8 / 47
第七話 再び、ひみつ天国へ
しおりを挟む
私、神田川マユは悩んでいた。
あれから一週間。神様からフルフルの居場所についての連絡はない。
それはいいんだけど、せっかく出入り自由になったはずの、ひみつ天国への入り方がわからないのだ。鍵はもらったけれど、その使い方を教えてもらってない。
フルフルの封印を引き受けたら、神様は何の説明もしないで、即座に私達を元いた場所に帰してしまったのだ。
私は早くマルに会いたかった。
会って、ちゃんと謝りたかった。
再会した時にも謝ったけど、あれじゃぜんぜん足りない。
私のせいで、マルは独りぼっちで……
…………ダメだ、ダメだ!学校で泣いたりしたら。
ちょうど休み時間だし、ちょっと顔を洗ってこよう。
人気のない校庭の手洗い場に行って、蛇口をひねって水に手を差し出すと誰かが駆け寄ってきた。
「マユちーん!」
レミナだ。いつもの脳天気な笑顔で私に話しかけてくる。
「ねえ、なんであれから天国に来ないの?」
……は?……はあ!?
一瞬頭が真っ白になって、手元が蛇口を半端にふさいでしまい、水がブシュッと飛び散った。
「わわわわ!!ちょっと、マユちん、気を付けてぇ。シャワーの時間にはまだ早いよ?」
慌てて飛びのくレミナ。
「なんで……って、レミナは天国に行ってるの!?」
「一昨日から、毎日行ってるよ?」
「だって、カギの使い方、教えてもらってないでしょ!?」
「え?んーと、こないだ神様が開けた天国の扉は三角だったでしょ?
だから試しにこうやってカギを持って、空中に三角を描いて、最後に真ん中をカギで、こうやってつついたら……
開いちゃった!」
レミナが言いながら実演すると、本当に白い光の三角形が現れて、天国への扉が開いた。
「じゃあ行こう!」
扉をくぐるレミナについて行こうしたら……
すぐ目の前で、扉が閉まって、私は危うく挟まりそうになってしまった。
「そうだ、扉は開けた本人しか通れないよぉ?昨日栗原さんも挟まりそうになってたから。じゃ、先に行ってるねぇ」
目の前から光る三角が消えていく。
「……それじゃ、今日まで天国に行けなかったの、私だけ?」
これまで悩んでいたのはなんだったのか。
思えば他の二人と天国の話をしようにも、いつも他のクラスメイトも側にいたから、なかなか話せなかったんだよね。
はあ、それにしてもレミナは頭がいいのか悪いのか、分かんない子だなあ。
それはさておき、私も赤いカギを持って、空中に三角を描いてみた。ああ、ホント、描ける描ける。光が線になり、扉になる。
大きく深呼吸をして、三角形の真ん中をつつくと、スッと扉が開かれた。
そして私は再び、ひみつ天国へと足を踏み入れたのだった。
あれから一週間。神様からフルフルの居場所についての連絡はない。
それはいいんだけど、せっかく出入り自由になったはずの、ひみつ天国への入り方がわからないのだ。鍵はもらったけれど、その使い方を教えてもらってない。
フルフルの封印を引き受けたら、神様は何の説明もしないで、即座に私達を元いた場所に帰してしまったのだ。
私は早くマルに会いたかった。
会って、ちゃんと謝りたかった。
再会した時にも謝ったけど、あれじゃぜんぜん足りない。
私のせいで、マルは独りぼっちで……
…………ダメだ、ダメだ!学校で泣いたりしたら。
ちょうど休み時間だし、ちょっと顔を洗ってこよう。
人気のない校庭の手洗い場に行って、蛇口をひねって水に手を差し出すと誰かが駆け寄ってきた。
「マユちーん!」
レミナだ。いつもの脳天気な笑顔で私に話しかけてくる。
「ねえ、なんであれから天国に来ないの?」
……は?……はあ!?
一瞬頭が真っ白になって、手元が蛇口を半端にふさいでしまい、水がブシュッと飛び散った。
「わわわわ!!ちょっと、マユちん、気を付けてぇ。シャワーの時間にはまだ早いよ?」
慌てて飛びのくレミナ。
「なんで……って、レミナは天国に行ってるの!?」
「一昨日から、毎日行ってるよ?」
「だって、カギの使い方、教えてもらってないでしょ!?」
「え?んーと、こないだ神様が開けた天国の扉は三角だったでしょ?
だから試しにこうやってカギを持って、空中に三角を描いて、最後に真ん中をカギで、こうやってつついたら……
開いちゃった!」
レミナが言いながら実演すると、本当に白い光の三角形が現れて、天国への扉が開いた。
「じゃあ行こう!」
扉をくぐるレミナについて行こうしたら……
すぐ目の前で、扉が閉まって、私は危うく挟まりそうになってしまった。
「そうだ、扉は開けた本人しか通れないよぉ?昨日栗原さんも挟まりそうになってたから。じゃ、先に行ってるねぇ」
目の前から光る三角が消えていく。
「……それじゃ、今日まで天国に行けなかったの、私だけ?」
これまで悩んでいたのはなんだったのか。
思えば他の二人と天国の話をしようにも、いつも他のクラスメイトも側にいたから、なかなか話せなかったんだよね。
はあ、それにしてもレミナは頭がいいのか悪いのか、分かんない子だなあ。
それはさておき、私も赤いカギを持って、空中に三角を描いてみた。ああ、ホント、描ける描ける。光が線になり、扉になる。
大きく深呼吸をして、三角形の真ん中をつつくと、スッと扉が開かれた。
そして私は再び、ひみつ天国へと足を踏み入れたのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる