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四章 いい神様
11.天音は日々人間に近づいていく。
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柊side
ただ「誰かが」一緒にいてくれるだけでよかった。ここにいていいんだよって‥感じさせてくれたらそれでよかった。
思えばあの家にいる時、俺はずっと『異質な者』だった。邪魔者? 居候? ‥そういうのじゃない。あれだ「気をつかう‥扱いに困る『預かりもの』」そんな感じ。お手伝いさんは気の毒だったな。女主人であり、俺の母親である女が俺のことをあからさまに嫌ってんだもの。だけど「お手伝い(如き)が粗末に扱うのは許さない(あの人は、ちょっとお手伝いさんのこと見下してるとこあったから)」って思ってる。近すぎてもダメ。「跡継ぎとして、弟よりその子の方が相応しいとでも? その子の方が大事とでも? 」って難癖? イチャモン付けられると厄介だから。‥面倒な人なんだよ、あの人。
だから、事務的に接する。年配の人は上手だったよ。そこら辺。だけど、若い子はダメだね「若様が可哀そう‥」とか「私だけは若様を‥」とか感情が入っちゃうから。そういうの、ヨクナイ。
それが度を越える‥とか余計に良くない。
ほんと、メンドクサイのよ。
気を遣わせちゃってホント悪かったよ。
俺自身は、だけど誰にも気なんてつかってなかったな。あの頃は。(今思えばゴメンねって話)
だって、(あの頃は)そんな必要ない(って思ってた)。
気をつかって、「どうかここにいさせてください」って媚びる? 無かったねえ。そういう選択肢。(だけど、それは母親だって望んでなかったと思うよ。自分と同じ顔した男がそんなみっともない真似したらきっと俺の事もっと嫌ってたと思うよ)
だけど、その理由は「そんなことはプライドが許さない」とかではなかったよ。
多分、なんか嫌だったんだろうね。
あの頃の俺はそんなに物を考えなかったから。‥考えられなかったから。
理由もわからず只イライラしてる時って、そういろんなこと考えられないよね。
だから、俺は本能で‥そうしなかったんだろうってこと。
今思えば、俺の本能グッジョブって感じかな。‥そんなことしてたら、今俺は自分で自分が許せなかったよ。
今、俺が手にしているのは生まれて初めての『居場所』
ここにいていいって許されてる‥ここにいたいって思える場所。
『普通の』子供にとって、それは家で、両親からの愛だろう。鬱陶しがったり、憎まれ口をたたきながらも、「当たり前にそういうもんだ」って思ってる。そして『普通は』そういうもんなんだろう。
親子の愛情を『普通の』子供は『普通に』『当たり前に』享受している。
‥そういうのが羨ましいって思ったことは‥でもなかった。弟が丁度そんな感じだったけど「こいつ馬鹿だな」「甘っちょろい坊っちゃんって奴だな」って思っただけ。実の兄に可愛いと思われてなかったどころかそんな風に思われてたとか弟が知ったら流石に‥アレだなって思うから言わない。一生。それが俺の優しさって奴だ。違うか。一応「兄としての」唯一の‥優しさだ。
俺はね、肉親の「無条件な愛情」なんか持ち合わせてないんだよ。逆に、恨みもない。‥それ程のもんだ。
弟は、いつ「自分が恵まれてた」って気付くんだろうか。
いつ「自分は親に守られてただけの甘ちゃんだった」って気付くんだろうか。
気付ければいいね。
いつか‥。
‥なるだけ早くね。
気付かないとか‥それは問題外だけど‥でも、あの家に居たらそれもあり得るかもねえ。
お気の毒様。
そう。楠に会えなかったアイツは俺よりずっと不幸だ。
どんなに親の愛情に恵まれていようと、生活環境が充実していようと‥(俺にとって)俺はアイツよりずっと今ずっと幸せだ。
