近未来判事「タクヤ」

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事件簿009 『鹿政談』その1

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20年前、2015年の宮崎地裁。

「主文。被告人を懲役15年に処する。」

「ちっくしょう!!みんなスピード違反くらいやってるじゃねぇか。何で俺だけ・・・。」

「被告人は静粛に。」

「運が悪かっただけなんだ。あんた達だって、いつかこの席に立たされる日がくるぞっ!」

「被告人!黙らないと退席を命じますよ!」

「・・ぼそっ・・。」

「何か言いましたか?」

「なんでもねぇよ。」

危険運転による事故で3人の命を奪った被告人、矢剥虎太に危険運転致死傷罪で15年の実刑が言い渡された。

矢剥は、仲間から『ヤンキー虎』と呼ばれる走り屋で、夜中に市街地を猛スピードで走る派手な車には、警察にも頻繁に苦情が寄せられていた。
今回の事故では制限速度を80km/h以上超過していたことが捜査でわかっている。

最近は、飲酒運転ではなくても危険運転致死傷罪が適用されるケースが急激に増えていた。
ハイブリッドカーや電動カーが増えて、エコ運転が当たり前という風潮になってきたが、急いでいる時にイライラさせられたドライバーが急加速あるいは無理な追い越しで起こす事故も明らかに増えているのだった。

公判が終わり、裁判員6人は法廷から別室に移ってお茶を飲んでいた。

「全く反省してないねぇ。」

「あれじゃ被害者も浮かばれないよ。」

「でも、控訴するだろうな。」

全員が沈鬱な表情だった。

「そういえば、孔明さん。被告人が小声で何かつぶやいてなかったですか?」

龍孔明はこの裁判で裁判員に指名されていた。

「あぁ・・・いや。そんな気もしましたが、聞こえませんでしたね。」

孔明は眉をしかめて答えた。

隠し事がある時の孔明のクセが『眉をしかめる』なのだが・・・。
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