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39.それにね‥(side ルミエル)

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 それにね。
 友だち討伐だと、討伐に時間がかかって、魔王が「ワンチャン逃げられるんじゃね? 」って考えて(かどうかわからないけど)エリサリオスを捨て駒に使っちゃうんだよね。
 エリサリオスが死んだら意味がないんだよ。
 今はね、魔王のところからエルサリオスを連れ出してるけど‥でも、「シナリオ補正」だの「シナリオの強制力」でエリサリオスが魔王の元に連れ戻されるかもしれないでしょ?
 ‥そうなったら、今までのことが意味なくなるんだよ。
 今までの私の苦労がね‥!!


 一番初めこのゲームをクリアした時、
「え? 魔王倒したとおもったら、影武者だった?? 」
 ってなった。その影武者が、エリサリオスだった。(今思えばね)
「くそ‥しぶといな魔王‥っ! 」
 ってそのことに気をとられて、自分たちが倒した人(影武者)が後の推し、エリサリオスだってことには気付かなかった。影武者の顔なんてわざわざ見ないよ。‥ゲーム内でも出てこなかった気がする。ただ、レオン様が
「‥コイツは‥魔王じゃない‥っ」
 って言ったから「そうなの? 」って分かった。‥ってだけ。
 その後色々あってついに本物の魔王を見つけ出して、困難の末討伐した。‥あの時は、普通に「やった! 」ってなった。結構普通に満足したから、「もういいかな? 」って正直思った。イケメンを攻略する‥とかホントどうでもよかったから。
 ゲーム的に満足した。
 そんな感じ。
 あの後だった、交流サイト(コミュニティー)でエリサリオスのことを知ったのは‥。
 がん‥って頭を殴られた様なショックを受けた。
 ‥もしかして、あの時私たちが討伐した影武者は‥彼だった? って‥ショックを受けた。

 私がこのゲームを手に取った‥手に入れたきっかけはそもそも、「この人たちカッコイイ! 」って所謂ジャケ買いした‥わけじゃなかった。(ジャケ買いってジャケットが気に入って買うこと。‥言うよね?? )友だちがくれたんだ。
 ジャケ買いをしたのは、私の友だちだった。ジャケットのセンターで微笑むレオン様に一目惚れしたんだって。
 だけど、
「これ、もう私遊び終わったからあげる♡」
 彼女、飽き性だから一回クリアしたゲームを二度とやることないんだって。(※ 私から言わせたら、飽き性以前に金持ちだと思うね)因みに彼女のお目当てはレオ様だったらしく、レオ様ルートしかクリアしてないみたい。曰く、「好みじゃないキャラのルートとかクリアする理由ある? 」でも、ま、それは共感。
 「じゃあ‥(くれるって言うなら‥)(断る理由もないし)」って感じで何となくもらって、「折角だから‥」って始めた。
 始めたからには、攻略本でも買おうかなって‥だって、先が見えないのってなんか不安じゃん? 効率的じゃないって言うか‥地図もなく知らないとこ行きたくないのと一緒。私はね、凄く‥臆病で慎重なんだ。
 そんな感じで何となく始めたのに、私は自分でも不思議なくらいこのゲームにはまった。このゲームっていうより‥このゲームをしてる人たちのコミュニティーに‥かな? ネットで同じ趣味を持つ人が集まるサイトってあるじゃない? このゲームをしてる人たちのサイトもあって、それにはまった。同じ趣味を持つ人たちの集まりだから、話も合うし、知らない人たちだから遠慮もない。ほんと楽しいって思った。
 リアルの友だちだったら「こんな話したら、オタクっておもわれないかな? 」「興味ある人‥いるかな」って考えなきゃいけないけど、ここにいる人は全員「同じ趣味を持ってる」ってあらかじめわかってる人だ。‥そういうのがいい。
 話も合うし、直接話してるわけじゃないから言葉が選べる。失言も少ない。「この子合わないな」って思ったら、関わらなきゃそれでいい。
 親しくなっても、学校の話や年齢、職業、リアルの心配事、悩みを話すことはない。あくまでここで話すのはゲームの事のみだ。そういう線引きが「楽に楽しく続けられるコツ」なんだって。トラブル回避にもなるしね。
 そんな感じで、そこで皆は自分の進展状況やら発見した「小ネタ」「レアキャラ」なんかを書き込んだりする。「レオ様のこの表情‥素敵だった! 」「ライ様にこれをあげたらすごく喜ばれた! 可愛かった! 」って感想を書き込んだり、「分かる~、カッコイイよね」「私もライ様推しです! 」ってそれに同調したり。
 因みに人を貶すのはNGだ。ゲームやキャラの悪口をいうのも、そう。皆が楽しく過ごすためには、そういう気遣い大事。(レオン様の悪口とかは、別の掲示板でみた。「フラグ潰しめちゃ困難」とか誰かが書いてて別の人が「分かるww」って言ってた。ここでは言わないけど、‥多分結構な人が思ってんじゃないかな~。‥可哀そう。メインヒーローなのに‥(笑))
 ある日、そこで私は「総てのキャラを攻略し終えたら、隠しルート「魔王ルート」が発生した! 」って書き込みを見たんだ。ネタバレ注意って注意書きがついてたけど、私は別に「自分で発見しないと気が済まないタイプ」じゃない。見たくない(ネタバレやめてって人)はそこで回れ右すればいい。気遣いのサイトだけど、そんなことには気にしない。そこでスクリーンショットっていうのかな? (なんていうのかはわからない)ゲーム内の撮影機能を使った映像が出てて‥そこにちょっとだけ‥ほんのちょっとだけ出てた脇役のエリサリオスに一目ぼれした。「これだ! 」って思った。
 攻略本に紹介もされていない、超脇役のサブキャラ。
 それから、攻略本片手に全ての攻略対象者のルートを攻略した。ただ隠しルートに進むために‥もとい、魔王ルートでエリサリオスを見る為‥だけにだ。 
 ノーマルに全ルートをクリアするだけじゃダメだった。ゲームクリア後にすぐ隠しルートに進めるってわけじゃなかった。そういえば書き込んでた人は「ガチやり込み勢」の人だった。‥多分裏ルートが出現することもある‥っていう程度の‥「可能性の低い」ランダム出現なんだろう。
 幸いにも私は比較的早く隠しルートに入ることができた。運が良かったんだろう。
 と‥目的はどうであれ‥結構あのゲームをやり込んでたから‥周りから見たらあのゲームにドはまりしてる人みたいに見えてただろう(※ 案の定、彼女の兄(タツミ)は妹を「乙女ゲームガチ勢」だけど「効率厨」だって思ってる)
 友達討伐より、誰かのルートに入った方が魔王討伐が楽だな、ってのは、総てのルートで思ったことだ。‥どはいえ、私にとっては「討伐が楽」以外のナニモノでもなかったんだけどね。
 ‥寧ろ、目的の為とはいえ‥浮気した過去(※ 自分には「その気(恋心)」がないとはいえ、だ。自分の意思がどうであれ、傍から見たらあれは‥恋愛だろう。本命相手以外との恋愛だから、浮気。でも、私にその気はない‥だから、正しくは「浮気ではなく、偽装恋愛」だ ←と、自分の心に言い聞かせる)が自分の中で許せない。出来るもんなら消し去ってしまいたい過去だ。

 隠しルートは、魔女として魔界に行って魔王様の手下として働く魔女・ルミエルが魔王の恋人になるストーリーだ。
 魔女は特殊な立場だから、魔界と人間界どちらに所属するか自分で選択することが出来るんだ。このゲームでは、魔界に住む魔女は「黒魔法使い」人間界に住む魔女は「おまじない使い」っていう風に分けられていた。
 つまり‥隠しルートで魔王様を攻略する為には、ジーナ先生からおまじないを教わった後、「A 黒魔法使いになる? B おまじない使いになる? 」の選択を迫られる。
 ここでAを選択する必要がある。ここでBを選んだら、肩書は「おまじないつかい・ルミエル」になり、魔界に行けない。(このルートでの攻略対象者は、ジーナ先生の弟カイルらしい。ジーナ先生は「おまじない」の知識があり、おまじないが好きだけど、適性がなく「おまじない使い」になれないんだけど‥そのジーナ先生がおまじない使いになりたい原因ってのが、弟カイルのためなんだ。それで、おまじない使いになったルミエルがカイルを助ける‥っていうストーリーらしい。コミュニティーサイト情報で私はカイルの顔もスクショで見ただけだ。確かにカッコ良かったけど、私はエリサリオス以外興味はない)
 Aを選択した場合の肩書が魔女だ。
 魔女は魔界で住まなければいけない。
 Aルートを選んだヒロイン・ルミエルは、魔女・ルミエルとなり、ジーナ先生と別れて魔界に行く。魔界でまず見習い魔女として働く‥のが本来のストーリーなんだけど、やり込みガチ勢で魔界を知り尽くしている私は魔界に着いてすぐ魔王城に忍び込んで(警備が手薄なところとか、何度もやり込んでるから知り尽くしている)エリサリオスを誘拐してきた。‥うん、あれはどう考えても誘拐だった。誘惑とかそういう‥色っぽいもんじゃなかった。
 誘拐して‥初めは抵抗していたエリサリオスを何とか説得して(洗脳して‥)魔界を抜け出して、人間界に逃げ込んだ。「匿ってください! 」って泣きついた私を、助けてくれたのは師匠・ジーナ先生だった。
「魔界に行ったけど、馴染めなかった。この人とは魔界で知り合った。この人は魔界にいたらいずれ魔王討伐隊によって殺されるだろう。私は、こっちでこの人と暮らしたい。改めてこっちで、おまじない使いとなって働きたい」
 って言った私をジーナ先生は「全く‥しょうがないわね」って言って受け入れてくれた。
 ‥別にジーナ先生を騙しているつもりはない。いずれはおまじない使いになりたいって思ってる。ジョブチェンジはちょっと難しいから時間はかかるけど‥頑張ろうって思ってる。カイルも助けようと思う。(助けた後のloveイベントはNOサンキューだけど)
 だけど、今はそんな場合じゃない。
 とにかく魔王討伐終了まで、エリサリオスを魔王から隠しきらないといけない。私はヒロインじゃないから魔王討伐を直接手伝うことはできないけど、知識でヒロインを助ける。そして、確実に、早く、魔王を倒さないといけないんだ。

 私には、(きっと)時間がない。
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