(それを知らない)アイツが俺のことどんなに哀れに思おうが‥、俺にとってはそんなことどうでもいいし、寧ろアイツの方が俺よりずっと哀れだって俺的には思うね。
兄弟かあ‥。
「柊兄ちゃん! 」
梛木の声に振り向く。
「食堂行こう! 昼ごはんの時間だ! 」
この頃ちょっとふっくらしてきた。
太ったわけじゃない。顔色が良くなって、血色が良くなってきたんだ。
ぐいぐい引っ張る力も強くなってきた。
体力がついて来た、とかじゃない。俺たちに対して遠慮がなくなってきたんだ。
梛木は‥なんてか、普通の子供。
俺のことを兄と呼ぶ。柳のことも。
アイツも俺と同じ扱いか。ってか、柳も俺も兄だったら、俺たちは三兄弟か? それは‥ちょっと嫌だぞ。
柳が嫌いとかじゃないけど‥それとこれは別だ。
‥なんか嫌だ。
って思ってた‥こともあったけど、今は分かる。
梛木の「兄ちゃん」は、「そこらの若い男」って意味だ。口に出してはいないけど、きっと伊吹や恭二のことは「おっさん」って思ってるだろう。‥それ位の意味だ。
桂のことは「桂ちゃん」って呼んでるところをみると、多分‥俺たちより桂の方が気に入っているんだろう。
で、呼び捨てにしてる楠のことは一番のお気に入りってことなんだろうな。
だけど、多分友だちだと思ってるわけじゃなさそう。
友だちには甘えないでしょ。
きっと‥
梛木にとって楠は「お母さん」なんだ。みんなのオカンじゃなく、お母さん。
まだ梛木はそういうの求めちゃう年なんだろう。
まだほんの子供だから。
‥なんかかわいそうだね。
楠がお母さんだったら、俺はお父さん的なポジションになるのかな。(← 勝手に柊的にそういう結論になった。シンプルにヤバい)
梛木が息子で、楠と俺‥。
普通の家族がよくわからないから、何とも言えないけど、なんか「問題ない」。(← 何の根拠もないがそうおもったらしい。シンプルに‥以下同文)
そんな気がする。
「父さん母さん、息子の前でイチャイチャするのやめてよ。恥ずかしいな」(← 妄想)
って梛木が言って、楠が
「そんなんじゃない! 」
って顔を真っ赤にして否定するんだ。それ見て梛木と俺が笑う。
なんか‥それって凄く「幸せだ」(← 妄想で幸せになっちゃった。シンプルにヤバいもここまでくると幸せだ)
そんなこと考えてほわほわしてたら、「なんか」と目が合った‥気がした。
女とか男とか‥そういうのは分からないけど、なんか「目があった気がするだけで、姿は見えない何か」だった。
別に嫌な気もしないし、勿論怖いとも思わない。‥別に姿も見えないし、昼間だから。
じっと見たら、そっと横に逃げられた。
動いた? 動くんだ? って目で追ったら、「なんか」は慌てて逃げていって、今度は気配ごと消えてしまった。
‥何だったんだろ。お化け的な奴かな?
今度伊吹に教えといてやろう。アイツ、神とか神社とか好きだから、きっとお化けとかも受け入れるだろう。(← 偏見)
でも、
「どんな姿だった? 」
って目をキラキラさせて聞かれても‥困るけどね。別に見たわけじゃないから。
それより‥「除霊しなきゃ! 」とかなったら‥それこそ面倒くさくない? 。「ここに憑いてるの?! それとも‥隆行(← 柊の元の名前。伊吹と恭二と柊は親戚同士)に!? お祓いする!? 」ってなったら‥。
裏西遠寺からなんか来るのかな‥。(そしたら柳が大興奮だ)
‥いろいろ面倒くさそうだから、放っておこう。
楠が怖がっても可哀そうだしね。‥怖がるかな。案外「新しい住人だね! 」って言ってそう‥。
寧ろ喜びそう。
‥なら、それもいいかも。
天音はさっきまでの殺気を消して、(なぜか)ニヤニヤし始めた柊にドン引きする。相変わらず気配を消して、物陰に隠れて見てるんだけど、もう天音には関心はない様だ。
何この子、怖い~!
