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28.今この世界は、二つの魔法の言葉で成り立っている。
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結局あの後、
「‥お兄ちゃん。学校でのんびり授業受けてる暇ないわ‥。軌道修正しないと間に合わない」
ってルミエルに(そりゃあもう、真剣な顔で)言われて、俺は初めて「特別欠席」を使った。因みに、これ魔王討伐隊の特権で魔王討伐の準備の為に学校を休まなければいけない場合は欠席にならないっていう制度だ。
異世界にちょっとお邪魔してるだけだから、欠席しても構わないじゃないかって? ‥気分的に嫌だ。俺は無断欠席とか絶対許せないタイプだからね。
「‥これから残りの期間全部使っても間に合うかどうか‥」
青い顔でルミエルが言った。
まあ、まて。
俺も「正規のルート」じゃないかもしれないけど、聖女クッキングやおまじないみたいに‥なんやかんやで取得できてる能力あるかもしれないじゃないか。
俺が言うと、絶対零度の視線を俺に向けたルミエルが
「それならステータスに出てる」
って言った。
‥そうね。
「とにかく、ゼンビア様に会わないと‥」
ぼそっと‥およそヒロインらしからぬ低い声でルミエルが呟いた。
~ヒロイン、聖魔法取得への道~
(以下ヒロインの話を要約)
聖魔法が使えるヒロインに、魔法命なゼンビア先生は興味津々。何とかして接触を図りたい‥と思いながら機会をうかがっているが、ルミエルのことを快く思わない生徒たちの目があり容易に接触できない。(今接触したら「特定の生徒だけ特別扱いしている」とか言われかねないのね)
一方、ルミエルは元の学校と全く授業の進み具合もレベルも違う学園の勉強にびっくり。放課後毎日一人で(友達がいないからね)図書館で練習していたら(ルミエル曰くレベ上げのミニゲーム。5日間連続しないとライ様が出現しないというミッションらしい)ライ様に
「毎日勉強してるんだな」「教えてやろうか? 」
と声を掛けられる。「公爵令息に教えれてもらうなんてとんでもね~」って感じで(まさかそんな台詞は言わないだろうが)固辞するルミエルにライ様は
「なら、勉強教える代わりに聖魔法をおしえてよ」
と交換条件を提示してくる。「それならば」と二人の放課後の秘密の勉強会が始まる。
実はライ様は、学年一位の成績を取った「謎の転校生」そして、希少な魔法・聖魔法を持つ転校生・ルミエルに興味を持ち、話し掛ける機会をうかがっていたのだった。(プレーヤーのみに分かるライ様情報)
勉強が終わった二人が、聖魔法を使ってみるため演習所に行くと、同じく新魔法の開発・実験をしていたゼンビア先生に遭遇。
「私に出来ることはなんでも協力するよ」
と言われ、ゼンビア先生による個人授業が始まる。(㋟ 美人教師の個人授業ならwelcomeだけど、オッサンとの個人授業とか‥いやだな~ ㋸ それ言うなら、ゼンビア先生もじゃない? 可愛い女の子(ルミエル)ならまだしも、男子高生とか‥いやだな~ってなるでしょ)
で、個人授業も「もう、お前には教えることはねぇ。私の知りうる魔法は全て教えた」みたいなことをゼンビア先生が言って、(㋸ そんな言い方じゃなかったけどね‥。㋟ いいんだよ、俺が理解出来れば! )
「この伝説のスタッフを使うのは君しかいない。私はこれを渡す魔法使いを今までずっと待っていたんだ」
って聖女の杖をルミエルに渡す。
杖を貰ってルミエルの聖魔法の腕は爆発的に開花し、ルミエルは歴代最高の聖魔法使いへと成長する‥
‥ふうん‥?
そうなん?
だけど、俺何度も演習所に行ってるけど、それらしい先生に会ったこともないし、そんなこと言われたことないけどなあ‥。
因みに、俺のゼンビア先生のイメージは髭のじいさんだ。だけど、優しい仙人じゃないぜ? なんせ魔法の大先生だからな。じいさんだけど、眼光は険しい「まだまだ現役」って感じのじいさん。で、なんか賢者っぽい知性的な感じ。上品な感じね。
知性的で上品な‥でも、一筋縄ではいかん感じの「ただ者じゃない」じいさん(イメージ)
‥会わんかったな~。そんな爺さん居たら、絶対話しかけるんだけどな~。護衛騎士さんとか三人とかにしごかれまくってたから気付かなかったかな~。それかじいさんも気を遣って「忙しそうだから話しかけんといたろ‥」ってなった?
