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Ⅲ
しおりを挟む「そもそも、この国がここまで栄えて、前国王が英雄王と呼ばれたのも全てイノフィエミス殿下のおかげなのです。」
「...どういうことだ?」
「....記憶を取り戻したからこそ、分かります。長くなりますが、お三方の兄上のお話です。お聞きになりますか?」
そう言う宰相の言葉に、王子三人は頷いた。
リノスフェル殿下がお産まれになる前に、戦があったのはご存知ですね。その戦は、世界の歴史に残るほど圧倒的な強さで、最短日数で終戦したのです。
前国王は不死身の王と言われ、我が国の兵士も不死の軍勢と呼ばれました。しかし、それは、イノフィエミス殿下が後方にて、前国王、兵士の受けた傷を全て肩代わりして治していたからです。
後方で身体に直接、回復薬を点滴のようにして打たれ、傷を肩代わりしてはすぐに回復し、再び傷を負う。これを繰り返すことによって、致命傷を受けた兵士は起き上がり、進軍する。
だから、かの戦の勝利は、イノフィエミス殿下の固有魔法、【自己犠牲】のおかげなのです。
ですが、致命傷の傷を何度も肩代わりしてすぐに回復する。これを一年も続ければ痛覚は麻痺してなくなります。また、乏しかった感情は無に帰しました。
最短と言っても、一年です。戦から帰ってきたイノフィエミス殿下は、傷を治すだけの道具と成り果てていました。13歳で戦に参加して、一年して帰ってきて、更に一年後に囲われて記憶から消されてしまったようです。
そして、囲われた年にリノスフェル殿下がお産まれになったのでしょう。
それから、この国の国交が豊かだったのも、イノフィエミス殿下のおかげです。
戦に行く前に、他国と多く交流を持ち、誓約を結び書類を作ってくださったからです。書類があるため、他国も国交をしてくださっていたのです。前国王の権威ではありません。
「世界にかけられた魔法は解かれたので近日中に他国から使者がいらっしゃると思います。」
「...しかし、未だ次の王は決めていない。それに、俺に、兄、兄上がいるとは知らなかった。兄上が第一王子ならば、俺が、国王になることはできないだろう。」
「...イノフィエミス殿下は、国王にはなれませんよ。」
「なぜだ。」
「21年間の情勢や国の動向、それらを何も知りません。」
「...それは、勉強すればいいではないか。」
「...リノスフェル殿下は、イノフィエミス殿下に再び無理をさせたいのですか。」
「...っ、そう、だよな。」
「...それに、イノフィエミス殿下は私が貰いますので、よろしくお願いしますね。」
「...ああ。.....あ?」
王子三人が同時に脳内に、疑問符を浮かべる。
「「「....は????」」」
「イノフィエミス殿下は幼馴染みで唯一無二の親友で、私の初恋ですからね。実らさせてもらいますよ。」
「...ふざけるな。俺達よりも先に家族になる気か?」
「いいえ、当分は私も離宮に住まわせていただきます。その間に、ご家族で仲良くなっていただきます。」
「...でも、僕達、兄様のこと何も知らないよ。」
「ロルフヘイズ殿下、だからこそです。私を挟んででも構いません。家族として愛を教えてあげてください。
前国王は産まれて固有魔法の有無を知ってから、イノフィエミス殿下のことを道具として扱っていました。
イノフィエミス様の御母上であり、リノスフェル殿下の御母上である皇后陛下もお亡くなりになってしまっています。....どうか、家族として接してあげてください。」
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