‥早く、楠かえって来ないかなあ‥。
そんな「神頼み」ならぬ「オカンに丸投げ」してる自分にちょっと恥ずかしくなったり。
‥なんか、人間にまた一歩近づいちゃった。
苦笑いした天音だった。
ただ「誰かが」一緒にいてくれるだけでよかった。ここにいていいんだよって‥感じさせてくれたらそれでよかった。
思えばあの家にいる時、俺はずっと『異質な者』だった。邪魔者? 居候? ‥そういうのじゃない。あれだ「気をつかう‥扱いに困る『預かりもの』」そんな感じ。お手伝いさんは気の毒だったな。女主人であり、俺の母親である女が俺のことをあからさまに嫌ってんだもの。だけど「お手伝い(如き)が粗末に扱うのは許さない(あの人は、ちょっとお手伝いさんのこと見下してるとこあったから)」って思ってる。近すぎてもダメ。「跡継ぎとして、弟よりその子の方が相応しいとでも? その子の方が大事とでも? 」って難癖? イチャモン付けられると厄介だから。‥面倒な人なんだよ、あの人。
だから、事務的に接する。年配の人は上手だったよ。そこら辺。だけど、若い子はダメだね「若様が可哀そう‥」とか「私だけは若様を‥」とか感情が入っちゃうから。そういうの、ヨクナイ。
それが度を越える‥とか余計に良くない。
ほんと、メンドクサイのよ。
気を遣わせちゃってホント悪かったよ。
俺自身は、だけど誰にも気なんてつかってなかったな。あの頃は。(今思えばゴメンねって話)
だって、(あの頃は)そんな必要ない(って思ってた)。
気をつかって、「どうかここにいさせてください」って媚びる? 無かったねえ。そういう選択肢。(だけど、それは母親だって望んでなかったと思うよ。自分と同じ顔した男がそんなみっともない真似したらきっと俺の事もっと嫌ってたと思うよ)
だけど、その理由は「そんなことはプライドが許さない」とかではなかったよ。
多分、なんか嫌だったんだろうね。
あの頃の俺はそんなに物を考えなかったから。‥考えられなかったから。
理由もわからず只イライラしてる時って、そういろんなこと考えられないよね。
だから、俺は本能で‥そうしなかったんだろうってこと。
今思えば、俺の本能グッジョブって感じかな。‥そんなことしてたら、今俺は自分で自分が許せなかったよ。
今、俺が手にしているのは生まれて初めての『居場所』
ここにいていいって許されてる‥ここにいたいって思える場所。
『普通の』子供にとって、それは家で、両親からの愛だろう。鬱陶しがったり、憎まれ口をたたきながらも、「当たり前にそういうもんだ」って思ってる。そして『普通は』そういうもんなんだろう。
親子の愛情を『普通の』子供は『普通に』『当たり前に』享受している。
‥そういうのが羨ましいって思ったことは‥でもなかった。弟が丁度そんな感じだったけど「こいつ馬鹿だな」「甘っちょろい坊っちゃんって奴だな」って思っただけ。実の兄に可愛いと思われてなかったどころかそんな風に思われてたとか弟が知ったら流石に‥アレだなって思うから言わない。一生。それが俺の優しさって奴だ。違うか。一応「兄としての」唯一の‥優しさだ。
俺はね、肉親の「無条件な愛情」なんか持ち合わせてないんだよ。逆に、恨みもない。‥それ程のもんだ。
弟は、いつ「自分が恵まれてた」って気付くんだろうか。
いつ「自分は親に守られてただけの甘ちゃんだった」って気付くんだろうか。
気付ければいいね。
いつか‥。
‥なるだけ早くね。
気付かないとか‥それは問題外だけど‥でも、あの家に居たらそれもあり得るかもねえ。
お気の毒様。
そう。楠に会えなかったアイツは俺よりずっと不幸だ。
どんなに親の愛情に恵まれていようと、生活環境が充実していようと‥(俺にとって)俺はアイツよりずっと今ずっと幸せだ。
(それを知らない)アイツが俺のことどんなに哀れに思おうが‥、俺にとってはそんなことどうでもいいし、寧ろアイツの方が俺よりずっと哀れだって俺的には思うね。
