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40.リミット(side ルミエル)
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人間界から文化として入って来た「恋愛小説」なるものが魔族の若者を中心に流行して‥恋愛が文化として浸透するようになって久しい。(らしい)
魔族のこと知るために、魔界の本(難しいから専門書じゃなくて、大衆恋愛小説などの所謂娯楽本だ)をいっぱい読んだ‥程度だけど、そういうことは‥嫌って程伝わってきた。
魔界で流通されている恋愛小説は、人間界で人気だったものを「魔界風に」書き換えたものだ。同じものを魔界で売ったとしても、理解できない部分が多いから‥らしい。
自己犠牲型の恋愛は、まず理解できないらしい。人気なのは「俺様王子」がヒロインをライバルから奪い取るタイプだ。
「やっぱり、強い男が一番だな! 」
‥それ、恋愛かな~って思ったり。
「惚れる? って感情はよくわからんが、男ならやっぱり強くないとな! 」
平凡だけど優しい男に惚れたヒロインがカッコよくって強い俺様ヒーローを振って結ばれる‥ってパターンは全然受け入れられないらしい。
「え? なんで? 理解出来ん‥」
ってなるらしい。
「惚れる、好き、愛してる、命に代えても‥憧れるわ~」
だけど、魔族にとって恋愛は「憧れ」で「萌え」ではあるが、現実的に共感できる感情ではない。
知っている、好き、と「出来る」は違う。
恋愛感情なるものがあることは分かる。理論的には理解できるが、自分に置き換えて現実的だとは思えない感情だと、彼らは考えている。
何故、人の為に命を捨てることが出来る? 人のことが自分のことより大事? 肉欲は‥本能だから分かる。‥わからないなあ。(つまり、「ヤリたいからやる」って感情はわかるけど、「好きだから抱きたい」って感情はわからん、って感じだな)
魔族は人よりずっと利己的で、合理的な種族なんだ。
魔界はそんな人たちの集まりだから、魔族にとって信じられるのは自分だけで(家族でさえも信用なんて出来ない。特に兄弟姉妹は最初に出会う敵だ)自分を守るのは自分だけで、人を信じたり人に期待したり‥そんなことできようはずがない。そうしないと生きていけないってことを嫌って程思い知らされて育つのが魔族だ。自分の命、自分の持ち物(金や権力)‥持っているものが多い程、疑心暗鬼になって、日々の安らぎなんて求めずに生きていかなければならない。
貴族、特に、敵が多い高位魔族なら余計だろう。
そんな彼らだけど、繁殖の為に結婚をする必要はある。(悪魔とは違って、無性生殖は出来ない様だ)庶民であれば、兄弟以外(血が濃いと良くない‥ってのは、人間と同様らしい)の身近な相手と適当に結婚する。やっぱりそこに愛はないのだが、自分と自分の伴侶、子供は一応保護の対象になる‥と認識する様だ。‥自分の身を脅かさない限り‥だけど。
貴族は適当に‥って訳にはいかない。貴族には領地を守るなどの役割があり、その役目を果たせる伴侶を選ぶ必要があるから。だから政略結婚が当たり前で、そこに愛はない。(まあ、そこは人間の貴族もそう変わらないな)
エリサリオスは、その見た目から分かるように‥高位貴族の子息だった。
魔王にその実力を認めらえて側近になった彼は、魔王から信用されていたし、エリサリオスもまた誠心誠意彼に仕えていた。魔族には愛情はないが、誠意はある。否、誠意‥相手の魂を「縛り付ける」ことによって自分に絶対服従を約束させる「呪い」(魔界では契約と呼ばれている)が当たり前に存在している。
