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第十話 黒い虹の向こうに
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急いで道場の縁側に駆け寄る私達。
「何、あれ?気味が悪い……」
栗原さんが真っ黒な虹を目の当たりにして、眉をひそめた。
「地面に埋めたタイヤみたい」
目の上に手を当てて、陽射しを除けながら、レミナが空を見つめる。
「ハナさん!あれは何なの!?」
私が振り向いて問いかける。
「あれは悪魔が地上に行くと現れる虹なんだナン」
フルフルだ……!
緊張感を握りつぶすように、こぶしに力を込める。
そのすぐ横で、ハナさんが神妙な面持ちで、ベストのポケットに前足を突っ込む。
中から取り出したそれは、方位磁石だった。
「うーん。また、皆の小学校に出現したみたいだナン……
さっそくだけど、あなた達に天使の仕事をお願いするナン!
封天使、出動!!」
いきなり床に穴が開いて、私達は落っこちた。
「えーっ!?」
「ちょ、ちょっと!まだ心の準備が……」
「落ちる~!」
頭の中からハナさんの声がする。
「大丈夫!最初はチュートリアルなんだナン。ハナが教えてあげるんだナン。
さあさあ、それより【エンジェル・トライア】って唱えるのだナン!」
「「「エ…エンジェル・トライア!!!」」」
ほわりと落ちるスピードが遅くなった。
全身が光に包まれる。髪が色づき、服が、靴が、シュルシュルと変化する。
背中に翼が生えて、羽ばたくと落下が止まって、頭の上が丸く光ると、そのまま天使の輪になった。
三人で輪を描くようにゆっくり降りていき、校庭のグラウンドの側に降り立つ。
しかし、辺りを見回しても、フルフルの姿は見つからない。
「おかしいね……どこにいるんだろう?」
私達が思い思いのポーズで考え込んでいると、すぐ横をサッカー部の男子が走ってきた。同じクラスの男子も数人いる。
「えー!?ちょっと待って!こんな格好してるの学校の子に見られたら……!」
すると、頭の中にハナさんの声が響いてきた。
「あ~、ごめんごめん、説明してなかったナン。天使も悪魔も、普通は人間の目には映らないのナン。黒い虹も見えないし、フルフルが使う竜巻も、人間にはただの異常気象としか思われないのナン」
「え~?だけど、私達、フルフルが見えて、竜巻で飛ばされたんだよぉ?」
レミナが口を不服そうにとがらせる。
「それそれ!それが、皆が天使に選ばれた理由だナン!普通の人間は目で見たものしか見えないけれど、三人は心にある眼で、他の人には見えないものが見えるのナン。
ささ、胸に手を当てて。そして心の中で眼を開くイメージをしてみてナン」
三人そろって、胸元に手をやり、目を閉じる。
心の眼……
手を当てたところがポカポカと温まってくる。
温かさが目元に上るように伝わってきて、目を開く。まぶたを開けたのは一回なのに、なぜか二回、目が開いた感覚がした。
ふと空を見ると、黒い虹がよく見える。そして虹の片方の端っこが長く伸びて、三年生と四年生のクラスがある校舎の裏側に向かっていた。
多分、あそこにフルフルがいる。
……が、ここにきて、一つ気付いたことがある。
「ねえ、ハナさん。私達が知ってるフルフルの封印方法って、『簡易版』なんだけど…」
「正式版も、簡易版も、あんまり変わらないナン。フルフルの周りを三人で三角形になるように囲むと、天使の輪から光が伸びて、三角の結界ができるのナン。
そうしたら【テイヘンカ】【ケルタ】【カサワル二】って、唱えればいいのナン」
なるほど、ほとんど変わらないようだ。
「よし!それじゃ、急いで校舎の裏に行こう!」
「分かったわ」
「レッツ・ゴー!」
私達が翼を羽ばたかせ、舞い上がった瞬間、校舎裏から悲鳴が聞こえた。
子供の声だ。
大変!誰かがもう襲われてる!?早く行かなきゃ!!
