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ギリギリにならないとできない人って俺だけじゃないよね?
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「よし、やるぞ!」
菜々が帰った後、俺はノートパソコンを立ち上げて作業に取り掛かった。
「と、その前にちょっとだけ」
なんてことはあるはずもなくリモコンを手に取りプレーヤーを起動する。
だってほら、先人の知恵に学ぶっていうじゃん?
だからまぁ、今はたった一週間で一タイトル仕上げるとか、そういうことができる時間はとうに過ぎ去ったとかそういう胃が痛くなるような現実からは目を逸らさせて頂くということで……
タイトル:未定
そろそろ日が傾きかけた頃、俺の目の前にあるノートパソコンにはその一行のみが表示されていた。
「なぜこうなった……」
いや、なぜってアニメ見てたからなんだけどさぁ……
もちろんずっとアニメを見ていたわけじゃないぞ。 パソコンの前にも向かい合った。 鋼の意志をもってゲームに手を付けることもなかった。 ベットの誘惑も断ち切った。 それでもたった一行しか進まなかったんだよ。
……まぁ、その代わりラノベを一シリーズ読破してしまったわけなのだが。
「やべぇ、何も浮かばねぇ……」
日が暮れて三時間経った。
それなのに目の前のノートパソコンに表示されていたのは依然タイトル:未定の一行だけ。
だけど、今更焦ったところでアイデアなんて出るはずもない。
理由は明確に分かっている。 ついさっき晩飯を食って風呂から上がったばかりだからだ。
だから、眠たいのは致し方ない訳で、睡魔と格闘するなんて無駄な足掻きに過ぎない。
だって眠い時って全然頭働かないじゃん? そんな状況で小説なんて書けないじゃん?
「というわけで10分だけ」
適度な仮眠は脳を活性化させるって言うしな。
だからちょっとだけ、おやすみなさい。
そして翌日の月曜日 AM9:17
菜々との約束の日まであと六日。
「やっちまった……」
そう、気が付いたら朝になっていたのだ。
寝いている間に妖精さんがすべて終わらせてくれていることを期待してノートパソコンを立ち上げてみた。 しかし、というか当然のことながら表示されているのは依然タイトル:未定の一行のみ。
現実なんてこんなもんだ。
「はぁ、学校行こ……」
ていうか、どうでもいいけど学校間に合うのか? まぁ、きっと無理だろうな……
「よう、奏斗。今日も相変わらず重役出勤だな」
「賢吾か。今日もってなんだ。俺がいつ遅刻した?」
クラスメイトA改め里見健吾が話しかけてきたのは、もはや予定通りとさえ言える遅刻をし、やっとの思いで自分の席に辿り着いた時だった。
「お前、先週も三回は遅刻してただろ」
「二回だ。 しかもちゃんと一限には間に合ってただろ。 そんなもん遅刻って言わねーんだよ」
「いや、言うだろ」
「そんなことより早く席に戻れ。 チャイムなるぞ」
「ほんと、お前にだけは言われたくねーよ……」
最後に、正当すぎる文句を残して賢吾は自分の席へと戻っていった。
そして賢吾が去ってすぐに教師が入ってきて授業を始める。
「あんたまだ諦めてないの?」
「菜々か、当たり前だ。たった一日で諦めるわけないだろ」
授業も終わり、小説の内容を考えながら帰ろうとした時、菜々が話しかけてきた。
「で、どうなのよ?」
「なにが?」
「小説の進行状況に決まってるでしょ」
「……まぁ、ぼちぼちかな……」
「つまり、全然進んでないのね。 どうせ先人の知恵とか言ってラノベ読んで一日潰したんでしょ」
「ぐぅっ……」
菜々が今の、ていうか昨日の俺の状況を正確に言い当てる。
何で分かんだよこいつ……
「顔に一行も進んでませんって書いてあるからよ」
ついでに俺の心情も。
「ナチュラルに人の心読んでんじゃねー!」
タイトル:未定
あらすじ:中三の冬、主人公A(名前未定)は十年間片思いしていた幼馴染B(名前未定)に告白する。しかし、結果は惨敗。好きな人がいるという理由で振られてしまう。Aは自分を選ばなかったBを見返すことを決意する。
家に帰って一気にあらすじを書き上げた。
今日の俺は昨日の俺とは違う。
「よし!ゲームしない、アニメ見ない、ラノベ読まない。今度こそやってやる!」
そう高らかに宣言したのは今から五時間前、家に帰ってすぐ、午後五時の事。
いや待て、言いたいことは分かる。 なぜ五時間もあってなぜあらすじしか書いてないんだと言いたいんだろう。
確かに俺は昨日の俺とは違う。 宣言通りゲームもしてないし、アニメも見てない、ラノベも読んでない。
ただ、一つ計算外なことがあった。
皆もテスト期間とかに「ちょっと10分だけ」と言って布団に入って気が付いたらもう夕方だったという経験をしたことがあるだろう。
つまりはそういうことだ。
だって学校終わって家帰ったら眠くなるじゃん……
だからちょっとだけ仮眠を取るつもりでベットに入ったら目が覚めた時には完全に日が落ちてしまっていた。
そして今日はまだ二日目だ。 明日も明後日も長い戦いは続く。
ここで体調を崩すのは愚策だ。
「無理矢理にでも寝るか」
そう自分に言い聞かしてベットに潜る。
目を閉じて、俺は今朝のような失敗を二度と犯さないように明日の計画を組み立てる。
明日は朝5時に起きて作業しよう。
早朝は脳がよく働くって言うしな。
だから明日に向けて今日は早く寝よう。
というわけでおやすみなさい。
また明日……
菜々が帰った後、俺はノートパソコンを立ち上げて作業に取り掛かった。
「と、その前にちょっとだけ」
なんてことはあるはずもなくリモコンを手に取りプレーヤーを起動する。
だってほら、先人の知恵に学ぶっていうじゃん?
だからまぁ、今はたった一週間で一タイトル仕上げるとか、そういうことができる時間はとうに過ぎ去ったとかそういう胃が痛くなるような現実からは目を逸らさせて頂くということで……
タイトル:未定
そろそろ日が傾きかけた頃、俺の目の前にあるノートパソコンにはその一行のみが表示されていた。
「なぜこうなった……」
いや、なぜってアニメ見てたからなんだけどさぁ……
もちろんずっとアニメを見ていたわけじゃないぞ。 パソコンの前にも向かい合った。 鋼の意志をもってゲームに手を付けることもなかった。 ベットの誘惑も断ち切った。 それでもたった一行しか進まなかったんだよ。
……まぁ、その代わりラノベを一シリーズ読破してしまったわけなのだが。
「やべぇ、何も浮かばねぇ……」
日が暮れて三時間経った。
それなのに目の前のノートパソコンに表示されていたのは依然タイトル:未定の一行だけ。
だけど、今更焦ったところでアイデアなんて出るはずもない。
理由は明確に分かっている。 ついさっき晩飯を食って風呂から上がったばかりだからだ。
だから、眠たいのは致し方ない訳で、睡魔と格闘するなんて無駄な足掻きに過ぎない。
だって眠い時って全然頭働かないじゃん? そんな状況で小説なんて書けないじゃん?
「というわけで10分だけ」
適度な仮眠は脳を活性化させるって言うしな。
だからちょっとだけ、おやすみなさい。
そして翌日の月曜日 AM9:17
菜々との約束の日まであと六日。
「やっちまった……」
そう、気が付いたら朝になっていたのだ。
寝いている間に妖精さんがすべて終わらせてくれていることを期待してノートパソコンを立ち上げてみた。 しかし、というか当然のことながら表示されているのは依然タイトル:未定の一行のみ。
現実なんてこんなもんだ。
「はぁ、学校行こ……」
ていうか、どうでもいいけど学校間に合うのか? まぁ、きっと無理だろうな……
「よう、奏斗。今日も相変わらず重役出勤だな」
「賢吾か。今日もってなんだ。俺がいつ遅刻した?」
クラスメイトA改め里見健吾が話しかけてきたのは、もはや予定通りとさえ言える遅刻をし、やっとの思いで自分の席に辿り着いた時だった。
「お前、先週も三回は遅刻してただろ」
「二回だ。 しかもちゃんと一限には間に合ってただろ。 そんなもん遅刻って言わねーんだよ」
「いや、言うだろ」
「そんなことより早く席に戻れ。 チャイムなるぞ」
「ほんと、お前にだけは言われたくねーよ……」
最後に、正当すぎる文句を残して賢吾は自分の席へと戻っていった。
そして賢吾が去ってすぐに教師が入ってきて授業を始める。
「あんたまだ諦めてないの?」
「菜々か、当たり前だ。たった一日で諦めるわけないだろ」
授業も終わり、小説の内容を考えながら帰ろうとした時、菜々が話しかけてきた。
「で、どうなのよ?」
「なにが?」
「小説の進行状況に決まってるでしょ」
「……まぁ、ぼちぼちかな……」
「つまり、全然進んでないのね。 どうせ先人の知恵とか言ってラノベ読んで一日潰したんでしょ」
「ぐぅっ……」
菜々が今の、ていうか昨日の俺の状況を正確に言い当てる。
何で分かんだよこいつ……
「顔に一行も進んでませんって書いてあるからよ」
ついでに俺の心情も。
「ナチュラルに人の心読んでんじゃねー!」
タイトル:未定
あらすじ:中三の冬、主人公A(名前未定)は十年間片思いしていた幼馴染B(名前未定)に告白する。しかし、結果は惨敗。好きな人がいるという理由で振られてしまう。Aは自分を選ばなかったBを見返すことを決意する。
家に帰って一気にあらすじを書き上げた。
今日の俺は昨日の俺とは違う。
「よし!ゲームしない、アニメ見ない、ラノベ読まない。今度こそやってやる!」
そう高らかに宣言したのは今から五時間前、家に帰ってすぐ、午後五時の事。
いや待て、言いたいことは分かる。 なぜ五時間もあってなぜあらすじしか書いてないんだと言いたいんだろう。
確かに俺は昨日の俺とは違う。 宣言通りゲームもしてないし、アニメも見てない、ラノベも読んでない。
ただ、一つ計算外なことがあった。
皆もテスト期間とかに「ちょっと10分だけ」と言って布団に入って気が付いたらもう夕方だったという経験をしたことがあるだろう。
つまりはそういうことだ。
だって学校終わって家帰ったら眠くなるじゃん……
だからちょっとだけ仮眠を取るつもりでベットに入ったら目が覚めた時には完全に日が落ちてしまっていた。
そして今日はまだ二日目だ。 明日も明後日も長い戦いは続く。
ここで体調を崩すのは愚策だ。
「無理矢理にでも寝るか」
そう自分に言い聞かしてベットに潜る。
目を閉じて、俺は今朝のような失敗を二度と犯さないように明日の計画を組み立てる。
明日は朝5時に起きて作業しよう。
早朝は脳がよく働くって言うしな。
だから明日に向けて今日は早く寝よう。
というわけでおやすみなさい。
また明日……
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