俺が誰って? 只の‥乙女ゲームを恋愛抜き(希望)でクリアしたいごく普通のDKですが? 

文月

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27.バグって言葉は便利だ。

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 一巡目 三人を攻略して一緒に魔王を倒す → 魔女編がプレイできるようになる。 → 二巡目 三人と会わずに、ジーナ先生に会い、魔女になる。魔女として魔界で暮らし、エリサリオスと知り合う。 → どうやら、二人は恋人同士になったらしい。(今ここ)
 
 う~ん。なんでルミエルに一巡目の記憶があるんだ? 
 妹(プレーヤー)にあるのはわかるよ? だけど、ルミエルにあるのはおかしい。
 それが「おかしい」ってこと‥「普通じゃないこと」はルミエルも分かってる。
 だって、
 三人に自分の記憶すらない、ってルミエルは言った‥。
 どういうことだ?
 そう俺が聞くと、ルミエルは
「知らない」
 って苦笑いした。因みに三人に自分の記憶がないことも「多分そうだろうと思うだけで確かめてはいない」とのことだった。‥なんかそういうaboutさは妹っぽいなと思ったり。
 しかし‥ゲーム内での「普通では起こらない様な」想定外の出来事。
 ‥バグって奴か。
 そう納得するしかない。
 二巡目の記憶がルミエルにあるのも、俺がこの世界に「ルミエルがいる状態で」ヒロインとして入れたことも‥全部「なんかのミス(バグ)」。
 訳がわかんないから‥バグってことにしとくしかないし‥まあ、それで問題はない。


 そんなことを考えていたら、
「あ、お兄ちゃん、まだ寝間着じゃない! もう、学校行かなきゃマズいんじゃない? 」
 今だ寝間着の俺を見てルミエルが驚いた顔で言った。
 そして時計を見ながら
「‥ご飯の時間‥ギリギリ大丈夫かな‥」
 って手早く計算している。
 ルミエルの声に俺も時計を見て‥え!! って二度見だ。
「え! もうこんな時間?! 」
 焦ってベッドから飛び起きる。 
 いつもの通り制服をツールバーから選択して着替える。だから、妹の前で一瞬でも見苦しい格好(裸)を晒さずに済む。‥まあ、それはきっとルミエルも同じ。運悪く起きた俺が、妹の着替えを目撃してしまう‥ってこともないわけだ。
 バタバタとルミエルが俺に鞄を渡してくれて、俺も靴を履いたりと大忙しだ。もう、食事は諦めて洗顔と歯磨きだけしていこう‥て頭の中で段取りをつけていたら、
「お兄ちゃん、聖女の杖は? 」
 焦ったルミエルに聞かれてポカンとする。 
 なにその厨二アイテム。
 つい手を止めて「? 」顔で首を傾げたら、「(怒)」な顔でルミエルが俺を見た。
「何ボケた顔してるの! 師匠に貰った奴だよ!? 」
 誰、師匠。
 「(困)」完璧に顔面が固まった俺に、ルミエルは「えええ‥」って驚愕した顔してる。
「お兄ちゃん‥何? どういうこと? 今まで何の修行してきたの?? ちょっとステータスバー見せて‥? 
 ウィッチマジック! ステータス強制オープン! 
 
 名前: ヒロイン・タツミ(17歳)男
 ランク:C
 家族構成: 両親と兄2人の5人家族。
 属性: 聖魔法、水魔法(属性として認められる程に上達した。他も多少使える属性はあるが、あまりにもこの二つのレベルよりレベルが低いので使用可能属性と認められない)
 HP:200(up!)
 MP:500(上限)
 特技: 聖女クッキング(Level13,レシピ数19(ハーブティー4種類含む))、治癒、雑学披露、狙い撃ち☆

 何このステータス! 
 HP高! もう、ほぼ攻略対象者並みにあるじゃない‥え? 元から100あった? ‥男の子だからかな‥。
 MP上限は、問題ない。私もヒロイン時代は最終的にそうなった‥。
 ええ!? 聖女クッキング、Level13!? しかも‥レシピ数多くない?? そんなにいる?? クッキー量産で好感度上げまくったらいいだけだよね?? でも次第に皆飽きてきて‥で、もう何種類か種類を増やすみたいな感じだと思うんだけど‥。どこでこんなレシピ仕入れた??
 治療は‥問題ない。雑学披露?? なにそれ、‥まあ、これもお兄ちゃんの個性だからどうでもいいけど‥ええ‥狙い撃ち☆って何‥。
 ‥ちょっと待ってよ‥
 ホーリーマジックが全然ステータスに上がってきてない‥。練習してるの? ‥ねえ、お兄ちゃん、師匠‥ゼンビア様はどう言ってるの? ‥ええ?! 師匠に‥会ってすらいない!? 普通にストーリー進めたら普通に出会うはずなんだけど‥!? 」
 誰ゼンビアさん。
 ホーリーマジックって何。それ、さっきも言ってたよね。聖女の杖(笑)くれるんだよね。極めたら‥
 あと‥それよりなにより俺びっくりしちゃったんだけど、何? 「ウイッチマジック」と、「ステータス強制オープン」。強制って‥違法感が凄いんだけど‥。
 黒魔術とか‥闇魔術とかじゃないよね?
 魔女って何、悪い人なの?
 ルミエルは俺に対してツッコミどころ満載みたいだけど、俺もルミエルに対してツッコミどころ満載何だけど?!
「ねえ」
「なあ」
 俺たちの言葉が重なる。
 普通なら、どっちかが「あ、お先どうぞ」ってなるだろうけど、俺たちはお互いにそれどころじゃない。タイミング丸かぶりのまま、
「お兄ちゃん、軌道修正しなきゃ、マズいよ! 」
「お前は、今、魔王側‥いや、魔界? 側の人間なのか? 」
 言いたいことを、遠慮なく続けた二人だった。
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