェル・リセット」」」

身体中から光が離れていって、いつもの神田川マユ、栗原アヤセ、土井レミナに戻る。



「これからどうする?」

と私は二人に聞いてみる。

「とりあえず、さっきの男子のことを詳しく調べるのが先だと思う」

と、栗原さんが腕を組む。

「あたし、あの子知ってるよぉ。一年生と二年生の時、同じクラスだったもん」

しれっと答えるレミナ。

「名前はねぇ、川越ショウマくん。成績は普通で、脚が速かったよ。性格は真面目で……
う~ん、とくに仲が良かったとかじゃないから、分かるのはそれくらいかなぁ?」

「そうなんだ……ねえ、ハナさん、どうやったら食べられた心を元に戻せるの?」

私が空に向かってたずねると、すぐに返事がきた。

「方法は主に三つあるナン。

一つ目は、フルフルを封印すること。
悪魔のフルフルはウソを司るけれど、天使になったフルフルは真実の使徒なのナン。
心を喰われた者に向かって、天使になったフルフルが真実を告げれば、欠けた心が元の形に治っていくナン。

二つ目は、ウソがウソでなくなるように、辻褄つじつまを合わせること。
たとえば、赤い物を青だとウソをついたとしたら、赤い物を塗るなり染めるなりして、本当に青くすれば、フルフルは食べた心を吐き出してしまうのだナン。

そして三つ目は、心を喰われた本人が、ウソをついたことを後悔して、心から反省することナン」

そこまで聞いた栗原さんが言う。

「その中だったら、一番現実的でカンタンなのは、三つ目よね?
それなら川越くんを説得して、反省してもらったらイイんじゃない?」

するとハナさんが、明らかに困ったような口調で答える。

「う~ん……確かに一番楽なのは三つ目ナンだけど、言うほど単純でもないんだナン。
ウソにもいろんな種類があるから……

悪意のあるウソ。
無責任なウソ。
自分を守るためのウソ。
誰かを傷つけないためのウソ。

その人間の性格や環境によって、いくらでもパターンはある。
中にはウソをつくのが悪いことだという意識がない者もいれば
本人がつきたくなくても、ウソをつかざるを得ない場合だってある。

そもそもウソを一度もついたことのない人間なんて、ほとんどいないんだナン。今回も、その川越くんとやらの事情を知ってから、どうするか決めた方がいいのナン」



ハナさんの話に、私は頭を抱えてしまった。天使の仕事が、思った以上に大変そうだったからだ。栗原さんも考え込んでいる。一人、レミナだけが

「まあ、やれば何とかなるっしょ!」

なんて気楽にかまえていた。
その、暢気のんきさがうらやましい……



「……さあさあ皆さん、今日はもう日常生活に戻った方がいいナン。

え~と、マユちゃんとレミナちゃんは、休み時間の校庭の水飲み場。
アヤセちゃんは、その一時間前の理科準備室に、送り届ければいいのかナン?

川越くんの方は大丈夫。封天使がいると分かったら、フルフルも警戒してすぐには襲ってこないはずだから」


そんなハナさんの言葉を最後に、私達はそれぞれ、元いた時間と場所に戻されたのだった。
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