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57.でぇと。

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 朝起きたけど、身体の疲れはすっきりクリア☆ってならないのは、聖女ベッドじゃないから。体力全回復チートベッドが恋しい。
 俺がう~んと背伸びの運動(座っての運動です)をすると、ベッドの脇に立ってる三人と目が合った。
 三人とも生暖かい笑顔を浮かべている。
「‥‥‥」
 ‥気味ワル。(※ タツミは自分の寝相のせいで、二人がろくに寝れなかったことを知らない)
 だけど、大人な俺はここで「何やねん、なに笑てんねん、気味悪いな」とかぶち切れない。爽やかな朝を台無しになんてしない。(※ 重ねて言うが、知らない。後で知ったら恥ずか死ぬ案件)
 ここは‥スルーだ。
 にっこり笑って
「あ、レオン様起きられるようになられたんですか? 良かったです。俺の看病のお陰ですね」
 って言ったら、苦笑いされた。
 ‥アル様に。(※ そして、アル様にもその寝相を見られたこともまた、知らない。知ったら‥ホントに恥ずか死ぬだろう)
 ‥なんやねん。君はあの場にいなかったでしょ。俺が自己犠牲の精神で抱き枕になった‥あの俺の苦労と苦難‥そして苦痛を見て無いでしょ。‥って俺は思ったんだけど、言いたくないから言わない。
 だって、恥ずかしいじゃない。男の抱き枕になるの甘受したとか‥。
 ※ 実際にはあの(レオンがタツミを抱き込んだ)後、結構すぐタツミは眠っちゃって、実は(やっぱり)起きてたレオンが「ちょっと悪戯しちゃおう‥」って感じでタツミを触ろうとした瞬間に‥寝ぼけたタツミに蹴とばされた。
 乙女ゲームの力にタツミの寝相が勝利した瞬間、色っぽい展開が図らずとも回避された瞬間だった。
「看病‥。ふふ、お疲れ様。タツミ」
 何か? 寝てただろ、看病してないだろ? って顔してない?? したよ看病! 薬も飲ませたし、ちゃんと「聖女ボディヒーリング」した。見てなかった君にはわかんないだろうけど、「薬を嫌がる子供に上手に薬を飲ませるベテラン看護師さんのような」手腕だったんだよ? ホント、見せたかったよ! (← タツミ自身の意思により一部記憶が書き変えられているご様子)
 ‥そうだったよね? 優しく「薬飲まなきゃダメだよ」って言ったよね? ‥言ったと思う。
 わからん。なんか色々あったから‥なんか記憶がアイマイ。 
 だから‥じゃないけど
「‥‥‥」
 大人な俺はそんなことわざわざ言わない。(自信がないから言わないんじゃないぞ! 大人だから言わないんだぞ? )
 ‥だけど、アル様には流石に腹が立ったから苦笑いだ。
 わざわざ言わないけど、含み笑い? この微妙な笑顔で何か悟ればいい! (※ アル様たちからすれば、さっきの苦笑いで何か悟れって話なんだろうが‥)
「レオンハルト王子も起きられるようになったものの‥流石に万全ではない。そんな状態で最後の戦いに挑むのは無謀だ。ここで少し休憩しつつ武器や食料の補充や装備の強化を図ろうと思うんだけどどうだろう? 俺たちで街に行って来るから、レオンハルト王子は身体を休めていて欲しい」
 アル様がレオン様に提案する。レオン様は首を振り
「俺の武器も調節したいから俺も行く」
 とはっきりした口調で言った。
 いつも寝る前に自分で磨いてはいるが、刃こぼれやなんかまでは何ともできないからね。そういうのだろう。俺の杖も、ちょっと魔石が欠けたからそこら辺のメンテナンスもしたい。
 ‥この魔石って交換とかしてもいいのかな? 
 そんなことをほんと自然に考えた時「お、俺ってなんか職人~。武器(分類として武器かどうかわからないな。‥道具? )としての杖のコンデションを自然に気にかけちゃったりするんだ! 」って思った。
 ジーンとしている俺を無視してアル様とレオン様たちの話は俺を無視して進んでいく。
 ‥入れてくれ。
「タツミのローブも新調しないといけないし」
 ‥おお、図らずも会話に参加できた。
 だけど‥
「俺? ‥まあ‥確かに結構擦り切れて来たけど‥でも、それはレオン様たちも同じだよね? 」
 俺からしたら、俺だけ特別扱いよくない! って気持ちで言ったら、レオン様たちは首を振って、剣士たちの装備の擦り切れは戦いの功績っての? 武勲だけど、看板である聖女のローブの綻びは人民に不安を与える‥みたいなことを説明してくれた。
 まあ、確かに看板がぼろだったら「この店大丈夫かな。つぶれないかな」って思う‥のかも? でも、「私たち頑張ってます」「大船に乗ったつもりで待っててください」アピールになんない? って思ったけど、そういうのを担当するのは「剣士たちの自信に満ちた表情」らしい。
 大事だよね。国民たちを安心させるのって。
「そうですね。じゃあ、ローブは俺とタツミで行って来るので、レオンハルト王子とアルファンソ王子は、武器屋に行ってください。食料やなんかは後で一緒に買いに行きましょう」
「‥なんで俺がアルファンソ・レンブラント王子と一緒なんだ」
 不機嫌な顔でレオン様が言う。レオン様って絶対アル様のことアルファンソ・レンブラントって呼ぶよね。‥やっぱり失礼にあたるからかな? うん‥まあ、まちがいないよね。ってか、レンブラントは名字じゃ‥ないよね? ああ、違うか。王族の苗字は国名だ。‥やっぱり、あれは名前なのか。つまり、アル様はヴァルメールの王子・アルファンソ・レンブラント様ってことだ。
 長い。
「用心棒です。まだレオンハルト王子は本調子じゃないので。‥アルファンソ王子すみませんがお願いします」
 ライ様が丁寧にアル様にお願いして、アル様も「分かった」と快諾したが、レオン様はまだ不満みたいで、暫く
「‥タツミには用心棒要らないのか」 
 とか言ってたが、誰も取り合わなかったからか、暫くして「分かった‥」と、いやいや納得した。大人気ないのはダメだよね。


「だけど、俺も武器屋行きたいな。魔石がちょっとかけてるの気になってて‥」
 俺が言うとライ様も頷いて
「俺も見たいものあるから後で行こう」
 って言ってくれた。
 レオン様以外はおおむねまともなんだよね、このパーティー。まあ‥レオン様もそこまで異常ってことじゃないんだけど‥。常識人かって言われると、違う、みたいな。
 ライ様と移動して、ついた先は服屋ではなく神殿だった。
「服屋さんじゃないんだ」
 って言いそうになったけど、確かに聖女の服服屋さんに売ってたら「なんちゃって聖女」が増殖するわな。
「これはこれは聖女様! 」
 神殿に着いたら大歓迎だった。
 多分、この度一の歓迎振り。今までは、子供(と、あと女性)には(男前で)剣士であるレオン様が一番人気で、男たちにはアル様、魔術士たちにはライ様が人気で俺は「偉い人」認識はされてたけど、男だからかイマイチの人気だったんだ。そのくせ「よろしくお願いします」って頼られ、頼まれる‥みたいな。
 だけど、ここではもうアイドル並みの歓迎だった。
 ‥俺、もうここに住んじゃいたい。
 そんな信者(笑)たちに新しいローブと、彼らが今まで宝として大事にしてきた「伝説の衣」を貰って、俺たちは神殿を後にした。
「じゃあ、次は武器屋だな! 」
 新しいローブに着替えた(勿論自動着替えで)俺がウキウキというと、ライ様が
「折角だから市場で何か食べていこう」
 って言った。
 え~? 奴らはご飯も食べてないんだぞ? って思ったけど、丁度腹がなった。
「じゃあ‥軽く」
 照れ笑いで俺も承諾する。ふふって嬉しそうにライ様が頷く。
 だけど、
「‥でぇとだな」
 ってライ様が微かに微笑んで言った言葉は、聞こえなかった振りした。


 次回、ライ様と市場でぇと。とうとうなるか? ドキドキ展開!? 
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