首を傾げながら演習所に行った。
入ってすぐ、ルミエルが
「あ、ゼンビア先生」
って言った。
は? どこ? 髭のじいさん‥。
ルミエルの視線の先、そこにいたのは‥
筋骨隆々な30代後半って感じのイケオジだった。
ん? 魔法オタク? あれ?
イケオジは魔法の杖を振るって魔法の練習‥ではなく、木刀を振るっていた。
ええ??
長い白髭‥どころじゃない。髭なんか生えるの? って感じ。イメージ白髪だった髪の毛は、さらっとした金髪で、刈り上げられた短髪が似合う彫の深めでシブい顔。
‥ええ~? 凄い陽の雰囲気発してるよ? このおじさん。どこぞの外国の俳優さんみたいな顔してるよ?? 若すぎん? 魔法使いの固定イメージ「顔色悪く見える程色白」じゃなくて、なんか健康的な肌艶してるよ?
「髭の仙人みたいなじーさんじゃない‥」
呆然として、ポツリとつい呟いた俺に、
「え? 違うけど‥?」
ルミエルがちょっと驚いた顔でそう言うと
「というか‥寧ろなんでそういうのだと思ったの? 」
怪訝そうな顔で俺を見て、
「‥ここ、乙女ゲームだよ? 」
そう言葉を続けた。
ああ‥乙女ゲームだったね。
よくわかんないことを表す魔法の言葉は、「バグ」
常識(偏見含む)ではまかり通らないことを表す魔法の言葉は、「乙女ゲームだから」
ってか!
俺は、「いろんなこと」を諦めることにした。
‥いちいち「そんなわけあるかい」とか言ってちゃ、きりないからね。
よくわかんない状況で俺がここにいるのは、「バグ」で、なんか登場人物が皆イケメンで、やたらご都合主義な展開で物ごとが進むのは「乙女ゲームだから」ってこと。
もう、ここはルミエルに任せることにしよう‥。
ルミエルに言われた通りゼンビア先生に「魔法のことで教えて欲しいんですが‥」って言って近づいて、聖魔法の個人授業の約束も取り付けた。「時間が勿体ないから」ってルミエルに言われて、個人授業してないときは、復習&特訓をルミエルと一緒に「効率よく」やった。
そりゃもうね。どこぞの社長のタイムスケジュール? って程、スケジュール管理された。
起きる → 朝練 → 朝食 → 個人授業 終わったらすぐ聖女クッキングでお菓子作り → 昼食 ライ様と図書館(ルミエル曰く「図書館デート」)→ ルミエルと特訓その他もろもろ → (授業終了時間) → 三人と交流。修行の結果を見せたり、作戦会議したり、護衛さんたちに「討伐中のそれぞれの主に対するお世話の引継ぎ」を受けたり‥そりゃあ、今まで同様大忙しだ。因みに、この間ルミエルは一緒にいない。ゼンビア先生に会った時も指示だけ出して、絶対に顔を見せない様にしてる様だ。
レベ上げに並行して、攻略対象者の好感度up。
つまり‥(対 アル様)お菓子を作ってアル様に差し入れすること。(対 ライ様)図書館デートで、「ゼンビア先生にこんな魔法教わりました! 」って話し掛けること。
‥ただ、レオン様だけは‥ホントに困った。男の俺が色仕掛け(失礼! コミュニケーションね? )するわけにもいかないから。
で、代わりに話をすることにしたんだ。
「お話しをするだけでも、少しは好感度上がるよ。‥何もしないよりはマシじゃない? 」
ってルミエルが教えてくれたからだ。
お話しをしたり、お菓子を渡したり(アル様にお菓子を渡すほどは好感度は上がらない)、一緒に剣の訓練をしたり(接待ゴルフの要領かな? )しないよりはマシ程度だろうが、した方がいいなら、するべきだろう。
おかげで、今では三人の好感度が友だち → 親友 にレベルアップした! (ギリギリだけど。レオ様の最後の♡は辛うじて色づいてます‥って感じだけど! まあ‥それはおいおいね)
因みに、好感度はこんな感じみたい。
♡♡♡♡ 顔見知り程度
♥♡♡♡ 少し友だち(?)
♥♥♡♡ 友だち(!)
♥♥♥♥ 親友
つまり、全員好感度♥♥♥♥になったってこと! いや~頑張ったなあ!
