碧の精霊王

papiko

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一章

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僕は、精霊界に2000年ぶりに帰還した。僕の領域は、周りを水で覆われており、美しい空間だった。しかし、2000年も不在だった為、埃こそ積もってはいないが、生活感のない殺風景な空間になっていた。

ソファやテーブルはきれいに整頓されており、ベッドもシーツがシワひとつ無く敷かれていた。僕は、整ったものを崩したくなかったが、取り敢えず、シーツを被り、ベッドの端に座り込んだ。

精神汚染(強)が進み、足の付根まで黒ずみ、指先も黒く染まっていた。精神疲労(強)で異常なほどの眠気に抗えず、そのまま眠ってしまった。

しかし、すぐに目が覚めては、また眠るという安眠には程遠い眠り方をして逆に疲労が溜まっているのが分かる。

そんなときに、僕の領域内に誰かが侵入してきた。

「いるんだろ?碧の。」

魔力から朱の精霊王であることは分かったが、思い出してしまった過去の記憶が精神疲労(強)による浅い眠りを繰り返すうちに表に出てしまったようで、過去の記憶と重なり合わさって一種のフラッシュバック状態に陥ってしまった。

「...ひっ、...ぁ、こない、で...。」
「碧の?」
「...ぁ、...ごめ、なさ、...。」

朱の精霊王はベッドの上で怯え、震える僕に気付いたのか、ベッドに駆け寄ってきた。

「どうした。」
「...っ、だい、...じょぶ。」
「大丈夫ではないだろう。何を怯えている。」
「...っ、っぁ、みて、いい。...っは、っ。」

朱の精霊王は、躊躇うことなく僕の額に手を当てると、僕の記憶を読み取っていく。もちろん見ていて、気分の良いものではないだろう。だが、震え、怯えている理由が過去の、前世の父親のせいだと分かり、暴力を振るわれないように縮こまってると理解した朱の精霊王は、僕の背を擦った。

「ふむ、碧の。」
「...な、に。」
「俺を覚えているんだな?」
「...ん。」
「なら、俺のことも理解してるな?」
「...うん。」

朱の精霊王は、面倒くさがりだが、面倒見が良い。この矛盾が面白いと、いつも翠の精霊王に遊ばれていた。
面倒見が良い朱の精霊王は、僕がいるベッドに上がると、シーツごと抱き寄せて膝に乗せた。

「!!な、に...すっ、。」
「よしよし、頑張ったなぁ、碧の。おかえり。」
「...っ、...っ。」
「おー、泣け泣け。碧のは、水を司ってるから涙が止まんねぇかもしれねぇな。」
「...そ、なことっ、ないっ、。」
「ははっ、言い返せる元気は戻ったか?その調子だ。溜め込むんじゃねぇぞ。」
「...ん。」

朱の精霊王は、僕の頭を肩に埋めさせて撫でてくれる。前の世界で受けることのなかったものを簡単に与えてくれる。嬉しい。

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