129 / 214
事件簿009 『鹿政談』その5
しおりを挟む
奉行所に現れたのは、縄で縛られた五十過ぎの男と、町役や坊さんなど数人の男たち。
「わたくしは鹿の守役、塚原仙兵衛と申します。こちらは興福寺の良尊殿。鹿を殺した男をお役目で連れて参りました。」
奉行所の役人は、男を縛っている縄を預かると二人に答えた。
「お役目ご苦労だった。明日はお奉行がお白州を開かれる。お二方ともご足労だが明日改めてお越しくだされ。」
役人は、男を預かりはしたものの、鹿殺しなどもう何十年も起きていない。
しかもこの男、とても悪事を働くような人間には見えない。
とりあえず事情を聞いてみることにした。
「どうして鹿を殺したのだ?鹿殺しが大罪であることは知っているだろう?」
「はい。今朝、いつものように夜明け前に起きまして、店の雨戸を開けますと外にあるオカラの桶を漁っている動物がいました。」
「ふむ。」
「靄ではっきりとは見えませんでしたが、このところ野良犬が増えて近所のバァサンが咬まれて怪我をしたばかり。襲われてはたまりませんので転がっていた木切れを動物めがけて投げました。」
「ふむふむ。」
「すると、その動物はそのままドサリと倒れたんです。えらくひ弱な犬もいたものだと近づいてみたら、それが鹿だったってわけです。」
「うーむ・・・。」
役人はどうしたものか悩んだが、結論は出せなかった。
「やはりお奉行に相談しよう。」
とりあえず男を牢に入れると、役人は奈良奉行の屋敷に走った。
「わたくしは鹿の守役、塚原仙兵衛と申します。こちらは興福寺の良尊殿。鹿を殺した男をお役目で連れて参りました。」
奉行所の役人は、男を縛っている縄を預かると二人に答えた。
「お役目ご苦労だった。明日はお奉行がお白州を開かれる。お二方ともご足労だが明日改めてお越しくだされ。」
役人は、男を預かりはしたものの、鹿殺しなどもう何十年も起きていない。
しかもこの男、とても悪事を働くような人間には見えない。
とりあえず事情を聞いてみることにした。
「どうして鹿を殺したのだ?鹿殺しが大罪であることは知っているだろう?」
「はい。今朝、いつものように夜明け前に起きまして、店の雨戸を開けますと外にあるオカラの桶を漁っている動物がいました。」
「ふむ。」
「靄ではっきりとは見えませんでしたが、このところ野良犬が増えて近所のバァサンが咬まれて怪我をしたばかり。襲われてはたまりませんので転がっていた木切れを動物めがけて投げました。」
「ふむふむ。」
「すると、その動物はそのままドサリと倒れたんです。えらくひ弱な犬もいたものだと近づいてみたら、それが鹿だったってわけです。」
「うーむ・・・。」
役人はどうしたものか悩んだが、結論は出せなかった。
「やはりお奉行に相談しよう。」
とりあえず男を牢に入れると、役人は奈良奉行の屋敷に走った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
YUZU
箕面四季
ライト文芸
もうすぐ妹が生まれる。
その事実に小6の秋山柚樹は苦しんでいた。
柚樹の本物の母親(ママ)は、柚樹が4歳の時に亡くなり、今の母親(母さん)とは血がつながっていない。もし、赤ちゃんが生まれれば自分は厄介者になってしまうに違いない。
おまけに小学校では、母さんの妊娠を知ったクラスメイトたちから「エロい」とからかわれる始末。
柚樹は、「赤ちゃんなんか死ね」と、思わずにはいられなかった。
そんなある日、出産間際に体調を崩した母さんが入院してしまい、父さんも出張で数日家を空けることになってしまう。
柚樹が1人で留守番をしていると、謎の女子高生が現れ、強引に住みついてしまうのだった。
【スピンオフ 秋山柚葉、家出する】15年後の家族の物語。
悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活
束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。
初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。
ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。
それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
詩集☆幸せの形〜だれかがいる〜
〜神歌〜
ライト文芸
詩集☆幸せの形〜だれかがいる〜
既に出版している詩集☆幸せの形のシリーズ作品です。
文字数の関係で多少表現が変わってる部分があるかもしれませんが、ご了承下さい、
では貴方の支えになれば嬉しく思います。
では、、、
酔いどれ右蝶捕物噺
篁千夏
歴史・時代
貧乏御家人の次男坊・田嶋新八郎は実家を飛び出し、噺家の萬葉亭蛾蝶に弟子入り。だが萬葉亭新八の前座名で修行中の寄席で、椿家須美之助が急死、前座仲間が下手人として疑われる。取り調べに現れた同心は、犬猿の仲の実兄。冤罪を晴らすため、幼馴染のお葉の助けを借り、東奔西走する新八だったが……。時代劇コメディ&ミステリー開演!
恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】
小林汐希
ライト文芸
お隣どうしで幼なじみの『お兄ちゃん』と、それを追いかけ続けた私。やっぱり年が離れてしまうと恋愛として見てもらえないのかな。どうしたら『妹』じゃなく『一人の女の子』として見てもらえるんだろう。
幼い頃からずっと一緒。ちょっと見た目は不器用だけと、本当は優しいって知っていたのは私だけ。懸命に追いかけていた、私だけと思っていたその背中は予約済みの席ではなかった。「好き」と言って欲しいのはただ一人なのに。心が繋がるってこんなに難しいなんて思わなかったよ……。
(表紙画像はCanva様よりフリー素材を使用しております)
頭取さん、さいごの物語~新米編集者・羽織屋、回顧録の担当を任されました
鏡野ゆう
ライト文芸
一人前の編集者にすらなれていないのに、なぜか編集長命令で、取引銀行頭取さんの回顧録担当を押しつけられてしまいました!
※カクヨムでも公開中です※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる