43 / 52
42.ルミエル(プレーヤー:タツミの妹)
しおりを挟む
エリサリオスに恋した。
‥恋した? っていうのが正しいかどうかわかないけど、エリサリオスを「推そう」って思った。
だって、コミュニティーサイトの皆には一様に「推し」がいて、楽しそうなのに、私にはいないんだもの。
単純にね。一緒に「私はこの人! 」って言える人が欲しかった。
その方が楽しそうじゃない?
だけど、レオン様はチョロいし、ライ様は真面目過ぎるし、アル様は‥いい人だけどそれだけって感じだし。‥何かウソ言って「カッコイイよね~」って言うのもね~って思ってた。
そんな時に、「隠しルート」魔王の話だ。「それなら?! 」って思ったけど、「だけど、魔王だし」って感じだし顔色悪すぎるし‥。「推しって感じじゃないかな~」って思った。
魔王は、「ちょい悪」「ヤンデレ」枠。
ベタな乙女ゲームだから「女の子の好き」に答える様なヒーローを一通り揃えてみましたって感じなんだ。
レオン様は「生粋な王子様キャラ」皆に優しくって、キラキラ眩しいイケメン。枠は‥「溺愛」「生粋な王子様」‥かなあ。
アルフレッド様は、「イイ人」「兄貴」キャラ。
ライ様は、「インテリ」「ツンデレ(時々出るデレが可愛いんだ)」キャラ。
で、「ヤンデレ」「ちょい悪」な魔王。
だけどさ~、ヤンデレとか‥普通に怖いよね?
私にだけ優しいっていっても、病んでるんだよね? 「他の奴と話すなんて‥」「話した奴は殺す‥」とか‥ヤバいしかないよね? 監禁とか‥ないわ~。(そこまでの描写はないらしいが)
顔的にも、断然エリサリオス。
だけど、攻略対象じゃないエリサリオスはどんなにアプローチしても「貴女はやさしいですね。きっと、魔王様は貴女のことを好きになってくれますよ」とかどうでもいいことしか言わないの! でも、「ありがとう」って言う彼のカッコイイ顔見てたら、「いいか~」って思えた。
‥いいかなって思ってたんだ。
私の事彼は絶対好きになってくれないけど、私が好きならいいか。
推しってそんなもんでしょ。
アイドルと恋愛が出来るとは思わない。それと一緒。
それでいい、って思ってたんだけど‥
でもね‥
なんだか物足りなくなったんだ。
一方通行に。
ちょっと前まではコミュニティーサイトで
「魔王を殺したら、新ルートが開けたりしない? エリサリオスルートが解禁になったりしない? 」
って結構盛り上がったりしてて、「そういう期待」もしてたんだよ。
で、私としては「じゃあ、私が一番にそれをやっちゃう? 」って思って‥
「ヒロイン・ルミエルをお兄ちゃんにプレーしてもらって、魔女・ルミエルとダブルでやったら‥魔王討伐ルート可能じゃない?? 」
って考えてたのに、だ。(つまり、それ程テンション高かったってわけだ)
お兄ちゃんがそんなこと、してくれるわけないじゃん。
って‥正気に戻ったんだよね。
お兄ちゃんがあのゲームのジャケット見て
「なにこれ。この女の子が主人公? あ~逆ハーレムって奴?
世界を救うとか言って、恋愛のことしか考えてない馬鹿なヒロイン! 」
って笑ったのを見た瞬間‥
お兄ちゃんが、私の手伝いなんかしてくれるわけないじゃん。
お兄ちゃんが乙女ゲームしてるの想像したら‥なんか引くわ~。
って思ったんだ。
正気に戻っちゃったんだ。
そしたら、一気に「もうどうでもいい」ってなっちゃった。
だから、それ以降、あのゲームをしていない。
タツミがゲームの世界に転送されたのは、その後の話だ。タツミが会ったのは初めから、自我を持った「タツミの妹が育てた」ヒロイン・ルミエルだったんだけど、ルミエルはこの時まだ自分が自我を持っていることに気付いていなかった。
だから、ルミエルはタツミを見た時「自分の兄」だって思ったんだ。
隠れルート・攻略者魔王ルートを解禁させたのは、タツミの妹。
エリサリオスを好きってインプットしたのも、タツミの妹。
魔女を選択して魔界に行ったのも、タツミの妹。
だけど、そこで魔王ルートに進まず、魔王の周辺人物でしかないエリサリオスに貢物をして‥だけど、攻略対象ではない故に好感度は上がらず、やきもきしたのも、タツミの妹。
そこでゲームをやめてしまったのも、タツミの妹。
そして、その後のルミエルは、「ルミエル本人」だ。
例の咄嗟の告白でエリサリオスを魔界から連れ出してジーナの家で匿ったのも、ルミエル。毎日エリサリオスに「貴方は大切な人」って繰り返し伝えているのもルミエル。
タツミに「乙女ゲームの攻略方法」を教えたのも、ルミエル。
エリサリオスに対する想いに気付けず(素直になれず)、エリサリオスとの恋にあと一歩踏み出せない今のルミエルも、ルミエル本人の気持ちなんだ。
中学生のタツミの妹にそんな「切ない恋心」なんて‥ない。
誰かに寄り添い、進展すら望めないのに、その恋心を持続させる‥そんな忍耐力、ない。
それに何より‥タツミの妹にとって、エリサリオスは「リアル」じゃないから‥。
ルミエルも、タツミの妹も、タツミをこの世界に送った「神? なイケメン」がいることを知らない。
そもそも、タツミの妹は自分の兄がこの乙女ゲームの世界に入っちゃってることを知らない。
ルミエルはプレーヤーであるタツミの妹が兄を「当初の目論見通り」この世界に呼ぶことが出来たって思ってる。
ここら辺にちょっとした認識のズレがあるんだけど‥このズレにルミエルは気付いていない。
タツミを呼んだのは、タツミの妹でも、ルミエルでもない。
誰か。
タツミの言うところの「神? なイケメン」だ。
彼に会ったことがあるのは、タツミだけだ。タツミだけがあの場に立ち会っていた。
タツミだけのオリジナルオープニングだった。
だけど、今‥随分この世界の人間に会って来たのに、タツミはあの「神? なイケメン」に再び会えていない。
普通だったらそろそろ「あ! 貴方はあの時の‥」「俺をこの世界に呼んだ奴! 」ってなってもよさそうなもんなのに‥だ。
じゃあ、ホントに神的な‥登場人物ではない人物だったのか?
だけど、あの男は‥ルミエルに特別な感情を持っているようだった。
この世界に‥ではなく、ルミエルに‥だ。
ルミエルを馬鹿にして、「馬鹿なヒロイン」って言ったから、(そのことに彼は怒って)俺はこの世界に呼ばれたってことじゃないか?
‥いや、他の可能性もあるな。
彼は実はこの乙女ゲームの製作者サイドで、ストーリーを馬鹿にされて腹を立てたから俺を呼んだ‥とか? (こわっ、何で運営が俺の言ったことや俺のこと知ってんだよ!! ) これはない。
攻略対象である三人ならルミエルに特別な感情を持っていてもおかしくはない。だけど、違う。
じゃあ‥魔王? それとも‥ルミエルが大好きな魔王側近・エリサリオス?
魔王はないよね。だって‥ヒロインは「自分を殺す存在」だ。
タツミは‥その時何となく嫌な予感がしてたんだ。
魔王じゃない‥
ってことは‥つまり‥ね?
そういうこと‥だろ?
俺を呼んだのは、エリサリオスだ。‥ルミエルの恋人(?)の‥。
この後、タツミと「神? なイケメン」との再会は結構あっさりと‥実現された。
‥恋した? っていうのが正しいかどうかわかないけど、エリサリオスを「推そう」って思った。
だって、コミュニティーサイトの皆には一様に「推し」がいて、楽しそうなのに、私にはいないんだもの。
単純にね。一緒に「私はこの人! 」って言える人が欲しかった。
その方が楽しそうじゃない?
