113 / 116
八章 明日へ
11.流石に、味噌汁の冷めない距離ってわけにはいかないけど。
しおりを挟む
翔が卒業して
桜が咲いたのを見たら、
あっちに帰る。
そう言ったら、
泣きそうな顔を、ぐって我慢して
最後に‥
最後にお花見をしよって笑顔で桜子が言ったんだ。
泣くのを我慢した、ぶっさいくな顔。‥そんな顔初めて見た。
悲しそうに、‥苦しそうに泣く桜子なんて見たことない。
桜子はいつも笑っていた。
その為に、俺やフミカ‥勿論正樹だって翔なカツラギだって何かしらしてきた。
でも、それは義務とかじゃなかった、皆桜子の事が大好きで、桜子の傍にいたかったし、桜子を構いたくって仕方が無かった。そして、‥そうやって、俺たちはしてきたことと同じくらい‥否、してきたこと以上に桜子から「嬉しい」を返してもらってきた。
それが嬉しくて、俺たちは桜子の傍にいた。
桜子から、お願いされることだって嬉しかった。
桜子は、お願いって言いながら、いつだって俺たちが嬉しくなるようなことを考えてくれてた。
魚が見たい、って桜子に言われて皆で行った水族館では、カツラギとフミカが楽しそうだった。俺たちが生れた村に海はなかったし、王都にもなかったから、カツラギには単純に珍しかったし、「初めて見る生き物」は、そんなの、カツラギの好物だ。
フミカは、「生きてる魚をこんな風に見たことない」って大興奮だった。Happynationに水族館なんてないからね。水族館も、動物園も、生き物を鑑賞するって習慣はないね。動物は食べられるか食べられないか、有害か無害か‥が基準だしね。
こことHappynationはやっぱり違うんだよな~って改めて思ったよ。
それにしても、だ。
そもそも、桜子がこんなこと言いだしたのだって、‥別に桜子の思い付きやら、我が儘とかじゃない。
カツラギ‥休みだというのに、図鑑を開いているカツラギ(幼少期)の為だ。
カツラギにどこか行きたい? なんて聞いても、きっと言いやしない。カツラギはあんな見かけだけど、大人だからね。遠慮するってこともあるけど、子供っぽいって思ったり‥やっぱ恥ずかしいじゃない? だから、桜子はカツラギのプライドを尊重したんだ。
「図鑑に載ってるお魚、実際に見たくない? 」って言い方じゃだめ。あいつは、天の邪鬼だから、きっと「別に」っていうよね。それに‥カツラギは「自分に「子供らしさ」を求められてる」って深読みするよね。
カツラギは、でもね、子供らしくしてるつもりなんだ、奴なりの「子供らしさ」で、「子供であることを利用して、思いっきり好きなことをしてる」んだ。だのに、「あれ? 違ったかな? これは「子供らしい」と違うのかな? 」ってきっと、考えちゃう。
そしたら‥きっと、「やっぱり私には子供らしいは無理ですね」って考えちゃう。
‥子供であることを利用して知的好奇心を満たすってことをやめちゃう。
それはね、カツラギにとってすごくつらいことだ。
‥きっとね、桜子の方法が一番、カツラギには正しかったんだ。
「だって、翔は私の息子だもん」
って桜子も言ってるしね。
きっと‥俺たちも良く知らない「カツラギの甘えどころ」みたいなものをしっているんだろう。(‥なんだ、「甘えどころ」って。‥なんとなく、そういう感じ~ってことで、理解しといて? )
正樹も、普段、あんまり子供らしくない「翔」が楽しそうなのを見て、すっごく嬉しそうな顔してた。
カメラを抱えて、休日パパをしてるんだけど、子供みたいな見かけの正樹だから、ぱっと目、兄弟‥年の離れた兄弟みたいだったよ。
でもね、顔は「お父さん」って表情なんだ。
「フミカちゃん翔、そこで写真撮ろう! ほら、桜子さんと酒井さんも並んで! ペンギンも! ほら! ペンギンが今こっち向いたよ! 」
ペンギンも! はないだろう‥ってちょっと笑いそうになったら‥
どうやら、たまたま一匹が振り向いたらしい。(そういうことってあるよね)
そしたら、その正樹の「こっち向いたよ」に反応したカツラギが
「え! ペンギンって人間の言葉通じるのか!? 」
ペンギンの方向いちゃって
「あ、翔、前を向いて!!! 」
正樹がカツラギに注意して‥。
それを見た、桜子と俺が大笑いして。周りの知らない人たちも微笑ましいって顔でそれを見てた。
他にも色々行ったよ。
Happynationには、無い様な所全部。
遊園地‥とか、「へえ、大人も遊んでる」って驚いたよ。
花火は、あっちにもあるんだけど、あんなに人が沢山河原とかで座ってみてるってことはないから、人の多さに驚いたね。
綺麗な景色も、珍しい景色も。
普段の俺は鳥の姿だったら、行こうと思えば何処にだって行けるけど、桜子たちと行った方がずっと楽しかった。
最後だから‥、お花見‥
アララキさんも、その「ナツカさん」も呼んでね
って、桜子のお願い。
最後のお願い。
アララキと‥勿論ナツカにも言っておいたよ。二人とも来るって。
二人が来る前に用意しようって、
桜子に連れてこられたのは、なぜか写真館だった。
「着物。これは、白無垢って言うんだ。キレイでしょう? 」
って、フミカと俺は、
今、なぜか着付けてもらっている。
胸に、やたらパットが入った下着は、桜子に貰ったんだ。
「妹は胸が無いのを気にしてるから、下着はつけて着付けさせてね。お願い」
って、美容院の人に桜子が頼んでた。
‥妹って。俺のこと?
