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第2話 ヘッポコ・エイト2世 VS ヘッポコ・エイト1世
夢の話し
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その夜は満月だった。野営の準備を終えたぼくは、なんの気無しに月を見上げた。
こうこうと光る満月のなかから何かがこちらに向かって近づいてくる。影はどんどん大きくなり、ぼくの目にはっきりと写った。
ヘッポコ・エイト2世だ!大きなフクロウの背に乗ってヘッポコ・エイト2世が月光の中から踊り出た。
フクロウはヘッポコ・エイト2世を背に乗せたまま屋敷の入口に向かって急降下すると勢いそのままに屋敷に突入した。
羽をひろげたフクロウは凄まじいスピードで「無重力の間」を通過すると、その羽はついぞ音を出すことなく「無音の間」をも突破した。
あれほどたくさんの大人たちが苦戦した「無重力」と「無音」を、一瞬で攻略したあざやかさに、ぼくはあっけにとられると同時に恐さすら感じた。
金庫室にたどり着くとヘッポコ・エイト2世はフクロウの背から降りてゆっくり金庫に歩いて行った。金庫の前で2世が立ち止まると触れてもいないのに「カチキーン」と心地よい音がして真ん中から両開きに金庫の扉が開いていった。それは駆け寄ってくる子供を手を広げて受け止める父親のようだった。開いた金庫のなかは差し込む月明かりをギュウギュウに詰まった金銀宝石が反射してキラキラと輝きなんとも幻想的な光景だった。
まもなく金庫室のあちこちから催涙ガスの白い煙が噴射される。ヘッポコ・エイト2世はポケットからテニスボールくらいの球体を出すと入口に向かって転がした。催涙ガスは意志でもあるかのように転がるボールにどんどん吸い込まれると今度は玄関に向けて噴射を始めた。
僕は、どんどんと目の前に立ち込める煙を必死で手で払いのけながら続きを見ようと目を凝らしたが押し寄せる睡魔に負けたようで、そこで記憶が途切れてしまった。
目に当たる光でぼくは目を覚ました。あたりはすっかり朝になっていた。体が重く玄関前からすぐに起き上がることができないぼくは顔だけ金庫室に向けた。金庫の扉は閉まっていて、月明かりも、フクロウも、ヘッポコ・エイト2世の姿もそこには無かった。とても幻想的な夢をみていたのだろうか?あれは現実だったのか?
確かめる方法は1つしかない。ぼくは弱音を吐くヒザを励ましながら立ち上がると玄関の呼び鈴を何度も何度も鳴らし1世を呼んだ。
こうこうと光る満月のなかから何かがこちらに向かって近づいてくる。影はどんどん大きくなり、ぼくの目にはっきりと写った。
ヘッポコ・エイト2世だ!大きなフクロウの背に乗ってヘッポコ・エイト2世が月光の中から踊り出た。
フクロウはヘッポコ・エイト2世を背に乗せたまま屋敷の入口に向かって急降下すると勢いそのままに屋敷に突入した。
羽をひろげたフクロウは凄まじいスピードで「無重力の間」を通過すると、その羽はついぞ音を出すことなく「無音の間」をも突破した。
あれほどたくさんの大人たちが苦戦した「無重力」と「無音」を、一瞬で攻略したあざやかさに、ぼくはあっけにとられると同時に恐さすら感じた。
金庫室にたどり着くとヘッポコ・エイト2世はフクロウの背から降りてゆっくり金庫に歩いて行った。金庫の前で2世が立ち止まると触れてもいないのに「カチキーン」と心地よい音がして真ん中から両開きに金庫の扉が開いていった。それは駆け寄ってくる子供を手を広げて受け止める父親のようだった。開いた金庫のなかは差し込む月明かりをギュウギュウに詰まった金銀宝石が反射してキラキラと輝きなんとも幻想的な光景だった。
まもなく金庫室のあちこちから催涙ガスの白い煙が噴射される。ヘッポコ・エイト2世はポケットからテニスボールくらいの球体を出すと入口に向かって転がした。催涙ガスは意志でもあるかのように転がるボールにどんどん吸い込まれると今度は玄関に向けて噴射を始めた。
僕は、どんどんと目の前に立ち込める煙を必死で手で払いのけながら続きを見ようと目を凝らしたが押し寄せる睡魔に負けたようで、そこで記憶が途切れてしまった。
目に当たる光でぼくは目を覚ました。あたりはすっかり朝になっていた。体が重く玄関前からすぐに起き上がることができないぼくは顔だけ金庫室に向けた。金庫の扉は閉まっていて、月明かりも、フクロウも、ヘッポコ・エイト2世の姿もそこには無かった。とても幻想的な夢をみていたのだろうか?あれは現実だったのか?
確かめる方法は1つしかない。ぼくは弱音を吐くヒザを励ましながら立ち上がると玄関の呼び鈴を何度も何度も鳴らし1世を呼んだ。
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