だけど、レオン様はチョロいし、ライ様は真面目過ぎるし、アル様は‥いい人だけどそれだけって感じだし。‥何かウソ言って「カッコイイよね~」って言うのもね~って思ってた。
そんな時に、「隠しルート」魔王の話だ。「それなら?! 」って思ったけど、「だけど、魔王だし」って感じだし顔色悪すぎるし‥。「推しって感じじゃないかな~」って思った。
魔王は、「ちょい悪」「ヤンデレ」枠。
ベタな乙女ゲームだから「女の子の好き」に答える様なヒーローを一通り揃えてみましたって感じなんだ。
レオン様は「生粋な王子様キャラ」皆に優しくって、キラキラ眩しいイケメン。枠は‥「溺愛」「生粋な王子様」‥かなあ。
アルフレッド様は、「イイ人」「兄貴」キャラ。
ライ様は、「インテリ」「ツンデレ(時々出るデレが可愛いんだ)」キャラ。
で、「ヤンデレ」「ちょい悪」な魔王。
だけどさ~、ヤンデレとか‥普通に怖いよね?
私にだけ優しいっていっても、病んでるんだよね? 「他の奴と話すなんて‥」「話した奴は殺す‥」とか‥ヤバいしかないよね? 監禁とか‥ないわ~。(そこまでの描写はないらしいが)
顔的にも、断然エリサリオス。
だけど、攻略対象じゃないエリサリオスはどんなにアプローチしても「貴女はやさしいですね。きっと、魔王様は貴女のことを好きになってくれますよ」とかどうでもいいことしか言わないの! でも、「ありがとう」って言う彼のカッコイイ顔見てたら、「いいか~」って思えた。
‥いいかなって思ってたんだ。
私の事彼は絶対好きになってくれないけど、私が好きならいいか。
推しってそんなもんでしょ。
アイドルと恋愛が出来るとは思わない。それと一緒。
それでいい、って思ってたんだけど‥
でもね‥
なんだか物足りなくなったんだ。
一方通行に。
ちょっと前まではコミュニティーサイトで
「魔王を殺したら、新ルートが開けたりしない? エリサリオスルートが解禁になったりしない? 」
って結構盛り上がったりしてて、「そういう期待」もしてたんだよ。
で、私としては「じゃあ、私が一番にそれをやっちゃう? 」って思って‥
「ヒロイン・ルミエルをお兄ちゃんにプレーしてもらって、魔女・ルミエルとダブルでやったら‥魔王討伐ルート可能じゃない?? 」
って考えてたのに、だ。(つまり、それ程テンション高かったってわけだ)
お兄ちゃんがそんなこと、してくれるわけないじゃん。
って‥正気に戻ったんだよね。
お兄ちゃんがあのゲームのジャケット見て
「なにこれ。この女の子が主人公? あ~逆ハーレムって奴?
世界を救うとか言って、恋愛のことしか考えてない馬鹿なヒロイン! 」
って笑ったのを見た瞬間‥
お兄ちゃんが、私の手伝いなんかしてくれるわけないじゃん。
お兄ちゃんが乙女ゲームしてるの想像したら‥なんか引くわ~。
って思ったんだ。
正気に戻っちゃったんだ。
そしたら、一気に「もうどうでもいい」ってなっちゃった。
だから、それ以降、あのゲームをしていない。
タツミがゲームの世界に転送されたのは、その後の話だ。タツミが会ったのは初めから、自我を持った「タツミの妹が育てた」ヒロイン・ルミエルだったんだけど、ルミエルはこの時まだ自分が自我を持っていることに気付いていなかった。
だから、ルミエルはタツミを見た時「自分の兄」だって思ったんだ。
隠れルート・攻略者魔王ルートを解禁させたのは、タツミの妹。
エリサリオスを好きってインプットしたのも、タツミの妹。
魔女を選択して魔界に行ったのも、タツミの妹。
だけど、そこで魔王ルートに進まず、魔王の周辺人物でしかないエリサリオスに貢物をして‥だけど、攻略対象ではない故に好感度は上がらず、やきもきしたのも、タツミの妹。
そこでゲームをやめてしまったのも、タツミの妹。
そして、その後のルミエルは、「ルミエル本人」だ。
例の咄嗟の告白でエリサリオスを魔界から連れ出してジーナの家で匿ったのも、ルミエル。毎日エリサリオスに「貴方は大切な人」って繰り返し伝えているのもルミエル。
タツミに「乙女ゲームの攻略方法」を教えたのも、ルミエル。
