souls step

文月

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プロローグ

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「神社を見れば、その土地の様子が分かる。海系の神様を祀っている神社があるのだったら、そこに海があったって言える。例え今は埋め立てや地形の変化で海から遠ざかってたとしても、さ。寧ろ、昔の地形なんかも分かって興味深い気がする」

「そういう意味でさ、神社はその土地の歴史の一つであるって言えない? 」

 何て、もっともらしい仮説をいっぱしの学者ぶって言っていたのは、確か小学生の頃。あの頃に戻れるなら、その口を塞ぎたいくらい生意気な口ばかり利いていた。
 秀才ぶっていた大島 保少年は、この後、自分の想像力の限界を知る。
 
 現在は埋め立てられて住宅地になっているが、昔は辺り一面海だったはずのこの場所にある神社は、あろうことか「農耕神」だった。
 仮説はあっさり覆されたのだった。
「開拓以降の新しい神社なのかしらん」
 進まない郷土研究にヤキモキする。

 夏休みももう半ば。生まれ育った町をデジカメ片手に歩き回ってもう半月。「神社から分かる郷土の歴史」のタイトルもむなしく、研究ノートは真っ白だった。
「土地を増やす必要性に駆られた人々が海を埋め立てて開拓し、農耕を始める。豊作を祈って農耕神を祀った、かなあ。思っていたのとは違ったレポートになっちゃったな。こう、海系の神社がまつってある神社を繋いで、昔の海岸線の地図ドーンと出して、一致しますよ。みたいなのを期待してたのに‥」
 結局、望んだものは得られず、不本意に中途半端な結論で締めくくった夏休みの宿題であったが、この時の経験は大島に物事の歴史を見るという癖を付けさせたわけだから、全くマイナスってわけでもなかった。

 神社を調べれば何かが分かる事は、間違いない。

 今でも信じているのは、ただ意固地になっているだけか。
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