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第八話 天使専用モール『エンゼリア』
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一週間ぶりのひみつ天国。
パステルカラーの積み木のような街並みは可愛らしく、服を着た動物たちでにぎやかだ。
しばらく歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「マユさん?マユさんですナン?こんにちは」
振り返ると、この間来た時に挨拶してくれた、蝶ネクタイの白黒ネコが立っていた。
「私はインフォメーション担当のハナなんだナン。平たく言うと案内係ですナン。今日はマユさんに天国の道案内をしに来たナン」
ハナさんはヒゲをピンと立てて、ニコニコしながら言う。よく見ると鼻の右下に小さなホクロのような模様がある。
「天使様の案内をするのは今回のお三方が初めてナン。いつもは引っ越してきた動物達の案内をするのが仕事なのナン。
天国大通りにあるお店は普通の店だから、説明しなくても分かるナン。でもこの間、神様が天使専用モールを作ったから、そこを案内するナン」
大通りをずっと歩いていくと、突き当たりに大きなリンゴのような形をした建物がある。
「ハナさん、ここは?」
「ここが天使専用モールの、『エンゼリア』なんだナン!さあ、中を案内するナン!」
エンゼリアの中に入ると、壁に建物の案内図があって、ハナさんがどこからか指差し棒を取り出して、各階の説明を始めた。
「一階はインフォメーション受付、普段ハナがいる場所ナン。わからないことがあれば、ここで質問するといいナン。
二階はレストラン、三階は塾、四階から上はまだ工事中で、今後のお楽しみなのナン。
じゃあ、二階と三階を順番に案内するナン」
私はハナさんに連れられて、右手にあるエスカレーターで二階に上がっていった。
***
「ここが当モール自慢の『記憶レストラン』だナン!」
「記憶レストラン……?」
不思議に思って質問すると、ハナさんは得意気に胸を反らす。
「これまでに食べた記憶のあるものなら、何でも食べられるレストランなのナン」
「ええ!それはすごい!じゃあ、こないだ叔母さんにもらったデパ地下のケーキも食べれる?」
「覚えてるなら食べれるナン。今、食べる?」
「うん!」
席に着こうと席を見渡すと、奥の方でレミナが手を振っていた。
「マユちん、ここにおいでよぉ!」
私が隣に座ると、レミナはテーブルに置いてあるタブレットを渡してきた。
「あのね、これを持って、食べたい物を思い浮かべると、画面に食べ物が浮かび上がるの。そしたら注文できるよぉ」
レミナの前には食べかけのオムライスが置かれていた。卵がちょっとだけ焦げている。
「そうなの?じゃあ、やってみるね。う~~~~~ん」
ケーキを思い浮かべてタブレットに念じると、目の前に白い皿に載ったショートケーキが現れた。それと、紅茶も。
でもケーキはちょっと歪んでいるような……よく見ると、お皿もフォークも家で普段使いしている百円ショップの物だ。
「料理は注文した人のイメージ通りに現れるからナン……」
ハナさんが気の毒そうな目で、いびつなケーキを見つめる。
私はガッカリしながらもケーキを一口頬張った。
「あ!美味しい!あの時食べたケーキの味!」
どうやら味はちゃんと記憶していたらしい。
私がケーキを食べ終わるのを見計らっていたハナさんが声を掛けてきた。
「じゃあ、そろそろ三階を案内するナン」
「ちょうど食べ終わったから、私も一緒に行くぅ!」
と、レミナ。
さっきより一人分賑やかになった私達は、再び上りエスカレーターに乗るのだった。
パステルカラーの積み木のような街並みは可愛らしく、服を着た動物たちでにぎやかだ。
しばらく歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「マユさん?マユさんですナン?こんにちは」
振り返ると、この間来た時に挨拶してくれた、蝶ネクタイの白黒ネコが立っていた。
「私はインフォメーション担当のハナなんだナン。平たく言うと案内係ですナン。今日はマユさんに天国の道案内をしに来たナン」
ハナさんはヒゲをピンと立てて、ニコニコしながら言う。よく見ると鼻の右下に小さなホクロのような模様がある。
「天使様の案内をするのは今回のお三方が初めてナン。いつもは引っ越してきた動物達の案内をするのが仕事なのナン。
天国大通りにあるお店は普通の店だから、説明しなくても分かるナン。でもこの間、神様が天使専用モールを作ったから、そこを案内するナン」
大通りをずっと歩いていくと、突き当たりに大きなリンゴのような形をした建物がある。
「ハナさん、ここは?」
「ここが天使専用モールの、『エンゼリア』なんだナン!さあ、中を案内するナン!」
エンゼリアの中に入ると、壁に建物の案内図があって、ハナさんがどこからか指差し棒を取り出して、各階の説明を始めた。
「一階はインフォメーション受付、普段ハナがいる場所ナン。わからないことがあれば、ここで質問するといいナン。
二階はレストラン、三階は塾、四階から上はまだ工事中で、今後のお楽しみなのナン。
じゃあ、二階と三階を順番に案内するナン」
私はハナさんに連れられて、右手にあるエスカレーターで二階に上がっていった。
***
「ここが当モール自慢の『記憶レストラン』だナン!」
「記憶レストラン……?」
不思議に思って質問すると、ハナさんは得意気に胸を反らす。
「これまでに食べた記憶のあるものなら、何でも食べられるレストランなのナン」
「ええ!それはすごい!じゃあ、こないだ叔母さんにもらったデパ地下のケーキも食べれる?」
「覚えてるなら食べれるナン。今、食べる?」
「うん!」
席に着こうと席を見渡すと、奥の方でレミナが手を振っていた。
「マユちん、ここにおいでよぉ!」
私が隣に座ると、レミナはテーブルに置いてあるタブレットを渡してきた。
「あのね、これを持って、食べたい物を思い浮かべると、画面に食べ物が浮かび上がるの。そしたら注文できるよぉ」
レミナの前には食べかけのオムライスが置かれていた。卵がちょっとだけ焦げている。
「そうなの?じゃあ、やってみるね。う~~~~~ん」
ケーキを思い浮かべてタブレットに念じると、目の前に白い皿に載ったショートケーキが現れた。それと、紅茶も。
でもケーキはちょっと歪んでいるような……よく見ると、お皿もフォークも家で普段使いしている百円ショップの物だ。
「料理は注文した人のイメージ通りに現れるからナン……」
ハナさんが気の毒そうな目で、いびつなケーキを見つめる。
私はガッカリしながらもケーキを一口頬張った。
「あ!美味しい!あの時食べたケーキの味!」
どうやら味はちゃんと記憶していたらしい。
私がケーキを食べ終わるのを見計らっていたハナさんが声を掛けてきた。
「じゃあ、そろそろ三階を案内するナン」
「ちょうど食べ終わったから、私も一緒に行くぅ!」
と、レミナ。
さっきより一人分賑やかになった私達は、再び上りエスカレーターに乗るのだった。
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