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本編
Ⅵ
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「ルノ兄、何を、隠しているの?」
「....。」
「...ルノ兄、ルノ兄が嘘や本来思ってることじゃないことを言うとき、目を細めたり、伏せたりするんだよ。...知ってる?」
ああ、台詞はバレているのだろう。全てが偽りだった僕を、知っているんだ。そう思うと、全てがどうでも良くなった。エレオノールに身体を起こしてもらい、紙とペンを用意させて、力の入らない腕で汚い文字を書き連ねた。
前世の記憶があり、この世界が本の中の世界だと知ったこと、抗っても良い結果にはならないと知っていた為、台本通りに台詞を言って、婚約破棄をしたこと。婚約破棄すれば廃嫡されることを知っていたこと。廃嫡後は国外追放で奴隷に落ち、昼夜ともに奉仕することを知っていたこと。奴隷になるくらいなら死んだほうがマシだと思ったこと。念の為に足を使えなくしたことを、書き連ねた。
「...前世、伝承にある記憶者ってやつか。」
「そ、だ。」
「....卒業パーティーの時の惹かれている女性がいるっていうのは。」
「う、そ。」
「....じゃあ、もう一度マリアネルと婚約するの?」
「し、な、。ま、りあ、ねる。は、きみ、とこんやくを、する、だ。」
「....何、言ってるの?」
「そ、う、いう、だい、ほん、。ぼ、くは、も、う、いら、ない。」
「―――っ、なんで!なんで、そんなこと言うんだよ!!」
「...な、、にを、きみ、は、ぼく、、きらい、でしょ、。」
「ああ、そうだよ!台本に沿った台詞を言って過ごしていた兄上のことはね!!...でも、でも、そうじゃないときの、頭を撫でてくれたりしたルノ兄は、今、こうやって会話をしてくれるルノ兄が、俺は、好きなんだ...。」
何故、今、なのか。それなら、もっと早く言ってくれたって良かったじゃないか。そうしたら、僕は、...ああ、全てが遅かったんだ。今生で人の感情を理解できなかった、読み取れなかったのが、ここで来るのか。...ああ、なんて。愚かだったのだろうか。
「......え、れお、のーる。」
「!!」
「....え、れ、ん?」
今まで、『君』と呼んでいた。今、初めて名前を口にした。今、初めて愛称で呼んだ。
「...ルノ、兄。今、名前。エレンって、なんで、。」
「...だ、いほん、は、いら、ない。もう、やくめが、おわった、なら。すき、に、うご、ても、いい、だろ、?」
「....っああ、そうだね。...そう、だよね。ルノ兄は、自由だ。」
「...ふふ、つか、れたな。」
「うん、おやすみ。ルノ兄。また明日。」
そう言って、僕の目に手を添えてくるエレオノール。今世では、初めての人の温かさを感じて、少し安心して眠りについた。
「....。」
「...ルノ兄、ルノ兄が嘘や本来思ってることじゃないことを言うとき、目を細めたり、伏せたりするんだよ。...知ってる?」
ああ、台詞はバレているのだろう。全てが偽りだった僕を、知っているんだ。そう思うと、全てがどうでも良くなった。エレオノールに身体を起こしてもらい、紙とペンを用意させて、力の入らない腕で汚い文字を書き連ねた。
前世の記憶があり、この世界が本の中の世界だと知ったこと、抗っても良い結果にはならないと知っていた為、台本通りに台詞を言って、婚約破棄をしたこと。婚約破棄すれば廃嫡されることを知っていたこと。廃嫡後は国外追放で奴隷に落ち、昼夜ともに奉仕することを知っていたこと。奴隷になるくらいなら死んだほうがマシだと思ったこと。念の為に足を使えなくしたことを、書き連ねた。
「...前世、伝承にある記憶者ってやつか。」
「そ、だ。」
「....卒業パーティーの時の惹かれている女性がいるっていうのは。」
「う、そ。」
「....じゃあ、もう一度マリアネルと婚約するの?」
「し、な、。ま、りあ、ねる。は、きみ、とこんやくを、する、だ。」
「....何、言ってるの?」
「そ、う、いう、だい、ほん、。ぼ、くは、も、う、いら、ない。」
「―――っ、なんで!なんで、そんなこと言うんだよ!!」
「...な、、にを、きみ、は、ぼく、、きらい、でしょ、。」
「ああ、そうだよ!台本に沿った台詞を言って過ごしていた兄上のことはね!!...でも、でも、そうじゃないときの、頭を撫でてくれたりしたルノ兄は、今、こうやって会話をしてくれるルノ兄が、俺は、好きなんだ...。」
何故、今、なのか。それなら、もっと早く言ってくれたって良かったじゃないか。そうしたら、僕は、...ああ、全てが遅かったんだ。今生で人の感情を理解できなかった、読み取れなかったのが、ここで来るのか。...ああ、なんて。愚かだったのだろうか。
「......え、れお、のーる。」
「!!」
「....え、れ、ん?」
今まで、『君』と呼んでいた。今、初めて名前を口にした。今、初めて愛称で呼んだ。
「...ルノ、兄。今、名前。エレンって、なんで、。」
「...だ、いほん、は、いら、ない。もう、やくめが、おわった、なら。すき、に、うご、ても、いい、だろ、?」
「....っああ、そうだね。...そう、だよね。ルノ兄は、自由だ。」
「...ふふ、つか、れたな。」
「うん、おやすみ。ルノ兄。また明日。」
そう言って、僕の目に手を添えてくるエレオノール。今世では、初めての人の温かさを感じて、少し安心して眠りについた。
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