因みに、これは好感度の話で、親密度は、好感度がMAXになってからやっとあげることが出来て、好感度とは別らしい。‥love的な感じかな?
ルミエルに聞いたら
「知らない。私は好感度MAXで親密度ゼロの状態だったけど魔王討伐は問題なかったよ? 」
って言われた。
‥乙女ゲーム的にそれってどう。
「親密度が上がったら、なんかラブラブ~なイベントが起こったりするだけ。別にそれによって魔王討伐がスムーズになったりしない。
‥あ‥なんかあったな。三人とも親密度までMAXになったら「愛の力で」魔王が消滅して‥違うな、何か‥魔王が改心する? みたいなイベントがあった。‥でも、全然興味ないから覚えてない。このルートでもエリサリオスは死ぬから。どうでもいいんだよね」
‥なんか、いっそすがすがしいね。
その後「乙女ゲーム的ご都合主義」で俺の聖魔法の腕はめきめき上がり‥俺は、聖女の杖を貰えることになった。
うわ~嫌だな~。どうせ貰うなら剣の方がいいな~って思ってたけど、実際に貰った杖は、思ってた「キラキラステッキ☆」と違って、渋い杖だった。
‥これはこれでカッコいい。
振り回すんか? って思ったら、そういうのよりは、地面に置いて念じたりする感じらしい。
あ、あの魔法陣が出る奴? ウキウキしたけど、出なかった。ぼんやり光っただけ。師匠(ゼンビア先生。ルミエルにつられてそう呼ぶようになった)に「魔法陣出したけりゃもっと修行しな」って呆れ顔されちゃいました。‥トホホ‥。
名前: ヒロイン・タツミ(17歳)男
ランク:B
家族構成: 両親と兄2人の5人家族。
属性: 聖魔法、水魔法
HP:250(up!)
MP:500(上限)
特技: 聖女クッキング(Level20、レシピ数19(レシピ集めは一旦休業))、治癒、雑学披露、狙い撃ち☆
ホーリーマジック エリアヒール、聖なる壁(バリアだな)、聖域構築(一時的に無菌室が作れる)
因みに、ホーリーマジックのエフェクトエリアは「(自分を軸に)杖を振り回した範囲」が一番強力だから、長い杖が必要となる(らしい)。だから、俺よりちっこい聖女でも長い杖を持つことになるらしい。(想像するとなんか可愛い)
じゃあ凄い長い杖にしたらいいんじゃない? って思うけど、そうなると重さ的に問題がある。あと、(体力問題以前に)練習してないと、そもそも杖が振り回せないらしい。練習を積むことによって、杖が軽くなる‥らしい。(ちなみに属性がない人たちは、持つのが精一杯で振れないらしい)
あと、もっと練習すると、影響する範囲が広がるらしい。それが、この杖の先に付いてる魔石(聖なる石なのに、魔石)によるもので、杖の先に付いた魔石が光ってその光が届く範囲までエフェクトエリアが広がるらしい。力が強くなるほど光りも強くなり、それに伴って光が届く範囲も広くなるってことだね。
‥でも、それはそれこそもっと次元が違う話で、「今はそこまでは無理(時間的に)」って言われて「とにかく基本だけを完璧に! 」って特訓をされましたよ☆ ルミエルが不満がってたのは、そこら辺らしい。ルミエルは応用までいったらしいから‥。
その代わりに、俺は俺のオリジナルマジック「聖なる光☆目くらまし弾」を完成させた。
「聖なる光☆目くらまし弾」とはつまり、めちゃ眩しい目くらましだ。ビームは流石に無理だったけど、一時的に聖女の杖の先の魔石をめちゃ光らせるのに成功した。遠くまで照らせないけど‥近くで見たらめちゃ眩しい光。
それで魔物はイチコロですよ!
狙い撃ち☆も、杖を使うことによって、より強く、遠くまで魔法が届くようになったしね!
その結果‥
なんとBランクになっちゃいました! おめでとう!
でも、三人のランクは依然見えないところを見ると、きっと三人はBランク以上なんだろう。‥まあ、ヒーローだしね? そりゃね?
ちょっと前までの「何をすればいいのか分からずがむしゃら」に色んな事をして、いっぱいいっぱいになってた俺とは違う。俺は、進化する方法を知った、新生☆タツミなのだ!
