俺が誰って? 只の‥乙女ゲームを恋愛抜き(希望)でクリアしたいごく普通のDKですが? 

文月

文字の大きさ
上 下
3 / 74

2.案内係のモブな「友人」たち。

しおりを挟む
 今日、試験。なんて日からスタートしてるんだ! 

「試験!? 」
「何驚いてんだよ。タツミは成績優秀だから別に困ることはないだろ? 」
 別な少年が苦笑いしながら話しかけて来た。
 どうやら、ヒロイン・タツミは急に転入してきたけど、別に嫌われてはいない様だ。‥「持ち前の明るい性格」だからか? ってか、ヒロインじゃないけど。
 
 で、少年の名前は「子爵令息 ディケンズ」というらしい。

 名前: 子爵令息 ディケンズ(17歳)男
 ランク: F
 家族構成: ??
 属性: ??
 武器: ??
 特技: ??
 HP: ??
 MP: ??
 好感度: ♡♡♡
 協力度: ♡♡♡
 
 コイツもさっきと同じ感じか。
 だけど、そう親しさは感じられない。ブランがちょっと驚いた顔をしてるのは、急に話かけて来たから‥かな? ブランとディケンズも友人ってわけではないようだ。顔を知ってるだけで、別に「以前から知り合い」って感じではないみたい。どっちかというと、ブランもディケンズも共通して俺に話しかけただけって感じ。
 転校生って目立つから興味あるよね~。
 多分そんな軽~いカンジ。‥でも、有難いよね。気にかけてくれてありがとう。
 目立つからなに。アイツは所詮よそ者。
 って俺を無視してる奴らが大半だもんね。
 ブラン、ディケンズ! 今から君たちは俺の友人だ! (ここ限定のね)
 ってか、多分これはゲームの関係上「誰もがヒロインを無視してるんじゃ話がいつまでたっても進まないから」お助けキャラ的なモブがストーリーを進めた‥って感じなんだろう。しばらくの間はここの仕組みみたいな奴を彼らと一緒に学ぶって感じなのかな。
 それにしても‥この二人、モブって言葉が嫌にしっくりくる。(俺もだけどね! )
 顔が‥すっごく馴染み深い地味顔なんよ☆

 周りの奴らは俺たちの方を向くこともなく同じ方向に向かっていく。そして、俺たちもその方向に向かっている。多分そっちがこの寮(多分)の出口か‥(もしくは)食堂みたいな「皆が当たり前に向かう方向」なんだろう。多分だけど、食堂。この大人数でお手洗いとかだったらちょっと面白いけど☆
 お手洗いも共同みたい。さっき来るときに見た。
 周りの様子からこの寮の間取りを覚えろってことかな。どうやら「ヒロイン・タツミ」は今日この学校に転入してきたわけじゃないみたいだから、誰かが案内してくれるってことはないだろう。
 ‥なんで途中から俺が放り込まれたんだ? 

 制服と一緒に置いてあった鞄のところに説明アイコンが出て、授業開始時刻と時間割が分かった。あと何個かlockがかかったアイコンがあった、多分「なにかをすれば」lockが解除されるんだろう。今は要らない様だから気にしないことにした。
 とにかく今は現状把握と‥あと、時間の限りレベ上げしたい。(HPとMP上げたい)
 今はまずアカデミーに行って‥試験を受けるんだよな‥。

 さっき時計を見たら登校前って時間だった。開始まで1時間前。
 朝だから、朝食を食べて、授業を受ける為アカデミーに向かう。‥こうしてみんなについて行けば間違いなく学校に行けるのだろう。
 その間も、俺に話しかけて来る者はいない。
 寧ろ俺の事、チラリと見て、顔を背けてしまう。
 ここでの俺はどうやら、ブランとディケンズはイイ奴だから話しかけてくれただけで、概ねよそ者扱いで間違いない様だ。(予想通りね)俺の事よく思ってないやつが大半って感じかな。そりゃ、国からの特別対応で転入してきた男爵令息‥つまり下級貴族とか、ここの人たちにとったら‥ね? 
 周りを見たら全員子爵令息って肩書になってるから、ここは子爵令息が寝泊まりする寮‥いや、階なんだろう。だって、階段から降りて来る男たちは肩書が伯爵令息ってなってて、態度が明らかに偉そうだから。
 身分で住む階が違うって訳か。

 この建物は2階建てで、1階は子爵令息の部屋と管理員の部屋と‥食堂、浴場。あと、共同トイレも二カ所ある。(一か所はさっきの通り道にあって、あともう一つは浴場の横にあった)浴場は1階の奥、食堂の横になってるみたい。
 食堂も浴場も結構広い。俺たちの部屋三つ分位ありそう。皆が使うから広さが違うのは仕方がないが、扉の豪華さが全然違う。後で浴場も見てみたいけど、入浴は時間が決まってる感じかな? そういうとこはブランたちにそれとなく確認しておこう。
 食堂に集まった人数から察するに子爵令息と伯爵令息の数はそう変わらない。1階と2階の床面積は同じ。多分だけど共同の部屋は全部1階にある。つまり、1階の生徒の住居スペースは全床面積(1階の)からそれら共同の部屋を引いた分でかなり狭い。‥即ち、単純に生徒の一人当たりの居住空間は、子爵令息の部屋に比べ伯爵令息の部屋の方が(多分だいぶん)大きい。
 ‥まあ、そうだろう。全然意外さもない。
 食堂の部屋に着く。ブランとディケンズと並んで席に着く。その間、ブランにもディケンズにも、勿論俺に話しかけて来る奴らもいない。俺はまだしも二人も友達が少ない方なのかな? 俺なんかに話し掛けちゃうような変人だから? ‥それとも、嫌われ者の俺と一緒にいるからかな??
 食堂は、大きな長机が二つ置いてある。会議場やなんかに置いてあるような机って感じ。二つってことは‥一つが多分子爵令息たちの机でもう一つが伯爵令息の机なのだろう‥って思ってたら、そういう傾向はあるものの、必ずしもそうって訳では無いみたいだ。別に席順も決まってるわけではなさそうで、来た順に席についているようだ。
 ‥食事は自分たちで取りに行く感じかな? 
 なんて思いながら様子を見ていると、伯爵令息が俺たちの横に座った。二人連れで、もう一人の少年が子爵令息の様だ。子息令息の方が俺の方をチラッと見て「よう」って軽く挨拶してきた。気さくな奴っぽい。だけど、コイツも別に俺と以前から知り合いって感じじゃないみたい。転入して来て数日たってる(多分)から何度か見掛けたこと位はある‥って感じかな。

 名前: 伯爵令息 アインケル(18歳)男
 ランク: E
 家族構成: ??
 属性: ??
 武器: ??
 特技: ??
 HP: ??
 MP: ??
 好感度: ♡♡♡
 協力度: ♡♡♡

 お! ランクがFじゃない! 年も‥一学年上みたいだ。
 先輩だし、顔見知りでもないけど、隣に座った人を無視するのはいけない。小さく会釈して挨拶すると、アインケルが俺を見て、
「あ、君が噂の聖女君か」
 って笑顔で言った。
 その瞬間、周りがざわっとなって全員が俺を見る。
 うわあ‥やめて。見ないで怖い。
 だけど、全員が悪意を向けてきてるわけでは‥ないみたい。大半が好奇の目って感じ。
 アインケルは俺に手を差し出し、
「俺はアインケル。伯爵令息だ。歳は‥君より一つ上かな。18歳。
 しっかし、聖魔法使いは初めてみたけど、なんか雰囲気あるな! 俺は、この瞳をみたら分かるかもしれないけど、平凡な水魔法使いだ」
 そう自己紹介を聞いた瞬間、アインケルの名前バーがチカっと光って、属性の欄に「水」が加わった。
 あ、成る程、知った情報がこのアイコンに自動的に加わるのか。‥便利~。
 そんなことを思いながら差し出された手を握る。
 と、アインケルが目を見開いた。
 ん? 握手じゃなかったの? 
 そんなことを思ってたら‥
「何だ? 君の手‥凄く‥癒されるな。聖女だからか? 」
 って言われた。
 ‥そんなの聞いたことない。‥若干頬を赤らめて変なこと言わないで欲しい‥。
 って思ってたら、俺のプロフィールカードがチカチカって光った。‥更新か? 

 特技: 聖女クッキング、治癒、癒しのボディー

 なんだそりゃなんかいかがわしいな。
 ゾワッとなった。締まりのない顔で俺の手をにぎにぎしてる友人をドン引きした顔で見たアインケルの友人の子爵令息 コーカサス(18歳)が
「タツミだっけ? が固まってるだろ? 離してやれよ‥」
 ってアインケルと‥俺の手を掴んで‥
「あ。ホントだ。すっごい癒される。何この聖女ハンド」
 ってまたほんわか。
 うわあ‥やめて。
「え? そうなの? 俺も触る」
 反対の手を隣に座っていたディケンズが握る。
 ゾワゾワゾワ‥やめろ~!!
「ホントだ! 超つるつる。いや‥違うなそれだけじゃない。すべすべ? しっとり‥?? ひんやり? ふんわり‥? いやこれは‥表現し難いな。ずっと触ってたい‥」
 止めて~!!
 ディケンズ、コーカサス、アインケルの名前バーが点滅する。
 更新‥?
 アイコンバーまとめてオープン!
 あ!! 
 好感度の♡の一つの端ががほんのり赤くなってる‥! 
 もしかして‥この♡、好感度が上がったら色づく!? で、色づいた状態が「好感度がある」ってこと?

 ‥今までホントに好感度ってか‥関心すらほとんどなかったんだろうな~ なんて両脇から手をにぎにぎされながら思った俺だった。
 しっかし‥何この状況!! 今まで関心ゼロだった男の手をにぎにぎするな~!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

処理中です...