愛念

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エレオノールside.

ルノワールが眠りについた。初めて名前を呼んでくれて、エレンって呼んでくれて、嬉しかった。俺と4年、歳の離れた兄上。俺が産まれてから15年の間、ルノワールは偽りの『ルノワール・ツィツァ・ラグノール』として、演じていたと知った。やっと自由になれたと、会話をしてくれたルノワールの表情は、和らいでいた。今までの貼り付けた見本のような笑顔でも、凍てつくような無表情でもなく、柔らかに微笑んで名前を呼んでくれた。役目を終えていらないと言ったときは、かなり慌てた。しかし、その後の言葉で、本当に、本当に安心した。

眠るルノワールは、美しく、儚げで、しかしどこか吹っ切れたのか、幼さがちらつきとてもかわいい。枕元の沢山の白いクッションに散らばる乳白色の髪が天蓋の隙間から入る光で透き通るように輝いて、とても綺麗だった。もともと少食だったルノワールは、半年間眠り続け、さらに痩せ細り今にも消えそうな儚さと、美しさが相まって、人とは思えない姿容になってしまった。

俺は、物心ついたときからルノワールが好きだった。勿論、家族としてもだが、恋人になりたいと思うくらいには愛していた。自分の気持ちに気付いてから、ルノワールに必死にアピールをしていたが、ルノワールは気付かず、いつもどおり無表情で無視をする。必死なアピールのおかげか、父上と義母上ははうえは、俺がルノワールをそういう意味で好きなことに気付いた。義母上は、そんな俺を応援してくれた。ルノワールが王太子として婚約、結婚したら第二妃にでも入れてもらうと良い。と言われたので、婚約者になったマリアネルに心の内を開け話し、了承してもらい、ルノワールの魅力について語り合うくらいの仲にはなっていた。

―――室内にノック音が響く。

返事を返せば、音を立てることなく静かに入ってきたマリアネル。

「....エレン様、ルノ様が起きたと聞いたのですが。」
「ああ、起きたけど、すぐに疲れるみたいで、さっき眠ったよ。」
「...そうですか。」

マリアネルは音の鳴らない低いヒールを履いていた。小柄なルノワールより背が高くならないようにと、それからルノワールがヒールの音を好んでいなかったらしいとのことで。俺の隣の椅子に腰掛けるとルノワールを見つめながら口を開いた。

「...何かありましたか?」
「...流石だね。ルノ兄は記憶者なんだって。」
「......記憶者、ですか。」
「そう、それで自分の役目が終わったから自由に動いていいだろって、俺のこと、エレンって。//」
「なっ!!羨ましいですわ!!わたくしもマリアって呼んでほしいのに!!」
「口調が乱れてるよマリアネル。」
「羨ましい、なぜ、もっと早くこればよかったじゃない...。ああ、。」
「残念だったな。まあ、夕方くらいには起き、」

「....さ、わが、し、。」

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