そんな浮かれる俺を見て、ふふってまるで子供を見守る母親みたいに微笑んで、ルミエルが
「私、そろそろジーナ先生のところに帰るね」
って言った。
「‥お兄ちゃん。学校でのんびり授業受けてる暇ないわ‥。軌道修正しないと間に合わない」
ってルミエルに(そりゃあもう、真剣な顔で)言われて、俺は初めて「特別欠席」を使った。因みに、これ魔王討伐隊の特権で魔王討伐の準備の為に学校を休まなければいけない場合は欠席にならないっていう制度だ。
異世界にちょっとお邪魔してるだけだから、欠席しても構わないじゃないかって? ‥気分的に嫌だ。俺は無断欠席とか絶対許せないタイプだからね。
「‥これから残りの期間全部使っても間に合うかどうか‥」
青い顔でルミエルが言った。
まあ、まて。
俺も「正規のルート」じゃないかもしれないけど、聖女クッキングやおまじないみたいに‥なんやかんやで取得できてる能力あるかもしれないじゃないか。
俺が言うと、絶対零度の視線を俺に向けたルミエルが
「それならステータスに出てる」
って言った。
‥そうね。
「とにかく、ゼンビア様に会わないと‥」
ぼそっと‥およそヒロインらしからぬ低い声でルミエルが呟いた。
~ヒロイン、聖魔法取得への道~
(以下ヒロインの話を要約)
聖魔法が使えるヒロインに、魔法命なゼンビア先生は興味津々。何とかして接触を図りたい‥と思いながら機会をうかがっているが、ルミエルのことを快く思わない生徒たちの目があり容易に接触できない。(今接触したら「特定の生徒だけ特別扱いしている」とか言われかねないのね)
一方、ルミエルは元の学校と全く授業の進み具合もレベルも違う学園の勉強にびっくり。放課後毎日一人で(友達がいないからね)図書館で練習していたら(ルミエル曰くレベ上げのミニゲーム。5日間連続しないとライ様が出現しないというミッションらしい)ライ様に
「毎日勉強してるんだな」「教えてやろうか? 」
と声を掛けられる。「公爵令息に教えれてもらうなんてとんでもね~」って感じで(まさかそんな台詞は言わないだろうが)固辞するルミエルにライ様は
「なら、勉強教える代わりに聖魔法をおしえてよ」
と交換条件を提示してくる。「それならば」と二人の放課後の秘密の勉強会が始まる。
実はライ様は、学年一位の成績を取った「謎の転校生」そして、希少な魔法・聖魔法を持つ転校生・ルミエルに興味を持ち、話し掛ける機会をうかがっていたのだった。(プレーヤーのみに分かるライ様情報)
勉強が終わった二人が、聖魔法を使ってみるため演習所に行くと、同じく新魔法の開発・実験をしていたゼンビア先生に遭遇。
「私に出来ることはなんでも協力するよ」
と言われ、ゼンビア先生による個人授業が始まる。(㋟ 美人教師の個人授業ならwelcomeだけど、オッサンとの個人授業とか‥いやだな~ ㋸ それ言うなら、ゼンビア先生もじゃない? 可愛い女の子(ルミエル)ならまだしも、男子高生とか‥いやだな~ってなるでしょ)
で、個人授業も「もう、お前には教えることはねぇ。私の知りうる魔法は全て教えた」みたいなことをゼンビア先生が言って、(㋸ そんな言い方じゃなかったけどね‥。㋟ いいんだよ、俺が理解出来れば! )
「この伝説のスタッフを使うのは君しかいない。私はこれを渡す魔法使いを今までずっと待っていたんだ」
って聖女の杖をルミエルに渡す。
杖を貰ってルミエルの聖魔法の腕は爆発的に開花し、ルミエルは歴代最高の聖魔法使いへと成長する‥
‥ふうん‥?
そうなん?
だけど、俺何度も演習所に行ってるけど、それらしい先生に会ったこともないし、そんなこと言われたことないけどなあ‥。
因みに、俺のゼンビア先生のイメージは髭のじいさんだ。だけど、優しい仙人じゃないぜ? なんせ魔法の大先生だからな。じいさんだけど、眼光は険しい「まだまだ現役」って感じのじいさん。で、なんか賢者っぽい知性的な感じ。上品な感じね。
知性的で上品な‥でも、一筋縄ではいかん感じの「ただ者じゃない」じいさん(イメージ)
‥会わんかったな~。そんな爺さん居たら、絶対話しかけるんだけどな~。護衛騎士さんとか三人とかにしごかれまくってたから気付かなかったかな~。それかじいさんも気を遣って「忙しそうだから話しかけんといたろ‥」ってなった?
