9 / 35
9.柊さんが色っぽくって‥恥ずかしい! ってことに気付いちゃったんです。(side 楠)
しおりを挟む
僕の場合。
「分かる」を言葉にするのは難しい。
だけど、確かに「分かる」。
僕がここに来たとき豪語したこと‥「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」の「分かる」は実のところここまで深く考えてなかった。
ホントのとこ、あの時は伊吹さんが「当てずっぽうに」変な人を集めてるよりは、効率がいいんじゃない? って思ったって程度だった。ただの変な人じゃなくって、ちゃんとした異能者がスカウトできるなら‥まあ、それでいいんじゃない? って。
でも天男さんと話して「これって、もしかしてもっと重要な話なんじゃない? 」って思った。
これを極めると、何か変わるんじゃないかって‥そんな風に思った。
やっぱり「どう役に立つ」かは分からないんだけど‥
それは‥きっと僕なんかが考えたって分からないだろう。
ところで‥。
分かるって感覚を言葉に出来ないのは僕だけじゃない。
なんとなく直感でふわ~ってしてるのは柊さんも同じだなってことがこれまでの観察の結果分かった。
観察って表現が正しいかどうかわからない。
観察ってのはだって、「観察対象を観察する人が注意して観察する」わけじゃない。だけど、柊さんの場合は常に僕の近くに居て、僕もこの頃は「居るな」ってその存在を確認する程度しか‥気にかけていない。
あれだ。注意して見てるわけじゃないけど、常に目の端に入っている。‥そんな感じ。
だって、そう動かないから。
動かない者をじっと見てるってことないよね?
だけど、時々人が通ったりなんかした時なんかに顔を上げてぼそってなんか呟くんだ。よく聞いてたら、「違う」とか「嫌い」って呟いてた。
悪口かな? って思ったけど‥そう言うもんじゃないらしい。柊さんが
「楠が言ってたじゃない。他の人と「違う」人を探してるって。
俺はね。人の顔とか正直見てないし、わざわざ覚えようとも思わないけど‥他の人と違う人は‥わかる。
だけどそれは十把一絡げってわけじゃなくって、その「違う」中にも色んな種類がいる。
‥そういうとこまでは分かる。
どういう風に違うかが分からない。だから、今は違う人の中から「嫌い」「嫌いじゃない」を分ける訓練をしている」
‥なんと、あの姿勢で人間観察をしていたのか‥。
「どの人がどうってのは‥わかるの? 」
メモしてる様子もないし、名前を聞いている‥とか確認している様子もないんだけど‥
僕が首を傾げると
「さあ。でも、今はいいかなって。‥後々報告する時には確認するよ。
一度見た人は忘れないんだ。人の顔は覚えられないけど‥見てないから‥でも、顔じゃなくて、気配で区別してるから」
顔とかじゃなくて気配? 気配って何だろ‥。よくアニメとかである「オーラで区別してる」とかそういうのかな?
オーラっていえば‥その人を取り巻いてる色とかが違うとかあるのかな? 火の属性なら赤とか? って思って聞いてみたら首を傾げられた。
‥そういうもんではないらしい。
そういえば‥
僕と一緒に居て落ち着くのは僕の卦が「坎」だからだった。坎の正象は水。水は火を消すから、自分の火の性質を持て余している柊さんは無意識に僕を求めているんだろう。
「僕と同じような気配の人なら「嫌じゃない」ってこと? 嫌なのは例えばどんな人? 」
柊さんがちょっと首を傾げて‥
「基本的に自分と同じ様な感じがする人は‥好きじゃない」
って言った。
自分のことが好きになれないから、自分と同じような感じの気配がする人に対してマイナスのイメージしか持てないってことかな?
もしかして‥六十四卦的に良くない卦なのかな?