エリサリオスに対する想いに気付けず(素直になれず)、エリサリオスとの恋にあと一歩踏み出せない今のルミエルも、ルミエル本人の気持ちなんだ。
中学生のタツミの妹にそんな「切ない恋心」なんて‥ない。
誰かに寄り添い、進展すら望めないのに、その恋心を持続させる‥そんな忍耐力、ない。
それに何より‥タツミの妹にとって、エリサリオスは「リアル」じゃないから‥。
ルミエルも、タツミの妹も、タツミをこの世界に送った「神? なイケメン」がいることを知らない。
そもそも、タツミの妹は自分の兄がこの乙女ゲームの世界に入っちゃってることを知らない。
ルミエルはプレーヤーであるタツミの妹が兄を「当初の目論見通り」この世界に呼ぶことが出来たって思ってる。
ここら辺にちょっとした認識のズレがあるんだけど‥このズレにルミエルは気付いていない。
タツミを呼んだのは、タツミの妹でも、ルミエルでもない。
誰か。
タツミの言うところの「神? なイケメン」だ。
彼に会ったことがあるのは、タツミだけだ。タツミだけがあの場に立ち会っていた。
タツミだけのオリジナルオープニングだった。
だけど、今‥随分この世界の人間に会って来たのに、タツミはあの「神? なイケメン」に再び会えていない。
普通だったらそろそろ「あ! 貴方はあの時の‥」「俺をこの世界に呼んだ奴! 」ってなってもよさそうなもんなのに‥だ。
じゃあ、ホントに神的な‥登場人物ではない人物だったのか?
だけど、あの男は‥ルミエルに特別な感情を持っているようだった。
この世界に‥ではなく、ルミエルに‥だ。
ルミエルを馬鹿にして、「馬鹿なヒロイン」って言ったから、(そのことに彼は怒って)俺はこの世界に呼ばれたってことじゃないか?
‥いや、他の可能性もあるな。
彼は実はこの乙女ゲームの製作者サイドで、ストーリーを馬鹿にされて腹を立てたから俺を呼んだ‥とか? (こわっ、何で運営が俺の言ったことや俺のこと知ってんだよ!! ) これはない。
攻略対象である三人ならルミエルに特別な感情を持っていてもおかしくはない。だけど、違う。
じゃあ‥魔王? それとも‥ルミエルが大好きな魔王側近・エリサリオス?
魔王はないよね。だって‥ヒロインは「自分を殺す存在」だ。
タツミは‥その時何となく嫌な予感がしてたんだ。
魔王じゃない‥
ってことは‥つまり‥ね?
そういうこと‥だろ?
俺を呼んだのは、エリサリオスだ。‥ルミエルの恋人(?)の‥。
この後、タツミと「神? なイケメン」との再会は結構あっさりと‥実現された。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
俊哉君は無自覚美人。
文月
BL
自分カッコイイ! って思ってる「そこそこ」イケメンたちのせいで不運にも死んでしまった「残念ハーフ」鈴木俊哉。気が付いたら、異世界に転移していた! ラノベ知識を総動員させて考えた結果、この世界はどうやら美醜が元の世界とはどうも違う様で‥。
とはいえ、自分は異世界人。変に目立って「異世界人だ! 売れば金になる! 捕まえろ! 」は避けたい! 咄嗟に路上で寝てる若者のローブを借りたら‥(借りただけです! 絶対いつか返します! )何故か若者(イケメン)に恋人の振りをお願いされて?
異世界的にはどうやらイケメンではないらしいが元の世界では超絶イケメンとの偽装恋人生活だったはずなのに、いつの間にかがっちり囲い込まれてるチョロい俊哉君のhappylife。
この世界では超美少年なんだけど、元々の自己評価の低さからこの世界でも「イマイチ」枠だと思い込んでる俊哉。独占欲満載のクラシルは、俊哉を手放したくなくってその誤解をあえて解かない。
人間顔じゃなくって心だよね! で、happyな俊哉はその事実にいつ気付くのだろうか? その時俊哉は? クラシルは?
そして、神様念願の王子様の幸せな結婚は叶うのだろうか?
な、『この世界‥』番外編です。
※ エロもしくは、微エロ表現のある分には、タイトルに☆をつけます。ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる