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転機の雨
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「うん・・・んっ・・・タキ・・・・」
シーツの感触が気持ちいい。さゆはタキのベッドでうつぶせになりながら、白い裸体を空気に晒した。
「ふふふふ」
タキが微笑みながら、丁寧に背中とお尻を撫でながらキスをする。二人の肌が重なる。キスの音が暗闇に響く室内で、円を描くように触れられると、さゆは全身が湧き上がるような熱を感じる。熱い吐息を洩らした。下半身が濡れてゆくのを感じる。シーツをギュッと掴む。
「あ・・・・あっ・・・」
「いいね、さゆ。リラックスしてる」
何度かベッドを共にする内に、さゆも慣れてきて、この頃タキが気を遣い過ぎなくなって来た事が、さゆは嬉しい。タキもセックスを楽しんでいるのが伝わる。
「ん・・・うんっ・・・」
タキがグッと入ってくる。挿入の独特の感触にも慣れた。もう痛みもない。
「あ・・・あ・・・」
「平気、さゆ?」
ゆっくり腰を動かしながらタキがさゆの乱れた髪をかき上げる。さゆは微笑んで頷いた。
(なんか、不思議なかんじ)
タキが加減してくれるので、挿入は平気だけれど、気持ち良いとは思った事が無かった。でも今日は身体の奥底で、火花が散るような、衝動が込み上げるような、かんじた事のない感覚がしていた。さゆはぼうっとする。荒い息を繰り返しながら、タキがその顔を覗きこんでキスをする。
「まだ痛い?」
「ううん・・・なんか・・・変なかんじ・・・あっ」
さゆが痛がったりしていない事を見て取ると、タキは少しさゆの腰を折り曲げて、角度を変えて抜き差しを強めにし始めた。その瞬間、身体の奥から電流がほとばしるような快楽が、こみあげて来た。
「あ、あっ・・や・・・うん・・タキ・・・やっ・・きもちい・・・」
「ふふふふ、嬉しい」
さゆは初めて、本当のセックスの快楽を味わった。二人の交わる音が室内に響く。さゆはタキの律動に身体を揺らしながら、奔流の様な多幸感と気持ちよさに溺れて、喘ぎ声を上げ続けた。
(私、なんて事してるんだろうな)
指を絡めて、二人の汗が混じりあい、二つの荒い呼吸音が響き、タキは「愛してるよ、さゆ」と囁きながら、何度もさゆを自身で貫く。
「タキ・・・好き・・・・」
その声をタキは、深いキスで受け止めた。腰の動きが段々早くなる。舌を絡めてキスをしながら、さゆが少し痛みを感じ始めた頃、タキが大きく息を吐いた。横に転がって、大きな息を繰り返した。さゆは今頃になって恥ずかしくなって来て、真っ赤になって掛け布団にくるまる。
「どした、さゆ?やっぱり痛かった?ごめんね、強くし過ぎたね」
気だるい声でタキが呼び掛ける。さゆは何とかぶんぶん首を振った。
「ううん・・・は、はは、はずかしい・・・」
「大丈夫だよ。俺しか見てないんだから。すごく可愛かったよ」
身体も、感じている様子も、みんなタキに見せてるから恥ずかしいんだよと思ったけれど、なんだかさゆは幸せで、タキの胸に顔を押し付けた。汗と体液の匂いがする。そのまま二人、梅雨の雨の音を聞きながら、眠りに落ちていった。
いつの間にか六月が、始まっていた。
梅雨は電車内まで、もあっと雨の匂いがする。朝、満員の湘南新宿ラインに揺られながら、タキは手元のスマフォに目を落とした。そこにはこの頃タキが注目しているニュースが表示されている。
『AV新法、遂に成立へ』
この法律が施行されれば、契約後であっても撮影された映像の公表を止められるという。タキの映像も未だにまれにネットで見かけるけれども、タキ自身は、それには声を上げる気はなかった。例え何を言われても、これは自分の人生の一部だと思う。ただ。
(さゆがこれで少し、自由に近づけるかな)
もし彼女の映像がどこかで保管され、何かのはずみで公表されたら。この法律によって、それを差し止め出来るかも知れない。
横浜ランドマークタワーが光っている。さゆの画家としての活動にまた少し、光の見える朝だった。
この頃のさゆの創作ペースは、今までで最速かも知れない。一週間に一枚程度のペースで、作品を仕上げている。
(でも、まだ足りない)
休みの日は朝から家事を済ませ、早々に作品に取り掛かる。今は新緑の鎌倉を、水彩画で表現するのに夢中だ。
(秋にまた、個展をしたいなあ)
自分はいつまで生きているんだろう。きっと体力はどんどん減っていく。生きている内にあと、何枚絵を描けるんだろう。二十代の頃は、きっと年を取ったら描きたいものなんて無くなってゆくと恐れていたけれど、逆だった。
残り時間が1日減るごとに、毎日違う世界のうつくしさに、より気付かされる。そしてそれを表現し切りたくなるのだ。
(鎌倉の海を、銀色の色鉛筆を基調に表現したら、どうなるかな。魚も描き入れて)
夕方までひたすらに絵筆を動かして、大きな山門を水彩紙に描き出しながら、もう次の絵の構想を練っている。鎌倉の海の絵は、もう二十枚は描いたのに。
そこでさゆはふと、ルークのブラッシングとノミチェックを今日中にやりたいと思っていたことを、思い出した。
「ルーク」
呼んでみたけれど、返事がない。珍しいなと思い、リビングを覗く。
「ルーク?」
ソファの下やカーテンの影もくまなく探すけれど、ルークの姿は微塵もない。おかしい。今までこんな事は無かった。
「ルーク、どこ、ルーク」
不安に駆られて庭に出て、ウロウロと歩き回る。いない。思い付いて風呂とトイレも見たけれど、それでも見当たらない。
「そんな、ルーク・・・」
さゆは自分の部屋に戻り、押し入れやベッドの下、衣服の隙間も全て見てみる。
(あとは・・・)
タキの部屋だ。タキのいない時に入った事はないけれど、今は仕方ない。
「ごめんね、入るね、タキ」
ベッドをひっくり返す。いない。名前を呼びながら、隅々まで探すけれど、遂にルークは影形も無かった。さゆは、猫は最期には飼い主の前からひっそりと姿を消すという話を思い出して、ぞっとした。
「ルーク!」
さゆは押し入れを開ける。
そこで見た事の無い、大きなキャンバスの様なものが丁重に布に包まれているのが、眼に飛び込んで来た。
シーツの感触が気持ちいい。さゆはタキのベッドでうつぶせになりながら、白い裸体を空気に晒した。
「ふふふふ」
タキが微笑みながら、丁寧に背中とお尻を撫でながらキスをする。二人の肌が重なる。キスの音が暗闇に響く室内で、円を描くように触れられると、さゆは全身が湧き上がるような熱を感じる。熱い吐息を洩らした。下半身が濡れてゆくのを感じる。シーツをギュッと掴む。
「あ・・・・あっ・・・」
「いいね、さゆ。リラックスしてる」
何度かベッドを共にする内に、さゆも慣れてきて、この頃タキが気を遣い過ぎなくなって来た事が、さゆは嬉しい。タキもセックスを楽しんでいるのが伝わる。
「ん・・・うんっ・・・」
タキがグッと入ってくる。挿入の独特の感触にも慣れた。もう痛みもない。
「あ・・・あ・・・」
「平気、さゆ?」
ゆっくり腰を動かしながらタキがさゆの乱れた髪をかき上げる。さゆは微笑んで頷いた。
(なんか、不思議なかんじ)
タキが加減してくれるので、挿入は平気だけれど、気持ち良いとは思った事が無かった。でも今日は身体の奥底で、火花が散るような、衝動が込み上げるような、かんじた事のない感覚がしていた。さゆはぼうっとする。荒い息を繰り返しながら、タキがその顔を覗きこんでキスをする。
「まだ痛い?」
「ううん・・・なんか・・・変なかんじ・・・あっ」
さゆが痛がったりしていない事を見て取ると、タキは少しさゆの腰を折り曲げて、角度を変えて抜き差しを強めにし始めた。その瞬間、身体の奥から電流がほとばしるような快楽が、こみあげて来た。
「あ、あっ・・や・・・うん・・タキ・・・やっ・・きもちい・・・」
「ふふふふ、嬉しい」
さゆは初めて、本当のセックスの快楽を味わった。二人の交わる音が室内に響く。さゆはタキの律動に身体を揺らしながら、奔流の様な多幸感と気持ちよさに溺れて、喘ぎ声を上げ続けた。