何でだ。
って思ったけど、
気付いたら、桜子は初めて会った時から、もう10余年分年を取っていた。
まだ、30にもなってないけど、‥でも、やっぱり昔とは違う。
もう、俺の妹‥みたいだった桜子とは違う。
俺は変わっていないのに‥。
正樹も、変わっていない‥とは言えない。相変わらずショタだけど、昔みたいにぴちぴちではない。‥心なしか、貫禄‥は出てないけど、落ち着いた感じ。
「二人とも、凄くお肌綺麗ですね~」
美容スタッフが化粧をしてくれながら、ほう、っと感嘆した様なため息を漏らす。
「お肌も、白いし、髪もツヤツヤでキレイ」
「妹さんは、ハーフさんですか? 」
って桜子を見て「しまった。立ち入ったことを聞いてしまった」って苦笑いして、口を閉ざす。
「義理の妹です。でも、弟夫婦は結婚式もしてないから、今日は写真だけでも‥って。お節介で提案したんです」
‥アララキと桜子が姉弟って設定? ‥無理あるわ~。妹って言っちゃったから嘘に嘘を重ねる羽目になって困ってる桜子、可愛い。
「成程。では、写真を撮っていきますね。旦那様たちの用意はもう出来ていますよ」
「え? 」
‥旦那? だれ。
いや、たちって言って着付けられてるのが俺とフミカだから
‥アララキとナツカ??
‥まあ、さっきからの話の流れだと、‥そうなんだろうね。
因みに、フミカはどういう設定なんだろう。まあ、‥いいか。
「サカマキ!! 」
「キレイ‥ホントに、キレイ!! 」
紋付き袴のアララキが泣き出して
ナツカがフミカ見て感激して‥
‥4人、恰好つかない集合写真が出来た。
アララキとフミカを見て、写真館のお姉さんがちょっと驚いてた。
きっと、そっくり‥って思っただろう。
そんなそっくりな二人と見るからに外国人(←ナツカだ。ナツカは普通に外人顔だ)が着物を着て結婚写真って、‥ちょっと面白いね。俺は‥ここでもそれ程珍しくない髪色してるから、ガッツリ外国人って感じではないんだ。まあだから、ハーフってのが‥妥当な線っぽい?
アララキとナツカは‥違和感はやっぱりあったものの、そこそこ似合ってたよ。
そのアララキそっくりなフミカもやっぱり違和感はあってナツカが感激して「似合ってる~」って程でもなかったとは思うんだけど‥まあ、人さまの美的感覚にケチつけることはないよね。
‥ナツカなら、フミカが着る服全部「似合ってる~。可愛い~」って言いそう。‥それは、まあ、アララキも変わらないけどね‥。
でも、俺は声を大にして言いたい。「どれも似合ってる~」って、「どれでも変わらん」と同意味だからね!!
それぞれのカップルでって写真も取ったし、お色直しって言って、ドレスの写真も撮った。白のマーメードラインのシンプルだけど品のいいドレスと何故かもう一枚。フミカは水色で、俺は萌黄色だった。その場で俺たちがえらんだわけじゃなくって、次々に用意されたものが出て来た。俺たちは、「美しい~」とか、「似合う~」って興奮気味な美容部員さんに言われる前に着替えたり写真を撮ったり‥ぐったりだったよ。
事前にドレスを選んだのは、桜子。「サカマキさんの色っていったらこれでしょ」って悪戯っぽい顔で笑った。
俺たちに内緒で‥きっと大変だっただろう。
そう思うと、目頭が熱くなった。
‥終始、アララキは泣いていた。
「可愛い‥すごくよく似合ってる‥」
って感激して泣いて
「ホントに‥大事にするからねぇ‥」
って感極まって、また泣く。
って、こいつがこんなに泣き虫だとは思わなかった。
泣きながら笑っていた。
ナツカは、フミカを見て、終始顔が真っ赤だった。
でも、久し振りに再会したフミカを見た一言が
「良かった、女だった」
だったのが‥笑った。
もっとも、呟いた声は、凄く小さかったから、桜子たちには聞こえてなかっただろうけどね。
神獣な俺だからこそ聞こえたってこと。(フミカにも‥聞こえたんだろう。苦笑いしてた。言わなかったのは、きっとフミカのやさしさだ)
‥ちょっと笑ってしまった。
最後に、皆で写真を撮ってもらった。
「この写真は、3枚焼き増ししてください。大きいサイズで」
って桜子が写真屋さんに言った。
フミカたち夫婦の分と、俺たちの分、そして、桜子の家の分
そう言ったら、フミカが初めて泣き出した。
「桜子、桜子‥絶対、また遊びに来るから」
って。
桜子は、第二のお母さんだからって。
二人で抱き合って泣いていた。
流石に、味噌汁の冷めない距離ってわけにはいかないけど、私が連れて来るヨって、今日は女の恰好をしてるから‥自分の事、俺って呼ぶのは、やめた。(流石にね、こんな花嫁な格好してる時にはね。特にね)
「さ、次はお花見だよ!! 」
流石にこれ以上、ナツカとアララキにここに居てもらうのはマズイ(時間的な問題だ。Happynationと地球は時間のたち方が違うからね)‥って思ったけど、桜子に言われて、桜だけ見に行った。
花霞って初めて見た。
こんなに綺麗な景色‥今まで見たことなかった、
花霞が、どんどん霞んで、
気が付いたら俺は泣いてた。
桜子も。
フミカも。
アララキが、そんな俺の背中をさすってくれた。ナツカは‥遠慮がちにフミカの手をそっとつないだ。
「桜が咲いたら、またこうしてここで会おうね」
桜が咲いたのを見たら、
あっちに帰る。
そう言ったら、
泣きそうな顔を、ぐって我慢して
最後に‥
最後にお花見をしよって笑顔で桜子が言ったんだ。
泣くのを我慢した、ぶっさいくな顔。‥そんな顔初めて見た。
悲しそうに、‥苦しそうに泣く桜子なんて見たことない。
桜子はいつも笑っていた。
その為に、俺やフミカ‥勿論正樹だって翔なカツラギだって何かしらしてきた。
でも、それは義務とかじゃなかった、皆桜子の事が大好きで、桜子の傍にいたかったし、桜子を構いたくって仕方が無かった。そして、‥そうやって、俺たちはしてきたことと同じくらい‥否、してきたこと以上に桜子から「嬉しい」を返してもらってきた。
それが嬉しくて、俺たちは桜子の傍にいた。
桜子から、お願いされることだって嬉しかった。
桜子は、お願いって言いながら、いつだって俺たちが嬉しくなるようなことを考えてくれてた。
魚が見たい、って桜子に言われて皆で行った水族館では、カツラギとフミカが楽しそうだった。俺たちが生れた村に海はなかったし、王都にもなかったから、カツラギには単純に珍しかったし、「初めて見る生き物」は、そんなの、カツラギの好物だ。
フミカは、「生きてる魚をこんな風に見たことない」って大興奮だった。Happynationに水族館なんてないからね。水族館も、動物園も、生き物を鑑賞するって習慣はないね。動物は食べられるか食べられないか、有害か無害か‥が基準だしね。
こことHappynationはやっぱり違うんだよな~って改めて思ったよ。
それにしても、だ。
そもそも、桜子がこんなこと言いだしたのだって、‥別に桜子の思い付きやら、我が儘とかじゃない。
カツラギ‥休みだというのに、図鑑を開いているカツラギ(幼少期)の為だ。
カツラギにどこか行きたい? なんて聞いても、きっと言いやしない。カツラギはあんな見かけだけど、大人だからね。遠慮するってこともあるけど、子供っぽいって思ったり‥やっぱ恥ずかしいじゃない? だから、桜子はカツラギのプライドを尊重したんだ。