「何、あれ?気味が悪い……」
栗原さんが真っ黒な虹を目の当たりにして、眉をひそめた。
「地面に埋めたタイヤみたい」
目の上に手を当てて、陽射しを除けながら、レミナが空を見つめる。
「ハナさん!あれは何なの!?」
私が振り向いて問いかける。
「あれは悪魔が地上に行くと現れる虹なんだナン」
フルフルだ……!
緊張感を握りつぶすように、こぶしに力を込める。
そのすぐ横で、ハナさんが神妙な面持ちで、ベストのポケットに前足を突っ込む。
中から取り出したそれは、方位磁石だった。
「うーん。また、皆の小学校に出現したみたいだナン……
さっそくだけど、あなた達に天使の仕事をお願いするナン!
封天使、出動!!」
いきなり床に穴が開いて、私達は落っこちた。
「えーっ!?」
「ちょ、ちょっと!まだ心の準備が……」
「落ちる~!」
頭の中からハナさんの声がする。
「大丈夫!最初はチュートリアルなんだナン。ハナが教えてあげるんだナン。
さあさあ、それより【エンジェル・トライア】って唱えるのだナン!」
「「「エ…エンジェル・トライア!!!」」」
ほわりと落ちるスピードが遅くなった。
全身が光に包まれる。髪が色づき、服が、靴が、シュルシュルと変化する。
背中に翼が生えて、羽ばたくと落下が止まって、頭の上が丸く光ると、そのまま天使の輪になった。
三人で輪を描くようにゆっくり降りていき、校庭のグラウンドの側に降り立つ。
しかし、辺りを見回しても、フルフルの姿は見つからない。
「おかしいね……どこにいるんだろう?」
私達が思い思いのポーズで考え込んでいると、すぐ横をサッカー部の男子が走ってきた。同じクラスの男子も数人いる。
「えー!?ちょっと待って!こんな格好してるの学校の子に見られたら……!」
すると、頭の中にハナさんの声が響いてきた。
「あ~、ごめんごめん、説明してなかったナン。天使も悪魔も、普通は人間の目には映らないのナン。黒い虹も見えないし、フルフルが使う竜巻も、人間にはただの異常気象としか思われないのナン」
「え~?だけど、私達、フルフルが見えて、竜巻で飛ばされたんだよぉ?」
レミナが口を不服そうにとがらせる。
「それそれ!それが、皆が天使に選ばれた理由だナン!普通の人間は目で見たものしか見えないけれど、三人は心にある眼で、他の人には見えないものが見えるのナン。
ささ、胸に手を当てて。そして心の中で眼を開くイメージをしてみてナン」
三人そろって、胸元に手をやり、目を閉じる。
心の眼……
手を当てたところがポカポカと温まってくる。
温かさが目元に上るように伝わってきて、目を開く。まぶたを開けたのは一回なのに、なぜか二回、目が開いた感覚がした。
ふと空を見ると、黒い虹がよく見える。そして虹の片方の端っこが長く伸びて、三年生と四年生のクラスがある校舎の裏側に向かっていた。
多分、あそこにフルフルがいる。
……が、ここにきて、一つ気付いたことがある。
「ねえ、ハナさん。私達が知ってるフルフルの封印方法って、『簡易版』なんだけど…」
「正式版も、簡易版も、あんまり変わらないナン。フルフルの周りを三人で三角形になるように囲むと、天使の輪から光が伸びて、三角の結界ができるのナン。
そうしたら【テイヘンカ】【ケルタ】【カサワル二】って、唱えればいいのナン」
なるほど、ほとんど変わらないようだ。
「よし!それじゃ、急いで校舎の裏に行こう!」
「分かったわ」
「レッツ・ゴー!」
私達が翼を羽ばたかせ、舞い上がった瞬間、校舎裏から悲鳴が聞こえた。
子供の声だ。
大変!誰かがもう襲われてる!?早く行かなきゃ!!
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