兄弟かあ‥。
「柊兄ちゃん! 」
梛木の声に振り向く。
「食堂行こう! 昼ごはんの時間だ! 」
この頃ちょっとふっくらしてきた。
太ったわけじゃない。顔色が良くなって、血色が良くなってきたんだ。
ぐいぐい引っ張る力も強くなってきた。
体力がついて来た、とかじゃない。俺たちに対して遠慮がなくなってきたんだ。
梛木は‥なんてか、普通の子供。
俺のことを兄と呼ぶ。柳のことも。
アイツも俺と同じ扱いか。ってか、柳も俺も兄だったら、俺たちは三兄弟か? それは‥ちょっと嫌だぞ。
柳が嫌いとかじゃないけど‥それとこれは別だ。
‥なんか嫌だ。
って思ってた‥こともあったけど、今は分かる。
梛木の「兄ちゃん」は、「そこらの若い男」って意味だ。口に出してはいないけど、きっと伊吹や恭二のことは「おっさん」って思ってるだろう。‥それ位の意味だ。
桂のことは「桂ちゃん」って呼んでるところをみると、多分‥俺たちより桂の方が気に入っているんだろう。
で、呼び捨てにしてる楠のことは一番のお気に入りってことなんだろうな。
だけど、多分友だちだと思ってるわけじゃなさそう。
友だちには甘えないでしょ。
きっと‥
梛木にとって楠は「お母さん」なんだ。みんなのオカンじゃなく、お母さん。
まだ梛木はそういうの求めちゃう年なんだろう。
まだほんの子供だから。
‥なんかかわいそうだね。
楠がお母さんだったら、俺はお父さん的なポジションになるのかな。(← 勝手に柊的にそういう結論になった。シンプルにヤバい)
梛木が息子で、楠と俺‥。
普通の家族がよくわからないから、何とも言えないけど、なんか「問題ない」。(← 何の根拠もないがそうおもったらしい。シンプルに‥以下同文)
そんな気がする。
「父さん母さん、息子の前でイチャイチャするのやめてよ。恥ずかしいな」(← 妄想)
って梛木が言って、楠が
「そんなんじゃない! 」
って顔を真っ赤にして否定するんだ。それ見て梛木と俺が笑う。
なんか‥それって凄く「幸せだ」(← 妄想で幸せになっちゃった。シンプルにヤバいもここまでくると幸せだ)
そんなこと考えてほわほわしてたら、「なんか」と目が合った‥気がした。
女とか男とか‥そういうのは分からないけど、なんか「目があった気がするだけで、姿は見えない何か」だった。
別に嫌な気もしないし、勿論怖いとも思わない。‥別に姿も見えないし、昼間だから。
じっと見たら、そっと横に逃げられた。
動いた? 動くんだ? って目で追ったら、「なんか」は慌てて逃げていって、今度は気配ごと消えてしまった。
‥何だったんだろ。お化け的な奴かな?
今度伊吹に教えといてやろう。アイツ、神とか神社とか好きだから、きっとお化けとかも受け入れるだろう。(← 偏見)
でも、
「どんな姿だった? 」
って目をキラキラさせて聞かれても‥困るけどね。別に見たわけじゃないから。
それより‥「除霊しなきゃ! 」とかなったら‥それこそ面倒くさくない? 。「ここに憑いてるの?! それとも‥隆行(← 柊の元の名前。伊吹と恭二と柊は親戚同士)に!? お祓いする!? 」ってなったら‥。
裏西遠寺からなんか来るのかな‥。(そしたら柳が大興奮だ)
‥いろいろ面倒くさそうだから、放っておこう。
楠が怖がっても可哀そうだしね。‥怖がるかな。案外「新しい住人だね! 」って言ってそう‥。
寧ろ喜びそう。
‥なら、それもいいかも。
天音はさっきまでの殺気を消して、(なぜか)ニヤニヤし始めた柊にドン引きする。相変わらず気配を消して、物陰に隠れて見てるんだけど、もう天音には関心はない様だ。
何この子、怖い~!
‥早く、楠かえって来ないかなあ‥。
そんな「神頼み」ならぬ「オカンに丸投げ」してる自分にちょっと恥ずかしくなったり。
‥なんか、人間にまた一歩近づいちゃった。
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