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事件簿011 『お神酒徳利』その12
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話は300年前に戻る。
善六たち一行が、大坂の鴻池の屋敷に到着した。
善右衛門の一人娘はやせ衰えて、紙のように白い顔で床に臥せっていた。
とても美しい顔立ちだが、その瞳には命が燃え尽きる前のわずかな光しか宿していなかった。
それでも、善六をずがるような目で見つめていた。
医者もさじを投げ、あらゆる薬も効かない。
霊験あらたかな高名な祈祷師さえも、力及ばずとしっぽを巻いて去っていったらしい。
善六は、適当な占いでこの場を誤魔化すつもりだったが、罪悪感でいたたまれなくなっていた。
「これは、よほどの原因がありそうです。三日三晩の間、私は身を清めます。占いのソロバンはなるべく格の高い神主さんにお祓いをしてもらってください。」
善六に何か考えがあるわけではなかった。
心からあの娘を救ってやりたい。
そう思ったのだ。
占いは嘘八百だが、絶体絶命の窮地から、しかも二回続けて奇跡のように逃れられたことは事実。
ある意味、神懸っている。
もしかしたら二度あることが三度あるかもしれない。
次の日から、善六は日の出から夜中まで一刻ごとに水垢離し、静かに祈り続けた。
善六たち一行が、大坂の鴻池の屋敷に到着した。
善右衛門の一人娘はやせ衰えて、紙のように白い顔で床に臥せっていた。
とても美しい顔立ちだが、その瞳には命が燃え尽きる前のわずかな光しか宿していなかった。
それでも、善六をずがるような目で見つめていた。
医者もさじを投げ、あらゆる薬も効かない。
霊験あらたかな高名な祈祷師さえも、力及ばずとしっぽを巻いて去っていったらしい。
善六は、適当な占いでこの場を誤魔化すつもりだったが、罪悪感でいたたまれなくなっていた。
「これは、よほどの原因がありそうです。三日三晩の間、私は身を清めます。占いのソロバンはなるべく格の高い神主さんにお祓いをしてもらってください。」
善六に何か考えがあるわけではなかった。
心からあの娘を救ってやりたい。
そう思ったのだ。
占いは嘘八百だが、絶体絶命の窮地から、しかも二回続けて奇跡のように逃れられたことは事実。
ある意味、神懸っている。
もしかしたら二度あることが三度あるかもしれない。
次の日から、善六は日の出から夜中まで一刻ごとに水垢離し、静かに祈り続けた。
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