近未来判事「タクヤ」

yellowgg

文字の大きさ
上 下
187 / 214

事件簿011 『お神酒徳利』その12

しおりを挟む
話は300年前に戻る。

善六たち一行が、大坂の鴻池の屋敷に到着した。

善右衛門の一人娘はやせ衰えて、紙のように白い顔で床に臥せっていた。
とても美しい顔立ちだが、その瞳には命が燃え尽きる前のわずかな光しか宿していなかった。
それでも、善六をずがるような目で見つめていた。

医者もさじを投げ、あらゆる薬も効かない。
霊験あらたかな高名な祈祷師さえも、力及ばずとしっぽを巻いて去っていったらしい。
善六は、適当な占いでこの場を誤魔化すつもりだったが、罪悪感でいたたまれなくなっていた。

「これは、よほどの原因がありそうです。三日三晩の間、私は身を清めます。占いのソロバンはなるべく格の高い神主さんにお祓いをしてもらってください。」

善六に何か考えがあるわけではなかった。
心からあの娘を救ってやりたい。
そう思ったのだ。

占いは嘘八百だが、絶体絶命の窮地から、しかも二回続けて奇跡のように逃れられたことは事実。
ある意味、神懸っている。
もしかしたら二度あることが三度あるかもしれない。

次の日から、善六は日の出から夜中まで一刻ごとに水垢離し、静かに祈り続けた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その溺愛は伝わりづらい

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】 【続編も8/17完結しました。】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785 ↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

弁護士が飛び降りて 素人が東大卒の弁護士に逆転勝訴 別件の判決文を...まだ読んでない

負手勝世★素人が東大卒の弁護士に勝訴
エッセイ・ノンフィクション
素人が 弁護士相手にゃ 勝てないよなぁ まさか...

詩集☆幸せの形〜だれかがいる〜

〜神歌〜
ライト文芸
詩集☆幸せの形〜だれかがいる〜 既に出版している詩集☆幸せの形のシリーズ作品です。 文字数の関係で多少表現が変わってる部分があるかもしれませんが、ご了承下さい、 では貴方の支えになれば嬉しく思います。 では、、、

はい、こちら伝言課

かみくら+
ライト文芸
さかえ市役所の1階の角に、ひっそりとある『伝言課』。 此処ではその名の通り、“伝言”を預かりまた、伝えることを業務目的としています。 時を超え、時代を跨ぎ伝えられる“伝言”には、一つひとつにそれぞれ大切な想いが込められているのです。 このお話は、そんな『伝言課』の様子を覗いてみたものです。 ・初めて書くものなので、誤字脱字が多いと思います ・お役所仕事やその他の事など全くの妄想で書いてます ・更新など不定期です 以上のことは、悪しからずm(__)m

この感情を何て呼ぼうか

逢坂美穂
ライト文芸
大切だから、目を背けていたんだ。

なぁ どうせ知らないんだろう? 俺の初恋──それが、いつだったのかを

弓月
ライト文芸
「君のおかげで俺は、今日まで、無事に、死に損ないだ」  ひとりぼっちの俺は  記憶をなくして路頭に迷う  ひとりの女の子に出会った。  君は…熱い飲み物が苦手で  車が嫌いで、木登りが好きだった。  俺は君のことが苦手で  周りの視線が嫌いで、孤独が好きだった。  ……なぁ  どうせ知らないんだろう?  俺の初恋──それが、いつだったのかを。

海外ドラマにありそうな展開を詰め込んだ小説 ANDREW PARKER

kate
ライト文芸
海外ドラマの中でも大好きな刑事ドラマやサスペンスドラマにありそうな展開を詰め込んだ小説です。もはや私の性癖みたいなものが詰め込まれている物語です。ぜひお楽しみ下さい。 *この作品は5年前に書いたものをリライトしたものです。 あらすじ ある日起きたら指名手配犯。主人公アンドリュー・パーカーは事件を解決するため、奔走する。

恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希
ライト文芸
 お隣どうしで幼なじみの『お兄ちゃん』と、それを追いかけ続けた私。やっぱり年が離れてしまうと恋愛として見てもらえないのかな。どうしたら『妹』じゃなく『一人の女の子』として見てもらえるんだろう。  幼い頃からずっと一緒。ちょっと見た目は不器用だけと、本当は優しいって知っていたのは私だけ。懸命に追いかけていた、私だけと思っていたその背中は予約済みの席ではなかった。「好き」と言って欲しいのはただ一人なのに。心が繋がるってこんなに難しいなんて思わなかったよ……。 (表紙画像はCanva様よりフリー素材を使用しております)

処理中です...