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20.唯一の
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その後、覚えたてのハーブティーはまず護衛さんたちに飲んでもらって、許可が出ればライ様に飲んでもらう‥ということになった。
他の護衛さんに付いても同様だったが、‥ゴメン。ハーブティーはライ様限定にしか考えていない。(とは言えない)
だから、ライ様の護衛さんだけじゃなく、他の二人の護衛さんも呼んで「ハーブティー試飲会」をしている。
三種類とも試飲してもらわなければいけないんだろうけど、効用が効用だから‥今回は、リラックス効果のあるハーブティーだけ試してもらうことにした。
護衛さんが眠くなったりお通じが良くなったりしたら困るからね‥。
ハーブの葉を水魔法で「洗浄」して、「粉砕」「抽出」する。
ハーブティー作成も随分慣れたもんだ。(ちなみに、この同じ工程を薬草でするとポーションになる)
ポーションは薬だからか、相対的に苦く、ハーブティーは反対に(薬効は薬に比べて低いものの)飲みやすく、おいしい。
「いい香りだな」
「果実水より俺は好きだな」
「なんか、リラックスする。疲れが癒されるな」
感想は思っていた以上に良くて、三人の護衛さんたちから「主人に作っていいよ」って許可を貰えた。
‥ライ様限定だけどね。まあ‥リラックス効果のハーブティーはまた飲んでもらうか。
「しかし、タツミも色々イソガシイな」
ってアル様の護衛であるクスがハーブティーをちまちま飲みながら呆れたような顔で言った。(どうやら、かなり気に入ったらしく、「一気に飲み切るの勿体ない」ってちまちま飲んでるみたいだ。お代わり位作るよ? っていったが、薬じゃないけどただのジュースでもないから飲み過ぎは良くないって認識してるらしい。‥まあ、そうかも。また作ってあげよう、って思った)
「頑張ってるのは分かるんだけど‥、色んな事に手を出して、一番しなけちゃいけないことがおざなりになっちゃったりしたら、それこそ大問題だぞ」
俺に対しては楽に関西弁で話すことが多い彼だが、別に関西弁しか話せないわけではない。寧ろ関西弁は、通じる人があんまりいない別の国の言葉(そういう扱いっぽい)だから、俺とフランクに無駄話をする時くらいにしか使わない。とかいいながら、俺と話すときは関西弁が多いのは、クスにとっては関西弁で話す方が楽なんだろう。
「だけど‥おまじないか。それを学ぶこと自体は悪いことではないが‥それにハマるのは困る。特にタツミは魔女に対する適性もあるからな‥」
フランが上品にハーブティーを飲みながら言った。
‥あ、魔女の特性って案外皆知ってるんだ。
俺は他の護衛さんたちにハーブティーを作っていた手を止めて、フランを見た。
フランが顔を上げて、俺の目を見て、
「魔女は‥ダメだぞ」
強い口調で言う。
分かってます。俺も魔女は嫌です。
ってか‥こんだけ強い口調で止めるってことは、何か理由があるってことだよね?
「なりませんが、聖女である俺が魔女って肩書を持つと何か悪いことがあるってことですか? ただ、出来ることが増えていいわけではない‥ってことですよね? さっきの感じからしたら‥」
俺が言うと、フランも他の護衛さんも、全員が頷いた。
「魔女と聖女は兼業できない。
魔女になることを決めたら、聖女の肩書は消える」
え?
「国中で、一人しかいない肩書を持つ者は三人だ。
一人は言わずと知れた王様。そして、魔王。あと一人は聖女だ。
魔王が復活する時聖女も現れる。魔王を滅ぼすためだ。魔王を滅ぼせは、聖女の役割は終わる」
‥魔王と共に死んじゃうってこと? ゾクっとしたが、フランに
「いや、聖女異能が消えるだけだ。ただの魔法使いに戻るってだけのことだな」
ってあっさりと言われた。
そうか‥よかった。
「でも、それって魔王と聖女がセットって感じに聞こえるけど、大昔の魔王討伐の際には聖女は出現してなかったんだよね? 魔王と聖女はホントにセットなんだろうか? 」
「大昔のことだから、記述漏れかもしれんし、魔王の強さがパワーアップした‥とかかもしれんやろ。そんなもん知らんわ。‥とにかく、俺が今言いたいんは、魔女になったら聖女の資格がなくなるって話や。なくなったら困るやろうが」
困る? いや、俺は別に困らんが。
「困る? 」
俺が首を傾げると、護衛さんたちに
「困るわ! アル様が」
「困りますね。レオンハルト様が」
「困るね。ラインハルト様が」
って言われてしまった。
全員、俺の意見は無視。苦笑いする俺に
「タツミだって、討伐の為に今まで随分準備してきたんだろ? それが無駄になるとか勿体ないだろうが」
レオ様の護衛・ダグラスが呆れた様な口調で言った。
そうだね。ダグラスには(護身術のための)剣の訓練で随分シバカレ‥お世話になった。早くもっと強くなってダグラスに「お礼」したいもんだ。
それにしても‥
魔女と聖女が兼業出来ないとはね。‥何だろ。なんか「引っかかる」。
何か‥これがとても重要なことに思えて来る‥。
その時、俺はそう思ったんだけど、また護身術の稽古が再開されたりと忙しくって、そんなことを考えている時間もなかった。
疲れて、だけどシャワーだけはなんとか済ませて‥後はやっぱり休息スポット(自室)で寝るだけだ。
皆も心配してるみたいだし、そもそも目的の「安眠」「快便」ハーブティーのレシピも仕入れたし、今日の放課後にでもジーナに「もうおまじない講座受けません」って言わなきゃね。彼女の時間を無駄にしちゃうのも悪いし。
朝起きた俺は、いつも通り昨日の疲れも悩みのリセットした頭でそう思った。
記憶がなくなるわけではない。
ただ、その時感じた苦しいとか悔しいとか‥そういう感情やなんかが整理されて、「負けて悔しかったから、練習もっと頑張ろう」っていう風にポジティブ変換されて残るみたいなんだ。だから、「俺に勝ったからっていって、昨日のアイツのあの態度なんやってん。アイツ‥許すまじ」とか怒りや悔しさを引きずらないってことだな。
元々そういう性格だったわけじゃない。
確かにそんなに引きずるタイプの人間だったわけでもないが、ここまでさっぱり忘れられるわけでもなかった。過去の出来事が頭の片隅にずっと残って苦手な人間もいる。中にはその原因が何であったかってことすら覚えていなくて、だけど、なんか「過去に何か嫌なことがあった印象があるから」嫌い‥とかそういう奴もいる。
人間だし、そういうのは仕方なくない?
だけど、ここにきてそういうのがまったくなくなった。多分「現実世界に帰ればもう二度と会わない人たち」だから、だろう。
テレビやなんか見てて、登場人物にイラって来ても「なんだ、アイツ。あんな奴実際に居たら嫌だね」でおしまいでしょ? いつまでも引きずったりしないでしょ? ‥そんな感じ。
「今」ここに生きてるのはホント。だけど「これから」ここで生きていくことはない。
いつかは確実にお別れして、「その後」はない。
そう思うと、ちょっと寂しい‥気もする。
他の護衛さんに付いても同様だったが、‥ゴメン。ハーブティーはライ様限定にしか考えていない。(とは言えない)
だから、ライ様の護衛さんだけじゃなく、他の二人の護衛さんも呼んで「ハーブティー試飲会」をしている。
三種類とも試飲してもらわなければいけないんだろうけど、効用が効用だから‥今回は、リラックス効果のあるハーブティーだけ試してもらうことにした。
護衛さんが眠くなったりお通じが良くなったりしたら困るからね‥。
ハーブの葉を水魔法で「洗浄」して、「粉砕」「抽出」する。
ハーブティー作成も随分慣れたもんだ。(ちなみに、この同じ工程を薬草でするとポーションになる)
ポーションは薬だからか、相対的に苦く、ハーブティーは反対に(薬効は薬に比べて低いものの)飲みやすく、おいしい。
「いい香りだな」
「果実水より俺は好きだな」
「なんか、リラックスする。疲れが癒されるな」
感想は思っていた以上に良くて、三人の護衛さんたちから「主人に作っていいよ」って許可を貰えた。
‥ライ様限定だけどね。まあ‥リラックス効果のハーブティーはまた飲んでもらうか。
「しかし、タツミも色々イソガシイな」
ってアル様の護衛であるクスがハーブティーをちまちま飲みながら呆れたような顔で言った。(どうやら、かなり気に入ったらしく、「一気に飲み切るの勿体ない」ってちまちま飲んでるみたいだ。お代わり位作るよ? っていったが、薬じゃないけどただのジュースでもないから飲み過ぎは良くないって認識してるらしい。‥まあ、そうかも。また作ってあげよう、って思った)
「頑張ってるのは分かるんだけど‥、色んな事に手を出して、一番しなけちゃいけないことがおざなりになっちゃったりしたら、それこそ大問題だぞ」
俺に対しては楽に関西弁で話すことが多い彼だが、別に関西弁しか話せないわけではない。寧ろ関西弁は、通じる人があんまりいない別の国の言葉(そういう扱いっぽい)だから、俺とフランクに無駄話をする時くらいにしか使わない。とかいいながら、俺と話すときは関西弁が多いのは、クスにとっては関西弁で話す方が楽なんだろう。
「だけど‥おまじないか。それを学ぶこと自体は悪いことではないが‥それにハマるのは困る。特にタツミは魔女に対する適性もあるからな‥」
フランが上品にハーブティーを飲みながら言った。
‥あ、魔女の特性って案外皆知ってるんだ。
俺は他の護衛さんたちにハーブティーを作っていた手を止めて、フランを見た。
フランが顔を上げて、俺の目を見て、
「魔女は‥ダメだぞ」
強い口調で言う。
分かってます。俺も魔女は嫌です。
ってか‥こんだけ強い口調で止めるってことは、何か理由があるってことだよね?
