愛念

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本編

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暫くしてから、執事が呼びに来たので素直に従い、国王の執務室に入った。執務室の中は人払いがされており、誰かに聞かれる心配はなかった。

「....何故、あのようなことをした。」

暗く重い圧が含まれた声で国王に問い掛けられた。僕は、ホールで言ったことを、目を伏せて繰り返し国王に伝えた。僕は、国王も皇后も父、母と呼ぶことはなかった。記憶を思い出してシナリオに従うと決めたときから父上、母上と呼ばなくなった。廃嫡されると分かっているのだから、未練がないように。そして廃嫡されたあと、国を追い出され、奴隷に落ちると知っている。だから、廃嫡された時点で人生は終わったようなものだと分かっていた。

分かっていたんだ、だからこそ―――――

「今をもって、お前を廃嫡とする。準備が出来次第、国を出てもらう。」
「...畏まりました。国王陛下。」

嫌なものを見るような目で国王がこちらを見る。

「...拒まないのだな。」
「国王陛下がお決めになったのですから従うまでです。」
「.....そうか。」
「はい、では準備が整うまで部屋にいます。」

そう言って、執務室を退室し再び自身に与えられた部屋に戻った。


ああ、これで僕は退場だ。...奴隷になるくらいなら死んだほうがマシだと知っている。2巻のざまぁ後のおまけ小話で奴隷になった後のルノワールが書かれていた。昼は鉱山で鉱石を掘り、夜は他の奴隷たちのストレスや性欲の捌け口として使われていた。そんな結末を知っているのだから奴隷にはなりたくなかった。

転生しておいて、短い人生だったなぁ。と思いつつ、転生させてくれたであろう神に謝った。神様的にはラノベの主人公のように、シナリオに、運命に抗って欲しかったのだろう。せっかく新しい命をくれたのに悪かった。と。

自室にある片手剣を手に取り、窓辺のひとり掛けのソファに座り、思いきり太腿の付け根を刺した。片手剣は太腿を貫通し、血液がドバドバと溢れ出る。卒業パーティー用に着ていた白いズボンは、赤が滲む。太腿から剣を抜いて、反対側の太腿も同じように貫いた。これは、もしものときの為のものだ。足が使えなければ、鉱山夫として使えないらしいから。だが、夜の方では幾らか懸念が残るが、多少の諦めは必要だと思い、その懸念を頭の片隅に追いやった。

太腿だけでは心配だったため、脹脛ふくらはぎを膝裏から踵にかけて両足ともに割いた。割いた途端に、真っ白だったズボンは真っ赤に染まり、絨毯は赤黒く染まった。生き延びてしまったときの布石は終わったので、いざ首を刺そうとしたときに、血を流しすぎたのか、目の前が眩んで首めがけて突き刺そうとした片手剣は剣先の向きを変え、首の3分の1を割くように刺さり、そこで意識はなくなった。

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