首を傾げながら演習所に行った。
入ってすぐ、ルミエルが
「あ、ゼンビア先生」
って言った。
は? どこ? 髭のじいさん‥。
ルミエルの視線の先、そこにいたのは‥
筋骨隆々な30代後半って感じのイケオジだった。
ん? 魔法オタク? あれ?
イケオジは魔法の杖を振るって魔法の練習‥ではなく、木刀を振るっていた。
ええ??
長い白髭‥どころじゃない。髭なんか生えるの? って感じ。イメージ白髪だった髪の毛は、さらっとした金髪で、刈り上げられた短髪が似合う彫の深めでシブい顔。
‥ええ~? 凄い陽の雰囲気発してるよ? このおじさん。どこぞの外国の俳優さんみたいな顔してるよ?? 若すぎん? 魔法使いの固定イメージ「顔色悪く見える程色白」じゃなくて、なんか健康的な肌艶してるよ?
「髭の仙人みたいなじーさんじゃない‥」
呆然として、ポツリとつい呟いた俺に、
「え? 違うけど‥?」
ルミエルがちょっと驚いた顔でそう言うと
「というか‥寧ろなんでそういうのだと思ったの? 」
怪訝そうな顔で俺を見て、
「‥ここ、乙女ゲームだよ? 」
そう言葉を続けた。
ああ‥乙女ゲームだったね。
よくわかんないことを表す魔法の言葉は、「バグ」
常識(偏見含む)ではまかり通らないことを表す魔法の言葉は、「乙女ゲームだから」
ってか!
俺は、「いろんなこと」を諦めることにした。
‥いちいち「そんなわけあるかい」とか言ってちゃ、きりないからね。
よくわかんない状況で俺がここにいるのは、「バグ」で、なんか登場人物が皆イケメンで、やたらご都合主義な展開で物ごとが進むのは「乙女ゲームだから」ってこと。
もう、ここはルミエルに任せることにしよう‥。
ルミエルに言われた通りゼンビア先生に「魔法のことで教えて欲しいんですが‥」って言って近づいて、聖魔法の個人授業の約束も取り付けた。「時間が勿体ないから」ってルミエルに言われて、個人授業してないときは、復習&特訓をルミエルと一緒に「効率よく」やった。
そりゃもうね。どこぞの社長のタイムスケジュール? って程、スケジュール管理された。
起きる → 朝練 → 朝食 → 個人授業 終わったらすぐ聖女クッキングでお菓子作り → 昼食 ライ様と図書館(ルミエル曰く「図書館デート」)→ ルミエルと特訓その他もろもろ → (授業終了時間) → 三人と交流。修行の結果を見せたり、作戦会議したり、護衛さんたちに「討伐中のそれぞれの主に対するお世話の引継ぎ」を受けたり‥そりゃあ、今まで同様大忙しだ。因みに、この間ルミエルは一緒にいない。ゼンビア先生に会った時も指示だけ出して、絶対に顔を見せない様にしてる様だ。
レベ上げに並行して、攻略対象者の好感度up。
つまり‥(対 アル様)お菓子を作ってアル様に差し入れすること。(対 ライ様)図書館デートで、「ゼンビア先生にこんな魔法教わりました! 」って話し掛けること。
‥ただ、レオン様だけは‥ホントに困った。男の俺が色仕掛け(失礼! コミュニケーションね? )するわけにもいかないから。
で、代わりに話をすることにしたんだ。
「お話しをするだけでも、少しは好感度上がるよ。‥何もしないよりはマシじゃない? 」
ってルミエルが教えてくれたからだ。
お話しをしたり、お菓子を渡したり(アル様にお菓子を渡すほどは好感度は上がらない)、一緒に剣の訓練をしたり(接待ゴルフの要領かな? )しないよりはマシ程度だろうが、した方がいいなら、するべきだろう。
おかげで、今では三人の好感度が友だち → 親友 にレベルアップした! (ギリギリだけど。レオ様の最後の♡は辛うじて色づいてます‥って感じだけど! まあ‥それはおいおいね)
因みに、好感度はこんな感じみたい。
♡♡♡♡ 顔見知り程度
♥♡♡♡ 少し友だち(?)
♥♥♡♡ 友だち(!)
♥♥♥♥ 親友
つまり、全員好感度♥♥♥♥になったってこと! いや~頑張ったなあ!
因みに、これは好感度の話で、親密度は、好感度がMAXになってからやっとあげることが出来て、好感度とは別らしい。‥love的な感じかな?
ルミエルに聞いたら
「知らない。私は好感度MAXで親密度ゼロの状態だったけど魔王討伐は問題なかったよ? 」
って言われた。
‥乙女ゲーム的にそれってどう。
「親密度が上がったら、なんかラブラブ~なイベントが起こったりするだけ。別にそれによって魔王討伐がスムーズになったりしない。
‥あ‥なんかあったな。三人とも親密度までMAXになったら「愛の力で」魔王が消滅して‥違うな、何か‥魔王が改心する? みたいなイベントがあった。‥でも、全然興味ないから覚えてない。このルートでもエリサリオスは死ぬから。どうでもいいんだよね」
‥なんか、いっそすがすがしいね。
その後「乙女ゲーム的ご都合主義」で俺の聖魔法の腕はめきめき上がり‥俺は、聖女の杖を貰えることになった。
うわ~嫌だな~。どうせ貰うなら剣の方がいいな~って思ってたけど、実際に貰った杖は、思ってた「キラキラステッキ☆」と違って、渋い杖だった。
‥これはこれでカッコいい。
振り回すんか? って思ったら、そういうのよりは、地面に置いて念じたりする感じらしい。
あ、あの魔法陣が出る奴? ウキウキしたけど、出なかった。ぼんやり光っただけ。師匠(ゼンビア先生。ルミエルにつられてそう呼ぶようになった)に「魔法陣出したけりゃもっと修行しな」って呆れ顔されちゃいました。‥トホホ‥。
名前: ヒロイン・タツミ(17歳)男
ランク:B
家族構成: 両親と兄2人の5人家族。
属性: 聖魔法、水魔法
HP:250(up!)
MP:500(上限)
特技: 聖女クッキング(Level20、レシピ数19(レシピ集めは一旦休業))、治癒、雑学披露、狙い撃ち☆
ホーリーマジック エリアヒール、聖なる壁(バリアだな)、聖域構築(一時的に無菌室が作れる)
因みに、ホーリーマジックのエフェクトエリアは「(自分を軸に)杖を振り回した範囲」が一番強力だから、長い杖が必要となる(らしい)。だから、俺よりちっこい聖女でも長い杖を持つことになるらしい。(想像するとなんか可愛い)
じゃあ凄い長い杖にしたらいいんじゃない? って思うけど、そうなると重さ的に問題がある。あと、(体力問題以前に)練習してないと、そもそも杖が振り回せないらしい。練習を積むことによって、杖が軽くなる‥らしい。(ちなみに属性がない人たちは、持つのが精一杯で振れないらしい)
あと、もっと練習すると、影響する範囲が広がるらしい。それが、この杖の先に付いてる魔石(聖なる石なのに、魔石)によるもので、杖の先に付いた魔石が光ってその光が届く範囲までエフェクトエリアが広がるらしい。力が強くなるほど光りも強くなり、それに伴って光が届く範囲も広くなるってことだね。
‥でも、それはそれこそもっと次元が違う話で、「今はそこまでは無理(時間的に)」って言われて「とにかく基本だけを完璧に! 」って特訓をされましたよ☆ ルミエルが不満がってたのは、そこら辺らしい。ルミエルは応用までいったらしいから‥。
その代わりに、俺は俺のオリジナルマジック「聖なる光☆目くらまし弾」を完成させた。
「聖なる光☆目くらまし弾」とはつまり、めちゃ眩しい目くらましだ。ビームは流石に無理だったけど、一時的に聖女の杖の先の魔石をめちゃ光らせるのに成功した。遠くまで照らせないけど‥近くで見たらめちゃ眩しい光。
それで魔物はイチコロですよ!
狙い撃ち☆も、杖を使うことによって、より強く、遠くまで魔法が届くようになったしね!
その結果‥
なんとBランクになっちゃいました! おめでとう!
でも、三人のランクは依然見えないところを見ると、きっと三人はBランク以上なんだろう。‥まあ、ヒーローだしね? そりゃね?
ちょっと前までの「何をすればいいのか分からずがむしゃら」に色んな事をして、いっぱいいっぱいになってた俺とは違う。俺は、進化する方法を知った、新生☆タツミなのだ!
そんな浮かれる俺を見て、ふふってまるで子供を見守る母親みたいに微笑んで、ルミエルが
「私、そろそろジーナ先生のところに帰るね」
って言った。
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