その契約を破って、相手(雇用主)の命を脅かそうとした場合‥被雇用者(裏切った側)は、呪いにより命を落とす。命がけの契約だ。
結構攫われて無理やり雇用契約を結ばれることが多いらしいが、エリサリオスは自分から雇用契約を受け入れたらしい。(高位貴族の三男だったエリサリオスは後継者争いなんかで家にいると常に命の危険にさらされていたんだ)
自分の保身の為の就職とはいえ、エリサリオスは誠心誠意日々の職務を全うしていた。利己的で怠惰な性格が多い魔族の中において、エリサリオスは異例な程の働き者だった様だ。
なのに、そんな彼を魔王はあっさり切り捨てて、自分の身代わりにするんだ‥。
雇用契約の呪いを「解呪」‥浄化して呪いを解いて‥エリサリオスを魔界から連れ出す。それ以外に彼を救う方法はないって思った。私には少なくともそれしか‥思いつかなかった。その後のことは後で考えようって思った。
職業を魔女に選択した私は、結構衝動的に魔界に向かった。
魔女になったから魔界にはすんなり入れたものの、魔王城には容易に入れない。勿論だけど、強引に、‥非常識な進入手段を余儀なくされた。
立ち向かってくる敵は、聖魔法で蹴散らす。そこに一切の容赦はない。
ジョブチェンジして「ヒロイン」じゃなくなっても、属性は変わらない。周りに協力者であるヒーローがいないから自分一人の力なんてたかが知れてるけど、でもそこら辺の雑魚魔物に負ける気はしなかった。毎日血のにじむ努力をして来たし‥なんて言っても、私は4(+α)巡目だ。(一回目は友だちエンディング、アルフレット様ルート、レオン様ルート、ライ様ルートで4回(+α)エンディングを迎えている)MPやHPはともかく、経験値が違う。
私は、無敵だ!
今思えば無謀だったって思うけど、あの時は「その変な自信」だけで計画を実行に移した。
事実、私はそこら辺の雑魚魔物相手に無双して‥エリサリオスの部屋にたどり着き、エリサリオスを解呪して、その腕を掴んで魔界から逃げ出した。(消費して足りなくなったHPはポーション過剰摂取でカバーだ)
魔物の中には多少腕が立つ奴もいたけど、変なアドレナリンが出まくってる私に叶う奴はいなかった。あれだ、愛の力って奴だ。(ってか、脳内麻薬のおかげだな)
流石にエリサリオスの同僚・グラブナ(こいつも魔王の側近。プラチナブロンドのグラマラス美女。妖艶な‥とかじゃない、普通に肉々しい露骨なお色気部員。絶対魔王の愛人とかだよ‥)とかが出て来てたら、絶対一人じゃ無理だっただろうけど、ラッキーなことに彼女が出てくることはなかった。
‥グラブナ的に同僚とかどうでもいいって感じだったのかも。それは、分からない。(でも、きっとそうだろうって思う)
説得しよう。
「貴方の身の安全を私は保証します。私は魔王を滅ぼす使命ですが、貴方まで殺す命令は受けていない。‥無駄死にをさせたくない」「だから、私について来て下さい。私を信用してください」
そう言って誠心誠意‥説得するつもりだったんだよ? 。私にだって、計画性ってもん位はある。(きっと賢いであろうエリサリオスを)説得する為に色々な台詞を考えた。何度も言うことを整理して、練習もした。紙に書きだして暗記したり、発声練習、ボイトレも頑張った。
でも、いざ‥彼を目の前にして‥
ずっと‥恋焦がれてきたあの顔を見てしまった私は‥もう、びっくりするぐらい動転してしまって‥
「私エリサリオスに一目惚れしたの! 私と一緒に来てください! 」
って言ってしまった。
あんなに暗記した台詞はすっぱり頭から抜け落ちていた。
‥いくら推しにやっと会えたからって、緊張したからっていって‥私がそんな「何の捻りもないストレートな言葉」を、何の計画もなしに言うなんて‥自分で自分が今でも信じられない。
言ってすぐぐらいに我に返って、「私の馬鹿~!! 」って後悔したけど、ポカンと目の前で固まってるエリサリオスを見て、「時間がない! 」「今だ、今しかない」って思った。エリサリオスの返事も聞かずに、エリサリオスが正気を取り戻さないうちに‥無理やり引っ張って逃げた。
解呪の許可は一応取った。‥っていうか「解呪しますね」って宣言はした。それに対して、エリサリオスがどう反応したのかは‥覚えていない。(‥もしかして、嫌だって言っただろうか? ‥見てなかった‥)
もしかしたら‥エリサリオスは私の言葉を聞いてさえいなかったかもしれない。
だって、エリサリオスはずっと呆然としているだけだったから。
私が倒した魔物の中には、普通に彼の部下だったり‥知り合いもいたかもしれない。だけど、エリサリオスが私を止めることはなかった。
ただ、呆然と私からされるままに‥ただ腕を引っ張られているだけだった。
そして、今も‥けっこうそのままだ。
「ご飯食べる? 」
って聞いたら、微かに微笑んで頷く。
「私は貴方が大事。だから死なないで‥」
って言っても、微かに微笑んで頷く。
まるで、小さな子供みたいに純粋なエリサリオス。
大人で、妖艶な美青年である彼の容姿とまるで違うその様子に、私はこころが痛んだ。
思ったの。
エリサリオスには、最初っからこころなんてなかったんじゃないかなって。
こころが真っ白で、何にもなかったから、魔王の元で「言われるまま」働いてたし、そんな彼が自分の身代わりに彼を敵である魔王討伐隊に差し出そうとしても、何にも思わなかったんじゃないか?
それどころか、自分の死の瞬間まで彼は‥何も思わなかったんじゃないかって‥。
彼にとって‥誰も‥自分自身さえも‥大切なものなんて何もなかったから‥。
‥悲しくなった。
でも、同情は‥不思議としなかった。
だって、同情って結構「上から」の感情だよ。私はね‥そういうの嫌いなんだ。
「‥エリサリオスはそういう人なんだね」
ってありのまま受け入れて理解するだけだ。
彼の総てを理解出来てるとは思わないけど、彼の「彼の中の自分の命の価値」に対しては‥そういう感じで理解した。
まだだ。
彼の心はまだ真っ白だ。
彼の真っ白なこころにつけ込まないで。
お願い‥まだ、来ないで‥。
魔王が彼を見つける前に‥私は魔王を殺してしまわないといけない‥。
どんな手をつかっても、だ。
魔族のこと知るために、魔界の本(難しいから専門書じゃなくて、大衆恋愛小説などの所謂娯楽本だ)をいっぱい読んだ‥程度だけど、そういうことは‥嫌って程伝わってきた。
魔界で流通されている恋愛小説は、人間界で人気だったものを「魔界風に」書き換えたものだ。同じものを魔界で売ったとしても、理解できない部分が多いから‥らしい。
自己犠牲型の恋愛は、まず理解できないらしい。人気なのは「俺様王子」がヒロインをライバルから奪い取るタイプだ。
「やっぱり、強い男が一番だな! 」
‥それ、恋愛かな~って思ったり。
「惚れる? って感情はよくわからんが、男ならやっぱり強くないとな! 」
平凡だけど優しい男に惚れたヒロインがカッコよくって強い俺様ヒーローを振って結ばれる‥ってパターンは全然受け入れられないらしい。
「え? なんで? 理解出来ん‥」
ってなるらしい。
「惚れる、好き、愛してる、命に代えても‥憧れるわ~」
だけど、魔族にとって恋愛は「憧れ」で「萌え」ではあるが、現実的に共感できる感情ではない。
知っている、好き、と「出来る」は違う。
恋愛感情なるものがあることは分かる。理論的には理解できるが、自分に置き換えて現実的だとは思えない感情だと、彼らは考えている。
何故、人の為に命を捨てることが出来る? 人のことが自分のことより大事? 肉欲は‥本能だから分かる。‥わからないなあ。(つまり、「ヤリたいからやる」って感情はわかるけど、「好きだから抱きたい」って感情はわからん、って感じだな)
魔族は人よりずっと利己的で、合理的な種族なんだ。
魔界はそんな人たちの集まりだから、魔族にとって信じられるのは自分だけで(家族でさえも信用なんて出来ない。特に兄弟姉妹は最初に出会う敵だ)自分を守るのは自分だけで、人を信じたり人に期待したり‥そんなことできようはずがない。そうしないと生きていけないってことを嫌って程思い知らされて育つのが魔族だ。自分の命、自分の持ち物(金や権力)‥持っているものが多い程、疑心暗鬼になって、日々の安らぎなんて求めずに生きていかなければならない。
貴族、特に、敵が多い高位魔族なら余計だろう。
そんな彼らだけど、繁殖の為に結婚をする必要はある。(悪魔とは違って、無性生殖は出来ない様だ)庶民であれば、兄弟以外(血が濃いと良くない‥ってのは、人間と同様らしい)の身近な相手と適当に結婚する。やっぱりそこに愛はないのだが、自分と自分の伴侶、子供は一応保護の対象になる‥と認識する様だ。‥自分の身を脅かさない限り‥だけど。
貴族は適当に‥って訳にはいかない。貴族には領地を守るなどの役割があり、その役目を果たせる伴侶を選ぶ必要があるから。だから政略結婚が当たり前で、そこに愛はない。(まあ、そこは人間の貴族もそう変わらないな)
エリサリオスは、その見た目から分かるように‥高位貴族の子息だった。
魔王にその実力を認めらえて側近になった彼は、魔王から信用されていたし、エリサリオスもまた誠心誠意彼に仕えていた。魔族には愛情はないが、誠意はある。否、誠意‥相手の魂を「縛り付ける」ことによって自分に絶対服従を約束させる「呪い」(魔界では契約と呼ばれている)が当たり前に存在している。
その契約を破って、相手(雇用主)の命を脅かそうとした場合‥被雇用者(裏切った側)は、呪いにより命を落とす。命がけの契約だ。
結構攫われて無理やり雇用契約を結ばれることが多いらしいが、エリサリオスは自分から雇用契約を受け入れたらしい。(高位貴族の三男だったエリサリオスは後継者争いなんかで家にいると常に命の危険にさらされていたんだ)
自分の保身の為の就職とはいえ、エリサリオスは誠心誠意日々の職務を全うしていた。利己的で怠惰な性格が多い魔族の中において、エリサリオスは異例な程の働き者だった様だ。
なのに、そんな彼を魔王はあっさり切り捨てて、自分の身代わりにするんだ‥。
雇用契約の呪いを「解呪」‥浄化して呪いを解いて‥エリサリオスを魔界から連れ出す。それ以外に彼を救う方法はないって思った。私には少なくともそれしか‥思いつかなかった。その後のことは後で考えようって思った。
職業を魔女に選択した私は、結構衝動的に魔界に向かった。
魔女になったから魔界にはすんなり入れたものの、魔王城には容易に入れない。勿論だけど、強引に、‥非常識な進入手段を余儀なくされた。
立ち向かってくる敵は、聖魔法で蹴散らす。そこに一切の容赦はない。
ジョブチェンジして「ヒロイン」じゃなくなっても、属性は変わらない。周りに協力者であるヒーローがいないから自分一人の力なんてたかが知れてるけど、でもそこら辺の雑魚魔物に負ける気はしなかった。毎日血のにじむ努力をして来たし‥なんて言っても、私は4(+α)巡目だ。(一回目は友だちエンディング、アルフレット様ルート、レオン様ルート、ライ様ルートで4回(+α)エンディングを迎えている)MPやHPはともかく、経験値が違う。
私は、無敵だ!
今思えば無謀だったって思うけど、あの時は「その変な自信」だけで計画を実行に移した。
事実、私はそこら辺の雑魚魔物相手に無双して‥エリサリオスの部屋にたどり着き、エリサリオスを解呪して、その腕を掴んで魔界から逃げ出した。(消費して足りなくなったHPはポーション過剰摂取でカバーだ)
魔物の中には多少腕が立つ奴もいたけど、変なアドレナリンが出まくってる私に叶う奴はいなかった。あれだ、愛の力って奴だ。(ってか、脳内麻薬のおかげだな)
流石にエリサリオスの同僚・グラブナ(こいつも魔王の側近。プラチナブロンドのグラマラス美女。妖艶な‥とかじゃない、普通に肉々しい露骨なお色気部員。絶対魔王の愛人とかだよ‥)とかが出て来てたら、絶対一人じゃ無理だっただろうけど、ラッキーなことに彼女が出てくることはなかった。
‥グラブナ的に同僚とかどうでもいいって感じだったのかも。それは、分からない。(でも、きっとそうだろうって思う)
説得しよう。
「貴方の身の安全を私は保証します。私は魔王を滅ぼす使命ですが、貴方まで殺す命令は受けていない。‥無駄死にをさせたくない」「だから、私について来て下さい。私を信用してください」
そう言って誠心誠意‥説得するつもりだったんだよ? 。私にだって、計画性ってもん位はある。(きっと賢いであろうエリサリオスを)説得する為に色々な台詞を考えた。何度も言うことを整理して、練習もした。紙に書きだして暗記したり、発声練習、ボイトレも頑張った。
でも、いざ‥彼を目の前にして‥
ずっと‥恋焦がれてきたあの顔を見てしまった私は‥もう、びっくりするぐらい動転してしまって‥
「私エリサリオスに一目惚れしたの! 私と一緒に来てください! 」
って言ってしまった。
あんなに暗記した台詞はすっぱり頭から抜け落ちていた。
‥いくら推しにやっと会えたからって、緊張したからっていって‥私がそんな「何の捻りもないストレートな言葉」を、何の計画もなしに言うなんて‥自分で自分が今でも信じられない。
言ってすぐぐらいに我に返って、「私の馬鹿~!! 」って後悔したけど、ポカンと目の前で固まってるエリサリオスを見て、「時間がない! 」「今だ、今しかない」って思った。エリサリオスの返事も聞かずに、エリサリオスが正気を取り戻さないうちに‥無理やり引っ張って逃げた。
解呪の許可は一応取った。‥っていうか「解呪しますね」って宣言はした。それに対して、エリサリオスがどう反応したのかは‥覚えていない。(‥もしかして、嫌だって言っただろうか? ‥見てなかった‥)
もしかしたら‥エリサリオスは私の言葉を聞いてさえいなかったかもしれない。
だって、エリサリオスはずっと呆然としているだけだったから。
私が倒した魔物の中には、普通に彼の部下だったり‥知り合いもいたかもしれない。だけど、エリサリオスが私を止めることはなかった。
ただ、呆然と私からされるままに‥ただ腕を引っ張られているだけだった。
そして、今も‥けっこうそのままだ。
「ご飯食べる? 」
って聞いたら、微かに微笑んで頷く。
「私は貴方が大事。だから死なないで‥」
って言っても、微かに微笑んで頷く。
まるで、小さな子供みたいに純粋なエリサリオス。
大人で、妖艶な美青年である彼の容姿とまるで違うその様子に、私はこころが痛んだ。
思ったの。
エリサリオスには、最初っからこころなんてなかったんじゃないかなって。
こころが真っ白で、何にもなかったから、魔王の元で「言われるまま」働いてたし、そんな彼が自分の身代わりに彼を敵である魔王討伐隊に差し出そうとしても、何にも思わなかったんじゃないか?
それどころか、自分の死の瞬間まで彼は‥何も思わなかったんじゃないかって‥。
彼にとって‥誰も‥自分自身さえも‥大切なものなんて何もなかったから‥。
‥悲しくなった。
でも、同情は‥不思議としなかった。
だって、同情って結構「上から」の感情だよ。私はね‥そういうの嫌いなんだ。
「‥エリサリオスはそういう人なんだね」
ってありのまま受け入れて理解するだけだ。
彼の総てを理解出来てるとは思わないけど、彼の「彼の中の自分の命の価値」に対しては‥そういう感じで理解した。
まだだ。
彼の心はまだ真っ白だ。
彼の真っ白なこころにつけ込まないで。
お願い‥まだ、来ないで‥。
魔王が彼を見つける前に‥私は魔王を殺してしまわないといけない‥。
どんな手をつかっても、だ。
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