恋は未完のままでいい

湯否

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素敵な高校生活

1話

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バンッ!!!


「起きてー朝ー!」


突然の大きな物音と大きな声に飛び起きると、2個下の妹がドアの開いた向こう側で立っていた。

「び…っくりしたぁ…。」

もう一度仰向けになり、ほっと一息つく。

「円ー!あたしのネクタイ知らない?」

さっきとは違う大きな声にまた起き上がると4個上の姉が部屋の中をキョロキョロしていた。

「知らないよ…なんでここにあんの…。」

「だよねー…あ!この漫画の続き買ったの?!言ってよー…家帰ったら読も。」

「はあ…。ネクタイは?」

「あ!!ネクタイ!…おかーさーん!!」

姉が騒々しく部屋から出て行くのを音で確認しながらベッドから足を下ろした。

目覚まし時計を見て日付を確認する。


そうか…やっぱそうだ!今日から俺、高校生だ…!


4月が始まり、今日は高校生活のスタートの入学式がある。俺はこの日をずっと楽しみにしていた。中学生最後の1年全てを注いで、この高校に入るためにめちゃくちゃ勉強をしてきた。

俺が今日入学する高校は、亜麻高校。俺の住む所ら辺で1番学力が高く、制服がそこそこイケてて、校則のゆるい高校である。

馬鹿な俺でも頑張れば入れるんだ。うう…俺、本当良く頑張ったよな。よくやった、俺。

ここに入りたかった理由はひとつ。家から1番近くにあること。ふたつ、俺と仲のいい奴らがいること。みっつ、橘淳弥がいないこと。




橘淳弥…、昔は仲が良かった。忘れもしない、小学5年生の夏のことだ。俺はその当時淳弥とばっかりいて、あいつに好きな子全員取られたんだ。その頃からあいつは背も伸びてきたし、人見知りなだけでクールだとか言ってキャーキャー言われ、両親譲りの美形が完成形に近づいていたこともあってモテていた。それはもうすごくモテていた。俺の好きな子をさりげなく盗っていくくせにフるんだよな。俺としては付き合ってくれた方がよっぽど良かった。そんなことされると自信なくなるんだよなぁ。


そんな俺にもいいことってあるもので、学年で可愛いって噂の子から告白された。そんなの断る理由なんてなかったけど、初めての告白だったから俺は3日返事を待ってもらうことにした。そのことは当時仲が良かったからあいつには話した。それから、3日が経って俺はその子に返事をしようとしていた。そんなタイミングで俺は、あいつに声をかけられた。そこであいつなんて言ったと思う?本当信じられないんだよ。


「お前に告った奴、俺と付き合うから。」


いつもと変わらない表情で言うそいつが嫌に憎く見えた。その言葉で俺は今までの好きな人のこと、ある程度溜まっていたあいつへの嫉妬で、俺は我慢の限界を迎えた。



パンッ!!!



「ふざけんな!!!!お前なんて嫌いだ!…大嫌いだ…。」


俺は思いっきりあいつの頬を叩いて、逃げた。それからだった。あいつとは喋らなくなった。
クラスは違ったし、仲のいい友達は他にいたから、それからの日々に変わった変化はなかった。ただ成長していく中でいろんな噂を聞いた。


「顔のいいヤンキーと仲がいい」
「毎日違う女を連れて歩いている」
「ヤるのが上手い」


…いや、最後のは別に要らない情報だけど。


もう俺の知るあいつは居なくなった。それはきっといいことだ。変わっていけばいいんだ。俺の知らない人になっていけば、俺はあいつを忘れられる。俺は何故ここまで、あいつにこだわるんだろう。考えなきゃいいのに。忘れられないのは何故だろう…。

でも俺は今日から「あいつのいない環境」に行く。そのために俺はここまで頑張ったのだから。



よし俺はやってやるぞ!!!
この高校生活めっちゃ充実してやる!!!



「円ー…あ!!ねえ!円のパンツ穴空いてんだけどwwwwめっちゃウケるwwwストーリーあげてい?w」

「なにそれ、超笑えるwwwどうやったら空くの、そこ。教えてwwwwww」

「あんた達朝からうるさいよ!!円!あんた入学式…って、何その穴wwwwwww」

「お母さんにまで笑われてやんのwwwwwww」



「…っお前ら全員出てけ!!!!!!」



決心を軽く家族に踏みにじられ、高校生活最初の朝を迎えた。



_________________________________

パンツはこのあと変えました。やっぱ、し◯むらのパンツだよね、最高。
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