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曽祖父

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叔母に手を引かれ光に近づくと光は消えて目の前に重厚な扉が現れた。

「お祖父様の世界は男前イケメンしか居ないし、優男だらけだからよりどりみどりよ!」

「それより叔母さん!私思いっきり部屋着なんだけど!着替え位させてよ!」
「ま・り・ち・ゃ・ん!!向こうで”叔母さん”って言ったら張っ倒すからね!分かった!」

叔母の勢いに負ける。天地が逆転しても貴女は私の叔母である事は変わらないのに…もーどうでもいいわ…

「今更ね!異世界に送られた派遣員はどうなるの?
本人の願望した姿になるんでしょ!だから、すずがこの扉をくぐる時になりたい姿を思えばいいのよ!これ以上うだうだ言わないでよ!」

「はぃはぃ…わか」
「”はい”は1回!」
「・・・はぃ」

叔母は躊躇なく扉を開けた。

目の前にロマンスグレーな紳士が立っていて、両手を広げて叔母と私を抱きしめた。
誰?曽祖父にしては若い。

「お祖父様。鈴香を連れて来たわ。私からのお誕生日プレゼントよ」

『・・・叔母今何って言った⁉︎お祖父様と言う事はひいお祖父さん⁈』

ひいお祖父さんはどう見ても50代後半ぐらいにしか見えなく、銀髪に翡翠色の優しい瞳をした紳士。背丈は180cmはあり100歳なのに腰ひとつ曲がってない。

口を開けて固まる私を後目に叔母は楽しそうに私の紹介をしている。紹介が一頻り終わった様で曽祖父は私の手を取り涙ぐみだした。

「理子そっくりだ。まるで私の元に理子が帰って来てくれたのかと思ったよ…」

「理子?」

「私のお祖母様で鈴香からしたら曽祖母ね」

私の手を取ったまま曽祖父は壁に掛けてある肖像画を見ている。そこには私そっくりな女性が描かれていた。どうやら曽祖母の理子の様だ。

「ここ最近で一番嬉しい誕生日になったよ。眞理ありがとう。さー親戚一同集まって鈴香が来るのを待っている。是非会ってやってくれ!今日は祝宴だ」

曽祖父は叔母と私の手を引き長い廊下を歩いて行く。状況について行けず只々戸惑う私。

なんて広い屋敷なんだろう…中々目的地に着かない。途中姿見鏡が有り一瞬自分の姿が見えた。
叔母が言った通り部屋着からチェンジしていた。

『私欲が無いんだ…』殆どの人が容姿をカッコ良くや美しく望むけど私は私のまま。強いて言えば部屋着が一番お気に入りの菫色のワンピースに変わったくらいだ。
自分の容姿に自信がある訳では無く、多分異世界に渡る時に思い付かなかったのだ。
ホンとつまらない人間だ。

やっと煌びやかな扉が見えて来たが、何故か悪寒がした。本能的にあそこに行かない方がいいといっているみたいだ。

「ひいお祖父様に会えたし私帰ります。ひいお祖父様。お誕生日おめでとうございます」

繋がれた手を振り解き踵を返して来た廊下を早足で戻る。

「「鈴香!」」

呼ばれても止まらないよ。私は帰りたいのだ!帰って晩酌の片付けをして自分の部屋で寝たいの!

確かこの突き当たりを曲がった筈だ。躊躇せずに角を曲がった…

目の前が藍色に染まる!

「うっわ!」
「おっと!」

前から来た人にぶつかった様だ。肩を支えられたお陰で転ばずに済んだ。

「すみません」

顔を上げたら私の大好きな小説の主人公そっくりな男性が立っていた。
黒髪長髪にルビー色の瞳、鼻筋がとおり薄い唇。
いかんもろタイプだ!

「お怪我はありませんか?」

「はい。ごめんなさい。急いでいたので…」

「す~ず!」後方で叔母が呼んでいる。

ヤバい捕まる。目の前の男前の横を抜けようとしたら、男前の腕が私の腹部にまわされ、担ぎ上げられた。所謂荷物持ちされた。
男前はそのまま叔母と曽祖父の方へ歩いていく。

「おろして!」

「貴女は大叔父様の曾孫の鈴香様ですね!お帰りになるにはまだお早いですよ」

貴方何者だ!
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