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第1話 ヘッポコ・エイト2世 VS おもちゃ屋
その少年
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ブロック大セールを翌日に控えた夜遅く「ワルザラス」の前に男の子が1人立ってた。
月は出ていたはずなのに、いつしか隠れてあたりは暗い。
男の子はスタスタと「ワルザラス」の入リ口に歩いていくとドアの取っ手に手を掛けた。お店の入り口には何個もカギがある上に、最新の電子錠までかかっているはずなのに、最初からそんなものが無かったみたいにドアはスルリと開いた。
ドアが開くと遠くの方で「ピュー、ピュー」って口笛の音がして、何かがたくさん走って来る音がする。
目を凝らして見るとスルリと開いたドアの隙間から犬や猫やネズミなど、とにかく色んな動物がお店の中になだれ込んでいった。なだれ込んでいった動物達は今度はブロックを持って出てくると町のどこかへと運んで行った。
空の上からは月を隠していた黒塗りの飛行船がスーッと降りてきて、飛行船の窓から白い顎ひげのおじいさんが顔を出した。
おじいさんが何かを操作すると、飛行船から大きな掃除機が出てきて「ワルザラス」の外に置いてあったおもちゃを全部吸い取ると、これもどこかに運んで行った。
最後に男の子は開いていいたドアをパタンと閉めると、そのまま何もなかったみたいに、これまたどこかへ歩いて行った。
いよいよ大セールの朝のこと「ワルザラス」の前には、ブロックを買いに町中の大人が押し寄せて、お店が開くのを今か今かと待っていた。
ワルザラスの店長は、たいそうご機嫌で大人達をかき分けてお店の前まで行くと、腰につけたカギ束をジャラジャラさせながら入口のカギを開けていった。そうそして店長は信じられないものを見た。
店長がドアから入るとお店のなかは空っぽだったのだ。昨日まで破裂しそうなくらいギュウギュウに詰め込まれた数百、数千のブロックのおもちゃが跡形もなく消えてしまった。まったく全然ひとつもない。
店長は目と口を大きく開いてただ立ち尽くし、今度はヘナヘナと床に座り込むとアワをふいてひっくり返って気絶してしまった。
それから少しあとの話し「ワルザラス」は潰れて町から無くなり、お家で寝込んでいたおもちゃ屋のおじいさんのもとに1通のバースデーカードが届けられた。
おじいさんがバースデーカードを開くとそこにはこんなことが書いてあった。
『このあいだは素敵なブロックをありがとう!ところで、おじいさんの誕生日はいつだったかな?ボクうっかり聞くのを忘れちゃったよね。
教えてもらっても、また忘れちゃうといけないから先にプレゼントを渡しておくね。
おじいさんとおばあさんのおもちゃ屋さんに行ってみて、ボクからのバースデープレゼントを置いておくよ。 ヘッポコ・エイト2世より』
バースデーカードを読んだおじいさんは、今はすっかり空き地になってしまったおもちゃ屋の跡地に行ってみた。するとおもちゃ屋の跡地で空き地だったところには、すっかりおもちゃ屋が建っていた。新しいおもちゃ屋さんのなかも新しいおもちゃがどっさりだったから、おじいさんもわけがわからず、夢を見ているみたい。
新しくできたおもちゃ屋さんは、床や天井も、壁も窓も、柱もドアも全部色とりどりのおもちゃのブロックでできていた。
小さなブロックの1つ1つは特別な接着剤でくっついていて、どんなに押しても引っ張っても取れないし、全部がくっついてカチカチでトラックがぶつかったってへっちゃらくらい頑丈だった。
おじいさんは嬉しくて嬉しくてポロポロ泣いた。
町中の子供たちは、自分達がおねだりしたブロックがおもちゃ屋さんになったのが嬉しくて、自分がどれだけがんばって駄々をこねたかを口々に自慢した。
こうしてみんなが大好きなおもちゃ屋さんが町に帰って来た。おじいさんも、おばあさんも、子供も大人も、みんな幸せ
さてと、ぼくの話しはこれでおしまい。
そうだ!もし君が旅先かなんかで、ブロックでできたおもちゃ屋さんを見かけたら、ぜひ入ってみることをオススメするよ。
そこには、笑顔で遊ぶ子供達がたくさんいて、優しいおじいさんとおばあさんがいるからね。