「図鑑に載ってるお魚、実際に見たくない? 」って言い方じゃだめ。あいつは、天の邪鬼だから、きっと「別に」っていうよね。それに‥カツラギは「自分に「子供らしさ」を求められてる」って深読みするよね。
カツラギは、でもね、子供らしくしてるつもりなんだ、奴なりの「子供らしさ」で、「子供であることを利用して、思いっきり好きなことをしてる」んだ。だのに、「あれ? 違ったかな? これは「子供らしい」と違うのかな? 」ってきっと、考えちゃう。
そしたら‥きっと、「やっぱり私には子供らしいは無理ですね」って考えちゃう。
‥子供であることを利用して知的好奇心を満たすってことをやめちゃう。
それはね、カツラギにとってすごくつらいことだ。
‥きっとね、桜子の方法が一番、カツラギには正しかったんだ。
「だって、翔は私の息子だもん」
って桜子も言ってるしね。
きっと‥俺たちも良く知らない「カツラギの甘えどころ」みたいなものをしっているんだろう。(‥なんだ、「甘えどころ」って。‥なんとなく、そういう感じ~ってことで、理解しといて? )
正樹も、普段、あんまり子供らしくない「翔」が楽しそうなのを見て、すっごく嬉しそうな顔してた。
カメラを抱えて、休日パパをしてるんだけど、子供みたいな見かけの正樹だから、ぱっと目、兄弟‥年の離れた兄弟みたいだったよ。
でもね、顔は「お父さん」って表情なんだ。
「フミカちゃん翔、そこで写真撮ろう! ほら、桜子さんと酒井さんも並んで! ペンギンも! ほら! ペンギンが今こっち向いたよ! 」
ペンギンも! はないだろう‥ってちょっと笑いそうになったら‥
どうやら、たまたま一匹が振り向いたらしい。(そういうことってあるよね)
そしたら、その正樹の「こっち向いたよ」に反応したカツラギが
「え! ペンギンって人間の言葉通じるのか!? 」
ペンギンの方向いちゃって
「あ、翔、前を向いて!!! 」
正樹がカツラギに注意して‥。
それを見た、桜子と俺が大笑いして。周りの知らない人たちも微笑ましいって顔でそれを見てた。
他にも色々行ったよ。
Happynationには、無い様な所全部。
遊園地‥とか、「へえ、大人も遊んでる」って驚いたよ。
花火は、あっちにもあるんだけど、あんなに人が沢山河原とかで座ってみてるってことはないから、人の多さに驚いたね。
綺麗な景色も、珍しい景色も。
普段の俺は鳥の姿だったら、行こうと思えば何処にだって行けるけど、桜子たちと行った方がずっと楽しかった。
最後だから‥、お花見‥
アララキさんも、その「ナツカさん」も呼んでね
って、桜子のお願い。
最後のお願い。
アララキと‥勿論ナツカにも言っておいたよ。二人とも来るって。
二人が来る前に用意しようって、
桜子に連れてこられたのは、なぜか写真館だった。
「着物。これは、白無垢って言うんだ。キレイでしょう? 」
って、フミカと俺は、
今、なぜか着付けてもらっている。
胸に、やたらパットが入った下着は、桜子に貰ったんだ。
「妹は胸が無いのを気にしてるから、下着はつけて着付けさせてね。お願い」
って、美容院の人に桜子が頼んでた。
‥妹って。俺のこと?
何でだ。
って思ったけど、
気付いたら、桜子は初めて会った時から、もう10余年分年を取っていた。
まだ、30にもなってないけど、‥でも、やっぱり昔とは違う。
もう、俺の妹‥みたいだった桜子とは違う。
俺は変わっていないのに‥。
正樹も、変わっていない‥とは言えない。相変わらずショタだけど、昔みたいにぴちぴちではない。‥心なしか、貫禄‥は出てないけど、落ち着いた感じ。
「二人とも、凄くお肌綺麗ですね~」
美容スタッフが化粧をしてくれながら、ほう、っと感嘆した様なため息を漏らす。
「お肌も、白いし、髪もツヤツヤでキレイ」
「妹さんは、ハーフさんですか? 」
って桜子を見て「しまった。立ち入ったことを聞いてしまった」って苦笑いして、口を閉ざす。
「義理の妹です。でも、弟夫婦は結婚式もしてないから、今日は写真だけでも‥って。お節介で提案したんです」
‥アララキと桜子が姉弟って設定? ‥無理あるわ~。妹って言っちゃったから嘘に嘘を重ねる羽目になって困ってる桜子、可愛い。
「成程。では、写真を撮っていきますね。旦那様たちの用意はもう出来ていますよ」
「え? 」
‥旦那? だれ。
いや、たちって言って着付けられてるのが俺とフミカだから
‥アララキとナツカ??