そんなことを思いながら僕は易経を開いた。
離下離上「離」‥
六十四卦で離が上で下も離の卦は「離為火」は、離は即ち「麗」で麗は「付く」。『人が人に付き、事に付くにあたっては、貞正なのがいい。貞正であれば通達を得る』貞正とは、神意に叶うの意味。通達とは滞りなく通じること。‥つまり、正しい行いをすれば滞りなく通じるよ‥って意味。
‥全然悪くない。
なんとなく火の上に火だったら、火が際限なくも燃え広がるってイメージあるけど‥そうじゃないみたい。
僕が首を傾げていると
「同じような気配を持ってる者でも、コイツはすっごい嫌って奴もいるし、そんなに気にならない奴もいる。
‥俺はそれを嫌いの度合いと名付けた。こいつは嫌い度合い1とか、2とか。
楠は好き度合いMAX。
‥楠程好きな人はいない。俺は楠が一番好き。‥楠以外正直どうでもいい」
‥またそんなことを言う。
柊は何かに付けて僕にこう言う。
彼にとっては何気ないことなんだって思う。親愛とかそういう感じの意味で、深い意味(例えば恋愛の意味の「好き」って意味合い)はないって‥だけど、僕はそんなこと言われ慣れてないから、いつもドキドキしちゃうんだ。
その度に真に受けるな! ってこころに言い聞かせるんだけど‥まだ、慣れそうにない。
ホントに困ってしまう。だけど‥ホントに‥戸惑うけど、それ以上に嬉しいもんだなって‥初めて知った。
「‥ありがと」
僕はドキドキを隠して、わざと何気ない様子でお礼を言った。
「あ、そうだ」
僕は柊さんの手をそっと持って、その上に自分の手を重ねた。
「‘‘干渉‘‘」
ふわっと‥なにか周りの空気みたいなのが動いた気がした。
「私は貴方に干渉する。「水火既済」」
柊さんが一瞬驚いた表情をする。
目は前髪で隠れて見えないが、何となく目を見開いたような気がした。
次の瞬間、柊さんの腕が伸びて、僕を抱きしめた。
びっくりして咄嗟に逃げようとしたけど、出来なかった。
それ位、一瞬のことだった。
「‥やっぱり‥楠が一番好きだ。
こんなに落ち着いたこと‥今までなかった‥」
あんな細い腕にこんな力があるの? って驚くほど強い力。
運動してないはずなのに、筋肉質で硬い腕。
僕の肩に乗った柊さんの顔。サラサラの髪の毛。声が近くで聞こえて‥くすぐったい。
泣いているらしい。いつもよりしっとりとした‥低くて艶のある、‥色っぽい声。
ぞくっとした。
色っぽさに‥ぞくっとした。
柊さんがちょっと顔を上げて、近距離で僕の顔を見上げる。
前髪がさらっと流れて‥柊さんの目が見えた。
切れ長の‥綺麗な目。鼈甲色の凄い綺麗な瞳。
睫毛は影が落ちるほど長い。
縋るように上目遣いで見つめて来る‥凄い色っぽい美青年がそこにいた。
顔が‥近い。
ってか‥唇‥すっごいつやつやしてる‥。
ええ?? 何‥この人‥女神様か何か?? 肌‥凄い綺麗。透明感凄い。絶対髭とか生えなさそう‥それどころか産毛すらなさそう。
‥こんなの‥知らない‥!
僕は慌てて柊さんを引っ剥がして(‥そりゃあもう凄い「火事場の馬鹿力」で! )、
「‥ちょっと用事を思い出したから! 」
って部屋を出た。
わ~!!
恥ずかしい‥っ! なんか、凄い恥ずかしかった!! なんでそんな風に思ったかわかんないけど恥ずかしかった! 例えていうなら、家族で食事をしてる時に、テレビでラブシーンがはじまっちゃったって時の恥ずかしさ。
そっか‥柊さんが‥色っぽくて‥そういう感じ(色っぽい感じ)だったから‥恥ずかしかったんだ‥!
わ~! わ~!
暫くの間、顔に集まった熱が引かなくって困った。
‥びっくりして、力抜けた。
ってか‥色っぽさに当てられて‥腰砕けちゃった。
ありゃ、あかんわ‥。(なぜか関西弁)
そうして僕は‥
柊さんが色っぽくって‥恥ずかしい!
柊さんの危機性を「身をもって」気付かされたのだった。
「分かる」を言葉にするのは難しい。
だけど、確かに「分かる」。
僕がここに来たとき豪語したこと‥「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」の「分かる」は実のところここまで深く考えてなかった。
ホントのとこ、あの時は伊吹さんが「当てずっぽうに」変な人を集めてるよりは、効率がいいんじゃない? って思ったって程度だった。ただの変な人じゃなくって、ちゃんとした異能者がスカウトできるなら‥まあ、それでいいんじゃない? って。
でも天男さんと話して「これって、もしかしてもっと重要な話なんじゃない? 」って思った。
これを極めると、何か変わるんじゃないかって‥そんな風に思った。
やっぱり「どう役に立つ」かは分からないんだけど‥
それは‥きっと僕なんかが考えたって分からないだろう。
ところで‥。
分かるって感覚を言葉に出来ないのは僕だけじゃない。
なんとなく直感でふわ~ってしてるのは柊さんも同じだなってことがこれまでの観察の結果分かった。
観察って表現が正しいかどうかわからない。
観察ってのはだって、「観察対象を観察する人が注意して観察する」わけじゃない。だけど、柊さんの場合は常に僕の近くに居て、僕もこの頃は「居るな」ってその存在を確認する程度しか‥気にかけていない。
あれだ。注意して見てるわけじゃないけど、常に目の端に入っている。‥そんな感じ。
だって、そう動かないから。
動かない者をじっと見てるってことないよね?
だけど、時々人が通ったりなんかした時なんかに顔を上げてぼそってなんか呟くんだ。よく聞いてたら、「違う」とか「嫌い」って呟いてた。
悪口かな? って思ったけど‥そう言うもんじゃないらしい。柊さんが
「楠が言ってたじゃない。他の人と「違う」人を探してるって。
俺はね。人の顔とか正直見てないし、わざわざ覚えようとも思わないけど‥他の人と違う人は‥わかる。
だけどそれは十把一絡げってわけじゃなくって、その「違う」中にも色んな種類がいる。
‥そういうとこまでは分かる。
どういう風に違うかが分からない。だから、今は違う人の中から「嫌い」「嫌いじゃない」を分ける訓練をしている」
‥なんと、あの姿勢で人間観察をしていたのか‥。
「どの人がどうってのは‥わかるの? 」
メモしてる様子もないし、名前を聞いている‥とか確認している様子もないんだけど‥
僕が首を傾げると
「さあ。でも、今はいいかなって。‥後々報告する時には確認するよ。
一度見た人は忘れないんだ。人の顔は覚えられないけど‥見てないから‥でも、顔じゃなくて、気配で区別してるから」
顔とかじゃなくて気配? 気配って何だろ‥。よくアニメとかである「オーラで区別してる」とかそういうのかな?
オーラっていえば‥その人を取り巻いてる色とかが違うとかあるのかな? 火の属性なら赤とか? って思って聞いてみたら首を傾げられた。
‥そういうもんではないらしい。
そういえば‥
僕と一緒に居て落ち着くのは僕の卦が「坎」だからだった。坎の正象は水。水は火を消すから、自分の火の性質を持て余している柊さんは無意識に僕を求めているんだろう。
「僕と同じような気配の人なら「嫌じゃない」ってこと? 嫌なのは例えばどんな人? 」
柊さんがちょっと首を傾げて‥
「基本的に自分と同じ様な感じがする人は‥好きじゃない」
って言った。
自分のことが好きになれないから、自分と同じような感じの気配がする人に対してマイナスのイメージしか持てないってことかな?
もしかして‥六十四卦的に良くない卦なのかな?
そんなことを思いながら僕は易経を開いた。
離下離上「離」‥
六十四卦で離が上で下も離の卦は「離為火」は、離は即ち「麗」で麗は「付く」。『人が人に付き、事に付くにあたっては、貞正なのがいい。貞正であれば通達を得る』貞正とは、神意に叶うの意味。通達とは滞りなく通じること。‥つまり、正しい行いをすれば滞りなく通じるよ‥って意味。
‥全然悪くない。
なんとなく火の上に火だったら、火が際限なくも燃え広がるってイメージあるけど‥そうじゃないみたい。
僕が首を傾げていると
「同じような気配を持ってる者でも、コイツはすっごい嫌って奴もいるし、そんなに気にならない奴もいる。
‥俺はそれを嫌いの度合いと名付けた。こいつは嫌い度合い1とか、2とか。
楠は好き度合いMAX。
‥楠程好きな人はいない。俺は楠が一番好き。‥楠以外正直どうでもいい」
‥またそんなことを言う。
柊は何かに付けて僕にこう言う。
彼にとっては何気ないことなんだって思う。親愛とかそういう感じの意味で、深い意味(例えば恋愛の意味の「好き」って意味合い)はないって‥だけど、僕はそんなこと言われ慣れてないから、いつもドキドキしちゃうんだ。
その度に真に受けるな! ってこころに言い聞かせるんだけど‥まだ、慣れそうにない。
ホントに困ってしまう。だけど‥ホントに‥戸惑うけど、それ以上に嬉しいもんだなって‥初めて知った。
「‥ありがと」
僕はドキドキを隠して、わざと何気ない様子でお礼を言った。
「あ、そうだ」
僕は柊さんの手をそっと持って、その上に自分の手を重ねた。
「‘‘干渉‘‘」
ふわっと‥なにか周りの空気みたいなのが動いた気がした。
「私は貴方に干渉する。「水火既済」」
柊さんが一瞬驚いた表情をする。
目は前髪で隠れて見えないが、何となく目を見開いたような気がした。
次の瞬間、柊さんの腕が伸びて、僕を抱きしめた。
びっくりして咄嗟に逃げようとしたけど、出来なかった。
それ位、一瞬のことだった。
「‥やっぱり‥楠が一番好きだ。
こんなに落ち着いたこと‥今までなかった‥」
あんな細い腕にこんな力があるの? って驚くほど強い力。
運動してないはずなのに、筋肉質で硬い腕。
僕の肩に乗った柊さんの顔。サラサラの髪の毛。声が近くで聞こえて‥くすぐったい。
泣いているらしい。いつもよりしっとりとした‥低くて艶のある、‥色っぽい声。
ぞくっとした。
色っぽさに‥ぞくっとした。
柊さんがちょっと顔を上げて、近距離で僕の顔を見上げる。
前髪がさらっと流れて‥柊さんの目が見えた。
切れ長の‥綺麗な目。鼈甲色の凄い綺麗な瞳。
睫毛は影が落ちるほど長い。
縋るように上目遣いで見つめて来る‥凄い色っぽい美青年がそこにいた。
顔が‥近い。
ってか‥唇‥すっごいつやつやしてる‥。
ええ?? 何‥この人‥女神様か何か?? 肌‥凄い綺麗。透明感凄い。絶対髭とか生えなさそう‥それどころか産毛すらなさそう。
‥こんなの‥知らない‥!
僕は慌てて柊さんを引っ剥がして(‥そりゃあもう凄い「火事場の馬鹿力」で! )、
「‥ちょっと用事を思い出したから! 」
って部屋を出た。
わ~!!
恥ずかしい‥っ! なんか、凄い恥ずかしかった!! なんでそんな風に思ったかわかんないけど恥ずかしかった! 例えていうなら、家族で食事をしてる時に、テレビでラブシーンがはじまっちゃったって時の恥ずかしさ。
そっか‥柊さんが‥色っぽくて‥そういう感じ(色っぽい感じ)だったから‥恥ずかしかったんだ‥!
わ~! わ~!
暫くの間、顔に集まった熱が引かなくって困った。
‥びっくりして、力抜けた。
ってか‥色っぽさに当てられて‥腰砕けちゃった。
ありゃ、あかんわ‥。(なぜか関西弁)
そうして僕は‥
柊さんが色っぽくって‥恥ずかしい!
柊さんの危機性を「身をもって」気付かされたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる