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Ⅴ
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しばらくの間、リノスフェル、アリスロメオ、ロルフヘイズはイノフィエミスのもとに行くことができなかった。傾いた国を立て直し、他国からの使者を相手していたからだ。
「イノフィエミス王太子殿下は、ご無事なのですか?」
「はい、もちろん。」
「イノフィエミス殿下は、お元気なのですか?」
「今は休養中ですので、動けるようになったら報せを送ります。」
会う使者、全員からイノフィエミスのことを聞かれ、また国交の誓約も結び直してから、帰っていく。そんなことが続く中で、最も良くしてもらっている隣国の使者がやってきた。
「この度は、貴国の繁栄とイノフィエミス殿下の帰還を、心よりお慶び申し上げます。」
「ありがとうございます。誓約を結び直しに来てくださった使者の皆様に言われます。」
「それは、そうでしょう。貴国の近隣諸国は皆、イノフィエミス殿下のお力添えあってこそ均衡を保っていたのです。イノフィエミス殿下ひいては、貴国には感謝しかありませんよ。」
「...我々、王子は、彼、兄のことを知らなかったのです。ですが、兄が感謝され、称賛されるのは、とても嬉しいのです。」
「それはきっと、イノフィエミス殿下が殿下方の御母様に似ているからだと思います。」
「母、ですか?」
「はい、彼は青年の見た目で母のような包容力と知識量で、無表情でしたが褒めるべきところは称賛を、直すべきところには厳しい言葉を与えていました。」
「....。」
「だからこそ、近隣諸国の重鎮達は、ときに息子や孫であり、ときに母のように褒めてくださるイノフィエミス殿下に絆され、誓約を結び、近隣諸国同士でも和平条約を結んでいるのです。」
「.....やはり、兄が国王になった方が周辺国の王も貴族達も喜びます、よね。」
「....いいえ、我らを含めた近隣諸国では、貴殿が王位に着くことを望んでいます。」
「っ、何故。」
「彼は、過去に我々と和平条約と国交の誓約を結んだときから、.....例えるなら、人形のようだったのです。
父親、前国王に道具のように扱われ、和平条約締結の日でさえ、従者や護衛なんて居らず、身一つで会場にやってきたのです。
たかだか、10歳そこらの王族、しかも長男がですよ。会場にいた近隣諸国の重鎮はルーチェントローズ王国の裏を垣間見えていました。」
「....そんな、頃から。」
「ええ、ですから、どうか彼に、イノフィエミス殿下に愛を教えてあげてください。それから、十分な休養を。」
「...はい。」
それから、多くの誓約の話をして、隣国の使者が帰り際に扉の前でリノスフェルに問いかけた。
「もしや、イノフィエミス殿下にお会いになられていないのでは?」
「っ、ええ、まあ。使者の皆様が来てくださっているので、そちらを優先させております。下二人の王子も国の復興のために会っていないと思いますが。」
「なんと、それはいけませんね。我々が近隣諸国の使者の皆様に伝えましょう。」
「....な、にを?」
「我々、使者が帰ったら、すぐにイノフィエミス殿下のもとに行ってください。」
「...しかし、。」
「しかしもおかしもありませんよ。殿下方も多忙を極めていらっしゃるようですから、是非御兄様に褒めていただいてください。
そして、彼に家族の愛を、信頼を教えてあげてください。これは我ら使者ひいては各国の王の望みでもあります。」
「...ありがとうございます。一段落したら離れでしばし休養しようと思います。」
宣言された通り、各国の使者たちは波が引くように皆一斉に国に帰っていった。国内の情勢も落ち着き始め、王宮の再建も順調に進んでいるようで、久しぶりに王子三人で離宮に戻った。
「イノフィエミス王太子殿下は、ご無事なのですか?」
「はい、もちろん。」
「イノフィエミス殿下は、お元気なのですか?」
「今は休養中ですので、動けるようになったら報せを送ります。」
会う使者、全員からイノフィエミスのことを聞かれ、また国交の誓約も結び直してから、帰っていく。そんなことが続く中で、最も良くしてもらっている隣国の使者がやってきた。
「この度は、貴国の繁栄とイノフィエミス殿下の帰還を、心よりお慶び申し上げます。」
「ありがとうございます。誓約を結び直しに来てくださった使者の皆様に言われます。」
「それは、そうでしょう。貴国の近隣諸国は皆、イノフィエミス殿下のお力添えあってこそ均衡を保っていたのです。イノフィエミス殿下ひいては、貴国には感謝しかありませんよ。」
「...我々、王子は、彼、兄のことを知らなかったのです。ですが、兄が感謝され、称賛されるのは、とても嬉しいのです。」
「それはきっと、イノフィエミス殿下が殿下方の御母様に似ているからだと思います。」
「母、ですか?」
「はい、彼は青年の見た目で母のような包容力と知識量で、無表情でしたが褒めるべきところは称賛を、直すべきところには厳しい言葉を与えていました。」
「....。」
「だからこそ、近隣諸国の重鎮達は、ときに息子や孫であり、ときに母のように褒めてくださるイノフィエミス殿下に絆され、誓約を結び、近隣諸国同士でも和平条約を結んでいるのです。」
「.....やはり、兄が国王になった方が周辺国の王も貴族達も喜びます、よね。」
「....いいえ、我らを含めた近隣諸国では、貴殿が王位に着くことを望んでいます。」
「っ、何故。」
「彼は、過去に我々と和平条約と国交の誓約を結んだときから、.....例えるなら、人形のようだったのです。
父親、前国王に道具のように扱われ、和平条約締結の日でさえ、従者や護衛なんて居らず、身一つで会場にやってきたのです。
たかだか、10歳そこらの王族、しかも長男がですよ。会場にいた近隣諸国の重鎮はルーチェントローズ王国の裏を垣間見えていました。」
「....そんな、頃から。」
「ええ、ですから、どうか彼に、イノフィエミス殿下に愛を教えてあげてください。それから、十分な休養を。」
「...はい。」
それから、多くの誓約の話をして、隣国の使者が帰り際に扉の前でリノスフェルに問いかけた。
「もしや、イノフィエミス殿下にお会いになられていないのでは?」
「っ、ええ、まあ。使者の皆様が来てくださっているので、そちらを優先させております。下二人の王子も国の復興のために会っていないと思いますが。」
「なんと、それはいけませんね。我々が近隣諸国の使者の皆様に伝えましょう。」
「....な、にを?」
「我々、使者が帰ったら、すぐにイノフィエミス殿下のもとに行ってください。」
「...しかし、。」
「しかしもおかしもありませんよ。殿下方も多忙を極めていらっしゃるようですから、是非御兄様に褒めていただいてください。
そして、彼に家族の愛を、信頼を教えてあげてください。これは我ら使者ひいては各国の王の望みでもあります。」
「...ありがとうございます。一段落したら離れでしばし休養しようと思います。」
宣言された通り、各国の使者たちは波が引くように皆一斉に国に帰っていった。国内の情勢も落ち着き始め、王宮の再建も順調に進んでいるようで、久しぶりに王子三人で離宮に戻った。
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