‥まあ、さっきからの話の流れだと、‥そうなんだろうね。
因みに、フミカはどういう設定なんだろう。まあ、‥いいか。
「サカマキ!! 」
「キレイ‥ホントに、キレイ!! 」
紋付き袴のアララキが泣き出して
ナツカがフミカ見て感激して‥
‥4人、恰好つかない集合写真が出来た。
アララキとフミカを見て、写真館のお姉さんがちょっと驚いてた。
きっと、そっくり‥って思っただろう。
そんなそっくりな二人と見るからに外国人(←ナツカだ。ナツカは普通に外人顔だ)が着物を着て結婚写真って、‥ちょっと面白いね。俺は‥ここでもそれ程珍しくない髪色してるから、ガッツリ外国人って感じではないんだ。まあだから、ハーフってのが‥妥当な線っぽい?
アララキとナツカは‥違和感はやっぱりあったものの、そこそこ似合ってたよ。
そのアララキそっくりなフミカもやっぱり違和感はあってナツカが感激して「似合ってる~」って程でもなかったとは思うんだけど‥まあ、人さまの美的感覚にケチつけることはないよね。
‥ナツカなら、フミカが着る服全部「似合ってる~。可愛い~」って言いそう。‥それは、まあ、アララキも変わらないけどね‥。
でも、俺は声を大にして言いたい。「どれも似合ってる~」って、「どれでも変わらん」と同意味だからね!!
それぞれのカップルでって写真も取ったし、お色直しって言って、ドレスの写真も撮った。白のマーメードラインのシンプルだけど品のいいドレスと何故かもう一枚。フミカは水色で、俺は萌黄色だった。その場で俺たちがえらんだわけじゃなくって、次々に用意されたものが出て来た。俺たちは、「美しい~」とか、「似合う~」って興奮気味な美容部員さんに言われる前に着替えたり写真を撮ったり‥ぐったりだったよ。
事前にドレスを選んだのは、桜子。「サカマキさんの色っていったらこれでしょ」って悪戯っぽい顔で笑った。
俺たちに内緒で‥きっと大変だっただろう。
そう思うと、目頭が熱くなった。
‥終始、アララキは泣いていた。
「可愛い‥すごくよく似合ってる‥」
って感激して泣いて
「ホントに‥大事にするからねぇ‥」
って感極まって、また泣く。
って、こいつがこんなに泣き虫だとは思わなかった。
泣きながら笑っていた。
ナツカは、フミカを見て、終始顔が真っ赤だった。
でも、久し振りに再会したフミカを見た一言が
「良かった、女だった」
だったのが‥笑った。
もっとも、呟いた声は、凄く小さかったから、桜子たちには聞こえてなかっただろうけどね。
神獣な俺だからこそ聞こえたってこと。(フミカにも‥聞こえたんだろう。苦笑いしてた。言わなかったのは、きっとフミカのやさしさだ)
‥ちょっと笑ってしまった。
最後に、皆で写真を撮ってもらった。
「この写真は、3枚焼き増ししてください。大きいサイズで」
って桜子が写真屋さんに言った。
フミカたち夫婦の分と、俺たちの分、そして、桜子の家の分
そう言ったら、フミカが初めて泣き出した。
「桜子、桜子‥絶対、また遊びに来るから」
って。
桜子は、第二のお母さんだからって。
二人で抱き合って泣いていた。
流石に、味噌汁の冷めない距離ってわけにはいかないけど、私が連れて来るヨって、今日は女の恰好をしてるから‥自分の事、俺って呼ぶのは、やめた。(流石にね、こんな花嫁な格好してる時にはね。特にね)
「さ、次はお花見だよ!! 」
流石にこれ以上、ナツカとアララキにここに居てもらうのはマズイ(時間的な問題だ。Happynationと地球は時間のたち方が違うからね)‥って思ったけど、桜子に言われて、桜だけ見に行った。
花霞って初めて見た。
こんなに綺麗な景色‥今まで見たことなかった、
花霞が、どんどん霞んで、
気が付いたら俺は泣いてた。
桜子も。
フミカも。
アララキが、そんな俺の背中をさすってくれた。ナツカは‥遠慮がちにフミカの手をそっとつないだ。
「桜が咲いたら、またこうしてここで会おうね」
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる