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5.なんとなく「わかる」(side 楠)
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柊さんをここに連れて来た件については‥僕が思ってた以上に揉めなかった。
それどころか‥ホント拍子抜けって程だった。ちょっとは「勝手なことを‥! 」とかなると思ったんだけど、僕の「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」っていうはったりが通ったのかな? まさかね。
‥苗字も同じだし、ホントに親戚とかかもってなんとなく思ったんだけど、それはズバリだったらしく、あの後伊吹さんが柊さんの親御さんに連絡してた。「連れ返せ! 」ってなるかと思ったら、そうはならずに‥柊さんは「隆行さん」の名前を捨てて、恭二さんの養子になることが決まったらしい。
結構あっさりと。‥犬や猫じゃないんだからって思ったけど‥同時にね、柊さんが家でそれ位の扱いを受けてたんだなって理解して‥苦しくなった。悲しいっていうより‥怒りだね。「あんたらなんかに頼らなくても、柊さんは僕が面倒見るんだからな! 」って対抗心を燃やした。見たこともない人たちだけど‥怒りしか感じない。
柊さんには、僕が説明した。これからここで暮らすことも、恭二さんの養子になったことも‥。その説明の間中、柊さんは無表情だった。もっとも、口元しか見えないから表情とかよくわからないんだけど、少なくとも動揺した様子とか見せてなかった。
ぼ~と‥眠そうな顔して面倒くさそうに‥僕に説明されるままにしていた。
だけど「何も分かってません」って感じじゃないんだよね。寧ろ僕を信用して「任せます」って感じ。
僕たちって、会って間が無いけど、そんなに信用されちゃっていいのかな?
でも‥藁にもすがりたいって心境だったのかも。それ程追い詰められてたのかも。
あんな薄情な親たちだ。きっと‥今まで苦しい目にあって来たんだろう。‥もしかして、虐待とか、監禁とかされてたのかも?! まさか‥。でも、そう考えると腑に落ちる点が多い。
春先なのに、コートも羽織っていない‥着の身着のままって格好。所持品の圧倒的な少なさ。
‥でも、服も綺麗だし、髪の毛も伸ばしっぱなしとはいえ綺麗に洗ってる‥。
虐待をされてるわけでは無いにしても、監禁されてたってのは間違ってない気がする。‥なんとなく。
僕ね、‥そういうのはなんとなく外さないんだ。昔からね。
なんとなく、‥分かるんだ。
就職するってうちを出て来たものの、ホントはね。迷ってたんだ。「この期に及んで」だけど‥「ホントに僕この会社に入っていいのかな~」って。もうちょっと考えた方がいいんじゃないかな~って。伊吹さんたちの期待に沿えなくて「お荷物」になる未来しか見えないな~って‥ずっと電車にのってる間中考えてた。
だけど、柊さんを拾って、柊さんの苗字が「西遠寺」だって知った時、あそこに行けばいいんじゃない? ‥あそこしかないかも‥。って思ったんだ。
それも‥「なんとなくそんな気がする」っていういつもの勘なんだけどね。
なんとなく、「分かる」。そんな「気がする」。
喧嘩に連戦連勝という武勇伝以上の僕の特筆すべき点はここだって思う。
そもそも、喧嘩に勝ててたのだって「ここだ」ってタイミングが分かったからだ。
ここだ! ってタイミングを見落とさずに、相手をこの凶悪な目付きで圧倒して、相手が怯んだ隙に一撃。‥僕は見かけによらず一撃が重いっていうの? 相手を一発でノックアウトできるんだ。‥といいながら、次の瞬間にはその相手が「‥くそ‥どうなったんだ? 」って立ち上がってるところを見ると、ただ倒しただけなんだろう。軽い脳震盪位は起こしたかもしれない。‥だけど、(何にせよ)倒れてくれたらそれで逃げる時間は稼げる。それ以上は深追いせずに、撤退だ。長期戦とかよくない。そんな体力も気力もないからね。
僕がしたのはこれだけなんだけど、相手は(僕の睨みが余程怖かったのか)それ以来絶対に絡んでこなくなる。そんな感じで噂に尾がついて‥「地元最強のヤンキー」みたいな扱いになっちゃったり「息子にはこれ以上‥」ってなったり‥になった。
全部周りが勝手に騒いでるだけで僕の実力とかじゃない。僕自身は、ちょっと喧嘩にこなれた一発勝負のひょろ男くんだ。
空気が読めて‥勘が良くって、運がいい。あと‥野生の勘っての? 危険な子‥絶対喧嘩売っちゃダメ系の危険な子だとか‥そういうのもわかる。そういう子には、絶対近寄らない。喧嘩全戦全勝は「たまたま」だけじゃない。
弱者の持つ、第六感・「危機回避能力」ってだけでは済まないって思うんだ。これはね。ある意味才能だって思ってる。
そんな僕が「この子‥柊さん‥は一人にしちゃいけない」って思ったんだ。‥なら、連れてくしかないかなって。
連れて行っても大丈夫かな? とはちょっとはそりゃ思ったよ? まあ‥だけど、「普通の子じゃない」のが選考基準だったみたいだから‥いいのかな。普通の子じゃないっていうんだったら、柊さんも十分普通の子じゃないし‥そもそも、多分この子は誰でもよかったんじゃなくって、「僕だから」懐いて‥ついて来たっぽい。僕に何かを感じた‥僕なら大丈夫? 僕なら何とかしてくれる? ‥分からないけどそういう「何か」を僕に感じ取った‥そんな気がした。
なら‥この子も僕同様「何かが」「分かる子」なんじゃないかなって。
直前まで‥そんな思案があっての「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」だったわけだ。‥全くの嘘八百ってわけではない。
‥認めます。はったりだったってのは‥認めます。
ホント‥すみません。
基本的にぼーっとしてる柊さんのサポートは勿論連れて来た者として僕が全面的に任されることになった。今は、寮で先に休んでもらっている。この会社は交通の便がすこぶる悪いから社員寮が完備されているんだ。‥それは、だけど学生の僕にはありがたかった。学費に加えて家賃とか‥苦しいもんね。
僕はというと、仕事終わりの伊吹さんに呼ばれて伊吹さんの研究室でお茶をご馳走になっている。
伊吹さんの要件は柊さんの現状についてで、その報告は物の数分で済んだ。「特に変わりはないです」以外言いようがない。あと、「今は落ち着いているようですが、時々不安そうにしていることがあります」‥位かな? 伊吹さんはそれに対して「引き続き、よろしくお願いしますね」って言って僕にお茶を出してくれた。
マグカップで緑茶を。それも並々と。
お茶を用意してくれている伊吹さんに何度「変わりましょうか? 」って言ってしまいそうになったか分からない。まず、紅茶用っぽいティーポットに茶葉を適当にいれて、ヤカンで沸かしたお湯を冷まさずにざばーっていれて、ろくに蒸らさずにざばーって注ぐ‥。
ティーパックではなくお茶の葉を使うんならもうちょっと淹れ方にも気をつけるんじゃ? って思ったんだけど‥もしかして、この人はそういうのどうでもいいんだけど、そういうこと‥お茶っぱだとかそういうの‥に気をつける人がこのお茶の葉を用意してるのかな? って思ったり。(だけど、急須じゃなくって紅茶用のティーポットだけどね?? そういうのは拘りないのかな?? )
一口口にしたお茶はやっぱり‥薄かった。
僕はマグカップをローテーブルに置くと、向かいに座る伊吹さんに
「普通とはちょっと違う変人ばっかりを集める理由は‥裏西遠寺の能力者がその中にいるかもって思うからなんですよね? 」
って聞いた。伊吹さんは苦笑して
「変人‥はっきり言うね。
そうだね~。まあ‥そうとも‥言えるし‥違うとも言える」
って曖昧な返事をして、自分もマグカップに口をつけ‥「あち! 」って言った。だよね。熱いよね。
ってか‥そうとも言えるし違うとも言える?
‥なんだそりゃ、ハッキリしろ。
「いやね。裏西遠寺の能力者といえば陰陽術が使える者だ。折り目正しい、正当な修行を積んだ由緒正しい能力者だ。‥いまでも、表の西遠寺にはそんな陰陽師の家はある。だけど、僕から言わせたらね、今この時代‥折り目正しい能力者だけで「鬼退治」が成立するかな~って。
人生いろいろ、男も色々‥鬼だって色々じゃない? 鬼だって時代と共に進化してるんじゃないかって思うワケだ」
人生いろいろって‥何それ歌の歌詞? この人さらっと古い歌出してきたな。若そうに見えるけど、実はけっこう年食ってんのかな。
訝しむ視線を向けた僕に気にする様子もなく、伊吹さんはちょっと興が乗ったって風に言葉を続けた。
「‥それでさ、そんな鬼には、「新しい」能力者じゃないと対応できないんじゃない? って思ってね」
で、どや顔。なんだけど‥視線が僕と合ってないようですが大丈夫ですか? なんか笑顔も不自然ですね?
いやね。確かに途中までは自分の話に乗ってますって感じだったんだよ。だけど、最後の方は「声ちっちゃ! 」って感じになってったんだよね。だけど、それを相手である僕に悟らせまいと‥隠して「ドヤ顔」。
全然隠せてないんだけどね。
こうまで分かりやすくキョドってる人にわざわざ決定打あたえるのも何かって思うけど‥
「成程。つまり、後のことはその時考えようという‥なるようになるさプランってことですね」
言っちゃった。
‥だけど、人のことは‥いえない。柊さんを「後先考えず」拾って来た僕の言えたことじゃない。
だけど‥言っちゃえ。
僕とこの人とは立場が違う。‥僕がやるのと、この人がやるのでは全然責任感的なものが違う。
「う! 」
‥図星か。
分かりやす~。
「で‥でも、「違うな」ってなっても、見捨てたりしないよ? ちゃんと、適材適所、その子にあった仕事についてもらうよ? 」
うん、ただ、秘密を知った者はここから出さないぜ~の間違いだよね? いいです。そういう「建前」。
だから、僕も「そうですか。安心しました」って適当に言ってその話を終えることにした。
‥ところで
「使える使えないは、誰が判断するんですか? 実際に現場に出してみるんですか? そのうち、僕も行ったりするんですかね? 」
実習とか‥それは、嫌だな。
陰陽師が必要な案件ってどんなのかわからんけど‥確実にオバケを相手するんだよね? オバケってか‥生霊とか‥鬼? それは‥無理だ。
だけど、予想に反して、伊吹さんは首を振って、
「いや、そうじゃない」
って言い切った。
もう、はっきりと。
今までのキョドってた人と同一人物かっていう位もう、はっきりと。
「そんな危ないことさせない。
‥この子そうかもって「強く」思ったらプロの人に見に来てもらうんだ」
プロの人任せだ‥と。
う~ん。大丈夫かな‥この人。
一抹の不安を感じた僕だった。
それどころか‥ホント拍子抜けって程だった。ちょっとは「勝手なことを‥! 」とかなると思ったんだけど、僕の「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」っていうはったりが通ったのかな? まさかね。
‥苗字も同じだし、ホントに親戚とかかもってなんとなく思ったんだけど、それはズバリだったらしく、あの後伊吹さんが柊さんの親御さんに連絡してた。「連れ返せ! 」ってなるかと思ったら、そうはならずに‥柊さんは「隆行さん」の名前を捨てて、恭二さんの養子になることが決まったらしい。
結構あっさりと。‥犬や猫じゃないんだからって思ったけど‥同時にね、柊さんが家でそれ位の扱いを受けてたんだなって理解して‥苦しくなった。悲しいっていうより‥怒りだね。「あんたらなんかに頼らなくても、柊さんは僕が面倒見るんだからな! 」って対抗心を燃やした。見たこともない人たちだけど‥怒りしか感じない。
柊さんには、僕が説明した。これからここで暮らすことも、恭二さんの養子になったことも‥。その説明の間中、柊さんは無表情だった。もっとも、口元しか見えないから表情とかよくわからないんだけど、少なくとも動揺した様子とか見せてなかった。
ぼ~と‥眠そうな顔して面倒くさそうに‥僕に説明されるままにしていた。
だけど「何も分かってません」って感じじゃないんだよね。寧ろ僕を信用して「任せます」って感じ。
僕たちって、会って間が無いけど、そんなに信用されちゃっていいのかな?
でも‥藁にもすがりたいって心境だったのかも。それ程追い詰められてたのかも。
あんな薄情な親たちだ。きっと‥今まで苦しい目にあって来たんだろう。‥もしかして、虐待とか、監禁とかされてたのかも?! まさか‥。でも、そう考えると腑に落ちる点が多い。
春先なのに、コートも羽織っていない‥着の身着のままって格好。所持品の圧倒的な少なさ。
‥でも、服も綺麗だし、髪の毛も伸ばしっぱなしとはいえ綺麗に洗ってる‥。
虐待をされてるわけでは無いにしても、監禁されてたってのは間違ってない気がする。‥なんとなく。
僕ね、‥そういうのはなんとなく外さないんだ。昔からね。
なんとなく、‥分かるんだ。
就職するってうちを出て来たものの、ホントはね。迷ってたんだ。「この期に及んで」だけど‥「ホントに僕この会社に入っていいのかな~」って。もうちょっと考えた方がいいんじゃないかな~って。伊吹さんたちの期待に沿えなくて「お荷物」になる未来しか見えないな~って‥ずっと電車にのってる間中考えてた。
だけど、柊さんを拾って、柊さんの苗字が「西遠寺」だって知った時、あそこに行けばいいんじゃない? ‥あそこしかないかも‥。って思ったんだ。
それも‥「なんとなくそんな気がする」っていういつもの勘なんだけどね。
なんとなく、「分かる」。そんな「気がする」。
喧嘩に連戦連勝という武勇伝以上の僕の特筆すべき点はここだって思う。
そもそも、喧嘩に勝ててたのだって「ここだ」ってタイミングが分かったからだ。
ここだ! ってタイミングを見落とさずに、相手をこの凶悪な目付きで圧倒して、相手が怯んだ隙に一撃。‥僕は見かけによらず一撃が重いっていうの? 相手を一発でノックアウトできるんだ。‥といいながら、次の瞬間にはその相手が「‥くそ‥どうなったんだ? 」って立ち上がってるところを見ると、ただ倒しただけなんだろう。軽い脳震盪位は起こしたかもしれない。‥だけど、(何にせよ)倒れてくれたらそれで逃げる時間は稼げる。それ以上は深追いせずに、撤退だ。長期戦とかよくない。そんな体力も気力もないからね。
僕がしたのはこれだけなんだけど、相手は(僕の睨みが余程怖かったのか)それ以来絶対に絡んでこなくなる。そんな感じで噂に尾がついて‥「地元最強のヤンキー」みたいな扱いになっちゃったり「息子にはこれ以上‥」ってなったり‥になった。
全部周りが勝手に騒いでるだけで僕の実力とかじゃない。僕自身は、ちょっと喧嘩にこなれた一発勝負のひょろ男くんだ。
空気が読めて‥勘が良くって、運がいい。あと‥野生の勘っての? 危険な子‥絶対喧嘩売っちゃダメ系の危険な子だとか‥そういうのもわかる。そういう子には、絶対近寄らない。喧嘩全戦全勝は「たまたま」だけじゃない。
弱者の持つ、第六感・「危機回避能力」ってだけでは済まないって思うんだ。これはね。ある意味才能だって思ってる。
そんな僕が「この子‥柊さん‥は一人にしちゃいけない」って思ったんだ。‥なら、連れてくしかないかなって。
連れて行っても大丈夫かな? とはちょっとはそりゃ思ったよ? まあ‥だけど、「普通の子じゃない」のが選考基準だったみたいだから‥いいのかな。普通の子じゃないっていうんだったら、柊さんも十分普通の子じゃないし‥そもそも、多分この子は誰でもよかったんじゃなくって、「僕だから」懐いて‥ついて来たっぽい。僕に何かを感じた‥僕なら大丈夫? 僕なら何とかしてくれる? ‥分からないけどそういう「何か」を僕に感じ取った‥そんな気がした。
なら‥この子も僕同様「何かが」「分かる子」なんじゃないかなって。
直前まで‥そんな思案があっての「自分には、ここで役に立つ能力はない。でも、僕たちは、異能者は見たら割とわかりますよ」だったわけだ。‥全くの嘘八百ってわけではない。
‥認めます。はったりだったってのは‥認めます。
ホント‥すみません。
基本的にぼーっとしてる柊さんのサポートは勿論連れて来た者として僕が全面的に任されることになった。今は、寮で先に休んでもらっている。この会社は交通の便がすこぶる悪いから社員寮が完備されているんだ。‥それは、だけど学生の僕にはありがたかった。学費に加えて家賃とか‥苦しいもんね。
僕はというと、仕事終わりの伊吹さんに呼ばれて伊吹さんの研究室でお茶をご馳走になっている。
伊吹さんの要件は柊さんの現状についてで、その報告は物の数分で済んだ。「特に変わりはないです」以外言いようがない。あと、「今は落ち着いているようですが、時々不安そうにしていることがあります」‥位かな? 伊吹さんはそれに対して「引き続き、よろしくお願いしますね」って言って僕にお茶を出してくれた。
マグカップで緑茶を。それも並々と。
お茶を用意してくれている伊吹さんに何度「変わりましょうか? 」って言ってしまいそうになったか分からない。まず、紅茶用っぽいティーポットに茶葉を適当にいれて、ヤカンで沸かしたお湯を冷まさずにざばーっていれて、ろくに蒸らさずにざばーって注ぐ‥。
ティーパックではなくお茶の葉を使うんならもうちょっと淹れ方にも気をつけるんじゃ? って思ったんだけど‥もしかして、この人はそういうのどうでもいいんだけど、そういうこと‥お茶っぱだとかそういうの‥に気をつける人がこのお茶の葉を用意してるのかな? って思ったり。(だけど、急須じゃなくって紅茶用のティーポットだけどね?? そういうのは拘りないのかな?? )
一口口にしたお茶はやっぱり‥薄かった。
僕はマグカップをローテーブルに置くと、向かいに座る伊吹さんに
「普通とはちょっと違う変人ばっかりを集める理由は‥裏西遠寺の能力者がその中にいるかもって思うからなんですよね? 」
って聞いた。伊吹さんは苦笑して
「変人‥はっきり言うね。
そうだね~。まあ‥そうとも‥言えるし‥違うとも言える」
って曖昧な返事をして、自分もマグカップに口をつけ‥「あち! 」って言った。だよね。熱いよね。
ってか‥そうとも言えるし違うとも言える?
‥なんだそりゃ、ハッキリしろ。
「いやね。裏西遠寺の能力者といえば陰陽術が使える者だ。折り目正しい、正当な修行を積んだ由緒正しい能力者だ。‥いまでも、表の西遠寺にはそんな陰陽師の家はある。だけど、僕から言わせたらね、今この時代‥折り目正しい能力者だけで「鬼退治」が成立するかな~って。
人生いろいろ、男も色々‥鬼だって色々じゃない? 鬼だって時代と共に進化してるんじゃないかって思うワケだ」
人生いろいろって‥何それ歌の歌詞? この人さらっと古い歌出してきたな。若そうに見えるけど、実はけっこう年食ってんのかな。
訝しむ視線を向けた僕に気にする様子もなく、伊吹さんはちょっと興が乗ったって風に言葉を続けた。
「‥それでさ、そんな鬼には、「新しい」能力者じゃないと対応できないんじゃない? って思ってね」
で、どや顔。なんだけど‥視線が僕と合ってないようですが大丈夫ですか? なんか笑顔も不自然ですね?
いやね。確かに途中までは自分の話に乗ってますって感じだったんだよ。だけど、最後の方は「声ちっちゃ! 」って感じになってったんだよね。だけど、それを相手である僕に悟らせまいと‥隠して「ドヤ顔」。
全然隠せてないんだけどね。
こうまで分かりやすくキョドってる人にわざわざ決定打あたえるのも何かって思うけど‥
「成程。つまり、後のことはその時考えようという‥なるようになるさプランってことですね」
言っちゃった。
‥だけど、人のことは‥いえない。柊さんを「後先考えず」拾って来た僕の言えたことじゃない。
だけど‥言っちゃえ。
僕とこの人とは立場が違う。‥僕がやるのと、この人がやるのでは全然責任感的なものが違う。
「う! 」
‥図星か。
分かりやす~。
「で‥でも、「違うな」ってなっても、見捨てたりしないよ? ちゃんと、適材適所、その子にあった仕事についてもらうよ? 」
うん、ただ、秘密を知った者はここから出さないぜ~の間違いだよね? いいです。そういう「建前」。
だから、僕も「そうですか。安心しました」って適当に言ってその話を終えることにした。
‥ところで
「使える使えないは、誰が判断するんですか? 実際に現場に出してみるんですか? そのうち、僕も行ったりするんですかね? 」
実習とか‥それは、嫌だな。
陰陽師が必要な案件ってどんなのかわからんけど‥確実にオバケを相手するんだよね? オバケってか‥生霊とか‥鬼? それは‥無理だ。
だけど、予想に反して、伊吹さんは首を振って、
「いや、そうじゃない」
って言い切った。
もう、はっきりと。
今までのキョドってた人と同一人物かっていう位もう、はっきりと。
「そんな危ないことさせない。
‥この子そうかもって「強く」思ったらプロの人に見に来てもらうんだ」
プロの人任せだ‥と。
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