近未来判事「タクヤ」

事件簿０１０ 『藁人形』その１４

さて、こちらは２０３５年のいつものバー。
孔明さんが、周りを見回しながらボクに耳打ちした。

「それは、うしのこくまいりじゃ。」

「牛のコク旨煎り？」

「どんな料理じゃ！」

「わかんないっすよ！なんですか、それ？」

「丑の刻参り。由緒ある正統派の呪いじゃ。」

「呪い！！まじっすか！？てか、呪いに正統派とかあるんですかっ？」

「ある！」

自信たっぷりに頷かれても・・・。
それからボクは、その呪いについて、孔明さんからたっぷりレクチャーを受けた。
しかもマスターが、どこから持ってきたのか、ローソクを立てた冠のようなものまで持ち出してきた。
五徳とかいうらしい。

要約すると、呪う相手の髪の毛や爪を、藁人形の中に入れて、丑の刻（夜中の1時から3時）に神社のご神木に毎晩五寸釘で打ち付ける。
すると、呪われた相手は痛みに苦しみながら死んでしまう、というものらしい。

「釘を打つ場所によって痛む場所が違うのじゃ。」

孔明さんの説明を受けて、マスターが身を乗り出してきた。

「ほら、下腹が痛いから結石かなぁって言ってる人いるでしょ。あれはきっと股間を狙った釘がちょっとだけずれて上に刺さってるんだと思うんだよね。」

クールな顔してるのに、マスターって意外と下ネタ好きだったんだ・・・。