そして君の運がよければ、おもちゃ屋さんの中を満足そうに眺めているヘッポコ・エイト2世を見つけることができるかもしれないよ。
第1話おしまい
月は出ていたはずなのに、いつしか隠れてあたりは暗い。
男の子はスタスタと「ワルザラス」の入リ口に歩いていくとドアの取っ手に手を掛けた。お店の入り口には何個もカギがある上に、最新の電子錠までかかっているはずなのに、最初からそんなものが無かったみたいにドアはスルリと開いた。
ドアが開くと遠くの方で「ピュー、ピュー」って口笛の音がして、何かがたくさん走って来る音がする。
目を凝らして見るとスルリと開いたドアの隙間から犬や猫やネズミなど、とにかく色んな動物がお店の中になだれ込んでいった。なだれ込んでいった動物達は今度はブロックを持って出てくると町のどこかへと運んで行った。
空の上からは月を隠していた黒塗りの飛行船がスーッと降りてきて、飛行船の窓から白い顎ひげのおじいさんが顔を出した。
おじいさんが何かを操作すると、飛行船から大きな掃除機が出てきて「ワルザラス」の外に置いてあったおもちゃを全部吸い取ると、これもどこかに運んで行った。
最後に男の子は開いていいたドアをパタンと閉めると、そのまま何もなかったみたいに、これまたどこかへ歩いて行った。
いよいよ大セールの朝のこと「ワルザラス」の前には、ブロックを買いに町中の大人が押し寄せて、お店が開くのを今か今かと待っていた。
ワルザラスの店長は、たいそうご機嫌で大人達をかき分けてお店の前まで行くと、腰につけたカギ束をジャラジャラさせながら入口のカギを開けていった。そうそして店長は信じられないものを見た。
店長がドアから入るとお店のなかは空っぽだったのだ。昨日まで破裂しそうなくらいギュウギュウに詰め込まれた数百、数千のブロックのおもちゃが跡形もなく消えてしまった。まったく全然ひとつもない。
店長は目と口を大きく開いてただ立ち尽くし、今度はヘナヘナと床に座り込むとアワをふいてひっくり返って気絶してしまった。
それから少しあとの話し「ワルザラス」は潰れて町から無くなり、お家で寝込んでいたおもちゃ屋のおじいさんのもとに1通のバースデーカードが届けられた。
おじいさんがバースデーカードを開くとそこにはこんなことが書いてあった。
『このあいだは素敵なブロックをありがとう!ところで、おじいさんの誕生日はいつだったかな?ボクうっかり聞くのを忘れちゃったよね。
教えてもらっても、また忘れちゃうといけないから先にプレゼントを渡しておくね。
おじいさんとおばあさんのおもちゃ屋さんに行ってみて、ボクからのバースデープレゼントを置いておくよ。 ヘッポコ・エイト2世より』
バースデーカードを読んだおじいさんは、今はすっかり空き地になってしまったおもちゃ屋の跡地に行ってみた。するとおもちゃ屋の跡地で空き地だったところには、すっかりおもちゃ屋が建っていた。新しいおもちゃ屋さんのなかも新しいおもちゃがどっさりだったから、おじいさんもわけがわからず、夢を見ているみたい。
新しくできたおもちゃ屋さんは、床や天井も、壁も窓も、柱もドアも全部色とりどりのおもちゃのブロックでできていた。
小さなブロックの1つ1つは特別な接着剤でくっついていて、どんなに押しても引っ張っても取れないし、全部がくっついてカチカチでトラックがぶつかったってへっちゃらくらい頑丈だった。
おじいさんは嬉しくて嬉しくてポロポロ泣いた。
町中の子供たちは、自分達がおねだりしたブロックがおもちゃ屋さんになったのが嬉しくて、自分がどれだけがんばって駄々をこねたかを口々に自慢した。
こうしてみんなが大好きなおもちゃ屋さんが町に帰って来た。おじいさんも、おばあさんも、子供も大人も、みんな幸せ
さてと、ぼくの話しはこれでおしまい。
そうだ!もし君が旅先かなんかで、ブロックでできたおもちゃ屋さんを見かけたら、ぜひ入ってみることをオススメするよ。
そこには、笑顔で遊ぶ子供達がたくさんいて、優しいおじいさんとおばあさんがいるからね。
そして君の運がよければ、おもちゃ屋さんの中を満足そうに眺めているヘッポコ・エイト2世を見つけることができるかもしれないよ。
第1話おしまい
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