souls game

文月

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25.使い道。(side 楠)

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「もう! なんなのさ。楠! さっきまで凄くノリノリでゲーム化計画に賛成って感じだったのに! 」
 梛木が子供みたいに頬をぷうって膨らませて言った。
 ‥あ、子供だった。梛木は普段から「子供っぽいことなんてしない」って感じで、それを貫いてるもんだと思ってた。
 もしかしたら無意識に出ちゃったのかもしれないけど‥なんか嬉しい。

 子供らしさを出してくれて、嬉しい。信用されてるのかなって思う。

「ごめん。つい面白くなっちゃって、「ゲームの内容」の話をしちゃったよ。順番が違ったね。
 先に、このゲームを何の目的の為に使いたいかの話をしないとね」
 僕はまずそれを謝った。梛木は
「目的? 」
 って首を傾げた。
 僕が頷いて、
「そう。まず、僕の最大の目的は沢山の人に楽しんでもらうゲームを作ることではない」
 と言うと梛木が「どういうこと? 」って顔をした。
 僕はもう一度頷く。
「だけど、確かに糸口として‥ゲームという形を取るのは‥凄くいいって思ったんだ」
 言葉を選びながら話しているからだろう、こんな回りくどい言い方になってしまった。頭の中に一瞬浮かんだ「あれ、これ秘密じゃないよね? 」「どこまで話していいんだろう? 」って考えの答えがまだ出てないから。
 ‥だけど考えてみたら、別に内緒にしなければいけないことでもない。
 ‥ないよね??
 僕はもう一度頭の中で確認して、次に梛木の顔を見た。
 梛木は‥大丈夫だって思った。
 梛木なら、真剣に考えてくれるし、他に吹聴する‥とかしない。
 僕は、梛木なら協力者になってくれるって思ったんだ。
「うん。僕たちスカウト部は‥所謂普通の人をスカウトするわけじゃないじゃない? 」
 僕は小分けに‥相手の反応を見ながら話すことにした。
 梛木が「突然なんだ? 」って顔してる。
 だけど、興味の方が勝ったみたい。すぐに
「うん」
 って頷いて、話の続きを促して来た。
 顔というか‥目付きから、「話せ」って圧(みたいなもの)が伝わってくる。
「今までは、口コミで‥「変わった子いるよ」っていう噂を集めてきたりだとか、他薦、自薦を頼りに情報を集めたりだとかして来た訳じゃない? だけど、それって効率が悪い。‥梛木もそれは感じてると思う」
 そう言って梛木を見ると梛木が大きく頷いて「そりゃな」って言った。
「正直会ってみないと分からない。会っても‥普通の人には‥正直分からなかったって思うよ。多分、勘だとか長年の経験とかで判断してたんだと思う。だけど、その点僕とか柊さんは分かるんだ。正確にね。
 だけど、それって効率は悪いよ。「怪しいかも」って人全員に会いに行くのは時間もだけど、経費面で凄くアレだ‥大変だよ」
 直接本人と会って話さないといけない、とかはない。物陰から確認すればいい。だけど、実際に「目で」見てみないと分からない。だから、例えば相手が北海道の人でも沖縄の人でも会いに行かないとダメなんだ。
 リモートで確認‥とかダメなんだ。
 だから、今はまだ近場の調査しか進んでいなかった。
 それに「この人、八卦の性質強いよ」ってなっても、裏西遠寺としての働きができる素質があるか‥はやっぱり調査しなきゃいけないわけだしね。人間性に問題がある人間に裏西遠寺の秘密を明かすわけにはいかないし、人間性に問題が無くても家庭環境だとか、健康面‥いろいろ調べなきゃいけないからね。
 そうなっちゃうとホントに適応者って少ないんだ。
 候補者は多ければ多い方がいい。‥それが一番だ。
 僕がそんな話をかいつまんですると梛木が「そりゃなあ」って大きく頷いた。
 そして、ニヤって笑うと
「‥ならなおさら、ゲームをエサにサンプルをいっぱい集めたいよね」
 って言った。
 エサって言い方止めなさい‥。

「まず、大前提として「裏西遠寺候補生」の開拓。これは表に出さないけど、一番の目的だ。
 その為の流れとしては‥

 ① 開拓の方法としての『八卦合わせ』‥ここで、「才能があるユーザー」(つまり適応者)を見つけたい。(← これが一番の目的)
 ② 裏返された①で決まった自分の「卦」の1~10までのレベルの書かれたカードを一枚引き、レベルを決める。
 ③ 卦とレベルで「興味をひく様な」キャラクターを割り当てる。(← いわばオマケ)
 ④ 一般のユーザーについては、普通にゲームで遊んでもらう。(← いわばオマケ)
 ⑤ 特別「才能があるユーザー」も、②と同様にレベルを決めるんだけど、その時のレベルは11~20のレベルが書かれている。
 ⑥ 才能があるユーザーは一般のユーザーとは別のステージを用意する。そこで、チャットなんかを通してその人の人となりを調べる。(← これは「出来たらいいな」って希望。‥なかなか、チャットじゃ人となり分からんよね)
 
 ‥ってかんじかな」
 って梛木が言った。
 梛木は、考える時まず全部箇条書きにするんだ。それは僕も大学時代(前の学校ね)ゼミの教授から「小論文の書き方」として教わったことだ。‥誰からも学んでいない梛木がそれをしてるのを見て初めは「意外だな」って思ったもんだ。だけど、特殊な技術ってわけでもないから、「誰かに教わったのか?! 」とかまで思わないけど‥。
「何か足りない部分ある? 」
 梛木が僕の顔を見る。
 僕は「‥ちょっと待ってね」って言ってもう一度梛木の箇条書きを見直した。
「①の方法については後で考えるとして‥この流れで問題はないと思う。‥特別なタイプと一般のユーザーのゲームを分けるのはその人の人柄なんかを確認するためなんだよね? だけど、「え、友達と同じステージの方がいいよ」って人は絶対現れると思うけど? 」
 僕が言うと、梛木はまたちょっと首を傾げて考える素振りをして、
「そうだよな‥。いっそ、選べるようにする? 「貴方はこっちのコース「特別コース(仮名)」でも遊べます」って感じで‥ここも運命の分かれ道だよね。「そういうのが選べるなんて! 絶対オレこっち(特別コース(仮名)がいい! 」って思える奴の方が「特別なタイプ」って感じするじゃん? 」
 って言った。
「成程? 」
 そういうことも‥あるかも? 
「じゃあ内容の方を決めていこう! 」
 って梛木が次の紙を出した瞬間に‥目覚まし時計が鳴った。
 あ。
 もう朝か。
 ‥ヤバい。今日も仕事だっていうのに完徹しちゃった。
 学生じゃないんだから‥。
 梛木と二人で苦笑いして、まだ寝てるであろう柊さんを梛木が起こしに行き、僕は今日もお握りを握るためにキッチンに向かうのだった。
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