俺が誰って? 只の‥乙女ゲームを恋愛抜き(希望)でクリアしたいごく普通のDKですが? 

文月

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21.ライ様の推測

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 護衛の皆さんのオッケーも出たので、ライ様に安眠効果ハーブティーを飲んでもらった。
 正確には、取り敢えずは三人一緒にいる時にリラックス効果のハーブティーを飲んでもらって、
「ハーブティーって、初めて飲むけど、なんかイイね! 」
 ってのを分かってもらって、後でコッソリ安眠効果ハーブティーを渡して「寝つきが良くなるハーブティーだから、寝る前に飲んでください」って言ったんだ。ライ様は「なんで俺だけ? 」(あ、ライ様は俺とか言わないか。‥自分の事なんて言ってたっけ? それすら覚えてないや‥。あんまり喋ってるの見たことないからな~)って顔してたけど、多分不眠は「それ以上に」辛いんだろう。躊躇しながら受け取ってくれた。
 そもそも、ジーナは大丈夫なのか? 怪しくないのか? って話だけど、ジーナのことはあれとしても、ハーブティーには問題はない。
 だって、俺は聖女だから。
 聖女が作ったものに毒はないし、毒を渡されたらちゃんとわかる。
 この前植物鑑定してた時に毒の見分け方分かるようになったもん。毒はね、アイコンが紫なの!!
 例えば、
 ドクノキノハ(植物の名前)薬草(毒) 水属性
 って出る。
 面白いのが、これは生の状態だから、熱処理(ゆでたりすることね)すると毒じゃなくなるものもあるってこと。多分全部の毒草がそうってわけではないと思う。この「ドクノキノハ」は紫の色が点滅してたから「ん? 」って思って茹でてみたの。
 薬草実験用に、簡易コンロと鍋買ったんだ。
 こういうのって、面白いよね。地味に好きな作業だ。

 ジーナの教えてくれる「おまじない」はそういう点において、ヤバい所は全然なかった。
 毒草どころか、依存性がありそうなグレーな薬草も使わないし、ちゃんと「分からない薬草には手を出さない! 」ってきっちりしてるしね。信用してもいい人間。魔女へのお誘いはウザいけど、これだって別に俺を貶めよう‥って思ってのことでもないみたい。悪意ってのは全然感じられない。彼女は‥寧ろ、純粋そのもので、ホントにおまじないを愛してるって感じ。宗教の勧誘もそうじゃない? 相手に煩わしい思いさせてやろって思ってるわけじゃないじゃない。純粋に「この宗教で私は救われた、貴方も是非! 」って思ってるんでしょ? (もっとも、金銭的理由で勧誘してる人もいるだろうけど)ジーナはまさにそんな感じなんだ。
 でも、だからと言ってこれ以上ズルズルと返事を先送りしておくことも出来ない。
 俺はジーナに
「もう、おまじない講座はうけない。俺は、絶対に魔女にならないから」
 ってはっきり伝えた。
 ジーナはちょっと悲しそうな顔をしたけど、
「そっか。それは仕方がないね」
 って言ってくれた。
 だけど、「じゃあさよなら」って時に、彼女は俺が彼女にとって「凄くいい生徒だった」って(再び)名残惜しそうに言って「だから‥」
「最後の講習聞いてくれない? 」
 って言われた。 
 で、ジーナによる最後のおまじない講座が始まった。今日のレシピは恋に効くハーブティーらしい。
 いや、全然興味惹かれませんが?
 俺が苦笑いしてると、ジーナも苦笑いした。
「本来なら、何かおまじないを教えてあげるけど、何がいい? って聞いたら皆が一番に言うおまじないで、私も一番得意なおまじないなんだけどね? 」
 って。
 恋に効くハーブティー、その名も「あれ? 僕(私)この子のことが好きなのかも? 恋のドキドキハーブティー♡」
 ださ! 名前ださ! 
 でも、‥確かに高校生くらいの子が興味をもつ「おまじない」ってこういうのかも?? 
 後は‥「テストの時、あがらないで全力を出し切れるおまじない」とかね。‥安眠とか快便って確かに高校生っぽくないかも??
 「恋のドキドキ‥」には全然興味はなかったが、ジーナの最後のお願いだから聞くことにした。
 ピンク色の可愛いハーブティー。成分分析したら、ビタミンが豊富とのこと。
 飲んでみたら、ハチミツレモンっぽい‥甘酸っぱい味がした。ハチミツレモンと違って、癖がないあっさりして飲みやすいハーブティー。売り出したらめちゃ人気でそう。
 だけど、当たり前だけど、すぐ効果がでるってもんでもない。ジーナを見たら、ちょっとドキっとしたけど、それは彼女が普通に魅力的だからだろう。だけど、それだけ。リラックス効果のハーブティーみたいに身体が軽くなる‥とか、安眠効果ハーブティーみたいに、眠気を誘う‥とかそういうのは一切ない。ただの「気の持ちよう」って感じなのに驚いた。俺がそう感想を言うと、ジーナに呆れ顔をされた。
「当たり前よ。薬で人の気持ちがどうこうできるわけないでしょ。そんな恐ろしい‥」
 ‥デスヨね。
 苦笑いすると、ジーナはふふっと笑って
「恋は、相手を想う気持ちでしょ? 薬効じゃなくて、「この子に貰った」ってのが重要なんじゃない? 貰ったシチュエーションが一番重要なのは確かよね。‥もっとも、事務的に「そういうもの」渡す人はいないと思うけど。
 その後飲んでくれるかくれないかは、その子が渡した子のことを少なくとも嫌いじゃないって状態じゃない? 飲んでもくれない様だったら、問題外だわ。
 飲んでくれて‥その後。
 ここはぐいぐい行くところじゃまだない。「ちょっと印象に残る程度」でいいの。
 舌に残る味が爽やかなら、今後その子を思い出すときにはその味が思い出される。‥なんか可愛らしくない? 」
 って言った。
 そういうもんかね。
 恋に効くハーブティーっていうから媚薬みたいな「胡散臭いもの」を想像したけど、そうじゃないみたいだから良しとしよう。
 今後、俺がこれをこの世界で振る舞う機会ってあるかね。俺、寮の男どもとあの三人(プラス護衛さん)としか話すことないんだけど‥。
 可愛い女の子にこの先出会って、「いずれ別れることになるけど今は‥」っていう「ひと夏の恋」的展開はあるのか? 乞うご期待! 
 ‥ないだろな。

 そんなこんなでジーナと別れた。
 因みに安眠効果ハーブティーの効き目はあったらしく、ライ様から「これから毎日欲しい」と言われた。
 眠れたからだろう。顔色が良くなったライ様は最初に会ったときよりずっと穏やかな表情をしている。結構話し好きなことも分かった。あれだけ本を読んでるからだろう、ライ様は物知りで俺の「雑学披露」なんて目じゃない程色んな事を教えてくれた。穏やかで、淀みのない‥ちょっと高めの声が心地いい。アル様は話しやすいし、一緒に話してて元気をくれるって感じがするけど、そういうのとは違う。ずっと聞いてたいって感じるような声なんだ。
 だから‥だろうか。この頃は、ライ様と話すことが多くなった気がする。(多分、ハーブティーを飲むことによって好感度も結構上がったのだろう。確認してないけど。‥なんか怖くてさ。だけど、別に好感度up = loveってことじゃないから、友達と認めてもらえた‥と素直に喜ぶことにする)
 何かの話のついでに、ライ様にジーナとのことを話したら、
「ジーナ‥確かにここの職員だね。だけど、彼女は「おまじない」の先生ではない。ここには「おまじない」の授業なんてないからね」
 って言われた。
 なんと! 
 こころがザワっとなった。心臓がバクバク‥大きな音を立てる。
 どうしよう‥俺は怪しい女と接触してしまったのか? 
 身体が一気に冷たくなった。そんな俺の様子を見て、
「だけど、別に問題はないよ」
 ってライ様が微笑んで
「おまじないを教える者なんていうのは、大概そういうもんだ」
 って‥俺を安心させるように言ってくれた。
「おまじないは彼女も言っているように、治療、医療の魔法が使えないと使えない「人を選ぶ学問」だし、誰でも習得してもいい学問じゃないでしょ? だから、おまじないの教師ってのは、直接自分で弟子をスカウトするのが一般的なんだ。教師と違って、国家の資格がいる学問でもない。‥まあいえば、趣味の延長みたいな学問だしね」
 ほ‥と、さっきまでの緊張が解けた。
「だけど、おまじないを極めた者ってのはみんな何かしら「この学問を世に広める」っていう変な‥変なって言ったらなんだけど‥こだわりがある‥のかな? とにかく、使命感を持って布教活動に務めたがる傾向があるんだ」
 布教活動‥。宗教っぽいって思ったのはあながち間違いじゃなかったのかも? 
 俺は頷いて、ライ様の話の続きを待つ。
「彼女、タツミがハーブに興味を持っているのを見て「この子だったらおまじないの話を聞いてくれるんじゃ? 」って思ったんだじゃない? 嬉しかったんだと思うよ。誰彼構わず布教してるわけじゃない。そんな迷惑な人だったら今ごろ学園には残れてなかったと思うよ。だから、別に心配する必要もない。普段の彼女は、学園の植物の世話係をしてるんだ」
 成程‥
 怪しい女じゃなくてよかった。俺は更に彼女が言った魔女の話をライ様にした。
「‥へえ、おまじないを極めた者は魔女になれるって言ったの? ジーナはタツミが聖女だと知っててそんなことを言ったのかな? そうだとしたら‥大分問題だよ? 」
 俺は首を傾げる。
 大問題? ああ、聖女と魔女は兼業できなくて、魔女になるって決めたら、聖女って肩書が消えるから? 
 俺がそう聞くと、ライ様が頷いた。

「聖女でなくなったら、魔王が討伐出来ないからね」
 俺のこころでずっと引っかかっていた、何かがかちりと音を立てて繋がる。
「ジーナがタツミが聖女だって知ってる上で、タツミに魔女になるように勧誘して‥つまり、タツミを「そういう理由で」聖女でなくそうとしていたとしたら、ジーナは魔王側の人間だと断言するしかない」

 目を見開いて、俺はその場に立ち尽くした。
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