碧の精霊王

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一章

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「いや~、ごめんごめん。会いに来るのが遅くなっちゃって。」


一際大きな魔力は、主神オーディナル様のものだった。


「オーディナル様。」
「オーディナル様だぁ。」
「....。」

僕は、何も言えなかった。何故、転生する世界が違ったのか、なぜ今まで会いに来てくれなかったのか、何故、助けてくれなかったのか。

だが、そんな事よりも、”父”という存在が恐ろしくて怖くて、何も、何も考えられなかった。何もできなかった。


「っ、ルイ・・!呼吸をするんだ!」
「?、??、ッ...ッ...、ハッ...ヒュッ...。」
「そうだ、そう、上手だね。」
「....っや、っ、。」
「どうしたの?ルイ・・。」
「や、やだ、ごめ、なさ、。っ、と、さん。」
ルイ・・?」

その、名前は嫌だ。嫌。僕が僕じゃなくなる。

「あ!オーディナル様!!」
「うん?なんだい?」
「碧のの前の父が、そのまぐわうときに、呼んでいた名前だ。」
「...ああ、何と、愚かな。別の世界での名前に真名を使われてしまうだなんて。」
「しかも、汚されるときに呼ばれるなんて、最悪ですね。」
「ヒッ、ヒュッ、ちゃん、と、やるから。とう、さ。ヒッ...やだ、やだ。」
「ああ!ル、ああ~~~!!!」
「オーディナル様、落ち着くんじゃ。」
「碧の、おいで。ボクがわかるかなぁ?」
「ヒッ、...ッ、に、さま?」
「そうそう~。ボクとギュッてしようかぁ。」
「...ッ、....ッ、ぎゅっ?」
「そう~。ギュ~。」

僕を抱きしめてくれる兄様。背中を一定のリズムで叩いてくれるので呼吸もうまくできるようになった。

「んぅ、にぃ、さま。」
「なぁに?」
「...あったかい、ありがと。」
「ふふふ、よかったぁ、落ち着いた?」
「ん。」

サスサスと目元の涙を拭うように頬を包んで撫でてくれる。さっきまでの恐怖感が吹っ飛んで行ってしまったのかと思うくらい落ち着いた。やっぱり、自分の居場所が、世界がこちらなんだと実感できた。

「んんんあぁあああ~!!」
「オーディナル様、落ち着け!!」
「なん、くそ、ゔぅ~。」
「語彙がねえ!!」
「なんてクソなんだ!!僕の可愛い愛息子を!!」
「ええ、世界を越えて殺しに行きたいぐらいです。」
「可愛い我が子の名前も呼べないなんて!!こうなったら、改名だ!!仲間はずれは可哀想だからね!!全員改名だよ!!」

プンプンと頬を膨らませて怒るオーディナル様。僕は、オーディナル様の纏うヒラヒラした真っ白の布の端をゆるく掴んだ。

「オー、ディナルさま、。」
「!!なぁに?」
「...おこ、てる?」
「怒ってないよ。僕のことはまだ怖い?」
「あの、人じゃないって分かってる、けど。」
「名前を呼んでしまったからね、これから皆に新しい真名をつけようと思うのだけど。いいかい?」
「なまえ、あたらしい。」
「うん。君だけ変えたらひとりぼっちだもんね。みんな変えるよ!」
「みんな、いっしょ?」
「そう!」
「みんな、一緒ならいいよ。」

よしよし、とオーディナル様にも頭を撫でてもらい、気分も少し上がってきた。

「うーん、よし、決めた!」
「はやぁ。」
「黒の精霊王、テネブラエシア
 白の精霊王、フォスカナシア
 翠の精霊王、ロジェフィスィ
 朱の精霊王、イルピュールミオ
 そして、
 碧の精霊王、ノエルムルだ。」
「僕の名前、ノエルムル?」
「そう、可愛いノエル。僕の愛しい子。」
「俺はイルピュールミオ?長ぇな。」
「イルと呼ぼうね。ノエル。」
「うん。イル兄さん。」
「オーディナル様、天才。好き。」
「私はロジェフィスィ?まあ、朱の、イルよりは言いやすいですね。」
「...一言多いんだよ。」
「ロジェだね。」
「ロジェ兄さん?」
「!!!!!オーディナル様!!!大好きです!!!」
「我も長くない?」
「ボクも長ーい。」
「ふたりは、テネアとフォスだね!ノエル、呼んであげようか。」
「フォス兄者と、テネア兄様。」
「うむ、かわいい。」
「かぁわいい~。」

「「「「「おかえり、ノエル。」」」」」

みんなの声が重なって、僕に「おかえり」って。ああ、やっぱり、僕の居場所は此処なんだな。

「うん、ただいま!」


そう、笑って言えたんだ。

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