愛念

pAp1Ko

文字の大きさ
上 下
2 / 13
本編

しおりを挟む
「マリアネル・フォン・ベルギルト公爵令嬢、君との婚約を破棄する。」

王立アカデミーの卒業パーティー。静まり返った王宮のホールに響く、小さくも大きくもない凛とした声。ホールにいる誰もが彼等に視線を送る。

―――視線の先、ホールの中央ではラグノール王国の王太子である、ルノワール・ツィツァ・ラグノールと婚約者である公爵令嬢のマリアネル・フォン・ベルギルトが向かい合っていた。ホールにいる卒業生、保護者である貴族達。さらには、国王陛下と皇后陛下もいるという、公の場で婚約破棄を述べる王太子ルノワールには冷たい視線が送られていた。

「...殿下、何故かお聞かせいただいてもよろしくて?」
「勿論だとも。『君よりも素敵な方を好きになってしまったんだ。は、君との婚約を破棄した後に、求婚しようと思っているんだ。』」

勿論、そんな女性はいない。だが、こうするのが一番だと知っている・・・・・のだからしょうがない。そんな事を考えつつ、表には決して出さない。マリアネルの返事を待ちながら、手に持っていたシャンパンを一口飲む。

「....分かりました。婚約を破棄しましょう。」

目をスッと細め、顔を作り、台詞・・を口にする。

「『ありがとう。これで彼女に求婚できる。婚約破棄については君に任せていいか?』」
「....ええ。分かりました。」
「では、は、これで失礼するよ。」

そう言って、バトラーに飲みかけのシャンパンを預け、ホールを後にした。ホールを出るときに、二階の王族専用のバルコニーから国王夫妻と義弟であるエレオノール・ロナウド・ラグノールが失望の色で見ていたのを思い出しながら、自分に与えられている部屋に戻った。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...