(私、なんて事してるんだろうな)
指を絡めて、二人の汗が混じりあい、二つの荒い呼吸音が響き、タキは「愛してるよ、さゆ」と囁きながら、何度もさゆを自身で貫く。
「タキ・・・好き・・・・」
その声をタキは、深いキスで受け止めた。腰の動きが段々早くなる。舌を絡めてキスをしながら、さゆが少し痛みを感じ始めた頃、タキが大きく息を吐いた。横に転がって、大きな息を繰り返した。さゆは今頃になって恥ずかしくなって来て、真っ赤になって掛け布団にくるまる。
「どした、さゆ?やっぱり痛かった?ごめんね、強くし過ぎたね」
気だるい声でタキが呼び掛ける。さゆは何とかぶんぶん首を振った。
「ううん・・・は、はは、はずかしい・・・」
「大丈夫だよ。俺しか見てないんだから。すごく可愛かったよ」
身体も、感じている様子も、みんなタキに見せてるから恥ずかしいんだよと思ったけれど、なんだかさゆは幸せで、タキの胸に顔を押し付けた。汗と体液の匂いがする。そのまま二人、梅雨の雨の音を聞きながら、眠りに落ちていった。
いつの間にか六月が、始まっていた。
梅雨は電車内まで、もあっと雨の匂いがする。朝、満員の湘南新宿ラインに揺られながら、タキは手元のスマフォに目を落とした。そこにはこの頃タキが注目しているニュースが表示されている。
『AV新法、遂に成立へ』
この法律が施行されれば、契約後であっても撮影された映像の公表を止められるという。タキの映像も未だにまれにネットで見かけるけれども、タキ自身は、それには声を上げる気はなかった。例え何を言われても、これは自分の人生の一部だと思う。ただ。
(さゆがこれで少し、自由に近づけるかな)
もし彼女の映像がどこかで保管され、何かのはずみで公表されたら。この法律によって、それを差し止め出来るかも知れない。
横浜ランドマークタワーが光っている。さゆの画家としての活動にまた少し、光の見える朝だった。
この頃のさゆの創作ペースは、今までで最速かも知れない。一週間に一枚程度のペースで、作品を仕上げている。
(でも、まだ足りない)
休みの日は朝から家事を済ませ、早々に作品に取り掛かる。今は新緑の鎌倉を、水彩画で表現するのに夢中だ。
(秋にまた、個展をしたいなあ)
自分はいつまで生きているんだろう。きっと体力はどんどん減っていく。生きている内にあと、何枚絵を描けるんだろう。二十代の頃は、きっと年を取ったら描きたいものなんて無くなってゆくと恐れていたけれど、逆だった。
残り時間が1日減るごとに、毎日違う世界のうつくしさに、より気付かされる。そしてそれを表現し切りたくなるのだ。
(鎌倉の海を、銀色の色鉛筆を基調に表現したら、どうなるかな。魚も描き入れて)
夕方までひたすらに絵筆を動かして、大きな山門を水彩紙に描き出しながら、もう次の絵の構想を練っている。鎌倉の海の絵は、もう二十枚は描いたのに。
そこでさゆはふと、ルークのブラッシングとノミチェックを今日中にやりたいと思っていたことを、思い出した。
「ルーク」
呼んでみたけれど、返事がない。珍しいなと思い、リビングを覗く。
「ルーク?」
ソファの下やカーテンの影もくまなく探すけれど、ルークの姿は微塵もない。おかしい。今までこんな事は無かった。
「ルーク、どこ、ルーク」
不安に駆られて庭に出て、ウロウロと歩き回る。いない。思い付いて風呂とトイレも見たけれど、それでも見当たらない。
「そんな、ルーク・・・」
さゆは自分の部屋に戻り、押し入れやベッドの下、衣服の隙間も全て見てみる。
(あとは・・・)
タキの部屋だ。タキのいない時に入った事はないけれど、今は仕方ない。
「ごめんね、入るね、タキ」
ベッドをひっくり返す。いない。名前を呼びながら、隅々まで探すけれど、遂にルークは影形も無かった。さゆは、猫は最期には飼い主の前からひっそりと姿を消すという話を思い出して、ぞっとした。
「ルーク!」
さゆは押し入れを開ける。
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