「なりませんが、聖女である俺が魔女って肩書を持つと何か悪いことがあるってことですか? ただ、出来ることが増えていいわけではない‥ってことですよね? さっきの感じからしたら‥」
俺が言うと、フランも他の護衛さんも、全員が頷いた。
「魔女と聖女は兼業できない。
魔女になることを決めたら、聖女の肩書は消える」
え?
「国中で、一人しかいない肩書を持つ者は三人だ。
一人は言わずと知れた王様。そして、魔王。あと一人は聖女だ。
魔王が復活する時聖女も現れる。魔王を滅ぼすためだ。魔王を滅ぼせは、聖女の役割は終わる」
‥魔王と共に死んじゃうってこと? ゾクっとしたが、フランに
「いや、聖女異能が消えるだけだ。ただの魔法使いに戻るってだけのことだな」
ってあっさりと言われた。
そうか‥よかった。
「でも、それって魔王と聖女がセットって感じに聞こえるけど、大昔の魔王討伐の際には聖女は出現してなかったんだよね? 魔王と聖女はホントにセットなんだろうか? 」
「大昔のことだから、記述漏れかもしれんし、魔王の強さがパワーアップした‥とかかもしれんやろ。そんなもん知らんわ。‥とにかく、俺が今言いたいんは、魔女になったら聖女の資格がなくなるって話や。なくなったら困るやろうが」
困る? いや、俺は別に困らんが。
「困る? 」
俺が首を傾げると、護衛さんたちに
「困るわ! アル様が」
「困りますね。レオンハルト様が」
「困るね。ラインハルト様が」
って言われてしまった。
全員、俺の意見は無視。苦笑いする俺に
「タツミだって、討伐の為に今まで随分準備してきたんだろ? それが無駄になるとか勿体ないだろうが」
レオ様の護衛・ダグラスが呆れた様な口調で言った。
そうだね。ダグラスには(護身術のための)剣の訓練で随分シバカレ‥お世話になった。早くもっと強くなってダグラスに「お礼」したいもんだ。
それにしても‥
魔女と聖女が兼業出来ないとはね。‥何だろ。なんか「引っかかる」。
何か‥これがとても重要なことに思えて来る‥。
その時、俺はそう思ったんだけど、また護身術の稽古が再開されたりと忙しくって、そんなことを考えている時間もなかった。
疲れて、だけどシャワーだけはなんとか済ませて‥後はやっぱり休息スポット(自室)で寝るだけだ。
皆も心配してるみたいだし、そもそも目的の「安眠」「快便」ハーブティーのレシピも仕入れたし、今日の放課後にでもジーナに「もうおまじない講座受けません」って言わなきゃね。彼女の時間を無駄にしちゃうのも悪いし。
朝起きた俺は、いつも通り昨日の疲れも悩みのリセットした頭でそう思った。
記憶がなくなるわけではない。
ただ、その時感じた苦しいとか悔しいとか‥そういう感情やなんかが整理されて、「負けて悔しかったから、練習もっと頑張ろう」っていう風にポジティブ変換されて残るみたいなんだ。だから、「俺に勝ったからっていって、昨日のアイツのあの態度なんやってん。アイツ‥許すまじ」とか怒りや悔しさを引きずらないってことだな。
元々そういう性格だったわけじゃない。
確かにそんなに引きずるタイプの人間だったわけでもないが、ここまでさっぱり忘れられるわけでもなかった。過去の出来事が頭の片隅にずっと残って苦手な人間もいる。中にはその原因が何であったかってことすら覚えていなくて、だけど、なんか「過去に何か嫌なことがあった印象があるから」嫌い‥とかそういう奴もいる。
人間だし、そういうのは仕方なくない?
だけど、ここにきてそういうのがまったくなくなった。多分「現実世界に帰ればもう二度と会わない人たち」だから、だろう。
テレビやなんか見てて、登場人物にイラって来ても「なんだ、アイツ。あんな奴実際に居たら嫌だね」でおしまいでしょ? いつまでも引きずったりしないでしょ? ‥そんな感じ。
「今」ここに生きてるのはホント。だけど「これから」ここで生きていくことはない。
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